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第四部
厄介な魔物
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「ふむ。……ちなみに塞がれてるとどうなるんです?」
絶賛塞がれているけど、それは伝えずに聞いてみる。
……が、聞いてからしまったと後悔する。
「やはりそこは気になるさね」
と言うだけ言って、もう一度カップへと手を伸ばす。
さすがに香りを楽しむことは二度やらないようである。一口紅茶を口に含んでカップをテーブルに戻した。
「噴出口を塞いで魔力をひたすら溜め込むのはいいんだが、たまに溜め込みすぎる個体がいるのさ」
さっきほど待たされることなく説明を始める婆さん。同じくらいもったいぶるようだったら、説明を聞かずにさっさと退室するところだったぜ……。
とはいえ、溜め込みすぎるとどうなるのか、あえて言わないということは聞いてくることを期待してるんだろうか。やっぱりもう帰ろうかな。
『溜め込みすぎると爆発とかするのかな?』
莉緒も空気を読んだのか、婆さんの答えを予測している。
『だよなぁ。限界を超えると暴れだすとか、とにかく厄介なことになりそうってことだよな』
「わかりました。とにかく塞いでるやつがいるかどうか見て来ればいいんですね」
「あ、ああ……、それで間違いないね」
「じゃあさっそく行ってくるのでこれで失礼しますね」
溜め込みすぎるとどうなるか聞きたいところだったが、じれったいのでこの婆さんから聞き出すのはやめにしよう。最悪、空間遮断結界で囲ってしまえば爆発しても問題にはならないだろう。
『山頂に定期的に現れるっぽい雰囲気だし、あとでギルド職員にでも聞いてみようか』
そそくさと立ち上がると念話で他のメンバーにも伝える。さすがにギルドマスターしか知らないってことはないだろう。
「あっ、ちょっ……」
急に立ち上がった婆さんが腰を抑える様子が見えたが、部屋を出る間際だったのでそのままスルーする。
カウンターの表まで出てきたところでさっきの女性職員の姿が見えたので声を掛けた。
「あら、もうお話は終わったんですか?」
早く終わったことに驚かれたが、あのギルドマスターであれば仕方がない。
「要点は聞けたので切り上げてきちゃいました」
「あー、わかります」
ギルド内でもあの婆さんは相変わらずみたいだ。呆れた様子の女性職員にモールボールの生態を聞いて、俺たちは山頂へと向かった。
冒険者ギルドを出て渓谷の山を半分ほど登ったころ、ギルドから後を付けてくる気配がなかなか離れないことに気が付いていた。ここまで来たらたまたま行き先が同じというわけでもない気がする。
上り坂の曲がり角を曲がり終えた後、ちょっとだけバックして後ろを覗き込む。
「――!?」
兎耳を生やした男と目が合った。
=====
名前 :ロナール
種族名:兎人族
職業 :ストーカー
状態 :通常
ステータス:HP 4897
MP 3809
筋力 3874
体力 2764
俊敏 7843
器用 8433
精神力 6854
魔力 3210
運 354
=====
鑑定をしてみるとそこそこやるようである。これなら山頂の依頼もこなせるんだろうか?
「誰かいたの?」
振り返った俺の隣に莉緒もやってきた。引き返していったようだけど何しに来たんだろうな。山頂に用事がないってことは、俺たちの後を付けてたのかもしれない。
「あ、うん。もう帰ったみたいだけど、兎耳生やした人が俺たちの後ろにいたぞ」
「え、そうなんだ。全然気づかなかった」
「ふむ。ギルド出た時からずっと後ろにいたんだけどな……」
山頂に向かう道へと進みながら莉緒と話す。
ステータスも高かったし、莉緒が気づかないとなるとそれなりにやり手なんだろうな。それにしても最近ストーカーが多い気がするな。さっきのやつに至っては職業がまんまだったし。周りでコソコソされるとちょっとイラっとくるね……。空間魔法のマーカーは付けておいたし、次からは人ごみの中でも気づくだろう。
「わふううぅぅぅ……」
頂上まで近づいてきたとき、なんとなく嫌そうな鳴き声が後ろから聞こえてきた。
「どうした?」
珍しいと思いつつも振り返ると、ニルの耳が垂れさがって尻尾も下を向いている。
「くちゃい」
フォニアも一緒になって眉を顰めている。くちゃいって、臭いってことか。
「ああ、やっぱり臭うよな……」
嗅覚強化をすると臭ってきた。我慢はできるけど、さらに鼻のいいニルは辛そうだな。イヴァンも臭いがわかるのか渋面になっている。
「強化すれば臭ってくるわね……」
「どうする? そんなに嫌なら宿で待っててもいいぞ」
ニルの首元をもふりながら告げると、ますます耳が垂れさがってきた。だがしかし、隣にいる狐のお子様はグッと拳を握り締めると。
「……ボクは行くよ!」
高らかに宣言する。
ニルが驚いたようにフォニアを見つめると、ゆっくりと耳と尻尾を立てると「わふう!」とひと鳴きする。
「えへへ、ニルには負けないよ!」
なんだか張り合っているらしい雰囲気だな。行く気になってるならいいか。
「んじゃ行くか」
職員から聞いたモールボールの待つ頂上へと歩を進めた。
予想通り魔力をため込みすぎると暴走して、下手をすると破裂するとのことだ。しかもこの臭いのもとでもあるという。それが破裂した後の惨状は推して知るべし。
絶賛塞がれているけど、それは伝えずに聞いてみる。
……が、聞いてからしまったと後悔する。
「やはりそこは気になるさね」
と言うだけ言って、もう一度カップへと手を伸ばす。
さすがに香りを楽しむことは二度やらないようである。一口紅茶を口に含んでカップをテーブルに戻した。
「噴出口を塞いで魔力をひたすら溜め込むのはいいんだが、たまに溜め込みすぎる個体がいるのさ」
さっきほど待たされることなく説明を始める婆さん。同じくらいもったいぶるようだったら、説明を聞かずにさっさと退室するところだったぜ……。
とはいえ、溜め込みすぎるとどうなるのか、あえて言わないということは聞いてくることを期待してるんだろうか。やっぱりもう帰ろうかな。
『溜め込みすぎると爆発とかするのかな?』
莉緒も空気を読んだのか、婆さんの答えを予測している。
『だよなぁ。限界を超えると暴れだすとか、とにかく厄介なことになりそうってことだよな』
「わかりました。とにかく塞いでるやつがいるかどうか見て来ればいいんですね」
「あ、ああ……、それで間違いないね」
「じゃあさっそく行ってくるのでこれで失礼しますね」
溜め込みすぎるとどうなるか聞きたいところだったが、じれったいのでこの婆さんから聞き出すのはやめにしよう。最悪、空間遮断結界で囲ってしまえば爆発しても問題にはならないだろう。
『山頂に定期的に現れるっぽい雰囲気だし、あとでギルド職員にでも聞いてみようか』
そそくさと立ち上がると念話で他のメンバーにも伝える。さすがにギルドマスターしか知らないってことはないだろう。
「あっ、ちょっ……」
急に立ち上がった婆さんが腰を抑える様子が見えたが、部屋を出る間際だったのでそのままスルーする。
カウンターの表まで出てきたところでさっきの女性職員の姿が見えたので声を掛けた。
「あら、もうお話は終わったんですか?」
早く終わったことに驚かれたが、あのギルドマスターであれば仕方がない。
「要点は聞けたので切り上げてきちゃいました」
「あー、わかります」
ギルド内でもあの婆さんは相変わらずみたいだ。呆れた様子の女性職員にモールボールの生態を聞いて、俺たちは山頂へと向かった。
冒険者ギルドを出て渓谷の山を半分ほど登ったころ、ギルドから後を付けてくる気配がなかなか離れないことに気が付いていた。ここまで来たらたまたま行き先が同じというわけでもない気がする。
上り坂の曲がり角を曲がり終えた後、ちょっとだけバックして後ろを覗き込む。
「――!?」
兎耳を生やした男と目が合った。
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名前 :ロナール
種族名:兎人族
職業 :ストーカー
状態 :通常
ステータス:HP 4897
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筋力 3874
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俊敏 7843
器用 8433
精神力 6854
魔力 3210
運 354
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鑑定をしてみるとそこそこやるようである。これなら山頂の依頼もこなせるんだろうか?
「誰かいたの?」
振り返った俺の隣に莉緒もやってきた。引き返していったようだけど何しに来たんだろうな。山頂に用事がないってことは、俺たちの後を付けてたのかもしれない。
「あ、うん。もう帰ったみたいだけど、兎耳生やした人が俺たちの後ろにいたぞ」
「え、そうなんだ。全然気づかなかった」
「ふむ。ギルド出た時からずっと後ろにいたんだけどな……」
山頂に向かう道へと進みながら莉緒と話す。
ステータスも高かったし、莉緒が気づかないとなるとそれなりにやり手なんだろうな。それにしても最近ストーカーが多い気がするな。さっきのやつに至っては職業がまんまだったし。周りでコソコソされるとちょっとイラっとくるね……。空間魔法のマーカーは付けておいたし、次からは人ごみの中でも気づくだろう。
「わふううぅぅぅ……」
頂上まで近づいてきたとき、なんとなく嫌そうな鳴き声が後ろから聞こえてきた。
「どうした?」
珍しいと思いつつも振り返ると、ニルの耳が垂れさがって尻尾も下を向いている。
「くちゃい」
フォニアも一緒になって眉を顰めている。くちゃいって、臭いってことか。
「ああ、やっぱり臭うよな……」
嗅覚強化をすると臭ってきた。我慢はできるけど、さらに鼻のいいニルは辛そうだな。イヴァンも臭いがわかるのか渋面になっている。
「強化すれば臭ってくるわね……」
「どうする? そんなに嫌なら宿で待っててもいいぞ」
ニルの首元をもふりながら告げると、ますます耳が垂れさがってきた。だがしかし、隣にいる狐のお子様はグッと拳を握り締めると。
「……ボクは行くよ!」
高らかに宣言する。
ニルが驚いたようにフォニアを見つめると、ゆっくりと耳と尻尾を立てると「わふう!」とひと鳴きする。
「えへへ、ニルには負けないよ!」
なんだか張り合っているらしい雰囲気だな。行く気になってるならいいか。
「んじゃ行くか」
職員から聞いたモールボールの待つ頂上へと歩を進めた。
予想通り魔力をため込みすぎると暴走して、下手をすると破裂するとのことだ。しかもこの臭いのもとでもあるという。それが破裂した後の惨状は推して知るべし。
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