成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa

文字の大きさ
上 下
218 / 421
第四部

厄介な魔物

しおりを挟む
「ふむ。……ちなみに塞がれてるとどうなるんです?」

 絶賛塞がれているけど、それは伝えずに聞いてみる。
 ……が、聞いてからしまったと後悔する。

「やはりそこは気になるさね」

 と言うだけ言って、もう一度カップへと手を伸ばす。
 さすがに香りを楽しむことは二度やらないようである。一口紅茶を口に含んでカップをテーブルに戻した。

「噴出口を塞いで魔力をひたすら溜め込むのはいいんだが、たまに溜め込みすぎる個体がいるのさ」

 さっきほど待たされることなく説明を始める婆さん。同じくらいもったいぶるようだったら、説明を聞かずにさっさと退室するところだったぜ……。
 とはいえ、溜め込みすぎるとどうなるのか、あえて言わないということは聞いてくることを期待してるんだろうか。やっぱりもう帰ろうかな。

『溜め込みすぎると爆発とかするのかな?』

 莉緒も空気を読んだのか、婆さんの答えを予測している。

『だよなぁ。限界を超えると暴れだすとか、とにかく厄介なことになりそうってことだよな』

「わかりました。とにかく塞いでるやつがいるかどうか見て来ればいいんですね」

「あ、ああ……、それで間違いないね」

「じゃあさっそく行ってくるのでこれで失礼しますね」

 溜め込みすぎるとどうなるか聞きたいところだったが、じれったいのでこの婆さんから聞き出すのはやめにしよう。最悪、空間遮断結界で囲ってしまえば爆発しても問題にはならないだろう。

『山頂に定期的に現れるっぽい雰囲気だし、あとでギルド職員にでも聞いてみようか』

 そそくさと立ち上がると念話で他のメンバーにも伝える。さすがにギルドマスターしか知らないってことはないだろう。

「あっ、ちょっ……」

 急に立ち上がった婆さんが腰を抑える様子が見えたが、部屋を出る間際だったのでそのままスルーする。
 カウンターの表まで出てきたところでさっきの女性職員の姿が見えたので声を掛けた。

「あら、もうお話は終わったんですか?」

 早く終わったことに驚かれたが、あのギルドマスターであれば仕方がない。

「要点は聞けたので切り上げてきちゃいました」

「あー、わかります」

 ギルド内でもあの婆さんは相変わらずみたいだ。呆れた様子の女性職員にモールボールの生態を聞いて、俺たちは山頂へと向かった。



 冒険者ギルドを出て渓谷の山を半分ほど登ったころ、ギルドから後を付けてくる気配がなかなか離れないことに気が付いていた。ここまで来たらたまたま行き先が同じというわけでもない気がする。
 上り坂の曲がり角を曲がり終えた後、ちょっとだけバックして後ろを覗き込む。

「――!?」

 兎耳を生やした男と目が合った。

 =====
 名前 :ロナール
 種族名:兎人族
 職業 :ストーカー
 状態 :通常
 ステータス:HP  4897
       MP  3809
       筋力  3874
       体力  2764
       俊敏  7843
       器用  8433
       精神力 6854
       魔力  3210
       運   354
 =====

 鑑定をしてみるとそこそこやるようである。これなら山頂の依頼もこなせるんだろうか?

「誰かいたの?」

 振り返った俺の隣に莉緒もやってきた。引き返していったようだけど何しに来たんだろうな。山頂に用事がないってことは、俺たちの後を付けてたのかもしれない。

「あ、うん。もう帰ったみたいだけど、兎耳生やした人が俺たちの後ろにいたぞ」

「え、そうなんだ。全然気づかなかった」

「ふむ。ギルド出た時からずっと後ろにいたんだけどな……」

 山頂に向かう道へと進みながら莉緒と話す。
 ステータスも高かったし、莉緒が気づかないとなるとそれなりにやり手なんだろうな。それにしても最近ストーカーが多い気がするな。さっきのやつに至っては職業がまんまだったし。周りでコソコソされるとちょっとイラっとくるね……。空間魔法のマーカーは付けておいたし、次からは人ごみの中でも気づくだろう。

「わふううぅぅぅ……」

 頂上まで近づいてきたとき、なんとなく嫌そうな鳴き声が後ろから聞こえてきた。

「どうした?」

 珍しいと思いつつも振り返ると、ニルの耳が垂れさがって尻尾も下を向いている。

「くちゃい」

 フォニアも一緒になって眉を顰めている。くちゃいって、臭いってことか。

「ああ、やっぱり臭うよな……」

 嗅覚強化をすると臭ってきた。我慢はできるけど、さらに鼻のいいニルは辛そうだな。イヴァンも臭いがわかるのか渋面になっている。

「強化すれば臭ってくるわね……」

「どうする? そんなに嫌なら宿で待っててもいいぞ」

 ニルの首元をもふりながら告げると、ますます耳が垂れさがってきた。だがしかし、隣にいる狐のお子様はグッと拳を握り締めると。

「……ボクは行くよ!」

 高らかに宣言する。
 ニルが驚いたようにフォニアを見つめると、ゆっくりと耳と尻尾を立てると「わふう!」とひと鳴きする。

「えへへ、ニルには負けないよ!」

 なんだか張り合っているらしい雰囲気だな。行く気になってるならいいか。

「んじゃ行くか」

 職員から聞いたモールボールの待つ頂上へと歩を進めた。
 予想通り魔力をため込みすぎると暴走して、下手をすると破裂するとのことだ。しかもこの臭いのもとでもあるという。それが破裂した後の惨状は推して知るべし。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...