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第四部
刀の完成
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金属をいろいろと集めつつ、いつもよりも奥深い場所までやってきた。奥へ行けば行くほどアダマンタイトが掘れるが、俺たちにはあんまり関係なかったかもしれない。いや、人が少ないから周りに気を使わなくていいのはメリットか?
「にしても、さっきから後ろをついてくる奴はたまたま行き先が同じだけの人なんだろうか」
「えっ?」
「そんな人きてるの?」
「やっぱり気のせいじゃないわよね」
二人は気づいていないようだけど、莉緒も何かを感じていたようだ。堂々とついてくるなと思ったけど、ちゃんと隠密行動はしていたらしい。あんまり意識したことなかったけど、自分の索敵能力はやっぱり高いのかもしれない。
「何の用か知らないけど、盗賊ギルドのこともあるし何しに来たのか直接聞いてみるか」
フォニアの時みたいに下手に不意打ちされて逃げられても面倒だ。というかこの気配はあのとき盗賊ギルドにいた密偵っぽいんだよな。
「先手必勝ね」
「ああ。次の曲がり角を曲がったら仕掛ける。みんなはそのまま先に進んでおいてくれ」
「了解」
「わかった!」
「わふ!」
一本道の暗くて狭い通路だ。明かりで周囲を照らしてはいるが、少しでも離れると暗闇に包まれる。
曲がり角を曲がったところで俺だけ気配や周囲に漏れる魔力など、あらゆるものを遮断する。みんなから二度見されるけど、俺はまだここにいるよ?
「じゃあ行ってくる」
追跡者が歩みを速めたところを見計らって、テレポートの魔法を使う。もちろん出現場所は追跡者の背後だ。はっきりと仕掛けられたわけではないのでこっちからも話しかけるだけだ。
小柄な体格の男が視界に入る。身長は自分と変わらないくらいだが、頭の上に耳が生えているのが見える。
っと、声を掛ける前に鑑定鑑定っと。
=====
名前 :シャウト
種族名:鼠人族
職業 :密偵
状態 :通常
ステータス:HP 1293
MP 465
筋力 587
体力 856
俊敏 1045
器用 1154
精神力 465
魔力 365
運 643
=====
うん。やっぱりあのときの密偵だった。密偵なのに声高に何かを主張しそうな名前である。それにしてもいったい何しに来たんだろうな。
俺の気配が消えたからか、追跡スピードを上げて曲がり角まで急ぐ。ゆっくりと角から顔を出すと、莉緒たちの様子を確認しだした。
「後をつけるならもうちょっと隠密行動取るようにするんだな」
「――ッ!?」
静かに近づいて声を掛けると、声にならない悲鳴を上げて男が後ずさる。回答は期待していないし、会話をする気もないのでそのまま男をスルーだ。ひらひらと手を振ると、男に背を向けてそのまま歩いて莉緒と合流した。
「どうだった?」
「例の盗賊ギルドのメンバーの密偵だったよ」
「そうなのか。……何しに来たんだろうな?」
イヴァンが首をひねっているが俺も同感だ。自分たちの実力で俺たちに気付かれずに尾行できると思ってたのか。……思ってたから尾行してきたんだろうけど。
「とりあえず今日は撤退したみたいだし、金属集めに集中しようか」
あれから誰にも邪魔をされることなく、アダマンタイトなどの金属集めが捗った。ホクホク顔の俺たち二人は、さらに二日かけてアダマンタイト製の武器を完成させた。
「これがイヴァンの槍だ」
「うはっ、すげぇなコレ……」
総アダマンタイト製の、二メートルを超える十文字槍だ。刃以外の部分には滑り止めのためにグレイトドラゴンの革が巻き付けられている。
「おお、ずっしりくる」
そう呟くと具合を確かめるように庭へと出て槍を振り回し始めた。
俺たちの刀もそれぞれ造ってある。莉緒が長さがそれぞれ異なる三本の刀だ。一番長い奴は両手持ちして一本で使うやつだろう。魔法職だけど刀好きなので自分の好きなようにすればいいと思う。三刀流でもするのかと思ったけど、使わない方は異空間ボックスに入れて適宜切り替えみたいだ。
どれも溝にオリハルコンを埋め込んでおり、魔力を込めて各種機能が十分に発揮するようになっている。鞘も溝を掘ってオリハルコンで埋めているが、溝は細めで先端部分には多めに使っている。道具がなくても魔法の遠隔発動はできるけど、ないよりはあったほうがやりやすい。
「やっぱり刀ってカッコいいな」
莉緒ほどじゃないけど俺も刀は好きだ。流浪人が道場に居候する漫画はよく読んでいた。神速の抜刀術っていいよね。ガントレット装備してても刀は持てるし、それにアダマンタイト製の刀なら、海皇亀の甲羅をうまく切り分けられないかな。今まで物理で破壊しかできなかったけど、斬れるなら甲羅の使い道もできそうだ。ちょっと斬撃に特化した訓練もしてみようか。
「柊は二本なのね」
「ああ。ガントレットを盾代わりに刀で攻撃できればいいかなって」
俺の刀ももちろんオリハルコン仕込み済みだ。脇差タイプの短いやつと、普通の長さの刀が二本腰に差してある。
「破壊力特化ね……」
恐ろしいものでも見たかのように戦慄する莉緒だが、莉緒だって海皇亀を仕留めた狙撃魔法がある。魔力があるぶん俺よりも高威力なのは確実だ。
「よし、装備も充実したし、次は斜面の頂上でも行ってみるか」
「おー」
冒険者ギルドでAやBランクの依頼が豊富な渓谷の山頂付近だ。ワイバーンやキマイラが見られるらしいから、ちょっとどんな見た目なのか楽しみだ。
「にしても、さっきから後ろをついてくる奴はたまたま行き先が同じだけの人なんだろうか」
「えっ?」
「そんな人きてるの?」
「やっぱり気のせいじゃないわよね」
二人は気づいていないようだけど、莉緒も何かを感じていたようだ。堂々とついてくるなと思ったけど、ちゃんと隠密行動はしていたらしい。あんまり意識したことなかったけど、自分の索敵能力はやっぱり高いのかもしれない。
「何の用か知らないけど、盗賊ギルドのこともあるし何しに来たのか直接聞いてみるか」
フォニアの時みたいに下手に不意打ちされて逃げられても面倒だ。というかこの気配はあのとき盗賊ギルドにいた密偵っぽいんだよな。
「先手必勝ね」
「ああ。次の曲がり角を曲がったら仕掛ける。みんなはそのまま先に進んでおいてくれ」
「了解」
「わかった!」
「わふ!」
一本道の暗くて狭い通路だ。明かりで周囲を照らしてはいるが、少しでも離れると暗闇に包まれる。
曲がり角を曲がったところで俺だけ気配や周囲に漏れる魔力など、あらゆるものを遮断する。みんなから二度見されるけど、俺はまだここにいるよ?
「じゃあ行ってくる」
追跡者が歩みを速めたところを見計らって、テレポートの魔法を使う。もちろん出現場所は追跡者の背後だ。はっきりと仕掛けられたわけではないのでこっちからも話しかけるだけだ。
小柄な体格の男が視界に入る。身長は自分と変わらないくらいだが、頭の上に耳が生えているのが見える。
っと、声を掛ける前に鑑定鑑定っと。
=====
名前 :シャウト
種族名:鼠人族
職業 :密偵
状態 :通常
ステータス:HP 1293
MP 465
筋力 587
体力 856
俊敏 1045
器用 1154
精神力 465
魔力 365
運 643
=====
うん。やっぱりあのときの密偵だった。密偵なのに声高に何かを主張しそうな名前である。それにしてもいったい何しに来たんだろうな。
俺の気配が消えたからか、追跡スピードを上げて曲がり角まで急ぐ。ゆっくりと角から顔を出すと、莉緒たちの様子を確認しだした。
「後をつけるならもうちょっと隠密行動取るようにするんだな」
「――ッ!?」
静かに近づいて声を掛けると、声にならない悲鳴を上げて男が後ずさる。回答は期待していないし、会話をする気もないのでそのまま男をスルーだ。ひらひらと手を振ると、男に背を向けてそのまま歩いて莉緒と合流した。
「どうだった?」
「例の盗賊ギルドのメンバーの密偵だったよ」
「そうなのか。……何しに来たんだろうな?」
イヴァンが首をひねっているが俺も同感だ。自分たちの実力で俺たちに気付かれずに尾行できると思ってたのか。……思ってたから尾行してきたんだろうけど。
「とりあえず今日は撤退したみたいだし、金属集めに集中しようか」
あれから誰にも邪魔をされることなく、アダマンタイトなどの金属集めが捗った。ホクホク顔の俺たち二人は、さらに二日かけてアダマンタイト製の武器を完成させた。
「これがイヴァンの槍だ」
「うはっ、すげぇなコレ……」
総アダマンタイト製の、二メートルを超える十文字槍だ。刃以外の部分には滑り止めのためにグレイトドラゴンの革が巻き付けられている。
「おお、ずっしりくる」
そう呟くと具合を確かめるように庭へと出て槍を振り回し始めた。
俺たちの刀もそれぞれ造ってある。莉緒が長さがそれぞれ異なる三本の刀だ。一番長い奴は両手持ちして一本で使うやつだろう。魔法職だけど刀好きなので自分の好きなようにすればいいと思う。三刀流でもするのかと思ったけど、使わない方は異空間ボックスに入れて適宜切り替えみたいだ。
どれも溝にオリハルコンを埋め込んでおり、魔力を込めて各種機能が十分に発揮するようになっている。鞘も溝を掘ってオリハルコンで埋めているが、溝は細めで先端部分には多めに使っている。道具がなくても魔法の遠隔発動はできるけど、ないよりはあったほうがやりやすい。
「やっぱり刀ってカッコいいな」
莉緒ほどじゃないけど俺も刀は好きだ。流浪人が道場に居候する漫画はよく読んでいた。神速の抜刀術っていいよね。ガントレット装備してても刀は持てるし、それにアダマンタイト製の刀なら、海皇亀の甲羅をうまく切り分けられないかな。今まで物理で破壊しかできなかったけど、斬れるなら甲羅の使い道もできそうだ。ちょっと斬撃に特化した訓練もしてみようか。
「柊は二本なのね」
「ああ。ガントレットを盾代わりに刀で攻撃できればいいかなって」
俺の刀ももちろんオリハルコン仕込み済みだ。脇差タイプの短いやつと、普通の長さの刀が二本腰に差してある。
「破壊力特化ね……」
恐ろしいものでも見たかのように戦慄する莉緒だが、莉緒だって海皇亀を仕留めた狙撃魔法がある。魔力があるぶん俺よりも高威力なのは確実だ。
「よし、装備も充実したし、次は斜面の頂上でも行ってみるか」
「おー」
冒険者ギルドでAやBランクの依頼が豊富な渓谷の山頂付近だ。ワイバーンやキマイラが見られるらしいから、ちょっとどんな見た目なのか楽しみだ。
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