上 下
216 / 414
第四部

刀の完成

しおりを挟む
 金属をいろいろと集めつつ、いつもよりも奥深い場所までやってきた。奥へ行けば行くほどアダマンタイトが掘れるが、俺たちにはあんまり関係なかったかもしれない。いや、人が少ないから周りに気を使わなくていいのはメリットか?

「にしても、さっきから後ろをついてくる奴はたまたま行き先が同じだけの人なんだろうか」

「えっ?」

「そんな人きてるの?」

「やっぱり気のせいじゃないわよね」

 二人は気づいていないようだけど、莉緒も何かを感じていたようだ。堂々とついてくるなと思ったけど、ちゃんと隠密行動はしていたらしい。あんまり意識したことなかったけど、自分の索敵能力はやっぱり高いのかもしれない。

「何の用か知らないけど、盗賊ギルドのこともあるし何しに来たのか直接聞いてみるか」

 フォニアの時みたいに下手に不意打ちされて逃げられても面倒だ。というかこの気配はあのとき盗賊ギルドにいた密偵っぽいんだよな。

「先手必勝ね」

「ああ。次の曲がり角を曲がったら仕掛ける。みんなはそのまま先に進んでおいてくれ」

「了解」

「わかった!」

「わふ!」

 一本道の暗くて狭い通路だ。明かりで周囲を照らしてはいるが、少しでも離れると暗闇に包まれる。
 曲がり角を曲がったところで俺だけ気配や周囲に漏れる魔力など、あらゆるものを遮断する。みんなから二度見されるけど、俺はまだここにいるよ?

「じゃあ行ってくる」

 追跡者が歩みを速めたところを見計らって、テレポートの魔法を使う。もちろん出現場所は追跡者の背後だ。はっきりと仕掛けられたわけではないのでこっちからも話しかけるだけだ。
 小柄な体格の男が視界に入る。身長は自分と変わらないくらいだが、頭の上に耳が生えているのが見える。
 っと、声を掛ける前に鑑定鑑定っと。

 =====
 名前 :シャウト
 種族名:鼠人族
 職業 :密偵
 状態 :通常
 ステータス:HP  1293
       MP  465
       筋力  587
       体力  856
       俊敏  1045
       器用  1154
       精神力 465
       魔力  365
       運   643
 =====

 うん。やっぱりあのときの密偵だった。密偵なのに声高に何かを主張しそうな名前である。それにしてもいったい何しに来たんだろうな。
 俺の気配が消えたからか、追跡スピードを上げて曲がり角まで急ぐ。ゆっくりと角から顔を出すと、莉緒たちの様子を確認しだした。

「後をつけるならもうちょっと隠密行動取るようにするんだな」

「――ッ!?」

 静かに近づいて声を掛けると、声にならない悲鳴を上げて男が後ずさる。回答は期待していないし、会話をする気もないのでそのまま男をスルーだ。ひらひらと手を振ると、男に背を向けてそのまま歩いて莉緒と合流した。

「どうだった?」

「例の盗賊ギルドのメンバーの密偵だったよ」

「そうなのか。……何しに来たんだろうな?」

 イヴァンが首をひねっているが俺も同感だ。自分たちの実力で俺たちに気付かれずに尾行できると思ってたのか。……思ってたから尾行してきたんだろうけど。

「とりあえず今日は撤退したみたいだし、金属集めに集中しようか」



 あれから誰にも邪魔をされることなく、アダマンタイトなどの金属集めが捗った。ホクホク顔の俺たち二人は、さらに二日かけてアダマンタイト製の武器を完成させた。

「これがイヴァンの槍だ」

「うはっ、すげぇなコレ……」

 総アダマンタイト製の、二メートルを超える十文字槍だ。刃以外の部分には滑り止めのためにグレイトドラゴンの革が巻き付けられている。

「おお、ずっしりくる」

 そう呟くと具合を確かめるように庭へと出て槍を振り回し始めた。

 俺たちの刀もそれぞれ造ってある。莉緒が長さがそれぞれ異なる三本の刀だ。一番長い奴は両手持ちして一本で使うやつだろう。魔法職だけど刀好きなので自分の好きなようにすればいいと思う。三刀流でもするのかと思ったけど、使わない方は異空間ボックスに入れて適宜切り替えみたいだ。
 どれも溝にオリハルコンを埋め込んでおり、魔力を込めて各種機能が十分に発揮するようになっている。鞘も溝を掘ってオリハルコンで埋めているが、溝は細めで先端部分には多めに使っている。道具がなくても魔法の遠隔発動はできるけど、ないよりはあったほうがやりやすい。

「やっぱり刀ってカッコいいな」

 莉緒ほどじゃないけど俺も刀は好きだ。流浪人が道場に居候する漫画はよく読んでいた。神速の抜刀術っていいよね。ガントレット装備してても刀は持てるし、それにアダマンタイト製の刀なら、海皇亀の甲羅をうまく切り分けられないかな。今まで物理で破壊しかできなかったけど、斬れるなら甲羅の使い道もできそうだ。ちょっと斬撃に特化した訓練もしてみようか。

「柊は二本なのね」

「ああ。ガントレットを盾代わりに刀で攻撃できればいいかなって」

 俺の刀ももちろんオリハルコン仕込み済みだ。脇差タイプの短いやつと、普通の長さの刀が二本腰に差してある。

「破壊力特化ね……」

 恐ろしいものでも見たかのように戦慄する莉緒だが、莉緒だって海皇亀を仕留めた狙撃魔法がある。魔力があるぶん俺よりも高威力なのは確実だ。

「よし、装備も充実したし、次は斜面の頂上でも行ってみるか」

「おー」

 冒険者ギルドでAやBランクの依頼が豊富な渓谷の山頂付近だ。ワイバーンやキマイラが見られるらしいから、ちょっとどんな見た目なのか楽しみだ。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

亡霊剣士の肉体強奪リベンジ!~倒した敵の身体を乗っ取って、最強へと到る物語。

円城寺正市
ファンタジー
勇者が行方不明になって数年。 魔物が勢力圏を拡大し、滅亡の危機に瀕する国、ソルブルグ王国。 洞窟の中で目覚めた主人公は、自分が亡霊になっていることに気が付いた。 身動きもとれず、記憶も無い。 ある日、身動きできない彼の前に、ゴブリンの群れに追いかけられてエルフの少女が転がり込んできた。 亡霊を見つけたエルフの少女ミーシャは、死体に乗り移る方法を教え、身体を得た彼は、圧倒的な剣技を披露して、ゴブリンの群れを撃退した。 そして、「旅の目的は言えない」というミーシャに同行することになった亡霊は、次々に倒した敵の身体に乗り換えながら、復讐すべき相手へと辿り着く。 ※この作品は「小説家になろう」からの転載です。

悠久の機甲歩兵

竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。 ※現在毎日更新中

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

処理中です...