上 下
208 / 413
第四部

鍛冶職人ルイゲンツ

しおりを挟む
 あれから数日が経ち、金属類も十分に集まった。河原からはミスリル銀や魔鋼といった金属も抽出できたし、ごく少量ではあるがオリハルコンやヒヒイロカネといったものまで見つかったので嬉しい限りである。

「今日はかじしょくにんって人のところに行くんだよね?」

「そうだよ」

 フォニアの言う通り、鍛冶職人にアダマンタイト製の武器でも見せてもらえないかと思っている。ついでに見つけた金属でよく知らないやつの使い道なんかも聞けたらいいなぁと。

「でも忙しい人なんだろ?」

「みたいだけど、とりあえず行ってみないとわからないしな」

「刀よ刀! 刀を作ってる人なんて今まで会ったことないし、是非とも話を聞きたいわ!」

 莉緒が鼻息を荒くしているが、忙しい人に割り込むための材料集めもひと段落付いたところなのだ。そこそこ集まったアダマンタイトと希少金属、その他もろもろを武器に、朝早くから鍛冶職人街へと向かった。

「ここかな?」

 川を渡って職人街へと入り、川上へと向かって行った先にルイゲンツさんの工房はあった。職人街のはずれといっていい場所ではあるが、煙突からは煙が吐き出されていて、鍛冶工房なのは間違いなさそうだ。
 開きっぱなしの入り口をくぐると中に入る。小さいカウンターがひとつだけで、これといって何もない空間だった。カウンターの向こう側には、座りながら船をこいでいる女の子がいた。

「……あ、いらっしゃい!」

 寝てませんよと意味が籠っていそうな元気のいい声で、小さい女の子が出迎えてくれる。フォニアより背は高いが、俺よりはだいぶ低い。しっかりとした体つきではあるし、背が低いことを除けば子どもには見えない。

「刀の作成依頼以外だったらアタイがうけたまわるよ!」

 作成依頼は受け付けないと先制攻撃を食らった気がしないでもないが、俺たちの目的とは違うので気にしないことにする。というかやっぱり寝ぼけてないかこの子。

「ルイゲンツさんの作品を一目見たいなと思って来ました」

「親方の作品……?」

 莉緒が要件を告げると、女の子が首を傾げている。
 親方ってことはこの子は弟子なのか。その割にはカウンターで船をこいでるとか弟子っぽく見えなかったけど。
 女の子が後ろを振り返っているけど、カウンターに隠れて向こう側に何があるかは見えない。棚にはちらほらと金属の塊が鎮座しているけど、握りこぶしより小さくて鍛冶に使えるようには見えない。

「えーっと、見るだけでいいんですか?」

「はい。見るだけでかまいません」

「はぁ……」

 なんとも歯切れが悪いが、工房なのに作品が置いてないんだろうか。気難しい職人なら、気に入らなかった作品は全部失敗作で、他人様に見せられるもんじゃねぇとか言いそうだけど。
 顎に手を添えて考え込む女の子を見ていると、カウンターの奥から一人の男が姿を見せる。がっしりとした体格の髭もじゃ男だ。見た目からしてドワーフといった風貌をしている。

「……っ!? 親方!」

 女の子が驚いて振り返っているが、音もなく現れたのでそりゃびっくりするかもしれない。

「……」

「あ、その、この人たちが親方の作品が見たいって」

「……」

「はい。作成依頼じゃないみたいです」

 女の子の声だけが聞こえてくるが、これは親方と会話してるんだろうか。髭もじゃで口元が動いているかどうかも見えない。俺より背が低く、ずんぐりした体型である。鑑定もしてみたけど間違いなくドワーフだった。
 しばらく二人の会話? を見守っていると、女の子がふとこちらを振り返る。

「あ、お待たせしました」

 居住まいを正すと改めてこちらへ向き直る。そして親方は用は済んだとばかりに奥へと引っ込んでいった。結局親方と会話してないんだけどなんだこれ。

「えーと、親方が作った完成品はいくつかあるけど、それは他のお客さんの注文品なので見せられないそうです」

「あ、そうなんですか……」

 なんとも残念ではあるが、まだ売れてない作品とかはないのかな。オーダーメイドしか受けてないんならなさそうだけど、依頼予約がいっぱいってギルド職員も言ってたしなぁ……。

「でも、失敗作でよければ奥にあるので、いくらでも見物していけって」

「えっ? いいんですか?」

 莉緒が驚いているけどマジか。気難しい職人を想像してたけど、なんかいい人そうだぞ。

「はい。ただし、絶対に売る気はないのでそのつもりでと。工房からの持ち出しもしないでくださいね」

「それはもちろんです! ありがとうございます!」

 ちょっとこれは俺も楽しみになってきたかも。

「では案内するので付いてきてください」

 奥へと歩き出した女の子の後をついていく。工房の隅で遊んでいたニルとフォニアも大人しくついてきた。

「ちょっと思ってたのと違ったな」

「そうだけど、いい方向に予想を裏切られた感じよね」

「あそこまで無口だとは思わなかったけどな」

 三人で親方のルイゲンツさんの第一印象を言い合っていると、倉庫のような場所へ案内された。多少室温も上がっていて、炉が近いのかもしれない。

「この中の物なら好きに手に取ってみてもらってもいいですよ」

 六畳ほどの部屋に棚や壺が設置され、様々な武器防具が無造作に放置されている場所だった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話 主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉 神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく…… ※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!! 内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません? https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

俺の職業は『観光客』だが魔王くらいなら余裕で討伐できると思ってる〜やり込んだゲームの世界にクラス転移したが、目覚めたジョブが最弱職だった件~

おさない
ファンタジー
ごく普通の高校生である俺こと観音崎真城は、突如としてクラス丸ごと異世界に召喚されてしまう。   異世界の王いわく、俺達のような転移者は神から特別な能力――職業(ジョブ)を授かることができるらしく、その力を使って魔王を討伐して欲しいのだそうだ。 他の奴らが『勇者』やら『聖騎士』やらの強ジョブに目覚めていることが判明していく中、俺に与えられていたのは『観光客』という見るからに弱そうなジョブだった。 無能の烙印を押された俺は、クラスメイトはおろか王や兵士達からも嘲笑され、お城から追放されてしまう。 やれやれ……ここが死ぬほどやり込んだ『エルニカクエスト』の世界でなければ、野垂れ死んでいた所だったぞ。 実を言うと、観光客はそれなりに強ジョブなんだが……それを知らずに追放してしまうとは、早とちりな奴らだ。 まあ、俺は自由に異世界を観光させてもらうことにしよう。 ※カクヨムにも掲載しています

処理中です...