成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa

文字の大きさ
上 下
206 / 421
第四部

さらわれたフォニア?

しおりを挟む
「はぁ?」

 訝し気な反応を返すと、男はイラっとする仕草で肩をすくめる。
 フォニアがちゃんと宿に帰れたかって? 知らんけど美味い飯食ってんじゃねぇの?

『おーいフォニア。今どこにいるんだ?』

 というか直接聞けば早いよな。

『えっ? ……お兄ちゃん? どうしたの?』

 とりあえず返事は返ってきたな。切羽詰まったような雰囲気は感じないからひとまずは安心か。

『まさか迷子になってないかって心配になってな。ちゃんと宿に帰れたか?』

『う……、うん』

 なんか微妙に歯切れが悪いな。こりゃホントに目の前の奴が言うように誘拐でもされたか……? いやでも……。

『まさかご飯くれるって知らない人に勝手に付いていったりしてないよな?』

『し、知らない人じゃなかったもん!』

『えっ?』

『……あっ』

 しまったという意味しか込められていなさそうな『あっ』をありがとうございます。もう確定でいいんだろうけど、この街に知ってるヤツっていたっけ……。

「フォニアちゃん……、宿に帰ってないの?」

 莉緒が心配そうに尋ねてくるけど、まさにその通り帰ってなさそうだ。

「マジかよ。昔から知らない人には付いていくなって、口を酸っぱくして言い聞かせてたはずなんだけど……」

 やっぱり異世界でもそういうのあるんだ。でもそりゃそうか、日本に比べたら誘拐なんてありふれてそうだしな。

『だ……、だって、どうくつでボクのこと心配してくれたおじちゃんが、お腹すいてるならご飯食べさせてくれるって……』

 どうくつ……って、坑道で絡んできたあの冒険者か? あんまり顔まで確認はしてなかったけど、確かに目の前の奴がそうだと言われればそれっぽい気もしなくもない。

『ええー……』

 今度は莉緒から呆れた調子の念話が飛んできた。フォニアと話でもしたか、ご飯に釣られてホイホイ付いていった事実を知ったようだ。

『まぁひどいことはされてなさそうだから……、ってあいつらじゃフォニアをどうこうできるとも思えないけど』

「まぁ信じないなら信じないでいいが……、ガキが一人でうろついてたら危ねぇだろうが。保護してやったんだから、ここはお礼ってやつを払っておいても損はねぇと思うぜ」

 もはや身代金を要求しているようにしか聞こえないんだがどうしたもんか。
 とりあえず莉緒とイヴァンを安心させるために、目の前のバカのステータスを念話で教えておく。HPはかろうじて四桁あるが、筋力体力が500って、何かのスキルで数倍になっていたとしてもフォニアが物理で勝ちそうだ。
 鉄鉱石収集のEランク常時依頼の現場にいた冒険者だろうし、Eランクなんだろう。仲間がフォニアを見張ってたとしても、ステータスの数字としては似たようなもんだと思う。

「あの宿に泊まれるくらい金持ってんだろ……? 多少の勉強代だと思って恵んでくれてもいいじゃねぇか」

「はぁ……」

 だんだんと要求が必至な懇願に変わってきている気がする。こんな奴に付き合うのもバカらしくなってきた。一瞬だけひねくれすぎた親切心かとも思ったけど考えすぎか。
 刃物でフォニアを脅したりとかはしてなさそうだし、極悪人にはなりきれていないというか、ちょっとした良心はまだあるのかもしれない。ここは普通にフォニアに帰ってきてもらうか。

『フォニア。怒ってないからちゃんと宿に帰っておいで』

『……ホントに?』

『ああ、本当だ。……でもフォニアを宿に帰そうとしない悪い人が邪魔をするかもしれないな』

『ええっ!? ご飯くれたのに悪い人なの!?』

 ……フォニアの中じゃ、ご飯くれる人は全部いい人なのか。

『そうだぞ。危ないからって外に出してくれなかったり、捕まえにきたりするかもしれないけど、捕まらないようにうまく躱して宿に帰ってくるんだ』

『う、うん……。わかった!』

『よしよし、フォニアはいい子だな。無事帰ってこれたら好きなデザートを三つ、夕飯に付けようか』

『ホントに!?』

『ああ。だけど、悪い人に捕まったりするたびにもらえるデザートが一つ減るから気を付けるんだぞ』

『ええっ!? じゃ……、じゃあ三回捕まっちゃったら……』

 戦慄するような震える声でフォニアの念話が届く。デザートなしはそこまで恐ろしいことのようだ。

『そうだな。残念だけどそうなったら…………、デザートはなしだな』

 深刻そうな雰囲気をたっぷりと含ませてフォニアへと告げると。

『っ!? わ、わかった。ボク、がんばるよ……!』

 真剣な表情で拳を握り締める姿が浮かびそうな雰囲気の言葉が返ってきた。

「あっはっはっは!」

「ぶふぉっ! ……くっくっく」

 フォニアとのやりとりを莉緒とイヴァンにも聞こえるようにしていたら、耐えられなくなったのか大爆笑だ。

「な、何がおかしい!?」

 いや、うん。縋るように金くれっていうアンタも十分面白いけどね。

「心配してくれてるところ悪いが、フォニアはちゃんと帰れる子なんで余計なお世話だな」

「……はぁっ!? あんな小さい子が一人で大丈夫なわけねぇだろ! 確かに小さいペットもついてたけどよ……!」

『というわけでニルもしっかりフォニアのサポートをお願いするよ』

『わふぅ!』

 念のために小さいペットにお願いすると、任せておけとばかりの返事が返ってきた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...