成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa

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第三部

エピローグ

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「よし、行くか!」

 首からミスリル製の冒険者証をかけ、帝都のギルドを出る。莉緒の首からもミスリル製の冒険者証がかかっていて、ニルとフォニアの首にもミスリル製のタグが輝いている。

「どっちへ行く?」

「そうだなぁ……。フォニアとイヴァンはどこか行きたいところあるか?」

 莉緒からの問いかけを、そのまま二人へとスルーする。

「いや、どこに何があるかもわかんねぇし、どこでもいいさ」

『ボクもー』

「なるほど。じゃあ次は……、山かな」

「山?」

「そう。海の幸はここで堪能したから、次は山の幸かなと思って」

「それいいわね。山にしましょうか」

 イヴァンの問いかけに答えると、ギルドで見せてもらった地図を思い出す。確か西方面の帝国とアークライト王国の境目に、デカい山脈があったっけ。あとは帝国を東へ抜けて商業国家へ入ってしばらく進んだ先にも山岳地帯があったはず。
 王国に近づくとかはなしだな。

「東だな」

「ええ」

 莉緒にも異論はないようだ。商業国家の向こう側にも違う国があったはずだし、そっちに向かうことにするか。

「まぁ行き先はどこでもいいんだけどさ……。ホントに今から帝都を出るのか?」

 進む方角を決めたばかりだが、イヴァンが不安そうに眉を顰めている。
 時間帯は夕方に差し掛かろうとしているところだ。これから夜に向かっていくというところで街を出るのは普通は考えられない。普通であれば。

「もちろん。日が沈むまでには次の街の宿は取るから大丈夫」

「は?」

『えっ?』

「あはは、大丈夫だから安心して。とりあえず東門へ向かいましょうか」

「えぇ……? まぁそう言うならいいけど……」

 全然納得はしていないようだけど、文句を言いながらもついてくる。
 富裕層エリアを抜けて東門へと到着する頃には、夕日が徐々に赤く染まっていた。この時間帯から外に出る人もほとんどいないようで、門番からも注意はもらったが止められるようなことはない。

「……俺たち、旅の準備とか何もしてないんだけど、よかったのか」

『何言ってるのよイヴァン兄。ボクたち最初から荷物なんて持ってないじゃない』

 ツッコむフォニアの声はもちろんイヴァンには届いていない。着の身着のままではあるが、東門に向かう途中で旅に必要な道具類の買い物とかもできたはずで、イヴァンはそのことを言ってるんだろう。
 実際俺たちも手ぶらだしな。

「道具類なら手持ちがあるから心配しなくていいわよ」

「あぁ、そういえばそうだったな……。空間魔法の使い手だったな」

 ええ、そうですとも。なんなら海皇亀も持ち歩いてますよ。

 街への入場を待つ列を眺めながら街道へ足を踏み出す。南側には草原が広がっており、遠くには森が見える。北側も草原だが生えている草はまばらで、遠くなればなるほど荒野となっている。そんな境目を東に向かって街道がまっすぐ続いていた。

「なぁ、さすがにこのままずっと歩いて行くわけじゃないんだろ?」

 人がいなくなったところでふとイヴァンが声を掛けてきた。

「もちろん。そろそろいいかな」

「そうね。じゃあこのあたりで……」

 アイコンタクトで莉緒が街道の脇に簡易小屋を異空間ボックスから取り出す。

「……もう俺は何も驚かねぇぞ」

「フォニアは人型に戻ろうか」

『え? うん、わかった』

 イヴァンの言葉をスルーしてフォニアに声を掛けると、元気な返事と共に人型へと変化していく。もちろん服なんて着ておらず、すっぽんぽんだ。

「人型になったよ!」

 両手両足を広げて人型になったアピールしている。

「フォニアちゃん! せっかく更衣室出したのに!」

 莉緒の叫びとともに明後日の方向へと視線を向ける。羞恥心というものを持っててもいいと思ったけど、なんだろうな……。子どもと言ってしまえばそれまでだけど。

「取り出した建物の説明からすればよかったか……」

 莉緒がフォニアを連れて更衣室へ行ったので、あっちは任せておく。

「で、ここからはどうするんだ?」

 フォニアが着替えているであろう建物に視線を向けたまま、イヴァンが確認してくる。

「イヴァンにはニルの背中に乗ってもらおうかと」

「わふぅー」

 なんとも不服そうな声を上げるニルだけど、嫌がってるようではなさそうだ。

「……ということはフォニアもか」

「そうなるかな。まぁ俺か莉緒が背負ってもいいけど」

 人型のフォニアは小さいから大丈夫だろう。しがみつくという意味では、ニルより俺たちの方がいいかもしれない。ニルだともふもふする毛を掴むしかないから、滑ったら大変だ。

「落ちないようにしっかり掴まっておいてくれ」

 ゆっくりとニルに近づくイヴァンだったが、ちょっとこのままだと無理かもしれないと思い始めた。ニルは大型犬サイズだが、イヴァンもけっこうデカい方だ。

「……乗れるのか、これ」

「あー、大丈夫大丈夫。ニル、ちょっと大きくなって」

「わふぅ」

 しょうがないなぁという感情が伝わってくると同時に、イヴァンが乗っても大丈夫そうなサイズにまで大きくなる。体高で150センチほどだろうか。さっきまでのフォニアより一回り小さいくらいのサイズだ。

「デカくなった……」

「ニルの本来のサイズは七、八メートルくらいだから、そこまでのサイズであれば変えられるんじゃないかな」

「へ、へぇ……」

 驚きで目を見開きながらも、なんでもない風を装った言葉を返してくる。

「あ、ニルが大きくなってる!」

 そこにちょうど着替え終わったフォニアが更衣室から出てきた。フリルのついたクリーム色のかわいらしいワンピース姿だ。首につけたミスリルのタグが、チョーカーのようになっていて違和感は感じない。これならパッと見ても従魔とは思われないんじゃなかろうか。

「じゃあフォニアもニルに乗って」

「うん!」

 嬉しそうに駆け寄ると、ニルが乗りやすいように伏せる。
 イヴァンが先に乗り込むと、伸ばしたフォニアの手を取って前に乗せてやる。

「よし、これで前とそう変わらない速度で移動できそうだな」

「そうね。フォニアちゃんが怖がらなければだけど……」

「あー、まぁ、大丈夫じゃないかな」

 キャッキャとはしゃぐフォニアを見ながら根拠のない言葉が漏れる。

「ふふ、とりあえず行きましょうか」

「だな。じゃあニル、行くぞー」

「わふぅ!」

「しゅっぱーつ!」

 空へと舞い上がるとニルも追従するように立ち上がり、空を踏みしめて宙へと駆けあがる。

「えっ、……え? ええええ!? ナンデ!? ナニコレ!?」

「うわぁ! すごいすごい!」

 悲鳴を上げるイヴァンに興奮するフォニア。うむ、これなら大丈夫そうだな。

「ちょっと聞いてないんですけどー!」

 街道の上空に悲鳴を響かせながら、俺たちは帝都を後にした。
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