成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa

文字の大きさ
上 下
167 / 424
第三部

帝国軍との共闘

しおりを挟む
「失礼。キミたちがシュウとリオで間違いないかね」

 港から離れた海岸線で狙撃魔法の練習をしていたところに声を掛けられた。

「はい、そうですけど」

 どこかでみたことのある服装をした、緑色の短髪の女だ。軍服っぽいけど帝国軍かな。以前街の入り口で見たやつと似てる気がする。

「わたしはウェンディ・ヴァルダロスと言う。帝国軍で中隊長を任されている」

「はぁ」

 やっぱり帝国軍か。にしても中隊長が俺たちに何の用だ?
 というか中隊長と言われても地位がよくわからん。それなりに偉い人とでも思っておこうか。

「実はSランク冒険者のリンフォード殿の推薦でな、帝国軍の海皇亀討伐作戦に参加を要請しにきたのだ」

 海皇亀討伐作戦ね……。あんまり邪魔はされたくないんだけど、どうしたもんか。動向を知る意味では作戦に参加したほうがよさそうだけど、変な制限を掛けられるのも困る。

「はは、まぁそう警戒しないでくれ。軍としては実力者の動向を把握しておきたいというのが本音だ。お互いに協力できれば一番だがね」

 両手を広げて大仰な身振りで苦笑している。リンフォードの推薦ということもあるし、悪い話じゃないのかもしれない。

「うーん……」

「とりあえず話だけでも聞いてくれると助かる」

 渋る俺たちになんとか妥協点を探ろうとしているのか、思ったよりも下手に出ている印象を受ける。

「それならまぁ、話だけでも」

「そうか、ありがとう」

 俺の言葉に表情を明るくさせるウェンディ。なんとなく使い走りにされてるんじゃないかと想像してしまった。



 海皇亀もそこそこ街へと近づいていた。すぐそこに小島が浮かんでいるように錯覚するが、間違いなく亀である。
 ちなみに以前俺たちも参加した、ギルドからの海皇亀襲撃作戦は失敗に終わっている。進路を変えることはできなかったと、のちの調査で判明したのだ。このままだと数日以内に上陸してしまうだろうとのことだ。

 そんな海岸線をウェンディに連れられて歩いて行く。ギルドを通しての依頼ということで、途中で冒険者ギルドにも寄ってからだ。岬を超えると、立ち入り禁止となっている軍事施設の中へと入っていく。
 港には大型の船が停泊している。漁港で見た大型サイズを余裕で超える大きさだ。大きな倉庫の向こう側にも桟橋があり、そちらにも船が停泊している。どれも大砲のようなものを備えており、軍船にしか見えない。

「あの船で亀に攻撃するんですかね」

「ああ、その予定だ」

 軍船は十隻以上あるように見える。百人乗れたとしても千人規模になるのか。岬の向こうの港は思ったよりも広い。続々と人が集まっているのか、以前街の前で見た集団をはるかに超える人員がいるように思う。
 倉庫の向こう側にあるひときわ頑丈そうな建物へと入っていくが、玄関の前を守る軍人に従魔は入れないと止められてしまった。

「軍の厩舎で預かりますので」

「わかりました。ニル、大人しくしてるんだぞ」

「わふぅ……」

 耳と尻尾が垂れるが仕方がない。ニルを預けると改めて建物の中へと入っていく。そのまま階段を上がり、二階の一番奥までくるとウェンディが扉をノックした。

「ウェンディです。二人をお連れしました」

「入れ」

 促されて部屋に入ると、そこには白髭を丁寧に整えた白髪の男と、白髪交じりの赤い髪をした男がソファに座っていた。

「ご苦労」

「……若いな」

 ウェンディが姿勢を正して敬礼し、目の前の二人からはジロジロと値踏みするような視線をもらう。

「ふむ……。わしが第二師団長を務めるヴォルフラム・フォーゲルだ」

「軍団長のドゲスハ・ラグローイだ。お前たちがリンフォードの言っていた冒険者か……」

「Cランク冒険者の柊と莉緒です」

 リンフォードが何と言っていたかは知らないので、自分は名前を告げるだけにとどめる。にしてもドゲスハ・ラグローイってどこかで聞いたことあると思ったら、イヴァンとフォニアの捕縛依頼を出した依頼主の父親か。初めて名前聞いたときは思わず吹き出してしまったから記憶に残っているが、まさかこんなところで会うとは。
 さすがに息子が出した依頼を俺たちが受けているとまでは知らないらしい。特に俺たちを見て反応は示さないようだし。

「単刀直入に言おう。我々は二日後、あの海皇亀に向かって攻撃を開始する」

 不快な視線に耐えていると、ヴォルフラムがおもむろに口を開く。追従するようにドゲスハも言葉を続けるが。

「海皇亀討伐作戦は軍部で預かるので勝手な真似はしないように」

 んん? どういうことだってばよ。ウェンディにちらりと視線を向けると、若干困った表情をしている。部屋に入った瞬間から予感はあったが、共闘する雰囲気は感じられない。

「百五十年前はまったく歯が立たなかったらしいが、その間我々が何も成長していないはずがないではないか。新たに開発した兵器もたくさんあるのだ。目にもの見せてくれる」

 力強く演説するヴォルフラムに同意するようにドゲスハも頷いている。要するにリベンジするから手を出すなってことなのか。
 しかし軍で運用する兵器か。ちょっと興味はあるな。魔道銃という武器は前に見たことあるけど威力としては大したことなかったし。

 ――軍が攻撃するまではこっちも大人しくしてますよ。

 と言いかけたところで部屋の外が慌ただしくなる。ノックもなく扉が開かれると一人の男が血相を変えて駆け込んできた。

「た、大変です! か、海皇亀に、動きがありました!」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

俺の職業は『観光客』だが魔王くらいなら余裕で討伐できると思ってる〜やり込んだゲームの世界にクラス転移したが、目覚めたジョブが最弱職だった件~

おさない
ファンタジー
ごく普通の高校生である俺こと観音崎真城は、突如としてクラス丸ごと異世界に召喚されてしまう。   異世界の王いわく、俺達のような転移者は神から特別な能力――職業(ジョブ)を授かることができるらしく、その力を使って魔王を討伐して欲しいのだそうだ。 他の奴らが『勇者』やら『聖騎士』やらの強ジョブに目覚めていることが判明していく中、俺に与えられていたのは『観光客』という見るからに弱そうなジョブだった。 無能の烙印を押された俺は、クラスメイトはおろか王や兵士達からも嘲笑され、お城から追放されてしまう。 やれやれ……ここが死ぬほどやり込んだ『エルニカクエスト』の世界でなければ、野垂れ死んでいた所だったぞ。 実を言うと、観光客はそれなりに強ジョブなんだが……それを知らずに追放してしまうとは、早とちりな奴らだ。 まあ、俺は自由に異世界を観光させてもらうことにしよう。 ※カクヨムにも掲載しています

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

【完結】異世界転移で、俺だけ魔法が使えない!

林檎茶
ファンタジー
 俺だけ魔法が使えないとか、なんの冗談だ?  俺、相沢ワタルは平凡で一般的な高校二年生である。  成績は中の下。友達も少なく、誇れるような特技も趣味もこれといってない。  そんなつまらない日常は突如として幕を閉じた。  ようやく終わった担任の長話。喧騒に満ちた教室、いつもより浮き足立った放課後。  明日から待ちに待った春休みだというのに突然教室内が不気味な紅色の魔法陣で満ちたかと思えば、俺は十人のクラスメイトたちと共に異世界に転移してしまったのだ。  俺たちを召喚したのはリオーネと名乗る怪しい男。  そいつから魔法の存在を知らされたクラスメイトたちは次々に魔法の根源となる『紋章』を顕現させるが、俺の紋章だけは何故か魔法を使えない紋章、通称『死人の紋章』だった。  魔法という超常的な力に歓喜し興奮するクラスメイトたち。そいつらを見て嫉妬の感情をひた隠す俺。  そんな中クラスメイトの一人が使える魔法が『転移魔法』だと知るや否やリオーネの態度は急変した。  リオーネから危険を感じた俺たちは転移魔法を使っての逃亡を試みたが、不運にも俺はただ一人迷宮の最下層へと転移してしまう。  その先で邂逅した存在に、俺がこの異世界でやらなければならないことを突きつけられる。  挫折し、絶望し、苦悩した挙句、俺はなんとしてでも──『魔王』を倒すと決意する。

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

処理中です...