成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa

文字の大きさ
上 下
159 / 421
第三部

顔合わせ

しおりを挟む
 結局準備らしい準備をすることなく翌日を迎えることとなった。
 基本的に物資は異空間ボックスに入っているし、改めて揃えるものはない。しかしまぁ、考えることはあったわけで。

「あの亀に効果がありそうな遠距離魔法……ね」

 亀の背中でいろいろ試してきたが、派手な魔法は控えていた。ただ同じ量の魔力を込めた攻撃で、どれが一番効果があったかと言えば。

「やっぱり物理で攻めるしかないんじゃないかしら」

「だよなぁ」

 どうもあの亀の甲羅は、分厚くて非常に硬いだけのものに感じた。それだけに魔法全般はあんまり効果が望めない。一番効果が出たのは衝撃浸透系の物理攻撃だけど、今回の依頼では使えない。

「魔法に衝撃浸透効果を乗せられればいいんだけどなぁ」

「難しそうよね」

 そうなのだ。拳で放つのはできるが、魔法となると勝手が違う。衝撃を浸透させるのだからして、衝撃を放つ魔法が対象になるんだろうか。そうなると無属性系の衝撃波を発生させる魔法なんだけど、遠距離で使う魔法じゃないんだよな。無難にいくなら、土魔法で生成した塊をぶつけるのがいいのか。

「うーん」

 他にいい方法はないかと考えつつ歩いていると、いつの間にか冒険者ギルドへ着いてしまったようだ。いつものように扉をくぐると二階へと上がっていく。
 カウンター前へのフロアへと入ると、いつもと雰囲気が異なっていた。なんとも緊張感をはらんだ静かな空間になっている。
 唯一空気を読まなかったのはニルだった。周囲をぐるっと睥睨すると、クワッと大きく欠伸をする。いや他にも空気を読まなかった冒険者がいた。ニルに抱き着いてモフモフしている。うむ。存分にモフるがよい。気持ちよさを分けて進ぜよう。

「へぇ……、アンタらがシュウとリオかい」

 カウンターの前で腕を組んでいた細身の男が声を掛けてくる。白髪の混じったグレーの髪で、なかなかにカッコいいおじさんといったところか。

「そうですけどあなたは」

「おっと失礼。Sランク冒険者のリンフォード・バデリールだ。よろしく頼む」

「あ、はい。Cランク冒険者の柊です。よろしくお願いします」

「同じく莉緒です。よろしくお願いしますね」

「で、こっちが従魔のニルです」

「わふぅ」

 ニルもしっかりとあいさつができたようだ。
 にしてもこのタイミングで声を掛けてくるSランクの冒険者ってことは、ギルドマスターが言っていたメンバーの一人か。

「ははっ、にしてもおっかない従魔を連れてんだな。推薦されるのも納得だ」

「ふん――」

 が、全員が友好的というわけではないらしい。鼻を鳴らして睨みつけてくる男もいるが、リンフォードは肩をすくめるだけだ。
 しばらく沈黙が支配する中、カウンターの奥からギルドマスターが顔を出して周囲をぐるりと見回す。

「全員……、は揃ってないようじゃの。まぁまだ時間には早いが、関係者は三階の会議室に集まってもらおうかの」

 こうして海皇亀へと襲撃を加えるメンバーが冒険者ギルドの会議室へと集められた。



 いつもの三階の部屋よりも広い部屋へと通される。Sランクの冒険者のリンフォード以外に男が三人、女が三人だ。遠距離攻撃が可能な人物という条件だからか、魔法使いっぽい見た目の人物ばかりだ。
 ちなみにニルは部屋の隅で惰眠を貪っている。
 ほどなくして最後のメンバーが来たようで扉がノックされる。ローウェルに連れられて入ってきたのは、耳の尖ったエルフらしき女だ。

「遅いですわよ、サスキア」

「そうかしら。時間通りだとは思うけど」

 派手な見た目をした金髪の女が、ライトブルーの髪のエルフに文句を言っている。

「ふむ。これで全員揃ったようじゃの。自己紹介といきたいところじゃが、初対面なのはシュウとリオだけかの?」

 ぐるっとメンバーを見回すギルドマスターが言葉を発すると、ちらほらと頷きが返ってくるが否定する人物はいない。

「えーっと、Cランク冒険者の柊です。こっちが莉緒で、あっちで寝てる従魔がニルです。よろしく」

「よろしくお願いします」

 俺の自己紹介に合わせて莉緒も会釈をすると、自己紹介が始まった。Bランク冒険者の男が三人で、ギルドのカウンター前で不満そうに鼻を鳴らした男もこのランクだったようで、レックスと名乗った。自己紹介はそのままBランク冒険者の女性陣二人に続く。それが終わればAランク冒険者へと移る。

「Aランク冒険者のアデリーですわ。以後お見知りおきを」

 輝く金髪を靡かせ、優雅にカーテシーを披露する。立ち居振る舞いすべてが様になっている。なんだろうこの人。どこかのお嬢様か何かだったりするんだろうか。

「同じくAランク冒険者をやってるサスキアよ」

「オレはさっき自己紹介したから省いていいぞ」

「うむ。では軽く打ち合わせといこうかの」

 最後のリンフォードの言葉を受けて、ギルドマスターが話を進める。
 が、なんとなくBランク冒険者たちの雰囲気がよろしくない。レックスはあからさまだったが、他のメンバーも俺たちに不満がありそうな感じだ。

 なるほど、そういうことですか。同じ船から炎と氷が発射されても、亀に到達する頃には対消滅するかもしれないし。
 俺たちは特に苦手な属性はないが、あの亀相手には土か氷の高硬度物質をぶつけるのがいい気がする。海上で使うなら氷のほうが消費魔力は抑えられそうだけど、硬さは土かな。

 いい機会だし、鑑定もさせてもらっておこう。

 =====
 名前 :リンフォード・バデリール
 種族名:人族
 職業 :大賢者
 状態 :通常
 ステータス:HP  6427
       MP  12087
       筋力  4533
       体力  3589
       俊敏  2433
       器用  10089
       精神力 6809
       魔力  8675
       運   120
 =====

 リンフォードはさすがのSランクといったところか。魔法職という割には器用値が高いな。器用に魔法を使いこなすんだろうか。
 金髪のアデリーは……、名前が「アデリー・シルフォンス」と出た。家名持ちってことはやっぱり貴族のお嬢様なんだろうか。Aランクの魔法職ともなれば魔力が3000を超えてくるようである。
 サスキアはさすがのエルフといったところで、魔力が5000を超えていた。他はいまいちだったけど。
 Bランクの皆様になると、魔力が3000を超えているのが一人いて、それ以外は2000に達していなかった。

 結局、打ち合わせの中で俺が鑑定をしたことに気付いた者はいなかった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...