成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa

文字の大きさ
上 下
154 / 421
第三部

二人を保護してみよう

しおりを挟む
「というわけなんだけど、俺たちに捕縛という名の保護をされる気はない?」

 イヴァンとフォニアの二人を前にして、さっそく提案をしてみる。

「何がというわけなんだ……」

 額に手を当てながら説明を求めるイヴァンに、俺は改めて説明することにする。
 依頼を受けてすぐ、気配察知を街中へと広げてイヴァンたちの居場所を突き止めてここまできたばかりだったりする。
 場所は港の隅にある廃棄された倉庫の中だ。壁と天井に穴が空いていて、隠れるには向いていない気もするが、それが逆に見つからない要因になっているのだろうか。

「冒険者ギルドに、逃亡奴隷捕縛の依頼が出たのよ」

「えっ? ……もしかして」

「そう。あなたたち二人の捕縛よ」

 莉緒の言葉にフォニアの顔が真っ青になっている。

「や……、やだ! 戻りたくないよ!」

 いやいやをするように頭を左右に振って瞳に涙をためる。フォニアを宥めるようにそっと抱きしめるイヴァンが、俺たちを睨みつけてきた。

「俺たちを捕まえに来たってわけか……」

「いやいや、最後まで話を聞いてくれ。俺たちは別にイヴァンたちを依頼主の侯爵家に引き渡す気はない」

「どういうことだ……?」

 表情から険しさが若干だが鳴りを潜め、代わりに困惑が占めるようになる。

「私たちも侯爵家についていろいろ聞いたんだけど、あんまり評判のよくない家みたいよね。そんなひどい家に、フォニアちゃんを返すなんて可哀そうじゃない」

「それにだ……。捕縛依頼を受けた俺たちが保護したとなれば、他の人間からちょっかいは出されにくくなるだろ」

 さすがに依頼を受けて保護した奴隷を横からかっさらって、侯爵家に返そうとする人間はいないはずだ。たぶん。

「それは……、そうかもしれないけど……」

 なんとも納得いかない表情をしているが、これ以上逃げ続けるのは難しいとあきらめも入っているのかもしれない。

「今は海皇亀が迫ってる問題もある」

「ああ……、ちょっとした騒ぎになってるな」

「もしこのまま海皇亀が街まで襲い掛かってくることがあれば、どさくさに紛れてお前たちが巻き込まれて死んだことにしてもいい。俺たちなら首輪を外せるからな」

「……へ?」

「……そんなことできるの?」

 イヴァンは呆けた顔になり、フォニアは落ち着いたのかきょとんとしている。

「いやいや、隷属の首輪だぞ! そう簡単に外せるわけないだろう!」

 立ち上がって詰め寄ってくるイヴァンだったが、嘘を言っているわけでもない。異空間ボックスからカチリと丸く繋がれた隷属の首輪をいくつも出してやる。前にクラスメイトから外したやつだ。

「それが簡単に外せるんだよな」

 普通首輪というものは、装着するまでは円形になっていないものだ。そうでないと頭を通過しないからだが。

「それは……」

「前に外したことのある隷属の首輪だな」

「これで信じてくれるかしら?」

 ゴクリと喉を鳴らし、自分の首に巻かれている首輪に触れるイヴァン。

「ただまぁ、そのあとのことを考えてないというのが正直なところなんだよな」

「奴隷から解放することは簡単なんだけどね……」

 莉緒と二人で苦笑するが、これ以上はどうしようもないというのが結論だ。

「帝国を出て新天地で一から始めるとか言うんであれば、そこまでの護衛はするぞ」

「そうね。私たちもいろんな国を旅するのが目的だから、たまたま行き先が同じになる分には問題ないわね」

「いや、そこまで面倒見てもらうわけには……」

「と言っても、こっちとしても乗り掛かった舟なんだよなぁ」

 捕縛依頼まで出てしまったし、なんとか後腐れないように決着を付けておきたい。

「言ってしまえば俺たちの我儘かもしれないな」

「なんだよそれ」

「イヴァンはともかく、フォニアちゃんに辛い思いはさせたくない!」

 断言するように拳を握り締めると、フォニアがイヴァンへとヒシっと抱き着く。

「イヴァンにいも助けてあげて」

 と、すがるような視線を向けられてしまった。
 いかん。これは破壊力が大きい。

「うっ、ごめんよ……。イヴァンもついでに助けるさ」

「ついでかよ……」

「あはは!」

 口をとがらせるイヴァンだったが、そこまで文句があるわけでもなさそうだ。

「というわけで、二人ともどうかな?」

「どうって言われても……、匿ってくれるような隠れ家とかあんのかよ?」

「宿に引きこもるってわけにもいかないよな」

「そりゃそうだな。貴族の息がかかってる可能性もあるし、無関係だとしても権力に逆らえるとも思えない」

 腕を組んで考え込みつつ呟くが、あっさりとイヴァンに反論されてしまう。となればもうこれしかない。

「ないなら作ればいいんだよ」

「は?」

「あ、そういうことね」

 俺の言葉に呆けた顔をするイヴァンと、何か得心がいったのか莉緒は手のひらをポンと叩いている。

「街の外のほうがいいかな」

「そうね。帝都とつなぐ街道からちょっと外れたところに森があったし、そこにしましょうか」

「おい、ちょっと待て。何の話だ」

 最近は異空間ボックスから取り出して使っては増築くらいしかしてなかったが、久々に一から作るとなると腕が鳴るな。

「安心してくれ。快適な居住空間を約束しよう」

 満面の笑みでサムズアップをするとイヴァンの額にますます皺が寄るのだが、この状況から脱出できるのならと頷くのだった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...