147 / 421
第三部
謎の海藻はワカメか昆布か
しおりを挟む
「と言ってもできることはないんだよなぁ」
「そうねぇ……」
いろいろ考えたが最終結論はどうしてもそこへと行きつく。首輪を外して他国へ連れ出すくらいしか思いつかない。ただし、首輪を外したのが俺たちだとバレれば、自分たちが犯罪者になってしまう。
「金で解決できればいいかもしれないが」
「相手がどんな人物かもわからないしね」
「なるようになるしかないか」
フォニアは確かに可愛かったけど、そこまで親しくなったわけでもない。あんまり入れ込みすぎるのもよくないし、気持ちを切り替えて行こう。
というわけでまたもや港にやってきました。今日は海藻の収穫にきたけど、果たして食えるのか。まぁ鑑定すればわかるんだろうけど。
「問題はどうやって採るかよね」
「……素潜り?」
「魔法でなんとかできそうな気もするけど」
このあたりの今の気候としては、海に入れないほど寒いというわけでもない。五月くらいの春の気候といったところだろうか。暑くもなく寒くもない、過ごしやすい気温である。
「水の中に入るにはやっぱり寒いかもね」
「でしょ」
桟橋から腕を伸ばして海中に浸けるが、海水は冷たい。
「とりあえず見えてるから魔法を飛ばしてみるか」
結論から言うと、刃物を魔法で遠隔操作して刈り取るのが一番早かった。最初は目視で魔法を飛ばしたんだが、水中に見える物体は光の屈折で、ずれた位置に見えることを忘れていたというのもある。が、問題はそこではない。水中へと斜めから魔法を撃ちこんで海底へと直撃すれば、砂などが舞い上がって視界が悪くなるのだ。
「でかいな」
「大きいね」
刈り取って地上へと引き上げた海藻を観察しているが、根元からだと十メートルくらいあるだろうか。緑色をした一枚の細長い葉っぱのように見える。陸に近い浅い海で採れる海藻でこれだ。沖へ行けばさらにでかいやつがいるのかもしれない。
「ワカメと昆布ってどう違うんだっけ」
「さぁ……」
ふとした疑問を口にしてみるが、莉緒もよく知らないらしい。
「とりあえず鑑定してみるか」
=====
種類 :植物
名前 :アオグサ
説明 :食用となる海藻
乾燥させると旨味が凝縮され、いい出汁が出る
生食可能
=====
「ふむ……。一応食えるみたいだな」
「そうなんだ」
「乾燥させるといい出汁が出るらしい」
「へぇ。昆布みたいだね」
「じゃあこっちはどうだろうか」
もう一種類、赤みを帯びた海藻がある。一本の太い茎からは、ムカデのように枝茎が出ていて葉を茂らせている。
=====
種類 :植物
名前 :アカグサ
説明 :食用となる海藻
触れると葉が巻き付いてきて力強く締めてくる
毒を持っているが加熱することで分解され無害となる
=====
「こっちも食えるけど、生食不可だって」
「ふむふむ」
「加熱すると毒性が分解されるってさ。しかも触ると巻き付いてきて締め殺されるらしい」
「怖いね」
「だなぁ。植物にも気を付けないとな」
「そういえば岩場に生えてる海藻もあるね」
「あれか……。海苔みたいなやつかな」
=====
種類 :植物
名前 :ミドリグサ
説明 :食用となる海藻
=====
近づいて鑑定してみると、シンプルな結果が出てきた。
「食用としか出てこないな」
「一応削り取っておこうか」
「ちょっと面倒だけどな。美味かったら集めよう」
というわけで莉緒と手分けして海藻を集めることにした。
「よし、実食だ!」
「一応海藻の種類ごとに分けてみたよ」
「ひとつだけ食う気の起きない色のやつがあるんだけど」
「うん。火を通したら真っ青になっちゃった」
いやでも鑑定じゃ食えるって出てたからなぁ……。
「まぁ……、食ってみればわかるか」
「とりあえず茹でただけだから、味がしないかもだけど」
意を決して口に入れてみるが、どれも悪くない。昆布もどきを魔法で脱水させ、からからに乾燥させてみて出汁もとってみたけどそこそこいける。
「青い奴も悪くないな……」
「見た目があれだけど、私は好きかも」
「俺としてはまぁ、食えないことはない……かな」
「昆布もどきは天日干しすればもっと旨味が凝縮される可能性もあるわよね」
「あー、確かに。魔法で急速乾燥って無理やりっぽいしなぁ。宿のベランダで干してみるか」
「干し方とかわからないけど、いろいろやってみましょう」
なんにしろ、海藻採取にきてよかった。味付けほとんどなしでも食えるってことは、ちゃんと料理すればもっと美味いはずだ。
「今度また巨大魚解体祭りがあったら、街の連中に海藻料理出して感想聞いても面白そうだな」
「あはは! そうね。身近にあるのに食べてなさそうだったもんね」
「けっこう海底に生えてるのにもったいないよな」
「じゃあもうちょっと沖まで出て集めましょうか」
「おう」
こうしてこの日は一日中、海藻集めに勤しんだ。たまに海底に甲殻類や貝類なども見つかるのでどんどんと集めていく。途中何かの貝あたりに刺されたような気もするが気にしない。
……って毒持ちじゃねぇか! え? なに、割と強力で死に至る可能性もありますだって? ……いや特になんともないけど、毒耐性ちゃんと仕事してるな。
よし、莉緒にも知らせておこう。刺されたら大変だ。
「そうねぇ……」
いろいろ考えたが最終結論はどうしてもそこへと行きつく。首輪を外して他国へ連れ出すくらいしか思いつかない。ただし、首輪を外したのが俺たちだとバレれば、自分たちが犯罪者になってしまう。
「金で解決できればいいかもしれないが」
「相手がどんな人物かもわからないしね」
「なるようになるしかないか」
フォニアは確かに可愛かったけど、そこまで親しくなったわけでもない。あんまり入れ込みすぎるのもよくないし、気持ちを切り替えて行こう。
というわけでまたもや港にやってきました。今日は海藻の収穫にきたけど、果たして食えるのか。まぁ鑑定すればわかるんだろうけど。
「問題はどうやって採るかよね」
「……素潜り?」
「魔法でなんとかできそうな気もするけど」
このあたりの今の気候としては、海に入れないほど寒いというわけでもない。五月くらいの春の気候といったところだろうか。暑くもなく寒くもない、過ごしやすい気温である。
「水の中に入るにはやっぱり寒いかもね」
「でしょ」
桟橋から腕を伸ばして海中に浸けるが、海水は冷たい。
「とりあえず見えてるから魔法を飛ばしてみるか」
結論から言うと、刃物を魔法で遠隔操作して刈り取るのが一番早かった。最初は目視で魔法を飛ばしたんだが、水中に見える物体は光の屈折で、ずれた位置に見えることを忘れていたというのもある。が、問題はそこではない。水中へと斜めから魔法を撃ちこんで海底へと直撃すれば、砂などが舞い上がって視界が悪くなるのだ。
「でかいな」
「大きいね」
刈り取って地上へと引き上げた海藻を観察しているが、根元からだと十メートルくらいあるだろうか。緑色をした一枚の細長い葉っぱのように見える。陸に近い浅い海で採れる海藻でこれだ。沖へ行けばさらにでかいやつがいるのかもしれない。
「ワカメと昆布ってどう違うんだっけ」
「さぁ……」
ふとした疑問を口にしてみるが、莉緒もよく知らないらしい。
「とりあえず鑑定してみるか」
=====
種類 :植物
名前 :アオグサ
説明 :食用となる海藻
乾燥させると旨味が凝縮され、いい出汁が出る
生食可能
=====
「ふむ……。一応食えるみたいだな」
「そうなんだ」
「乾燥させるといい出汁が出るらしい」
「へぇ。昆布みたいだね」
「じゃあこっちはどうだろうか」
もう一種類、赤みを帯びた海藻がある。一本の太い茎からは、ムカデのように枝茎が出ていて葉を茂らせている。
=====
種類 :植物
名前 :アカグサ
説明 :食用となる海藻
触れると葉が巻き付いてきて力強く締めてくる
毒を持っているが加熱することで分解され無害となる
=====
「こっちも食えるけど、生食不可だって」
「ふむふむ」
「加熱すると毒性が分解されるってさ。しかも触ると巻き付いてきて締め殺されるらしい」
「怖いね」
「だなぁ。植物にも気を付けないとな」
「そういえば岩場に生えてる海藻もあるね」
「あれか……。海苔みたいなやつかな」
=====
種類 :植物
名前 :ミドリグサ
説明 :食用となる海藻
=====
近づいて鑑定してみると、シンプルな結果が出てきた。
「食用としか出てこないな」
「一応削り取っておこうか」
「ちょっと面倒だけどな。美味かったら集めよう」
というわけで莉緒と手分けして海藻を集めることにした。
「よし、実食だ!」
「一応海藻の種類ごとに分けてみたよ」
「ひとつだけ食う気の起きない色のやつがあるんだけど」
「うん。火を通したら真っ青になっちゃった」
いやでも鑑定じゃ食えるって出てたからなぁ……。
「まぁ……、食ってみればわかるか」
「とりあえず茹でただけだから、味がしないかもだけど」
意を決して口に入れてみるが、どれも悪くない。昆布もどきを魔法で脱水させ、からからに乾燥させてみて出汁もとってみたけどそこそこいける。
「青い奴も悪くないな……」
「見た目があれだけど、私は好きかも」
「俺としてはまぁ、食えないことはない……かな」
「昆布もどきは天日干しすればもっと旨味が凝縮される可能性もあるわよね」
「あー、確かに。魔法で急速乾燥って無理やりっぽいしなぁ。宿のベランダで干してみるか」
「干し方とかわからないけど、いろいろやってみましょう」
なんにしろ、海藻採取にきてよかった。味付けほとんどなしでも食えるってことは、ちゃんと料理すればもっと美味いはずだ。
「今度また巨大魚解体祭りがあったら、街の連中に海藻料理出して感想聞いても面白そうだな」
「あはは! そうね。身近にあるのに食べてなさそうだったもんね」
「けっこう海底に生えてるのにもったいないよな」
「じゃあもうちょっと沖まで出て集めましょうか」
「おう」
こうしてこの日は一日中、海藻集めに勤しんだ。たまに海底に甲殻類や貝類なども見つかるのでどんどんと集めていく。途中何かの貝あたりに刺されたような気もするが気にしない。
……って毒持ちじゃねぇか! え? なに、割と強力で死に至る可能性もありますだって? ……いや特になんともないけど、毒耐性ちゃんと仕事してるな。
よし、莉緒にも知らせておこう。刺されたら大変だ。
17
お気に入りに追加
513
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる