成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa

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第三部

鑑定結果を聞いてみよう

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「暇だなー」

 ぼけーっと海を眺めているが、ここまで退屈だとは思わなかった。沖に出てからしばらく経つが、護衛の出番が来るようなことがすぐに起こるはずもない。

「釣りでもする?」

 ニルをもふもふ撫でながら、莉緒が異空間ボックスから釣竿を取り出してみせる。

「釣りかー」

 相変わらずリールのついていない釣竿である。移動中の船から魚釣りをするにはなかなかに不便ではなかろうか。

「あ、じゃあ、あっちの人たちに、この前あった鑑定について話を聞いてみるとか?」

 なんとなく釣りは乗り気でないと気づいた莉緒が、釣竿を仕舞いつつもう一案出してきてくれた。

「おお、そういえばいい機会かもしれないな」

「この二日間会わなかったしね」

 そこそこ広い街なので、あれ以来ばったり会うこともなかったのだ。多少人がいるものの動く船上はそこそこ騒音もあるので、他人に聞かれることもないだろう。
 莉緒と二人で四人組のいる船尾へと向かうと、後ろからニルもついてくる。

 自分たちへとまっすぐ歩いてくる俺たちに気付いた鑑定使いの男――カントが警戒をあらわにすると、他の三人もつられてこちらに顔を向ける。

「な、何か用か?」

 若干腰が引けてるように見えるが、他の三人はそうでもなさそうだ。むしろ不満そうな雰囲気である。

「いえ、あの時聞けなかったことをちょっと聞いておこうかと思いまして」

「……聞きたいこと?」

「カントさんの鑑定で、俺たちのどこまで見られたのかなと」

「あぁ……、そういえば……」

 以前のやり取りに覚えがあったのか、斜め上方向に視線をやっている。

「だからむやみに鑑定しまくるなって前から言ってんだよ……」

 ぼやくように言葉をこぼしたのは、四人の中で一番大人しい雰囲気のギムだ。以前も三人を宥める雰囲気だったことは記憶にある。

「そうですね。俺たちが気づいたように、鑑定されたことに気付く魔物もいるかもしれませんね」

 遭遇したことはないけど、魔物にいないと断定することはできない。実際に俺たちは気づけるんだから。

「そうだな……。これからは気を付けることにするさ。……で、オレが鑑定できる内容だったな」

「ええ」

「鑑定で見えるのは、名前と種族名、職業と本人の状態だ。あとはステータスだな」

 ほうほう。やっぱり俺が見えるものと同じなのかな。

「HP、MP、筋力、体力、俊敏、器用、精神力、魔力、運の九つの数値が見れるみたいだぜ」

 カントの説明を引き継いで、赤毛のベーリルが得意そうに説明してくれる。
 やっぱり見えるのは同じか。鑑定スキルなんだし、やっぱり数値も同じように見えるんだろうか。

「その数字も教えて欲しいんだけど」

「えっ?」

 目を見開いて俺を凝視するカントは、そのまま自分のパーティメンバーを見回すと。

「ここで言っていいのか?」

「おうおう、相手がいいって言ってんだ。おれたちにも教えてくれよ」

「そうだぜ。敵わねぇから手を出すなだけ言われても納得できねぇしよ」

「はは……」

 三者三様の反応を示すが、どうやら仲間内にも広めずにいてくれていたらしい。そんなに悪い人たちでもなさそうな気がするな。

「いいですよ。俺も気になるんで」

「ああ、わかった。……お前ら、びっくりしすぎて大声出すんじゃねぇぞ」

 ゴクリと喉を鳴らしてカントが開いた口から出てきた数値は、俺が自分で鑑定した数値とほぼ同じ値だった。というのも2、3ほど誤差がある。

「えっ?」
「はっ?」
「おうふ」

 三人はそれぞれ、一言だけ発した後に動きを止めている。
 莉緒は数値を聞いて満足したのか、一人でうんうんと頷いている。

「お、俺らの十倍以上じゃねぇか……」

 ようやく復帰した一人がポツリと呟くと、二人も続いて正気に戻る。

「いやいや、お前の鑑定結果間違ってんじゃねぇのか」

「なんでCランク冒険者なんだ……」

 なるほど、十倍以上なんだ。
 俺も人のことは言えずだれかれ構わず鑑定しまくっていたけど、この鑑定事件があってからはちょっとだけ控えている。少なくともギルド内でむやみに鑑定はしないようにしていて、今回のメンバーである他の六人も鑑定はしていなかった。

「へぇ、そんなに違うんだ?」

「あ、ああ……。俺で筋力1100ってところだ。前に帝都でちらっと見たSランク冒険者で、1つのステータスがようやく五桁いくかどうかってところだったんだが……」

 ほほぅ。Sランクにもなると五桁……。うん? 五桁しかないけど、いやまぁ師匠も数字は当てにするなって言ってたし、気を引き締めよう。

「リオさんに至ってはMPが六桁とか……、バケモンじゃねぇか」

 何しろ魔力成長率百倍だからなぁ。

「お二人さん、一体何者なんですかい」

 尋ねられた言葉に思わず莉緒と顔を見合わせる。

「何者って聞かれても、田舎から出てきたただの冒険者だけど」

 どこかの王国で召喚された異世界人ですと答える気はないし、これくらいの回答が無難じゃなかろうか。
 とか思っていると、莉緒が俺の腕を取って体をくっつけてきた。

「そうそう。夫婦で旅するただの冒険者よ」

「くっ!」
「くそぅ!」
「なんだって!」
「うがーー!」

 莉緒の言葉に怨嗟の声が四つ上がったけどスルーしておいた。これでうまく誤魔化せたかもしれないし。

「ああ、そういえば」

 もう一つ秘密にしておいてもらったほうがいい情報があったな。

「ニルの種族名も口外しないようにお願いしておくよ」

「えっ? ――っ!?」

 この様子だとギルドでは俺と莉緒しか鑑定してなかったようだ。ニルを見てカントが一人だけ顔を真っ青にしていた。
 余計なこと言っちゃったかな。
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