成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa

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第二部

商都を堪能してみよう

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「ただいまー」

「おかえりなさいませ」

 宿へと帰ってスイートルームの玄関を開けると、お付きのメイドが待ってましたとばかりに挨拶を返してきた。今まで一度もタイミングを外したことがない。

「わふーーーーー!」

 同時にニルが飛びかかってくる。

「おわっ」

 相当退屈していたらしく、俺を押し倒すと顔じゅうをべろべろと舐められる。

「うわっぷ、わかったからやめろ!」

「あはは!」

 こりゃもうダメだ。明日思いっきり遊ばせに行こう。

「明日は遊びに行くぞ!」

「わふぅ!」



 というわけで翌朝、フルールさんに聞いた広い場所へと早速やってきた。街の北東には、遠くに高い山が見える丘陵地帯が広がっていた。丘のくぼみに入ってしまえば、遠くからは完全に見えなくなる。これなら多少暴れても問題ないかもしれない。

「とはいえ念には念を入れておくか」

「わかった。結界を張っておくね」

「よろしく」

 莉緒は俺たちから離れると、広範囲を囲う様にして防御結界を張る。魔力の高まりを感じると同時に、キンという音が響く。これは空間遮断系の魔法かな。それなりに強力な魔法使っても大丈夫かもしれない。上空は囲まれていないのでほどほどにしておかないとダメだが。

 遊ぶといってもニルは従魔だ。ボールを投げて取ってこいとかで満足するとも思えない。それに今後のことを考えると、ニルと共闘できるようになっておく必要もあるだろう。実力を図るという意味でも手っ取り早いのは模擬戦だろう。

「じゃあ行くぞ!」

「わぅ!」

 一足飛びでニルへと迫ると、顎めがけて牽制の突きを放つ。が、そこにはニルの姿はない。背後から脚の爪が振りかぶって放たれたため、そのまま前方へと転がる。
 そこにニルが突っ込んでくると、起き上がったと同時に防御した腕に一撃を受けて吹き飛ばされた。そのまま結界の壁へと両足で着地すると、結界を蹴りつけてまたニルへと迫る。

 しばらく攻防が続くが、どちらも譲らずお互いに一撃を与えることができていない。次第に魔法も駆使して攻防が続くが、ただ地面が抉られていくだけである。次第に空中へと駆けあがっていき、動きが三次元となっていく。
 気が付けば俺も空中を蹴って飛び上がれるようになっていた。これは嬉しい誤算だ。

「はい、そろそろ終わりね!」

 調子が上がってきたところで、莉緒から制止の声がかかった。気が付けば莉緒の結界の内側の地面は掘り返され、一部には大穴が空いている。

「いいところだったのに、まぁしょうがないかな」

「わふぅ……」

 ニルはすごくしょんぼりしているが、その姿もまた愛嬌があるな。Sランクの魔物らしいけど、そんなに怖くないと思うんだよね。
 気を取り直したのか、自身に降り積もった埃を吹き飛ばすように全身を震わせると、俺へと飛びかかってべろべろと顔を舐めまわしてきた。

「あああ、わかったから! また今度やろうな!」

 ニルを手で制すると首周りをひたすらもふってやる。大人しくなったところで水魔法で顔を洗い、掘り返された地面を土魔法で平らにしておいた。

「準備運動にもならなかったけど、まぁこんなもんじゃないかな」

 結界を張っていたとはいえ、これ以上やると丘陵地帯が大変なことになりそうだ。
 結局このあとは、遠くに見える山のふもとまで競争したり、そこで現れた魔物を討伐したりして一日が過ぎていった。

 さらに翌日はニルを連れて中央広場や周辺をぶらつき、屋台巡りを堪能した。もちろん屋台以外の店も冷やかしたけど、オークションに出品された品を見た後だと当たり前だが見劣りする。

「これはオークションの前に街を見て回るべきだったか」

「もう手遅れだけどね」

 ちなみに商業ギルドに寄って預金残高も確認してみたけど、数字が十一桁並んでいたのを見たときはちょっと脳がフリーズしてしまった。ちなみに商業ギルドのギルド証は、あらかじめ商都に来る前にもらっていたので残高確認も問題なかった。



 商都を堪能して四日目。今日こそボチボチ仕事でもしてみますかね。
 ということで万能なメイドさんに見送られて、朝から冒険者ギルドへとやってきた。
 前回来た時より視線を集めてる気がするけど、ニルがいるからかな。

「お手軽な依頼でもあればいいんだけど」

「そんな依頼があれば他の人に取られてるでしょ」

「報酬の安い依頼なら残ってるかもな」

「あはは」

 依頼ボードの前は、これから仕事を受けようという人でごった返していた。いろいろ依頼があるけど、商都ならではの依頼が多そうだ。素材採集や商隊の護衛依頼、商会での雑用などなど。

「ちょっとすまん」

「はい?」

 依頼を物色していると、後ろから声がかかる。

「もしかしてシュウとリオってのはあんたたちのことか?」

 振り返るとギルド職員のようだった。ちらりとニルを横目に気にしているようだけど、いきなり襲い掛かったりはしないので大丈夫ですよ。

「そうですけど、何か用ですか?」

 せっかく依頼を探しに来たのに間が悪いな。依頼を受けにカウンターで受付した後とかじゃダメだったんだろうか。必要に駆られたわけでもなく暇つぶしとも言えるけど、よさげな依頼がなくなってしまうじゃないか。

「ギルドマスターが用があるとのことで、今から来てくれだとさ」

 今から?

「え、嫌ですけど」

 こちらの予定を全く考えていない職員の言葉に、反射で答えてしまった。
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