成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa

文字の大きさ
上 下
90 / 421
第二部

まさかのスキル発動

しおりを挟む
「こっちは大丈夫ですよ!」

 目の前に居座る魔物から視線は外さずに、後ろにいる冒険者へと声を掛ける。
 にしても……。

「莉緒、前に会った天狼ってこんなにデカかったっけ」

 思わず聞かずにはいられない。もし違う個体だったら、この狼がこの森から出てきたのは俺たち無関係ってことだよな。

「こんなサイズじゃなかったと思うわね……」

「だよね。1.5倍くらいのサイズになってる気がするよな」

「うん」

 莉緒の言葉にちょっとだけ安心するが、咥えている骨がちょっとだけ引っかかる。ありゃ何の骨なんだ。
 グルルルと唸り声を上げる狼だが、三本ある尻尾がなぜかフリフリと揺れている。って三本もあるんだ。

「無事なら今すぐ逃げろ! ここは俺たちが引き受ける!」

 狼の向こう側では冒険者パーティーが慌てた様子で声を掛けてくる。引き受けると言う割には、こちらを向いて後ろ姿を晒している魔物に一撃を入れようとはしていない。

「ふ、フローズヴィトニルだと……」

「なんだって!?」

「おい、お前、今すぐギルドへ走れ! ギルドマスターへフローズヴィトニルが出たと知らせるんだ!」

「えっ、あ……」

「急げ!!」

「はいぃぃぃ!」

 向こうは向こうで慌ただしそうだ。森の奥から出てきた冒険者が怒鳴り込んでいる。急げと怒鳴られたのは森の前で監視していた冒険者だろうか。後ろを気にしながらも全速力で街へと走り出した。
 自分の後ろで行われているやり取りなんて気にならないのか、狼はまっすぐ俺を向いたままだ。

「フローズヴィトニルってなんだ……。天狼じゃなかったのか」

 =====
 名前 :なし
 種族名:フローズヴィトニル
 説明 :突然変異で天狼が特殊進化した狼タイプの魔物。
     空を駆ける性質はそのままに魔法も操る。
     その素早さは何者も捉えることはできない。
     毛皮の滑らかさは極上の一品。
 =====

「おぉっ!?」

「……どうしたの柊?」

 莉緒も魔物から視線を外すことなく、だが俺の声が気になったのか声をかけてきた。

「鑑定したら、天狼が特殊進化したフローズヴィトニルって出てきた」

「ええっ?」

「それよりも、鑑定スキルがレベルアップしたみたい」

「ホントに!?」

「詳細説明が見えるようになった」

 鑑定で見えた説明を莉緒にすると、莉緒がため息とともに顔を顰める。

「魔法も使えるんだ……。これは厄介そうね」

 色んなものを鑑定しまくりたいところだが、そうも言ってられない。目の前に現れた魔物をどうにかするのが先だ。……にしても俺を見つめたままさっぱり動かないな。後ろにいる冒険者も動き出さないけど。むしろあんたらのほうが逃げて欲しいくらいだ。

 動き出さないからと言ってこのままじっとしているわけにもいかない。隣の莉緒から魔力が溢れてきたかと思うと、ありったけのバフが掛けられる。

「サンキュー。ほんじゃ、行きますか」

 久しぶりの強敵に内心でワクワクしつつ、グッと足に力を込める。そして飛び出そうとした瞬間。

「わふぅ!」

 足元に骨を置いてひと鳴きし、お座りして激しく尻尾を振りだした。

「んん?」

 目をキラキラと輝かせて、足元に置いた骨をてしてしと前足で突っついている。

「何あれ……」

「なんだろね……」

 思わず莉緒と顔を見合わせてから魔物へと視線を戻すと、口元からよだれを垂らしていた。
 俺たちを食う気ではなさそうだけど、腹減ってそうだな。というかもうエサくれと言ってるようにしか見えなくなってきた。
 何気なしに地面に置かれたデカい骨を鑑定してみると。

「ぶほっ」

 思わず吹いてしまった。

「ちょっ、どうしたのよ柊」

「いやごめん。あの骨鑑定したんだけど、『グレイトドラゴンの背骨』って出たから……」

「えぇっ!? ……それって!」

 天狼の森にはグレイトドラゴンなんて棲息していないし、もう森のど真ん中で会ったアイツで確定だよな……。うーん、やっぱ俺たちが街まで引き寄せちゃったのかなぁ。
 尚も激しく骨をてしてしと突っつく魔物にため息が出る。そんなにエサが美味かったのか。まぁグレイトドラゴンもそれなりに強力な魔物だしな。ギルドの職員も、ランクの高い魔物は美味いって言ってたし。

「しゃあねぇな。もう一匹やるか」

「あー、うん……、やっぱりアレって食べ物要求してる仕草……だよね」

 それを思うとだんだんかわいく思えてくるな。

「ほらよ」

 異空間ボックスから小さめサイズのグレイトドラゴンを出してやると。

「「「「「はぁっ!?」」」」」

 後ろにいる冒険者から奇声が上がり。

「わふううぅぅぅぅ!」

 狼は歓声を上げて近寄ってくるとグレイトドラゴンに食らいついた。その瞬間、俺の中の何かが狼とつながったような感覚が生まれる。

「うん?」

 それを確かめるように狼へと俺も近づいていく。

「柊?」

 莉緒が声をかけてくるけど、手で制して大丈夫だと伝える。

「危ないぞ少年!」

 冒険者からも声が飛んでくるが無視だ。
 そのままグレイトドラゴンにかぶりつく狼の目の前までやってきた。顔は俺の体と同じくらいのサイズがあり迫力満点だ。足も俺の体と同じサイズの太さくらいある。

「確か極上の滑らかさだったよな」

 なんとなく大丈夫だと直感した俺は、そのゴツイ足を撫でる。

「おうふ。ナニコレ」

 すげーもふもふでふかふかなんですけど。
 ひたすらグレイトドラゴンに貪りつく狼の足を撫で続けるのだった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...