成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa

文字の大きさ
上 下
89 / 421
第二部

集積所の調査をしよう

しおりを挟む
 朝の遅い時間帯に依頼を受け森へと出発した俺たちは、ちょうどお昼ごろに森の手前にある川まで来ていた。川沿いにはいくつかの冒険者パーティーがたむろしており、休憩をとっているようだ。

「森の様子を見に来た連中かな」

「たぶんそうじゃないかしら」

 ここから森までは一時間程度の距離になる。この先では森でBランクの冒険者パーティーが魔物の調査を行っているはずだ。結果次第では森に近寄るのも禁止になるんだろうか。

 気配察知を前方の森方向へと広げるが、範囲内には例の魔物はいないようだ。探知範囲を意図的に伸ばすと、その距離は十キロメートルを超えるのだ。それでも感知できないのであればしばらくは大丈夫だろう。

「とりあえず俺たちも昼飯にするか」

 川沿いの空いている場所を陣取ると、各種調理器具を取り出して料理を始める。本格的に火を起こして調理している冒険者パーティーは周りにはいない。街から近いしお弁当のような出来合いの物で済ませる人たちが多い。

 多少注目を集めつつも昼食を済ませると、森へと近づいていく。
 気配は感じないので特に警戒もせず、森の手前まで来た。

「おい、話は聞いているだろう。森の中へは入るんじゃないぞ」

 入り口で警戒をしていた冒険者の一人に注意される。たぶん森の監視をしている冒険者だろう。異変があればすぐにギルドに知らせないといけないしね。

「あ、大丈夫です。俺たちは依頼で木材の集積所の様子を見に来ただけですから」

「集積所? ならあっちに各商会の集積所が固まってるが」

「ありがとうございます」

「森に異変を感じたらすぐに街まで逃げるんだぞ」

「わかりました」

 思ったより親切な人だった。軽くお礼を言って教えてもらった方向へと向かう。しばらく進むと木造のしっかりした塀が見えてきた。
 初めて森を抜けてきたときに思わず立ち入ってしまった集積所だろうか。いくつか塀で囲まれた集積所があるけどどれがどれかわからない。入り口に商会の名前が書いてあるので目的地を間違えることはないけど。
 さすがに未確認の巨大な魔物が出たという情報があったからか、集積所入り口の見張りはいなくなっていた。

「ここかな?」

「みたいね」

 フルールさんから預かった鍵で扉を開ける。中に入ると枝を取り払われた木材がたくさん置かれていた。

「へぇ、すごいわね」

 まっすぐ伸びた太い木材がほとんどだが、微妙に歪んで曲がっている木材もそれなりに置いてある。一番太い木材で直径三メートルくらいはありそうだ。特に荒らされたような感じはしない。

「確か太めの長さ五十メートル前後の木材を十本ほど、だったっけ」

「うん。そう言ってたわね」

「よし、ちゃっちゃと収納して帰るか」

 適当に歩き回り、条件に合う木材を異空間ボックスに収納していく。

「こんなもんかな」

「うん。でもいっぱい木材置いてあるわね」

「だなぁ。何本あるんだろ。千以上はありそうだよな」

「そんな集積所が他にもあるんでしょ。自然の森みたいだし、植林をしてるわけじゃなさそうよね」

「森の整備とかしてなさそうだよな。森の入り口あたり、樹とか生え放題だし」

「魔の森の植物も成長率が段違いだったし、ここもそうなのかな」

「だとすると伐採し放題だなぁ」

 身近なところにも異世界の神秘があったなぁと思いにふけりながら、集積所の調査を進める。

「特に異常はなさそうだな」

「そうね。そろそろ帰りましょうか」

 特に問題が起こることもなく、ラシアーユ商会集積所を出て扉に鍵をかける。元の街道に戻るべく、他の集積所の間に作られた道を歩いていると。

「ん? ……あ、来た!」

「えっ?」

 例の魔物の気配を捉えた俺は歩く速度を速めて走り出す。

「もしかして、あの天狼が来たの?」

 隣を並走しながら問いかけてくる莉緒に頷きを返す。俺たちの動きに合わせるようにこっちに向かってきているみたいだ。しかも結構なスピードだな……。しかもそれを追って他にも気配が動いてるな。もしかして調査に出てるBランク冒険者パーティーかな?

「俺たちのほうに向かってるみたいだな……」

「集積所が壊されるかも」

「それはまずい気がする。ちょっと離れようか」

「うん」

 莉緒の言葉に俺たちは道を外れて草原へと出る。しばらく行くと後ろから何かが崩れる音が聞こえてきた。

「うおっ」

 振り向くと集積所あたりから土煙が見える。壊されないように離れた場所まで来たけど、あんまり意味はなかったかもしれない。

「まっすぐこっちきてるみたいね」

「だなぁ、まぁしょうがないか」

 集積所の木造の壁の向こう側に、こちらに向かってくる何かが見える。壁も結構な高さがあったと思うけど、それでも見えるとはかなりでかいな。
 だんだん近づいてきたかと思うと、壁などなかったかのようにぶち破ってそいつが姿を現した。

 ――口にでっかい骨を咥えたまま。

「……骨?」

 莉緒が首を傾げながら呟いている。
 魔物は十メートルくらい離れたところまでくると、俺たちと対峙するようにして停止する。

 その後ろから、魔物を追っていたと思われる冒険者たちも姿を現した。森の前で見張っていた冒険者も近くまで来ているみたいだ。

「なんなんだこいつは……」

 魔物を視界に納めた冒険者が呆然と呟いている。

「こんなにデカいやつは初めて見るぞ」

「あ……、おい、向こうに子どもがいるぞ? 大丈夫か!?」

 俺たちも見つけたらしく、大声でこちらに声をかけてくる。
 そんなに声を出すと気づかれますけど、逆に大丈夫ですかと返事したくなった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...