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第二部
仕入れが止まった原因は
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はてなを頭上に浮かべるフルールさんと一緒に冒険者ギルドへと向かう。そういえばギルドに顔を出すのも五日ぶりか。毎日顔を出していればフルールさんに依頼される前に気がつけたかもしれない。
「やっぱり、いつもより騒がしいわね……」
朝を少しだけ過ぎた時間帯にギルドへと入ると、それなりの人で賑わっていた。冒険者たちは仕事を見つけ、それぞれへと散っていく時間帯ではあるがまだ人は減りそうにない雰囲気だ。
「天狼の森に出た魔物の話題で持ちきりっぽいなぁ」
俺の言葉通り、ギルドではフルールさんから聞いた話で持ちきりだった。
ギルドまで歩いている間に、俺たちもいくぶん冷静さを取り戻している。
「おい、森に現れた魔物を見たか?」
「いや見てない。そんなにでかかったのか?」
「オレは見たぞ! あんなにでかいシルバーウルフをみたのは初めてだ!」
「だからあれは上位種だって言ってんだろ!」
「五メートル以上はあったぞ!」
天狼の森にいるでかい狼って、絶対にあの天狼だよね。グレイトドラゴンを撒き餌にしてスルーしたやつ……。
森のど真ん中で放置したし、まさか追いかけてくるとは思わなかった。村で聞いた話だと、森は食糧も豊富だしシルバーウルフが森から出てきたこともないってことだったし。ってあれは村の方向だけの話だったのかな。
「森からの木材搬入が滞ってるので、持ってきてほしいんです」
「うちの工房も材料がなくて仕事が進まねぇんだ。なんとか頼むよ」
「わしの工房にも頼む」
「天狼茸の採集をお願いしたいんだけど」
「天火草が欲しいんだが、無理そうだよなぁ……」
依頼カウンターでは森での採集などの依頼をしたい人たちで賑わっていた。見たところ森の中での採集依頼の新規受付はしていないようだ。さすがにでかい魔物が発見された場所へ入るのは禁止しているらしい。
「皆様! 噂の魔物の正体がハッキリするまでは、森へは立ち入り禁止となっていますので、行かないようにお願いします!」
ギルド職員も叫びつつ注意喚起を行っている。依頼ボードにも注意事項としてでかでかと張り紙が貼ってある。これで森に行く奴がいれば自己責任ということだろう。通常行方不明になれば捜索隊が出されるが、こういった緊急事態では捜索隊など出されない。
「ただいまBランク冒険者パーティーが、森へ調査に行っていますのでしばらくお待ちください!」
ギルド職員は尚も注意喚起を続けている。調査をしたところで、原因を突き止めることはできるとは思えないが……。原因は自分たちかもしれないと思うと、なんとなく居心地が悪い。
フルールさんは依頼カウンターへと近づいていくと、依頼を一つ出している。
「ラシアーユ商会のフルールよ。ひとつ指名依頼を出したいのだけど、いいかしら」
「はい。森の中へ入る依頼でなければ大丈夫です。またはBランク以上への依頼となるのであれば、森の中へ入っても問題ありません。内容をお伺いしても?」
「ええ。ラシアーユ商会が持つ木材集積所の様子を見てきて欲しいの」
「えーっと、はい。それだけでしょうか……?」
「そうよ」
「かしこまりました。少々お待ちいただけますか。ランクの査定をしてまいりますので」
「お願いね」
そのまま職員は裏へと下がっていく。
振り返ったフルールさんが申し訳なさそうにして口を開くが。
「本当は、お客様にこんなことを頼むのはダメなんでしょうけどね」
「いえいえ、俺たちも最近ギルドで仕事を受けてませんでしたので、かまいませんよ」
「えーっと、それで私たちは依頼とは別に木材を回収してくればいいんですよね」
「はい。木材集積所は森の外にあるので、まだ依頼は実行できるはずです。回収まで依頼内容に含んでしまうと、難易度が上がってしまう可能性がありますので……」
莉緒の言葉にフルールさんが俺たちに近寄って、小声で話してくれる。俺たちのランクはEなので、少しでも難易度は上がらないほうがいい。
それならばギルドを介さずに直接依頼をすればとも思うが、トラブルも多いため推奨はされていない。でもギルドを通せばランクアップに貢献もできるし、そこは良し悪しがあるかなと思う。
「あ、もちろん追加報酬は支払いますので安心してください。なんなら例の魔物を倒していただいてもかまいませんので」
うふふと笑いながら続けるフルールさんだが、俺たちにそこまで実力があると思ってくれるのはなんだかムズムズする。今まで舐められることばっかりだったからなぁ。
「お待たせいたしました」
しばらく依頼の詳細をフルールさんから聞いていると、奥からギルド職員が戻ってきた。
「依頼のランクはEとさせていただきます。未確認の魔物の発見報告があったとはいえ、森に入るわけでもないですし問題ないかと」
「ありがとう。ではここにいるシュウ様とリオ様を指名して依頼を出させていただきますね」
「かしこまりました。手続きに少々お時間をいただきますが、お二方はこの場で依頼を受けていかれますか?」
「あ、はい。お願いします」
わざわざ後から依頼を受けるなんて面倒だ。ちょっとくらいなら待ちますとも。
「では集積所の鍵をお渡ししておきますね」
こうして俺たちは、ラシアーユ商会の木材集積所の調査依頼を受けることになった。
「やっぱり、いつもより騒がしいわね……」
朝を少しだけ過ぎた時間帯にギルドへと入ると、それなりの人で賑わっていた。冒険者たちは仕事を見つけ、それぞれへと散っていく時間帯ではあるがまだ人は減りそうにない雰囲気だ。
「天狼の森に出た魔物の話題で持ちきりっぽいなぁ」
俺の言葉通り、ギルドではフルールさんから聞いた話で持ちきりだった。
ギルドまで歩いている間に、俺たちもいくぶん冷静さを取り戻している。
「おい、森に現れた魔物を見たか?」
「いや見てない。そんなにでかかったのか?」
「オレは見たぞ! あんなにでかいシルバーウルフをみたのは初めてだ!」
「だからあれは上位種だって言ってんだろ!」
「五メートル以上はあったぞ!」
天狼の森にいるでかい狼って、絶対にあの天狼だよね。グレイトドラゴンを撒き餌にしてスルーしたやつ……。
森のど真ん中で放置したし、まさか追いかけてくるとは思わなかった。村で聞いた話だと、森は食糧も豊富だしシルバーウルフが森から出てきたこともないってことだったし。ってあれは村の方向だけの話だったのかな。
「森からの木材搬入が滞ってるので、持ってきてほしいんです」
「うちの工房も材料がなくて仕事が進まねぇんだ。なんとか頼むよ」
「わしの工房にも頼む」
「天狼茸の採集をお願いしたいんだけど」
「天火草が欲しいんだが、無理そうだよなぁ……」
依頼カウンターでは森での採集などの依頼をしたい人たちで賑わっていた。見たところ森の中での採集依頼の新規受付はしていないようだ。さすがにでかい魔物が発見された場所へ入るのは禁止しているらしい。
「皆様! 噂の魔物の正体がハッキリするまでは、森へは立ち入り禁止となっていますので、行かないようにお願いします!」
ギルド職員も叫びつつ注意喚起を行っている。依頼ボードにも注意事項としてでかでかと張り紙が貼ってある。これで森に行く奴がいれば自己責任ということだろう。通常行方不明になれば捜索隊が出されるが、こういった緊急事態では捜索隊など出されない。
「ただいまBランク冒険者パーティーが、森へ調査に行っていますのでしばらくお待ちください!」
ギルド職員は尚も注意喚起を続けている。調査をしたところで、原因を突き止めることはできるとは思えないが……。原因は自分たちかもしれないと思うと、なんとなく居心地が悪い。
フルールさんは依頼カウンターへと近づいていくと、依頼を一つ出している。
「ラシアーユ商会のフルールよ。ひとつ指名依頼を出したいのだけど、いいかしら」
「はい。森の中へ入る依頼でなければ大丈夫です。またはBランク以上への依頼となるのであれば、森の中へ入っても問題ありません。内容をお伺いしても?」
「ええ。ラシアーユ商会が持つ木材集積所の様子を見てきて欲しいの」
「えーっと、はい。それだけでしょうか……?」
「そうよ」
「かしこまりました。少々お待ちいただけますか。ランクの査定をしてまいりますので」
「お願いね」
そのまま職員は裏へと下がっていく。
振り返ったフルールさんが申し訳なさそうにして口を開くが。
「本当は、お客様にこんなことを頼むのはダメなんでしょうけどね」
「いえいえ、俺たちも最近ギルドで仕事を受けてませんでしたので、かまいませんよ」
「えーっと、それで私たちは依頼とは別に木材を回収してくればいいんですよね」
「はい。木材集積所は森の外にあるので、まだ依頼は実行できるはずです。回収まで依頼内容に含んでしまうと、難易度が上がってしまう可能性がありますので……」
莉緒の言葉にフルールさんが俺たちに近寄って、小声で話してくれる。俺たちのランクはEなので、少しでも難易度は上がらないほうがいい。
それならばギルドを介さずに直接依頼をすればとも思うが、トラブルも多いため推奨はされていない。でもギルドを通せばランクアップに貢献もできるし、そこは良し悪しがあるかなと思う。
「あ、もちろん追加報酬は支払いますので安心してください。なんなら例の魔物を倒していただいてもかまいませんので」
うふふと笑いながら続けるフルールさんだが、俺たちにそこまで実力があると思ってくれるのはなんだかムズムズする。今まで舐められることばっかりだったからなぁ。
「お待たせいたしました」
しばらく依頼の詳細をフルールさんから聞いていると、奥からギルド職員が戻ってきた。
「依頼のランクはEとさせていただきます。未確認の魔物の発見報告があったとはいえ、森に入るわけでもないですし問題ないかと」
「ありがとう。ではここにいるシュウ様とリオ様を指名して依頼を出させていただきますね」
「かしこまりました。手続きに少々お時間をいただきますが、お二方はこの場で依頼を受けていかれますか?」
「あ、はい。お願いします」
わざわざ後から依頼を受けるなんて面倒だ。ちょっとくらいなら待ちますとも。
「では集積所の鍵をお渡ししておきますね」
こうして俺たちは、ラシアーユ商会の木材集積所の調査依頼を受けることになった。
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