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第二部
鉱山へ行ってみよう
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今日から冒険者ギルドで仕事を受けることにした。昨日はドレスを注文した後、街の外に出て野営用ハウスの魔改造をしていた。
ちなみにドレスは一週間後に仮縫い後のサイズ合わせを行い、そこからさらに一週間後にできあがるとのこと。非常に楽しみである。
野営用ハウスは風呂場と寝室しかなかったんだが、二階建ての2LDKにまで進化している。莉緒の魔力成長度は留まることを知らず、今ではサッカーができそうな面積の異空間ボックスの入り口を開くことすら気軽に行えるようになっている。
俺はそこまでは無理だが、この野営用ハウスの出し入れだけなら問題はない。備えあれば憂いなしということで、もう一つ野営用ハウスを作って二人の異空間ボックスにそれぞれ入れてある。
「さすがにこの時間帯は人が多いね」
ようやく朝から来れたギルドである。みんなが依頼を争奪する時間のため、依頼ボード前は混雑している。
「今日は鉱山に行ってみようか」
「鉱山? 森じゃないんだ」
「ちょっと森は飽きたかなぁって……」
本当の理由は違うけど、莉緒には秘密だ。作れるかどうかもわからないしね。
「あはは。うん。別にいいと思うわよ。そういえば魔の森にも鉱山とか洞窟といったたぐいのものはなかったわね」
「だよね。だからどういうところなのか気になって」
改めて依頼ボードを見てみると、鉱山での常時依頼も張ってあるのを見つけた。鉄鉱石はいつでも受け付けているみたいだ。
「そういえば鉄鉱石以外は何が採れるんだろ」
「職員の人に聞いてみましょうか」
というわけで今日の仕事が決まった。職員に鉱山での注意点や出てくる魔物、採れる鉱石などの情報を仕入れる。ギルドを出ると鉱山用の道具を揃え、東門から街を出て鉱山へと向かった。
「ツルハシとか思わず買っちゃったけど、必要だったのかな」
両腕にガントレットを装着した状態でがんがんと両拳を打ち付けて、改めて振り返ってみる。
「えーっと、駆け出し冒険者の振りはできてるんじゃないかしら」
苦笑いしながら呟く莉緒に、俺も思わず乾いた笑いが漏れる。
普通に壁を殴れば壊せるだろうし、なんで買っちゃったのか。
「……鋭い先端で壁にツルハシを打ち付ければ、きっと繊細なコントロールが」
「できるの?」
「ワカリマセン」
素直に告げると莉緒と真正面から目が合い、思わず笑い合った。
ここは鉱山へと続く上り坂だ。他にも鉱山へと向かう冒険者もいるが、さすがに朝だけあって鉱山から戻ってくる人間とはすれ違わない。
「それにしても……」
「どうかした?」
莉緒は気づいていないみたいだな。
さすがにここまでくると偶然とはいいがたい現象に直面していた。
一昨日ミミナ商会を出たあたりから、どうも俺たちの後をつけてくる人間がいるのだ。気配だけで人物判断はできないと思っていたが、最近区別がつくようになってきた。前に詐欺に遭ったときに、気配察知で人物判定もできたらと思ったことが効いてきたのかもしれない。
ミミナ商会を出たときは特に気にはなっていなかった。ラシアーユ商会にまで付いてきたときは、偶然行き先が同じなのかなと思ったんだが、さすがに今日もとなると怪しい。
「今のところ実害はないけど、落ち着かない」
「そうなんだ……。直接聞いてみる?」
「うーん、どうだろう。まだ偶然で片付けられる範囲と思わなくもないし」
「そういえばそうねぇ。とぼけられるとそこで終わるかもしれないわね」
「だよなぁ」
「気配察知で誰かわかるようになったって言ってたわよね」
「うん」
「じゃあ逆に相手がどこに行ってるのか探知できないかしら?」
「あー、ちょっとそれは難しいかな」
「そうなの?」
坂道を歩きながら莉緒と話をしながら鉱山へと向かう。後ろの気配は相変わらずだ。視界に入らない距離をつかず離れず付いてきているが、余裕で気配察知の範囲内なので意味をなしていない。
「気配がどこにあるかはわかるけど、それを街の地図と照らし合わせて位置を割り出すところまでは難しいね」
街に来たばっかりだし、地図が頭に入ってるわけでもない。ゲームみたいに現在地がわかるわけでもないのだ。
「そっかー。柊って器用だから、なんでもできちゃう気がしたけど。……あ、もしかしたらそういうスキルがあるかもしれないわよ?」
「えっ?」
「あはは! ただの思いつきだから。でもそんなスキルがあったら便利だよね」
あぁ、地図スキルね……。前に取得出来たら便利そうだなあって思ったことはあったっけ。
今まで自分自身の能力とか魔法的なスキルしかないと思ってたけど、こう、なんというか世界のシステムに直結するようなスキルは無理じゃないかと思い込んでいた。地図とか自身の能力からは逸脱してるというか、そんな感覚があったんだよね。
……でもそれを言ってしまえば鑑定スキルは何なんだって話になっちゃうか。自分が知らないことを知れるって、意味が分からない。だとすれば地図スキルも存在する可能性はあるのでは?
「ちょっと、柊?」
今まで歩いてきた道を思い返してみる。魔の森は師匠の家の周りはそこそこ踏破したと思う。あとは人里に出てきてからはいくつか街を回って、城もぶっ壊したな。それはいいとして。
「もう……、しょうがないわね」
俺自身そんなに方向音痴ってわけでもないし、これはがんばってみてもいいのではなかろうか。地図スキルに味方・中立・敵アイコンとか出れば最強だよな。最終的にはそれを目指してもいいかもしれない。なんか燃えてきたぞー!
ちなみにドレスは一週間後に仮縫い後のサイズ合わせを行い、そこからさらに一週間後にできあがるとのこと。非常に楽しみである。
野営用ハウスは風呂場と寝室しかなかったんだが、二階建ての2LDKにまで進化している。莉緒の魔力成長度は留まることを知らず、今ではサッカーができそうな面積の異空間ボックスの入り口を開くことすら気軽に行えるようになっている。
俺はそこまでは無理だが、この野営用ハウスの出し入れだけなら問題はない。備えあれば憂いなしということで、もう一つ野営用ハウスを作って二人の異空間ボックスにそれぞれ入れてある。
「さすがにこの時間帯は人が多いね」
ようやく朝から来れたギルドである。みんなが依頼を争奪する時間のため、依頼ボード前は混雑している。
「今日は鉱山に行ってみようか」
「鉱山? 森じゃないんだ」
「ちょっと森は飽きたかなぁって……」
本当の理由は違うけど、莉緒には秘密だ。作れるかどうかもわからないしね。
「あはは。うん。別にいいと思うわよ。そういえば魔の森にも鉱山とか洞窟といったたぐいのものはなかったわね」
「だよね。だからどういうところなのか気になって」
改めて依頼ボードを見てみると、鉱山での常時依頼も張ってあるのを見つけた。鉄鉱石はいつでも受け付けているみたいだ。
「そういえば鉄鉱石以外は何が採れるんだろ」
「職員の人に聞いてみましょうか」
というわけで今日の仕事が決まった。職員に鉱山での注意点や出てくる魔物、採れる鉱石などの情報を仕入れる。ギルドを出ると鉱山用の道具を揃え、東門から街を出て鉱山へと向かった。
「ツルハシとか思わず買っちゃったけど、必要だったのかな」
両腕にガントレットを装着した状態でがんがんと両拳を打ち付けて、改めて振り返ってみる。
「えーっと、駆け出し冒険者の振りはできてるんじゃないかしら」
苦笑いしながら呟く莉緒に、俺も思わず乾いた笑いが漏れる。
普通に壁を殴れば壊せるだろうし、なんで買っちゃったのか。
「……鋭い先端で壁にツルハシを打ち付ければ、きっと繊細なコントロールが」
「できるの?」
「ワカリマセン」
素直に告げると莉緒と真正面から目が合い、思わず笑い合った。
ここは鉱山へと続く上り坂だ。他にも鉱山へと向かう冒険者もいるが、さすがに朝だけあって鉱山から戻ってくる人間とはすれ違わない。
「それにしても……」
「どうかした?」
莉緒は気づいていないみたいだな。
さすがにここまでくると偶然とはいいがたい現象に直面していた。
一昨日ミミナ商会を出たあたりから、どうも俺たちの後をつけてくる人間がいるのだ。気配だけで人物判断はできないと思っていたが、最近区別がつくようになってきた。前に詐欺に遭ったときに、気配察知で人物判定もできたらと思ったことが効いてきたのかもしれない。
ミミナ商会を出たときは特に気にはなっていなかった。ラシアーユ商会にまで付いてきたときは、偶然行き先が同じなのかなと思ったんだが、さすがに今日もとなると怪しい。
「今のところ実害はないけど、落ち着かない」
「そうなんだ……。直接聞いてみる?」
「うーん、どうだろう。まだ偶然で片付けられる範囲と思わなくもないし」
「そういえばそうねぇ。とぼけられるとそこで終わるかもしれないわね」
「だよなぁ」
「気配察知で誰かわかるようになったって言ってたわよね」
「うん」
「じゃあ逆に相手がどこに行ってるのか探知できないかしら?」
「あー、ちょっとそれは難しいかな」
「そうなの?」
坂道を歩きながら莉緒と話をしながら鉱山へと向かう。後ろの気配は相変わらずだ。視界に入らない距離をつかず離れず付いてきているが、余裕で気配察知の範囲内なので意味をなしていない。
「気配がどこにあるかはわかるけど、それを街の地図と照らし合わせて位置を割り出すところまでは難しいね」
街に来たばっかりだし、地図が頭に入ってるわけでもない。ゲームみたいに現在地がわかるわけでもないのだ。
「そっかー。柊って器用だから、なんでもできちゃう気がしたけど。……あ、もしかしたらそういうスキルがあるかもしれないわよ?」
「えっ?」
「あはは! ただの思いつきだから。でもそんなスキルがあったら便利だよね」
あぁ、地図スキルね……。前に取得出来たら便利そうだなあって思ったことはあったっけ。
今まで自分自身の能力とか魔法的なスキルしかないと思ってたけど、こう、なんというか世界のシステムに直結するようなスキルは無理じゃないかと思い込んでいた。地図とか自身の能力からは逸脱してるというか、そんな感覚があったんだよね。
……でもそれを言ってしまえば鑑定スキルは何なんだって話になっちゃうか。自分が知らないことを知れるって、意味が分からない。だとすれば地図スキルも存在する可能性はあるのでは?
「ちょっと、柊?」
今まで歩いてきた道を思い返してみる。魔の森は師匠の家の周りはそこそこ踏破したと思う。あとは人里に出てきてからはいくつか街を回って、城もぶっ壊したな。それはいいとして。
「もう……、しょうがないわね」
俺自身そんなに方向音痴ってわけでもないし、これはがんばってみてもいいのではなかろうか。地図スキルに味方・中立・敵アイコンとか出れば最強だよな。最終的にはそれを目指してもいいかもしれない。なんか燃えてきたぞー!
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