成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa

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閑話(第一部)

閑話3

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「衛兵からいわれのない罪を着せられて街を出て行った……らしい?」

 ここはラシアーユ商会、交易都市ザイン支部である。執務室で書類を確認しながら部下の報告を聞いていたけれど、不確定な悪い知らせにわたしは顔を上げた。

「らしいって何なのよ」

「フルールさん……、それがその……」

「はっきりしないわね。判断はわたしがするから、ありのまま報告しなさい」

 確か名前はシュウとリオだったかしら。あのように綺麗に獲物を仕留める技量は、数年の研鑽で身につくものではない。あの年であそこまでの実力を持つ二人だ。今後もお付き合いをと思ってたけれど、何があったのかしら。

「はい、衛兵の包囲を突破したあと、男のほうは西門から出て行ったと証言が得られたんですが、もう一人の女の消息が掴めずでして」

「……消息不明?」

 あの実力者がそうそうやられるとは思えないけれど、どういうことかしら。付き合いは短いけれど、なんとなくわたしの直感がそう言っているのだ。

「包囲を突破したあと見かけた者がいないらしく……」

 何とも歯切れの悪い部下に納得する。シュウが西門から出て行ったというのであれば、リオも一緒に出て行った可能性は大いにある。

「男が西門から出て行ったというのであれば、きっと王都に向かったはず。王都支部に連絡を取りなさい」

「わかりました」

 シュウとリオの二人はいい商売相手になりそうなのよね。獲物を持ち運んでいた方法も気になるけれど、いろいろと隠し持ってそうよね。わたしの勘だけれど。
 アレスグーテの本部にも話を通しておきましょうか。時間はかかるけれど、各国に支部があるからどこにいても接触してくれるでしょう。

「うふふふ」

 出ていく部下を見送りながら口元に笑みが浮かぶ。
 あの二人がうちの売り上げにつながれば、見出みいだしたわたしの本部栄転も可能となるはず。多少高く買い取ったことでわたしの印象も残っているだろうし、投資も無駄じゃなかったはずよ。

「実るのはもう少し後でしょうけれど、楽しみだわ」

 そしてまた目の前の書類へと視線を落とし、日常業務へと戻るのだった。
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