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第一部
エピローグ
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「げっ、野次馬だらけじゃねぇか」
城門から顔を出した先に見えた光景に顔を顰める。
「あはは、あれだけ派手に雷落として、お城壊しちゃったら大騒ぎになるわよねぇ」
「そりゃそうだな。城壁の外からも一番高い尖塔は見えてたしな」
それが見えなくなれば気になるってもんだろう。
「このまま出て行ったら大騒ぎになりそうね」
「だな。人気のない場所で城壁乗り越えるか」
そうと決まれば早速行動だ。時間がたてばたつほどに野次馬は集まってきそうだし、さっさと逃げるに越したことはない。せっかく自由を手に入れたってのになんでコソコソしなけりゃならんのかと文句を言いたいところだが、言う相手もいないしなぁ。
「ここらへんでいいかな」
「遠くから見つかったりしないかな?」
「どうだろ? ちょっとカムフラージュでもしようか?」
「どうやって?」
「うーん。背後の景色を前方に映し出すとか?」
「そんなのできるの?」
疑いの眼差しを向けてくる莉緒に、なんとか方法を考えてみる。後方にカメラを向けて、前方にモニタを作り出すみたいな?
「あ、空間魔法で後ろと前の空間をつなげる方法もいいかもしれない」
「何よそれ……」
「ちょっとやってみるからそこで見ててくれよ」
ビデオカメラが背中について、それを映し出すモニタが前面にあるイメージで……。これだと光属性の魔法になるかな。
「あ、すごいすごい。柊が見えなくなって後ろの景色が見えるけど……、境目がすごく不自然」
「お、成功か? でも俺としては前が見えなくなったな……」
「遠目からなら気づかないかもしれないわね」
空間をつなげる方法を試す前にいい感じにできた気がする。
「よし、これで行くか。さっさと逃げよう」
気配遮断をこれでもかと効かせ、上空の景色を足元に浮かべながら城壁を乗り越えるべく浮かび上がる。
「あ、すごい。空の景色なら多少歪んでても気づきにくいかも」
一人空に浮かぶ俺を見上げ、莉緒も俺に追いつくように浮かんできた。そのまま俺の首へと両腕を回してくっついてくる。しっかり受け止めると莉緒へと唇を軽く重ね、そのまま城壁を超えた。
「国周辺の地図が欲しいんだけどあるかな?」
貴族街を抜け、これからの行き先を考えるべく冒険者ギルドへと顔を出す。
「一枚100フロンになります」
カウンターの受付嬢へと尋ねると、相変わらず事務的な回答が返ってきた。見せてもらったところ、ホントに大雑把な地図で、だいたいの方角と地形さえわかればいいという程度だ。
「周辺国の情勢とか聞いてもいいですか?」
「ええ、かまいませんよ」
お金を渡しながら尋ねると、受付嬢は快くいろいろと教えてくれた。
北は俺たちも知ってる通り、魔族の国ベルグシュテインがある。北東から東にかけて魔の森が広がっていて、南に商業国家アレスグーテ、南西にグローセンハング帝国だ。西にはベルクムント王国とやらがあるらしいが、情勢が安定していないのでお勧めはしないとのこと。
「海はどこへ向かうのが一番近いです?」
「海ですか? それならまっすぐ南に下ってもらうのが一番近いと思いますよ」
「地図通りだと、商業国家アレスグーテを超えてグローセンハング帝国領に入ったところの海ですね」
「ええ、海産物で有名な港町もあるみたいです」
なんですとっ!?
「魚!?」
受付嬢の言葉に、俺の心の言葉と莉緒の叫びが重なる。
「じゃあ南で」
「うん」
俺の決定に莉緒も即答である。受付嬢が呆れ顔になっているが気にしちゃだめだ。なんにしろこれで俺たちの行き先は決まった。しばらく受付嬢と話をして、宿に帰るべくギルドを後にした。
「ちょっと聞きたいことがあるんだが、いいか?」
ギルドを出てすぐに、渋い声をした男に呼び止められた。
「なんでしょう?」
素直に足を止めて振り返ると、人相の悪い額に傷のある男がいた。後ろには似たような人相のでガタイのいい男がもう二人いる。
「異空間ボックスの魔法が使えるEランク冒険者がいるって聞いたんだが、もしかするとお前らのことか?」
「そうですけど」
機嫌のよかった俺は素直に答える。それを聞いて男の口元がニヤリと歪んだのが見て取れた。
「マジか! そりゃちょうどよかった。実はよ、大きい獲物を狩ったんだが、ちょっと持ち運びができなくてよ。代わりにギルドまで運んでくれねぇかと思ってな。なぁに、もちろんタダとは――」
「あ、すみません、忙しいのでそういうのはお断りさせていただきます」
「は?」
さっさとこの国を出たいのになんであんたらの手伝いをせにゃならんのだ。というわけで迷うそぶりも見せずにバッサリと切り捨てる。
「おいおいおい、金の稼げないお前らEランクに、俺たちが力を貸してやろうって言ってんだ。ちょっとくらい付き合えよ」
「俺たちには報酬が入る。お前たちにも小遣いが入る。どっちも得しかしねぇだろ?」
後ろの二人が威圧という名の説得を試みるが、単純にウザいだけである。
「そうそう。痛い目にあいたくなけりゃ、俺らのために異空間ボックスを使うんだな」
首を縦に振らない俺たちにしびれを切らしたのか、本音が駄々洩れてきている。
「痛い目って例えば?」
「ふん……、ここまで言ってもわからねーとは。――こういうことだよ!」
勢いよく振りかぶって叩き込まれた拳を躱し、腕を取ってそのまま背負い投げの要領で地面に叩きつける。
「ぐはっ!」
そのまま倒れた男の顔面横の地面を、あふれ出る魔力で強化した拳で殴りつけた。大きく陥没する地面に、男の顔がみるみる青くなっていく。
「ひいいぃぃぃぃっ!」
そして倒れた男を引きずるようにして連れ、二人は悲鳴を上げて逃げて行った。
「んだよまったく……」
そこそこ機嫌がよかったのに台無しだ。
「今度こそ邪魔者はいなくなったかな」
「そうだといいなぁ」
「あはは、とにかく今日は宿に帰って休憩しようよ」
「んだな。明日と言わずに夜中にでもさっさとおさらばしたいところだな」
「街門で呼び止められても面倒だし、そうしようか?」
こうして俺たちは因縁のアークライト王国を後にした。
城門から顔を出した先に見えた光景に顔を顰める。
「あはは、あれだけ派手に雷落として、お城壊しちゃったら大騒ぎになるわよねぇ」
「そりゃそうだな。城壁の外からも一番高い尖塔は見えてたしな」
それが見えなくなれば気になるってもんだろう。
「このまま出て行ったら大騒ぎになりそうね」
「だな。人気のない場所で城壁乗り越えるか」
そうと決まれば早速行動だ。時間がたてばたつほどに野次馬は集まってきそうだし、さっさと逃げるに越したことはない。せっかく自由を手に入れたってのになんでコソコソしなけりゃならんのかと文句を言いたいところだが、言う相手もいないしなぁ。
「ここらへんでいいかな」
「遠くから見つかったりしないかな?」
「どうだろ? ちょっとカムフラージュでもしようか?」
「どうやって?」
「うーん。背後の景色を前方に映し出すとか?」
「そんなのできるの?」
疑いの眼差しを向けてくる莉緒に、なんとか方法を考えてみる。後方にカメラを向けて、前方にモニタを作り出すみたいな?
「あ、空間魔法で後ろと前の空間をつなげる方法もいいかもしれない」
「何よそれ……」
「ちょっとやってみるからそこで見ててくれよ」
ビデオカメラが背中について、それを映し出すモニタが前面にあるイメージで……。これだと光属性の魔法になるかな。
「あ、すごいすごい。柊が見えなくなって後ろの景色が見えるけど……、境目がすごく不自然」
「お、成功か? でも俺としては前が見えなくなったな……」
「遠目からなら気づかないかもしれないわね」
空間をつなげる方法を試す前にいい感じにできた気がする。
「よし、これで行くか。さっさと逃げよう」
気配遮断をこれでもかと効かせ、上空の景色を足元に浮かべながら城壁を乗り越えるべく浮かび上がる。
「あ、すごい。空の景色なら多少歪んでても気づきにくいかも」
一人空に浮かぶ俺を見上げ、莉緒も俺に追いつくように浮かんできた。そのまま俺の首へと両腕を回してくっついてくる。しっかり受け止めると莉緒へと唇を軽く重ね、そのまま城壁を超えた。
「国周辺の地図が欲しいんだけどあるかな?」
貴族街を抜け、これからの行き先を考えるべく冒険者ギルドへと顔を出す。
「一枚100フロンになります」
カウンターの受付嬢へと尋ねると、相変わらず事務的な回答が返ってきた。見せてもらったところ、ホントに大雑把な地図で、だいたいの方角と地形さえわかればいいという程度だ。
「周辺国の情勢とか聞いてもいいですか?」
「ええ、かまいませんよ」
お金を渡しながら尋ねると、受付嬢は快くいろいろと教えてくれた。
北は俺たちも知ってる通り、魔族の国ベルグシュテインがある。北東から東にかけて魔の森が広がっていて、南に商業国家アレスグーテ、南西にグローセンハング帝国だ。西にはベルクムント王国とやらがあるらしいが、情勢が安定していないのでお勧めはしないとのこと。
「海はどこへ向かうのが一番近いです?」
「海ですか? それならまっすぐ南に下ってもらうのが一番近いと思いますよ」
「地図通りだと、商業国家アレスグーテを超えてグローセンハング帝国領に入ったところの海ですね」
「ええ、海産物で有名な港町もあるみたいです」
なんですとっ!?
「魚!?」
受付嬢の言葉に、俺の心の言葉と莉緒の叫びが重なる。
「じゃあ南で」
「うん」
俺の決定に莉緒も即答である。受付嬢が呆れ顔になっているが気にしちゃだめだ。なんにしろこれで俺たちの行き先は決まった。しばらく受付嬢と話をして、宿に帰るべくギルドを後にした。
「ちょっと聞きたいことがあるんだが、いいか?」
ギルドを出てすぐに、渋い声をした男に呼び止められた。
「なんでしょう?」
素直に足を止めて振り返ると、人相の悪い額に傷のある男がいた。後ろには似たような人相のでガタイのいい男がもう二人いる。
「異空間ボックスの魔法が使えるEランク冒険者がいるって聞いたんだが、もしかするとお前らのことか?」
「そうですけど」
機嫌のよかった俺は素直に答える。それを聞いて男の口元がニヤリと歪んだのが見て取れた。
「マジか! そりゃちょうどよかった。実はよ、大きい獲物を狩ったんだが、ちょっと持ち運びができなくてよ。代わりにギルドまで運んでくれねぇかと思ってな。なぁに、もちろんタダとは――」
「あ、すみません、忙しいのでそういうのはお断りさせていただきます」
「は?」
さっさとこの国を出たいのになんであんたらの手伝いをせにゃならんのだ。というわけで迷うそぶりも見せずにバッサリと切り捨てる。
「おいおいおい、金の稼げないお前らEランクに、俺たちが力を貸してやろうって言ってんだ。ちょっとくらい付き合えよ」
「俺たちには報酬が入る。お前たちにも小遣いが入る。どっちも得しかしねぇだろ?」
後ろの二人が威圧という名の説得を試みるが、単純にウザいだけである。
「そうそう。痛い目にあいたくなけりゃ、俺らのために異空間ボックスを使うんだな」
首を縦に振らない俺たちにしびれを切らしたのか、本音が駄々洩れてきている。
「痛い目って例えば?」
「ふん……、ここまで言ってもわからねーとは。――こういうことだよ!」
勢いよく振りかぶって叩き込まれた拳を躱し、腕を取ってそのまま背負い投げの要領で地面に叩きつける。
「ぐはっ!」
そのまま倒れた男の顔面横の地面を、あふれ出る魔力で強化した拳で殴りつけた。大きく陥没する地面に、男の顔がみるみる青くなっていく。
「ひいいぃぃぃぃっ!」
そして倒れた男を引きずるようにして連れ、二人は悲鳴を上げて逃げて行った。
「んだよまったく……」
そこそこ機嫌がよかったのに台無しだ。
「今度こそ邪魔者はいなくなったかな」
「そうだといいなぁ」
「あはは、とにかく今日は宿に帰って休憩しようよ」
「んだな。明日と言わずに夜中にでもさっさとおさらばしたいところだな」
「街門で呼び止められても面倒だし、そうしようか?」
こうして俺たちは因縁のアークライト王国を後にした。
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