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第一部
狙われた莉緒
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翌日も城門を訪れるための準備に当てる。主に対人戦に関する対策だ。磁力フィールドと魔力攪乱フィールドがうまくはまったけど、次も通用するかどうかはわからない。そうそう破られないとは思うけど、次の手も考えておかないと。
というか金属装備を持たない接近戦闘職にはどっちも効果がないからね。
「今度は重力フィールドを試してみようか」
固定の場所に重力を掛けるとか、空を飛ぶために自分自身にかけるとかは今まで実践してきている。今回やろうとしているのは、自分を中心とした重力フィールドだ。
磁力や魔力攪乱は、何もないところで発動しても大して影響はなかった。でも重力は別なんだよね。ピンポイントでかけすぎると陥没して地面に穴が空くし。
「いいけど、さすがにピンポイントで重力を掛ける場所を制御するのは難しいんじゃないかしら?」
「そうなんだけどね。でも自分で使って莉緒にまで影響は出したくないし」
「それなら……、自分にかけられた重力と同じだけ、逆向きに重力をかければいいんじゃないかしら?」
「なるほど」
考え込む莉緒から出てきたアイデアについて考察してみる。確かに、莉緒の位置を常に把握しながら制御するよりは楽かもしれない。
自分にかかった重力を検知して、逆向きに発動すればいいとなると自動化もしやすいだろう。
「よし、さっそく実験だな!」
「はいはい。じゃあ街の外でやりましょうか」
「おう」
「うーん、地表より上に影響が出るように発動するとよさげだな」
「そうね。地面が陥没することもないし、これなら歩いてる橋が落ちたりはしなさそう」
一番懸念していた問題は解決しそうだ。これで城門を渡る橋や、建物の二階で重力フィールドを使用しても問題なさそう。
「にしてもこの魔法、かなり強力だよね……」
「だなぁ。その分しっかり魔力バカ食いしてるんだし、強力なりの理由はちゃんとあるけどな」
確かに魔力の消費量は多いけど、使い始めからすぐに気にしないといけないというほどでもない。魔力をつぎ込めばつぎ込むほど威力が上がるのもわかりやすい。
「それに……、クラスメイトが出てくる可能性もあるんだし、しっかり対策はしておかないとな」
「確かにそうね。しっかり見返してやらないと……」
俺の言葉に莉緒は決意を新たに拳を握り締めている。なんか変な気合を入れてしまったようである。だがまぁやる気があるのはいいことだ。
「全部まとめて蹴散らしてやろうぜ」
「うん」
「でもあの使い方はヤバかったな……」
ふと思いついた方法を試したらえらい爆発したんだよな。ちょっとクレーターみたいになったから、慌てて土魔法で地面を埋めたんだが。
「そうねぇ……、いろいろ応用も利きそうだし」
「でももうちょっと街道から離れて実験するか」
「騒ぎになりそうよね」
かなり遠くまで移動すると、結局日が暮れるまで魔法の実験に明け暮れた。
「柊、そろそろ帰りましょう」
「ん? あぁ……、もうそんな時間か」
莉緒に声を掛けられ改めて周囲を見渡すと、薄暗くなり始めていた。街の外に街灯なんて設置されていないので、日が沈めば真っ暗になって何も見えなくなる。魔法で明かりを灯せば問題ないが、街門はすぐに閉められてしまって中に入れなくなるのだ。
「人里が近いと実験がしづらいのはちょっと不便だなぁ」
「あんまり集中してやるのも体に悪いんだからね?」
「あ、ハイ」
以前、生活リズムを崩してまでやるなと釘を刺されたことがあったな。あのときは俺が師匠に似てきたって言われたんだっけか。
…………。
断じて、似てない、はずだ。きっと。……たぶん。
うん、自重は大事だね。
「とにかく、今日は帰ろうか」
えぐれた地面を土魔法で均しながら、何事もなかった風を装う。一通りの惨状を隠蔽できたのでとっとと街への道を急いだ。
街道まで戻ってくると、ちらほらと街へ戻る他の人影も見える。もうすぐ門が閉まるのでこの時間帯は混みそうだ。
「なんとか間に合いそうだな」
「そうね。柊が見境なく地面に穴をあけなかったら、もうちょっと余裕があったかも」
「あはは……」
莉緒のツッコミに苦笑いしつつも周囲を見回してみる。いくつかの冒険者パーティに馬車で王都へ向かう商人らしき集団、他には全身黒ずくめのローブをかぶったソロの冒険者もいるようだ。
街門が見えてきたあたりで自然と順番に並ぶようになる。商人らしき馬車がスピードを上げて先頭に並び、俺たち二人が続く。その後ろに黒ずくめと、いくつかの冒険者パーティが続いた。
「この行列を待つのも暇だなぁ」
門へと到着し身分のチェックを受けるべく列に並ぶ。この時間帯はやっぱり人が多い。後ろに並んでいた冒険者パーティの後ろにも、さらに列が増えていた。
莉緒と二人並んでボーっと前方の門を見る。後ろの黒ずくめも暇なんだろう、何やらごそごそして――
「莉緒!」
咄嗟に後ろから膨れ上がった殺気は莉緒へ向けられている。「間に合え!」と思いつつ左隣にいた莉緒に手を伸ばし、引き寄せるのは無理と判断してそのまま突き飛ばす。
「きゃっ!」
スローモーションのように倒れゆく莉緒の背中を貫き、右胸から細長い何かが生えてくるのが見えた。
というか金属装備を持たない接近戦闘職にはどっちも効果がないからね。
「今度は重力フィールドを試してみようか」
固定の場所に重力を掛けるとか、空を飛ぶために自分自身にかけるとかは今まで実践してきている。今回やろうとしているのは、自分を中心とした重力フィールドだ。
磁力や魔力攪乱は、何もないところで発動しても大して影響はなかった。でも重力は別なんだよね。ピンポイントでかけすぎると陥没して地面に穴が空くし。
「いいけど、さすがにピンポイントで重力を掛ける場所を制御するのは難しいんじゃないかしら?」
「そうなんだけどね。でも自分で使って莉緒にまで影響は出したくないし」
「それなら……、自分にかけられた重力と同じだけ、逆向きに重力をかければいいんじゃないかしら?」
「なるほど」
考え込む莉緒から出てきたアイデアについて考察してみる。確かに、莉緒の位置を常に把握しながら制御するよりは楽かもしれない。
自分にかかった重力を検知して、逆向きに発動すればいいとなると自動化もしやすいだろう。
「よし、さっそく実験だな!」
「はいはい。じゃあ街の外でやりましょうか」
「おう」
「うーん、地表より上に影響が出るように発動するとよさげだな」
「そうね。地面が陥没することもないし、これなら歩いてる橋が落ちたりはしなさそう」
一番懸念していた問題は解決しそうだ。これで城門を渡る橋や、建物の二階で重力フィールドを使用しても問題なさそう。
「にしてもこの魔法、かなり強力だよね……」
「だなぁ。その分しっかり魔力バカ食いしてるんだし、強力なりの理由はちゃんとあるけどな」
確かに魔力の消費量は多いけど、使い始めからすぐに気にしないといけないというほどでもない。魔力をつぎ込めばつぎ込むほど威力が上がるのもわかりやすい。
「それに……、クラスメイトが出てくる可能性もあるんだし、しっかり対策はしておかないとな」
「確かにそうね。しっかり見返してやらないと……」
俺の言葉に莉緒は決意を新たに拳を握り締めている。なんか変な気合を入れてしまったようである。だがまぁやる気があるのはいいことだ。
「全部まとめて蹴散らしてやろうぜ」
「うん」
「でもあの使い方はヤバかったな……」
ふと思いついた方法を試したらえらい爆発したんだよな。ちょっとクレーターみたいになったから、慌てて土魔法で地面を埋めたんだが。
「そうねぇ……、いろいろ応用も利きそうだし」
「でももうちょっと街道から離れて実験するか」
「騒ぎになりそうよね」
かなり遠くまで移動すると、結局日が暮れるまで魔法の実験に明け暮れた。
「柊、そろそろ帰りましょう」
「ん? あぁ……、もうそんな時間か」
莉緒に声を掛けられ改めて周囲を見渡すと、薄暗くなり始めていた。街の外に街灯なんて設置されていないので、日が沈めば真っ暗になって何も見えなくなる。魔法で明かりを灯せば問題ないが、街門はすぐに閉められてしまって中に入れなくなるのだ。
「人里が近いと実験がしづらいのはちょっと不便だなぁ」
「あんまり集中してやるのも体に悪いんだからね?」
「あ、ハイ」
以前、生活リズムを崩してまでやるなと釘を刺されたことがあったな。あのときは俺が師匠に似てきたって言われたんだっけか。
…………。
断じて、似てない、はずだ。きっと。……たぶん。
うん、自重は大事だね。
「とにかく、今日は帰ろうか」
えぐれた地面を土魔法で均しながら、何事もなかった風を装う。一通りの惨状を隠蔽できたのでとっとと街への道を急いだ。
街道まで戻ってくると、ちらほらと街へ戻る他の人影も見える。もうすぐ門が閉まるのでこの時間帯は混みそうだ。
「なんとか間に合いそうだな」
「そうね。柊が見境なく地面に穴をあけなかったら、もうちょっと余裕があったかも」
「あはは……」
莉緒のツッコミに苦笑いしつつも周囲を見回してみる。いくつかの冒険者パーティに馬車で王都へ向かう商人らしき集団、他には全身黒ずくめのローブをかぶったソロの冒険者もいるようだ。
街門が見えてきたあたりで自然と順番に並ぶようになる。商人らしき馬車がスピードを上げて先頭に並び、俺たち二人が続く。その後ろに黒ずくめと、いくつかの冒険者パーティが続いた。
「この行列を待つのも暇だなぁ」
門へと到着し身分のチェックを受けるべく列に並ぶ。この時間帯はやっぱり人が多い。後ろに並んでいた冒険者パーティの後ろにも、さらに列が増えていた。
莉緒と二人並んでボーっと前方の門を見る。後ろの黒ずくめも暇なんだろう、何やらごそごそして――
「莉緒!」
咄嗟に後ろから膨れ上がった殺気は莉緒へ向けられている。「間に合え!」と思いつつ左隣にいた莉緒に手を伸ばし、引き寄せるのは無理と判断してそのまま突き飛ばす。
「きゃっ!」
スローモーションのように倒れゆく莉緒の背中を貫き、右胸から細長い何かが生えてくるのが見えた。
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