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第一部

城門からの帰宅

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「待て! 何をした!」

「さぁね?」

 倒れ伏す騎士たちに、魔法の発動しない魔法使いたち。辺りは死屍累々だ。誰も死んでないけど。
 この現象を引き起こした方法を、わざわざ教えてやる必要もない。しかしアイスバインド発動させるとは、なかなか優秀な奴もいるもんだな。ちょっと魔力攪乱フィールド強めるか。

 そのあとにも魔法使いが続けて魔法を発動させるがどれもきちんと不発となる。よしよし、魔力攪乱フィールドを強めたらうまくいったみたいだな。

「魔法が……、発動しない!?」

「ぐ……、くそっ、動けん……!」

 魔力攪乱フィールドって便利だな。魔力バカ食いするけど、まだまだ改良の余地はあると見た。常時攪乱するから魔力をバカ食いするんだよなきっと。
 魔力感知フィールドにして、魔力の変動を感知したときに攪乱を行う様にすれば、かなり消費魔力を削減できるんじゃなかろうか。

「ちょっと、柊。帰るんじゃなかったの」

「おっと、そうだった。実験は帰ってからにしよう」

 動けない騎士の横を通り抜けると、そういえばと後ろを振り返る。

「トービルさん、また二日後に来ますのでよろしくお願いしますね」

「あ、あぁ……」

 声を掛けると、引きつった笑いが返ってきた。
 どうせ取り合ってくれないなら日時指定するしかない。にしても第三王女はこの城にちゃんといるんだろうか?

「そういえば第三王女ですが、不在ってことはないですよね?」

「……出かけたという話は聞いたことはないが、お忍びで出て行かれれば私の耳には入ってこない」

「そうなんですね……。でもありがとうございます」

 お忍びの頻度がよくわからないがそうそうあるもんでもないだろう。城門警備の統括らしいし、王族の出入りはそれなりにわかる立場のはずだ。とりあえず信用してもいいのかもしれない。

「待て!」

 磁力にとらわれなかった騎士二人が俺たちを止めようと一歩近づくが、一人が持っていた剣が磁力フィールド内に入ったのか地面へと張り付く。
 慌てて剣から手を放して後ずさり、うまく磁力フィールドには引っかからずに済んだようだ。

「くそっ、どうなってるんだ!?」

 近づくことができないでいる騎士と、魔法が使えない魔法使いを残し、俺たちは出口へと向かっていく。気が付けば野次馬もいなくなっている。騎士が地面に這いつくばっているところを見れば、呑気に見物なんてできるはずもない。
 もう誰にも邪魔されることなく、莉緒と二人で城の外へと出た。



「あー、疲れたー」

 出口の門番には止められなかったので素通りだ。ここでも止められていたらめんどくさいことになっていたかもしれない。

「いやホント、様子見に行っただけなのに、いろいろ出てきすぎでしょ」

 どっちにしろこれで俺たちが二日後に城を――リリィ・アークライト第三王女を訪問することは伝わったはずだ。

「ん?」

 堀を渡している城門出口側の橋を渡っていると、魔力で強化していた耳に聞き覚えのある声が聞こえてきた。
 目を向けると、少し離れたところにある入り口側の橋を渡る七人組が見える。視力も強化すると、七人の顔まではっきり見えた。

「クラスメイトじゃねぇか」

「えっ?」

 ぼそりと呟いた声に莉緒も反応して七人組へと視線が飛び、相手を視認するとそのまま俺の陰へと隠れる。……が、俺の方が小さいので微妙に隠れられていない。くそぅ。

「まったく……、帰還命令とは、順調にダンジョンを攻略していたのに」

「いいじゃないですか。ダンジョンみたいな暗いところじゃなくて、もっと日の当たる場所で美味しいもの食べたいです」

 拾えた声は清水しみず正義まさよしと、長井ながい芽衣めいの二人だ。首におそろいのチョーカーを巻いていて仲のよさそうなことで。って七人全員チョーカー巻いてるな。
 そういえばアクセサリとしても売ってたし、魔道具と考えれば着けてると何か効果があるのかもしれない。

「こっちには気づいてないみたいだな」

「そうなのね……」

 そのまま観察していると、徒歩用の誰も並んでいない貴族側の入り口へと消えて行った。

「うーん、どっちにしろ城に俺たちが現れたって、クラスメイトにバレるのは時間の問題か……」

「確かにそうね……。ここは覚悟を決めるしかないわね……」

 真剣な表情で決意を新たにしているが、そう心配することもないような気がする。

「大丈夫じゃないかなぁ。アイツらの魔力も感知してみたけど、そんなに大したことなさそうだったし。確か大賢者とか大魔導士の職業がいたんだよね?」

「確かにそう言ってたわね。……でもそうね、それであの魔力量なら大したことないのかも」

「油断は禁物だけどな」

「うん」

 仮にも大賢者とか大魔導士とか大層な職業なのだ。なにかすごいスキルがあるのかもしれない。

「それにしても……、お腹すいたわね……」

 お腹をさすりながら歩く莉緒から、「くるるぅ~」とお腹の虫が鳴く音がする。もうお昼過ぎてるな。城門であんなに囲まれるとは思わなかったし、無駄に時間を食った気がする。

「あはは、可愛い音が聞こえてきたな。何か美味しいもの食べて帰ろうか」

「もう」

 頬を赤く染めて背中を叩いてくる莉緒にほんわかしながら、城門を後にする。俺も腹減ったし、肉をがっつり食いたいと思いながら帰路に就く。
 この後は誰にも邪魔されることなくお昼ご飯を食べ、一日はすごく平和に過ぎて行った。
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