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第一部
クラスメイトの情報
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「二か月ほど前になるか。グリムの街の冒険者ギルドに『勇者』を名乗る七人組が現れたんだ」
「グリム?」
「ここから北西に五日ほどいったところにある街だ。王都から一番近いダンジョンに潜るときの拠点になる街だ」
ほほぅ、ダンジョンはそんなところにもあるんだな。ってか勇者を名乗る七人組って……。
「その七人の中に『勇者』の職業がいたのか?」
「いや、そういう話は聞いていない。自分でそう名乗っているという話だ。ただ、破竹の勢いでダンジョンの攻略を進めているという実績から、勇者を疑う人間はほとんどいないらしい」
「へぇ……」
「だがな……、その勇者が王家に関わっているという話は聞いたことがない」
そうなのか。召喚の話は広まっていないと。クラスメイトも勇者を自称する割には、召喚については言いふらしたりはしてないのか。
そんなに実力のある人間を抱え込んでいるとわかれば権威も上がりそうだけど、召喚ってのはいわゆる誘拐だし、聞こえが悪いのかもしれないな。
「ちなみにその勇者たちの名前はわかるか?」
「ああ。マサヨシ・シミズ、ヒトシ・マナカ、タクト・ネグロ、クウヤ・オダの男四人と、メイ・ナガイ、キョウカ・ヒノ、ホノカ・オオトリの女三人だ」
名前を聞いた瞬間に、莉緒の表情が強張るのが見て取れる。散々『使えないヤツ』とバカにされた相手だ。俺自身はほとんど隔離されていたから被害は受けていないが、莉緒にそんな態度を取る奴らにいい感情は持ちえない。
にしても思い出せなかった残り二人の名前をようやく思い出した。オタクの織田空也と、陰キャの根黒拓斗だ。
「その表情は七人を知ってるといった顔だな」
「ああ、そうだな」
「……勇者たちの仲間だというのであればマーダーラプトルを仕留めた実力もわかるというものだ」
ビルダインの言葉にピクリと自分の眉が跳ね上がるのがわかる。
「おいおい、アイツらと一緒にしないでくれよ」
「そうですよ。仲間なんかじゃないんだから」
「そ、そうなのか……。それはすまない。もうすぐ帰ってくるという話だが、そうすると合流はしないんだな。だが……、第三王女が召喚だと? とすると勇者たちは王家と関わりがあるということか……。いったい王家の目的は何なんだ」
ブツブツと呟くビルダインに顔を見合わせる俺たち。ギルドが国を超えた組織というのはそう間違ってないのかもしれない。
「さぁね。攻めてくる魔王を撃退するために召喚したとか言ってたけど」
「なんだと? ……確かに北の国境で魔族が不穏な動きを見せているという話は聞くが」
またもやブツブツと独り言を呟きながら考え込んでいる。
師匠が言ってたこととちょっと違ってるけどどういうことだろう。さすがに五十年も魔の森に引きこもってれば、世間の情報も古いままということなんだろうか。
でもたまに角を魔法で見えないようにして街には顔を出してたって言ってたしなぁ。
「やっぱり魔王っているんだ」
「当たり前だろう。何を言ってるんだ。魔族の国ベルグシュテインの魔王陛下は有名だぞ」
「何かすごい力を持ってたりするのか?」
「……何の話だ? 魔族は元々魔法に長けた種族だが……、魔王が何か特別な力を持ってるといった噂は聞いたことがない」
ふむ。師匠の話も間違っていないと。やっぱり第三王女はクソだな。
「まぁ、魔王になるだけあって実力は相当高いと思うが」
「実力主義な国なのか」
「そういうところはあるかもしれんな」
だとすれば師匠はなんなんだろう。さすがにあの強さでただの一市民とか言われても信じられない。実は国の魔法使い軍団の団長でしたとか言われたほうが納得できる。
「そろそろいいか?」
考え込むことが多くなったビルダインに、もう質問はなくなったかなと声を掛ける。「あぁ……」と生返事が返ってきたので、そのまま部屋を退室した。
「なかなか面白い話が聞けたな」
「そうね。まさか近くにクラスメイトがいたなんて」
「やっぱり俺たちが召喚されたのは王城だったのかな」
「かもしれないわね」
「もうすぐ帰ってくるって話だし、ばったり会ってしまわないように気を付けないとな……」
「うん。会いたくない……」
フラグが立った気がしないでもないが、あえて口にはすまい。きっと莉緒には通じないだろうから。
冒険者ギルドを出ると、今度こそ買い出しをするべくお店を巡る。思わぬ大金が手に入ったので気兼ねせずに買い物ができる。しかも獲物はまだ異空間ボックスに入ってるから、いくらでも追加で売れるのだ。
「ちょっと柊……、買いすぎじゃないかしら……」
「あははは、やっぱり?」
どうやら調子に乗りすぎたみたいで、莉緒に怒られてしまった。多少自覚はありますとも。だけどそこら辺の魔の森をうろついてる魔物があんな値段で売れると知ると、どうにも歯止めが利かないというか。
「柊?」
などと考えていると、さらに莉緒の視線が鋭くなった。
「あ、はい。ごめんなさい」
さすがにマーダーラプトルの売り上げの半分も使ったら怒られるよね。頑張って自重するか、もっと稼げるようになるとしますかね。
「グリム?」
「ここから北西に五日ほどいったところにある街だ。王都から一番近いダンジョンに潜るときの拠点になる街だ」
ほほぅ、ダンジョンはそんなところにもあるんだな。ってか勇者を名乗る七人組って……。
「その七人の中に『勇者』の職業がいたのか?」
「いや、そういう話は聞いていない。自分でそう名乗っているという話だ。ただ、破竹の勢いでダンジョンの攻略を進めているという実績から、勇者を疑う人間はほとんどいないらしい」
「へぇ……」
「だがな……、その勇者が王家に関わっているという話は聞いたことがない」
そうなのか。召喚の話は広まっていないと。クラスメイトも勇者を自称する割には、召喚については言いふらしたりはしてないのか。
そんなに実力のある人間を抱え込んでいるとわかれば権威も上がりそうだけど、召喚ってのはいわゆる誘拐だし、聞こえが悪いのかもしれないな。
「ちなみにその勇者たちの名前はわかるか?」
「ああ。マサヨシ・シミズ、ヒトシ・マナカ、タクト・ネグロ、クウヤ・オダの男四人と、メイ・ナガイ、キョウカ・ヒノ、ホノカ・オオトリの女三人だ」
名前を聞いた瞬間に、莉緒の表情が強張るのが見て取れる。散々『使えないヤツ』とバカにされた相手だ。俺自身はほとんど隔離されていたから被害は受けていないが、莉緒にそんな態度を取る奴らにいい感情は持ちえない。
にしても思い出せなかった残り二人の名前をようやく思い出した。オタクの織田空也と、陰キャの根黒拓斗だ。
「その表情は七人を知ってるといった顔だな」
「ああ、そうだな」
「……勇者たちの仲間だというのであればマーダーラプトルを仕留めた実力もわかるというものだ」
ビルダインの言葉にピクリと自分の眉が跳ね上がるのがわかる。
「おいおい、アイツらと一緒にしないでくれよ」
「そうですよ。仲間なんかじゃないんだから」
「そ、そうなのか……。それはすまない。もうすぐ帰ってくるという話だが、そうすると合流はしないんだな。だが……、第三王女が召喚だと? とすると勇者たちは王家と関わりがあるということか……。いったい王家の目的は何なんだ」
ブツブツと呟くビルダインに顔を見合わせる俺たち。ギルドが国を超えた組織というのはそう間違ってないのかもしれない。
「さぁね。攻めてくる魔王を撃退するために召喚したとか言ってたけど」
「なんだと? ……確かに北の国境で魔族が不穏な動きを見せているという話は聞くが」
またもやブツブツと独り言を呟きながら考え込んでいる。
師匠が言ってたこととちょっと違ってるけどどういうことだろう。さすがに五十年も魔の森に引きこもってれば、世間の情報も古いままということなんだろうか。
でもたまに角を魔法で見えないようにして街には顔を出してたって言ってたしなぁ。
「やっぱり魔王っているんだ」
「当たり前だろう。何を言ってるんだ。魔族の国ベルグシュテインの魔王陛下は有名だぞ」
「何かすごい力を持ってたりするのか?」
「……何の話だ? 魔族は元々魔法に長けた種族だが……、魔王が何か特別な力を持ってるといった噂は聞いたことがない」
ふむ。師匠の話も間違っていないと。やっぱり第三王女はクソだな。
「まぁ、魔王になるだけあって実力は相当高いと思うが」
「実力主義な国なのか」
「そういうところはあるかもしれんな」
だとすれば師匠はなんなんだろう。さすがにあの強さでただの一市民とか言われても信じられない。実は国の魔法使い軍団の団長でしたとか言われたほうが納得できる。
「そろそろいいか?」
考え込むことが多くなったビルダインに、もう質問はなくなったかなと声を掛ける。「あぁ……」と生返事が返ってきたので、そのまま部屋を退室した。
「なかなか面白い話が聞けたな」
「そうね。まさか近くにクラスメイトがいたなんて」
「やっぱり俺たちが召喚されたのは王城だったのかな」
「かもしれないわね」
「もうすぐ帰ってくるって話だし、ばったり会ってしまわないように気を付けないとな……」
「うん。会いたくない……」
フラグが立った気がしないでもないが、あえて口にはすまい。きっと莉緒には通じないだろうから。
冒険者ギルドを出ると、今度こそ買い出しをするべくお店を巡る。思わぬ大金が手に入ったので気兼ねせずに買い物ができる。しかも獲物はまだ異空間ボックスに入ってるから、いくらでも追加で売れるのだ。
「ちょっと柊……、買いすぎじゃないかしら……」
「あははは、やっぱり?」
どうやら調子に乗りすぎたみたいで、莉緒に怒られてしまった。多少自覚はありますとも。だけどそこら辺の魔の森をうろついてる魔物があんな値段で売れると知ると、どうにも歯止めが利かないというか。
「柊?」
などと考えていると、さらに莉緒の視線が鋭くなった。
「あ、はい。ごめんなさい」
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