17 / 421
第一部
新魔法開発
しおりを挟む
「お、デュアルスペルのスキルが生えたぞ」
「マジですか」
「おう。並列思考スキルもあるし、これがそろってるといろいろ捗るんだよな」
魔法を使いながら日常生活を送ってはや一日。並列思考スキルが生まれた。これを使ってさらに別属性の魔法の同時使用を行うと生えてくるのがデュアルスペルだ。
「柊はずるい……」
莉緒がジト目で見てくるけど、成長率マシマシ度は俺の方が高いのでそれは仕方がない。
「でも莉緒も早いよね。特に魔法関連は」
「それはそうだけど……」
莉緒は魔法に特化しているとはいえ、スキルの成長率は俺の四分の一だ。なんだけど、それよりは早い気がするんだよね。
「やっぱり莉緒には数字には表れない才能があるってことじゃないかな」
「そ、そうかな……」
えへへと笑う莉緒がとてもかわいいです。鼻血出そうです。
「そこは職業も多少は影響が出てるのかもしれんな」
師匠の言葉にも納得だ。なにせ俺は未だに無職だからね。
「まぁ本題に戻すぞ。デュアルスペルを意識して、ひとつの思考で魔法を二種類使う。で、もうひとつの思考で魔法を使えば……」
「トリプルスペルのスキルが生える?」
「その通り。クワッド以降の多重スペルも同じやり方だな。スキルを意識するのとしないのとでは、取得までの時間が短くなるんだ」
「へぇ」
しばらく三種類の魔法を使い続けていたところ、またもや師匠からの言葉がかかった。
「トリプルスペルきたぞ」
こうして調子よくスキルを覚えていけるのも師匠のおかげだ。教え方がスパルタってのもあるんだけど、一番の要因は『鑑定』が使えること……なのかな。こうやってスキルを覚えたことがわかれば、すぐに次のスキルの覚え方にシフトできるからだ。
「はい」
「くくく、この調子だと弟子に抜かれるのもすぐだな」
「いやいやそんな、師匠にはさっぱり敵う気がしませんて。三百年以上の人生はさすがだと思いますもん」
謙遜でもなんでもなく実感を込めて返すも、何言ってんだコイツみたいな視線を返される。
「合わせて成長率千倍が何を言っている。三百年の経験なんぞ四か月かからんだろうが」
「ええぇぇぇ……」
あんまりな言葉に絶句していると、莉緒もポカーンとした表情になっている。
「とはいえだ。場数は千倍踏めるわけじゃないから、すぐにとはいかんだろうが」
「ですよねー」
ちょっと安心していると師匠がニヤニヤと笑い始める。
「なんだ、オレを超えたくはないのか?」
「いや、そういうわけじゃないですけど……」
なんというか師匠は師匠らしくいて欲しいというか。教えてもらうことがなくなると寂しい……、ってすげー女々しいなこれ!
「すぐに師匠を超えて見せます!」
「くくく、その意気だ、嬢ちゃん」
莉緒はやる気満々だな。これで俺もやる気を出さなけりゃ男じゃない。
「やってやろうじゃないですか!」
触発されて気合を入れるも。
「あぁ、まぁテキトーにがんばってくれ」
「投げやり!」
師匠はすでにこのやりとりに興味を失った後であった。
「そういえば師匠。氷魔法とか雷魔法ってのはないんですか?」
ある時気になったので師匠に聞いてみた。
「氷はわかるが……、雷魔法だと?」
「えっ?」
俺なんか変なこと言った? すげー師匠が睨んでくるんだけど……。
「雷魔法ってないんですか?」
助け舟を出してくれたのか、莉緒が代わりに師匠に確認してくれる。
「ない。……というか、雷は光魔法の一種と言われているんだが」
「そうなんですか? ……でも電気は光とは違いますよ?」
「デンキ? デンキとは何だ?」
あれ? そこから? ってそうか。召喚された先と師匠の家しか知らないけど、この世界って科学はそこまで発達してなかったか。
「えーっと、師匠は静電気って知ってます? 冬場に金属を触るとバチッてくるあれ」
「んん……? なんだそれは。あー、もしかしてビデブ現象と呼ばれてるやつか? ってまさか……!」
ビデブ現象ってなんやねん。誰だよ静電気にそんな名前つけた奴! でもまぁ似た現象があってよかった。細かい説明とか無理だし。
「はい、そのまさかです。雷はその現象を超強力にしたやつです」
「なんてこった。……長年研究はされていたが、再現できなかった理由がこうも簡単に判明するとは。光魔法の延長と考えること自体が間違いだったのか。……いやだがあの仮説は途中までは有効なのではないか……」
「また始まった」
ブツブツと呟きながら自分の世界に入ってしまった師匠は放置するか。それに、ないと言われた雷魔法。断然興味が出てきたぞ。もしかしてこの世界初の新属性スキルが生えるかもしれない……!
えーっと、確か電気は電子の移動だっけ。……よし、右手から左手に電子が移動するイメージを持って魔力を……。
一時間ほど試行錯誤するも何かうまくいかない。もうちょっとな気がするんだけど何が足りないんだろうか。手と手の隙間が大きいからなのか……、そういえば空中放電するには超高電圧がいるとか聞いたことが。手と手をゆっくり近づけていけば……。
バチッ!!
「いってえぇぇぇ! ……でもできた! もしかしてスキル生えたんじゃね!?」
「……柊も立派なスキルマニア」
興奮する俺には、ぼそりと呟く莉緒の声が聞こえることはなかった。
「マジですか」
「おう。並列思考スキルもあるし、これがそろってるといろいろ捗るんだよな」
魔法を使いながら日常生活を送ってはや一日。並列思考スキルが生まれた。これを使ってさらに別属性の魔法の同時使用を行うと生えてくるのがデュアルスペルだ。
「柊はずるい……」
莉緒がジト目で見てくるけど、成長率マシマシ度は俺の方が高いのでそれは仕方がない。
「でも莉緒も早いよね。特に魔法関連は」
「それはそうだけど……」
莉緒は魔法に特化しているとはいえ、スキルの成長率は俺の四分の一だ。なんだけど、それよりは早い気がするんだよね。
「やっぱり莉緒には数字には表れない才能があるってことじゃないかな」
「そ、そうかな……」
えへへと笑う莉緒がとてもかわいいです。鼻血出そうです。
「そこは職業も多少は影響が出てるのかもしれんな」
師匠の言葉にも納得だ。なにせ俺は未だに無職だからね。
「まぁ本題に戻すぞ。デュアルスペルを意識して、ひとつの思考で魔法を二種類使う。で、もうひとつの思考で魔法を使えば……」
「トリプルスペルのスキルが生える?」
「その通り。クワッド以降の多重スペルも同じやり方だな。スキルを意識するのとしないのとでは、取得までの時間が短くなるんだ」
「へぇ」
しばらく三種類の魔法を使い続けていたところ、またもや師匠からの言葉がかかった。
「トリプルスペルきたぞ」
こうして調子よくスキルを覚えていけるのも師匠のおかげだ。教え方がスパルタってのもあるんだけど、一番の要因は『鑑定』が使えること……なのかな。こうやってスキルを覚えたことがわかれば、すぐに次のスキルの覚え方にシフトできるからだ。
「はい」
「くくく、この調子だと弟子に抜かれるのもすぐだな」
「いやいやそんな、師匠にはさっぱり敵う気がしませんて。三百年以上の人生はさすがだと思いますもん」
謙遜でもなんでもなく実感を込めて返すも、何言ってんだコイツみたいな視線を返される。
「合わせて成長率千倍が何を言っている。三百年の経験なんぞ四か月かからんだろうが」
「ええぇぇぇ……」
あんまりな言葉に絶句していると、莉緒もポカーンとした表情になっている。
「とはいえだ。場数は千倍踏めるわけじゃないから、すぐにとはいかんだろうが」
「ですよねー」
ちょっと安心していると師匠がニヤニヤと笑い始める。
「なんだ、オレを超えたくはないのか?」
「いや、そういうわけじゃないですけど……」
なんというか師匠は師匠らしくいて欲しいというか。教えてもらうことがなくなると寂しい……、ってすげー女々しいなこれ!
「すぐに師匠を超えて見せます!」
「くくく、その意気だ、嬢ちゃん」
莉緒はやる気満々だな。これで俺もやる気を出さなけりゃ男じゃない。
「やってやろうじゃないですか!」
触発されて気合を入れるも。
「あぁ、まぁテキトーにがんばってくれ」
「投げやり!」
師匠はすでにこのやりとりに興味を失った後であった。
「そういえば師匠。氷魔法とか雷魔法ってのはないんですか?」
ある時気になったので師匠に聞いてみた。
「氷はわかるが……、雷魔法だと?」
「えっ?」
俺なんか変なこと言った? すげー師匠が睨んでくるんだけど……。
「雷魔法ってないんですか?」
助け舟を出してくれたのか、莉緒が代わりに師匠に確認してくれる。
「ない。……というか、雷は光魔法の一種と言われているんだが」
「そうなんですか? ……でも電気は光とは違いますよ?」
「デンキ? デンキとは何だ?」
あれ? そこから? ってそうか。召喚された先と師匠の家しか知らないけど、この世界って科学はそこまで発達してなかったか。
「えーっと、師匠は静電気って知ってます? 冬場に金属を触るとバチッてくるあれ」
「んん……? なんだそれは。あー、もしかしてビデブ現象と呼ばれてるやつか? ってまさか……!」
ビデブ現象ってなんやねん。誰だよ静電気にそんな名前つけた奴! でもまぁ似た現象があってよかった。細かい説明とか無理だし。
「はい、そのまさかです。雷はその現象を超強力にしたやつです」
「なんてこった。……長年研究はされていたが、再現できなかった理由がこうも簡単に判明するとは。光魔法の延長と考えること自体が間違いだったのか。……いやだがあの仮説は途中までは有効なのではないか……」
「また始まった」
ブツブツと呟きながら自分の世界に入ってしまった師匠は放置するか。それに、ないと言われた雷魔法。断然興味が出てきたぞ。もしかしてこの世界初の新属性スキルが生えるかもしれない……!
えーっと、確か電気は電子の移動だっけ。……よし、右手から左手に電子が移動するイメージを持って魔力を……。
一時間ほど試行錯誤するも何かうまくいかない。もうちょっとな気がするんだけど何が足りないんだろうか。手と手の隙間が大きいからなのか……、そういえば空中放電するには超高電圧がいるとか聞いたことが。手と手をゆっくり近づけていけば……。
バチッ!!
「いってえぇぇぇ! ……でもできた! もしかしてスキル生えたんじゃね!?」
「……柊も立派なスキルマニア」
興奮する俺には、ぼそりと呟く莉緒の声が聞こえることはなかった。
21
お気に入りに追加
513
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる