成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa

文字の大きさ
上 下
16 / 421
第一部

日常の訓練風景

しおりを挟む
「はあぁぁぁ、緊張したー」

「怪我しなくてよかったわよね」

「まぁねぇ」

 師匠の家に帰りついて、ようやく自室で一息つけたところだ。あれから師匠に連れられて、集団戦であるオークの巣を潰し、強敵であるマーダーラプトルという三メートルを超える恐竜のような魔物とやりあったのだ。

 師匠より格下の相手とはいえ、大型の魔物を相手にするのはさすがに緊張した。大上段から振り下ろされる打撃攻撃とか怖すぎた。一人でもなんとか倒せたと思うけど、莉緒と二人で相手をしてちょうどいい練習になったと思う。

「逆に言うと、師匠の化け物じみた強さも実感できたともいう」

「確かに……」

 しみじみと同意する莉緒に、師匠とマーダーラプトルの姿を思い浮かべてみる。少なくとも見た目だけはマーダーラプトルの方が怖いよね。

「それにしても……、魔族の国には、師匠みたいなのがゴロゴロいるのかな」

「勝てる気がしないわよね」

「だよね……。魔族は人族より寿命が長いみたいだし、数は少ないらしいけど強いヤツは多いって言ってたよな」

 魔王を倒すためにクラスメイトは頑張ってるらしいけど、今頃どうなってるんだろうか。まぁ知ったこっちゃないけど。
 ……とはいえ、クラスメイトや王女とかメイドは、思い出すと腹立つんだよな。ぎゃふんと言わせてやりたい思いはある。

「そういえば召喚されたクラスメイトの中に、莉緒と仲の良かった人っていた?」

「……ううん、いないよ」

「そっか……。ごめん、嫌なこと思い出させちゃったね」

 表情を曇らせた莉緒を見て、とっさに謝る。

「大丈夫。今は柊がいてくれるから」

 だけど健気にもそう言って、俺の肩へと体を寄せてきた。特に何かあったわけじゃないんだけど、なんとなく彼女には信頼を寄せられている。彼女のことは好きだけど、しばらくはこのままでいいんじゃないかなと思っている。そう、人間の本能に騙されてはいけない。

「はは、そりゃ……ありがとう」

 だけどなんて返していいかわからん! ありがとうって何だよ!? 誰かいい返し方を教えて! このままでいいとか言ったけど、ホントはどうしていいかわかんないだけなんだよね!

「そろそろご飯にしようか」

「もうそんな時間か」

「うん。行こっか」

 この家で世話になるようになってから、料理は俺たち二人で作るようになっている。さすがに何もしないわけにはいかないからな。おかげでどんどん料理スキルが上がってる気がする。
 そんなことを思いながら二人でキッチンへと向かった。



「よし、じゃあ今日からは普段から魔法を使ってみるか」

 お昼を食べた後の師匠の言葉がこれだった。ちょくちょくと突発的に思いついたことを口にするから困る。

「毎日訓練として魔法は使うようにしてますけど、それと違うんですか?」

「疑問に思うのもわかるが、まずは手本を見せよう」

 言葉と共に師匠の周囲に魔力が集まってくる。と思ったら師匠の周囲で初級の各種魔法が発動する。
 風が流れて火が起こり、水が生成されたかと思うと同時に砂も生成されている。四種類の魔法を同時に使うとか、やっぱり師匠の頭はおかしい。

「これを普段生活している中、常に発動しておくんだ。飯食いながら、料理しながら、もちろん接近戦訓練中もだな」

「はぁ!?」

 常にってそういうこと!?

「室内じゃ風か光の魔法しか使えないが、まずは一種類の魔法から始めようか」

「わかりました」

「ええっ!?」

 素直に頷く莉緒に即行でツッコんでしまった。ちょっと物分かりよすぎない? それとも師匠にはツッコむだけ無駄だってことなんだろうか。いやまぁ確かにそうだけど。

「なんだ、文句でもあるのか?」

「いえ、ありません!」

 胡乱げな視線を向けられると、ビシッと気を付けの姿勢で肯定する。

「うむ。いい心がけだ」

 満足そうにうなずく師匠だが、決して無茶を言っているわけでもない。いや一般的に聞けば無茶なんだが、成長率マシマシな俺たちに合った要求をしているわけで、失敗したことはないのだ。

「いやでもこれって、杖なしでやらないといけないんですよね」

「あぁ、もちろんそうなるな。息をするように無意識で魔法を使えるようにするのが目的だ。わざわざ杖なんぞ使ってたら意味がない」

「ですよねー」

 過去に試そうとして失敗したやつだけど、今ではできるようにはなっている。ただ多少の集中力がいるだけで。

 ……そう、集中力がいるのだ。

 まぁ試してみるしかない。
 隣を見てみると、莉緒が真面目な顔をして後頭部を光らせている。なんか歩こうとしてるようで、手足がぴくっと動くんだけど動かせないみたいな。手足をピクピクさせながら後光が差し込んでいる様子に思わず笑いそうになる。

 いやだから集中しろって言ってんだろ。無心になれ。わざわざ莉緒を見るからダメなんだ。視線はまっすぐに。

 と思って真正面にいる師匠を見れば、口元を押さえて肩をプルプル震わせていた。爆笑寸前じゃねぇか! こっちも見ちゃイカン! よし、空を見上げよう、そうしよう!
 気を引き締めると斜め上を見上げ、おでこを光らせるイメージを膨らませて魔力を練る。そして心の中で『ライト』と唱えて光を発すると。

「くくくく、ぶははははは!!」

 我慢しきれなかった師匠の笑い声が響き渡った。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...