14 / 421
第一部
スキルマニア
しおりを挟む
二日目からヴェルターさんのことはいつの間にか師匠と呼ぶようになったけど、四日ほどたった頃にちょっと疑問を覚え始めた。
いろいろ教えてくれるのはいいんだけど、ちょっと手あたり次第だったのだ。
「次はこれで素振りしてみようか」
木剣を素振りすること一時間ほど、ただの素振りなのになぜかコツがつかめてきたと思った時の師匠のセリフがこれだった。で、渡されたのはこれまた木でできた槍だ。
「えっ、剣はもういいんですか?」
唐突な言葉に戸惑ったが、なぜか師匠がニヤニヤしてるので気になって聞いてみたら。
「おう、どうやらもう剣術スキルが生えたみたいだからな」
「はぁっ!?」
「いやさすが坊主だな。スキルが次々に生えること生えること。くくくく……、これはオレも知らないスキルに出会えるのも時間の問題か……。ある程度は既知のスキルを覚えさせたあとは……」
槍を渡されたあとにブツブツと一人で呟きだす。そして何かの結果が師匠の中で出たんだろうか、こっちに視線を向けると次の訓練が始まった。
「いややっぱり槍は素振りではなく細かく教えてやろう。そっちのほうが早くスキルが生えるかもしれん」
そう、師匠はスキルマニアだったのだ。
一週間現在で師匠に生えたと言われたスキルはこれまでに九つ。剣術、槍術、短剣術、棒術、投擲術、格闘術、盾術に、土魔法と風魔法と空間認識だ。莉緒も火魔法、土魔法、風魔法と棒術のスキルを覚えたらしい。
どうも俺の場合は最短三十分でスキルが生えるらしく、そのときは師匠が興奮していた。土魔法を覚えた時は、風呂を作ろうと決意したのは言うまでもない。
四六時中、俺たちを鑑定してはニヤニヤする師匠に、俺たちもそろそろ慣れてきたころだ。最初は助けてくれたお礼をしなけりゃとか考えていたんだが、今ではどうでもよくなってきている。いや、感謝はしてるんだよ? 一応。
「そういえば師匠の鑑定って、使うと何がわかるんです?」
「あー、オレの場合は結構わかるぞ」
好奇心から夕飯の時に聞いてみると、スキル以外にも名前、種族、職業から、HPやMP、筋力体力のようなものまでわかるらしい。
「だが鑑定を使う人間すべてがそこまで見えてるわけでもないらしい。名前しかわからなかったり、職業までしかわからなかったりいろいろだな」
「へぇ」
「おそらくだが鑑定にも等級があるんだろうとオレは考えている。魔法に初級、下級、といった等級がある通り、鑑定にもあってしかるべきだ。そもそも鑑定とは……」
うへぇ、藪蛇だった。師匠のうんちくを聞き流しながらスープを啜るのだった。
「さてと、それじゃ行くか」
「「はい」」
すでにここに来て二週間。今日は師匠と外へ狩りへ出かける日だ。今までずっと家の庭で活動していたから、外に出るのはここに来てから初めてだ。
師匠が土魔法で生成した短剣を腰に差し、これまた師匠が倒した魔物の皮を鞣した鎧を着込み、そして師匠が偶然手に入れたという古赤竜の一枚鱗を使用した盾を背負っている。
この短剣もなまくら鉄なら切り裂いてしまうし、なんでもありかよと師匠にツッコミを入れたのは記憶に新しい。
もちろん莉緒も似たような装備だ。魔の森に棲息するエルダートレントで作った杖に、俺と同じ皮鎧と、小型ドラゴンの鱗がびっしりと張り付けられたローブだ。
なんでも死蔵していた装備が異空間ボックスにいっぱいあるらしい。あ、異空間ボックスっていうのは、空間魔法で作る自分専用のアイテムボックスみたいなものだ。使い手になれば、時間停止ボックスや時間加速ボックスとか、何種類も使えるみたいなんだが。
見た目よりも物が入る収納カバンというやつも存在するらしいが、師匠は持っていないらしい。まぁ自分一人だけなら異空間ボックスがあれば十分とのことだ。
俺は主に接近戦を主体に、莉緒は後衛を主体にしていろいろと師匠から教わっている。ある程度形になったからということで、初の実戦を迎えたわけだ。
「うーん、ちょっと緊張するなぁ」
「大丈夫だって柊。後半あれだけ師匠の……、シゴキに耐えたんだから……」
セリフの後半でなぜか目が死んだ魚のようになった莉緒に、俺も思わず遠い目をしてしまう。厳しくしたらスキルが生えやすいかな? って疑問に思ってしまった師匠は……。あぁもう思い出すのも辛い。忘れよう。
「強力な魔物が出るこの魔の森でも、師匠以上のやつはいないだろ」
「そうでもないぞ」
楽観的に考えていたが師匠にバッサリと切られる。
「家周辺にはいないがな……。奥地へ行けばうじゃうじゃいるぞ。だがまぁ、今から向かうところは問題ないはずだ」
マジですか。魔の森の奥って、そんな化け物がうじゃうじゃいるんですか。そんなところには絶対に行きたくないな。まぁ行く機会もないと思うけど。
「それはちょっと安心しました」
「ただまぁ、格上の相手を殺さないと生えないスキルもあるかもしれんな」
「「いやいやいやいや!」」
師匠のこぼした言葉に二人で全力で否定する。師匠も敵わない魔物がいる場所なんて御免だ。せめて身の安全は確保しておきたい。
「くくく、とりあえず今は目的地へ向かうか。走るから全力でついてこい」
そう一言だけ告げると、魔力を全身に纏って走り出す。
「いや、ちょっと、待ってくださいよ!」
慌てて俺たちも後を追いかけるのだった。
いろいろ教えてくれるのはいいんだけど、ちょっと手あたり次第だったのだ。
「次はこれで素振りしてみようか」
木剣を素振りすること一時間ほど、ただの素振りなのになぜかコツがつかめてきたと思った時の師匠のセリフがこれだった。で、渡されたのはこれまた木でできた槍だ。
「えっ、剣はもういいんですか?」
唐突な言葉に戸惑ったが、なぜか師匠がニヤニヤしてるので気になって聞いてみたら。
「おう、どうやらもう剣術スキルが生えたみたいだからな」
「はぁっ!?」
「いやさすが坊主だな。スキルが次々に生えること生えること。くくくく……、これはオレも知らないスキルに出会えるのも時間の問題か……。ある程度は既知のスキルを覚えさせたあとは……」
槍を渡されたあとにブツブツと一人で呟きだす。そして何かの結果が師匠の中で出たんだろうか、こっちに視線を向けると次の訓練が始まった。
「いややっぱり槍は素振りではなく細かく教えてやろう。そっちのほうが早くスキルが生えるかもしれん」
そう、師匠はスキルマニアだったのだ。
一週間現在で師匠に生えたと言われたスキルはこれまでに九つ。剣術、槍術、短剣術、棒術、投擲術、格闘術、盾術に、土魔法と風魔法と空間認識だ。莉緒も火魔法、土魔法、風魔法と棒術のスキルを覚えたらしい。
どうも俺の場合は最短三十分でスキルが生えるらしく、そのときは師匠が興奮していた。土魔法を覚えた時は、風呂を作ろうと決意したのは言うまでもない。
四六時中、俺たちを鑑定してはニヤニヤする師匠に、俺たちもそろそろ慣れてきたころだ。最初は助けてくれたお礼をしなけりゃとか考えていたんだが、今ではどうでもよくなってきている。いや、感謝はしてるんだよ? 一応。
「そういえば師匠の鑑定って、使うと何がわかるんです?」
「あー、オレの場合は結構わかるぞ」
好奇心から夕飯の時に聞いてみると、スキル以外にも名前、種族、職業から、HPやMP、筋力体力のようなものまでわかるらしい。
「だが鑑定を使う人間すべてがそこまで見えてるわけでもないらしい。名前しかわからなかったり、職業までしかわからなかったりいろいろだな」
「へぇ」
「おそらくだが鑑定にも等級があるんだろうとオレは考えている。魔法に初級、下級、といった等級がある通り、鑑定にもあってしかるべきだ。そもそも鑑定とは……」
うへぇ、藪蛇だった。師匠のうんちくを聞き流しながらスープを啜るのだった。
「さてと、それじゃ行くか」
「「はい」」
すでにここに来て二週間。今日は師匠と外へ狩りへ出かける日だ。今までずっと家の庭で活動していたから、外に出るのはここに来てから初めてだ。
師匠が土魔法で生成した短剣を腰に差し、これまた師匠が倒した魔物の皮を鞣した鎧を着込み、そして師匠が偶然手に入れたという古赤竜の一枚鱗を使用した盾を背負っている。
この短剣もなまくら鉄なら切り裂いてしまうし、なんでもありかよと師匠にツッコミを入れたのは記憶に新しい。
もちろん莉緒も似たような装備だ。魔の森に棲息するエルダートレントで作った杖に、俺と同じ皮鎧と、小型ドラゴンの鱗がびっしりと張り付けられたローブだ。
なんでも死蔵していた装備が異空間ボックスにいっぱいあるらしい。あ、異空間ボックスっていうのは、空間魔法で作る自分専用のアイテムボックスみたいなものだ。使い手になれば、時間停止ボックスや時間加速ボックスとか、何種類も使えるみたいなんだが。
見た目よりも物が入る収納カバンというやつも存在するらしいが、師匠は持っていないらしい。まぁ自分一人だけなら異空間ボックスがあれば十分とのことだ。
俺は主に接近戦を主体に、莉緒は後衛を主体にしていろいろと師匠から教わっている。ある程度形になったからということで、初の実戦を迎えたわけだ。
「うーん、ちょっと緊張するなぁ」
「大丈夫だって柊。後半あれだけ師匠の……、シゴキに耐えたんだから……」
セリフの後半でなぜか目が死んだ魚のようになった莉緒に、俺も思わず遠い目をしてしまう。厳しくしたらスキルが生えやすいかな? って疑問に思ってしまった師匠は……。あぁもう思い出すのも辛い。忘れよう。
「強力な魔物が出るこの魔の森でも、師匠以上のやつはいないだろ」
「そうでもないぞ」
楽観的に考えていたが師匠にバッサリと切られる。
「家周辺にはいないがな……。奥地へ行けばうじゃうじゃいるぞ。だがまぁ、今から向かうところは問題ないはずだ」
マジですか。魔の森の奥って、そんな化け物がうじゃうじゃいるんですか。そんなところには絶対に行きたくないな。まぁ行く機会もないと思うけど。
「それはちょっと安心しました」
「ただまぁ、格上の相手を殺さないと生えないスキルもあるかもしれんな」
「「いやいやいやいや!」」
師匠のこぼした言葉に二人で全力で否定する。師匠も敵わない魔物がいる場所なんて御免だ。せめて身の安全は確保しておきたい。
「くくく、とりあえず今は目的地へ向かうか。走るから全力でついてこい」
そう一言だけ告げると、魔力を全身に纏って走り出す。
「いや、ちょっと、待ってくださいよ!」
慌てて俺たちも後を追いかけるのだった。
22
お気に入りに追加
513
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる