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第四章
転生者は異世界で何を見る? -最初の街-
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「ふおーーーー!」
街を囲む壁を見上げながら瑞樹が奇妙な声を上げている。こういう反応は元々の瑞樹の素なのだろうか。
徒歩で二時間ほどかけてここまでくる間に、瑞樹のことについても色々と聞いていた。――が、やはりよくいる思春期の少年と言ったところだった。
しかし……、またキサラギ高校か。あの学校には何かあるんだろうか……。
明たちとは二歳差だが、学年は一個違いらしく瑞樹は高校二年だった。
学年違うけど、帰ったら明に確認してみようか……。俺たちと同じ世界の住人とわかれば、帰れることを明かして帰るかどうか瑞樹に聞いてみよう。
「立派な市壁ですね」
フィアがあまりそう思っていなさそうな口調で感想を述べている。
確かにフィアの故郷であるモンスターズワールドの王都を囲む壁と比較すれば、その規模は小さいと言わざるを得ない。
だがこういった街を囲む壁は日本には存在しないものだ。
例えそれが高さ三メートル弱ほどしかないとしても、ぐるっと街全体を囲む壁は壮観の一言に尽きるのだ。日本という国から来た者であれば。
草原からまっすぐ街を目指していたのだが、街道とぶつかったのは街の入口だった。
当然ながら街道には草が生えておらず、土がむき出しの地面には馬車が通るのであろうか轍が刻まれている。
街の方に目を向けると街へと入るための門が開かれており、そこには二名の人間が軽鎧を着て、槍を携えて佇んでいた。
街道が見えてからは門を出入りする人は見えず、門をくぐるのに必要な手続きを窺い知ることもできなかったが。
「とりあえず行くしかないな」
とは言えここで誰かが出入りするのを待つなんて馬鹿な行動はしない。門衛に怪しまれるだけだ。
「言葉が通じなかったらどうしよう……」
俺の言葉に瑞樹が若干不安そうに心配をしているが、そこは問題ないので安心して欲しい。このWEB小説にそういうくだりはなかった。
あ、でもそう言えば文字は日本語じゃなかったな……。スキルに言語系のものはなかったし、小説でもなぜか言葉は通じてたように思う。
そのあたりは深く考えてなかったのかな。作者が。しかしそれはそれでこちらとしてはありがたいことではある。
すでに門までの距離は二十メートルを切っている。
そのまま素通りするように幅五メートルほどの門の中央に向かって歩く俺たちに門衛の一人が近づき、身構える俺たちに話しかけてきた。
「見ない顔だな。この街は初めてか?」
二十歳過ぎほどの筋肉質な青年だ。この中で一番身長の低い瑞樹が見上げるようにして門衛を凝視している。
そして言葉が通じないかもしれないと思っていたのだろうか、言われたことを理解できた瑞樹の表情から力が抜けていくのがわかる。
「あ、はい。街というか、何もかもが初めてですけど……」
「うん?」
いきなり説明が面倒になりそうな話を切り出す瑞樹。
俺としてはこんなところで立ち話はしたくないのでさっさと中に入りたい。というか長時間歩き続けて喉が渇いた。体力的にはステータスのおかげか、問題はないんだが……。
「あの、中に入りたいんですけど、何か手続きありますかね?」
説明しようとしていた瑞樹を遮って割って入る。
「あ、ああ……。と言っても他の街と一緒だがな……。身分証の提示と、初めて街に入るなら入街税を銀貨一枚もらってるが」
「――えっ?」
一瞬何を言われたのかわからないといった表情で瑞樹が固まる。
フィアは俺の後ろでただ控えているだけだ。
「そうなんですか。どっちもないんですけど、それだと入れないですかね……」
困ったように言うとそれで門衛は何かを察したのか、同情の眼差しを向けてくる。
「そうか……。それは災難だったな。だが安心してくれ。ちゃんと入れるさ」
それだけ言うと俺たちについてくるように言って、門の側の小屋に案内する。
中に入るとカウンターがあり、門衛の男がそちらの向こう側へ回り込むところだった。カウンターの上には何やら光沢のある黒い板が目立つように置かれている。
「にしてもよく無事だったな……。まぁその板の上に手を置いてくれ。犯罪歴がなければ街には入れるさ」
「……犯罪歴?」
瑞樹がよくわからないといった表情で門衛に尋ねている。変な質問をされるのも困るが、聞きたいことを聞いてくれるのは楽でいい。
「なんだ、見たことないのか。これに手をかざすと大まかに過去にやらかした犯罪歴が出てくるんだよ。まぁ神様はなんでもお見通しってこったな」
「へぇ……」
門衛の言葉に微妙な表情を浮かべる瑞樹。俺も同じ気分だ。あの胡散臭い神はこの世界では認知されているということなのだろうか。
しかもその神に普段から見られてるとかたまったもんじゃないんだが。いやまあ他にも神がいる可能性もあるんだろうけど。
微妙な表情をしたまま瑞樹が動かないので、しょうがなく俺から板の上に手を置く。と同時に板が淡く輝き出してすぐに収まった。
「おう、もう手をどけていいぞ」
言われて手をどけると板の上に何やら模様が浮かび上がっている。
「兄ちゃんは問題ないようだな。ほれ、次だ」
もしかしてあの模様は文字なのだろうか。門衛が模様を確認して次を促している。
フィアも問題なかったようで、最後に瑞樹の番だ。
「おおっ!?」
同じように手を置いて光ったあとの板を覗き込んだ門衛から驚きの声が上がったのだった。
街を囲む壁を見上げながら瑞樹が奇妙な声を上げている。こういう反応は元々の瑞樹の素なのだろうか。
徒歩で二時間ほどかけてここまでくる間に、瑞樹のことについても色々と聞いていた。――が、やはりよくいる思春期の少年と言ったところだった。
しかし……、またキサラギ高校か。あの学校には何かあるんだろうか……。
明たちとは二歳差だが、学年は一個違いらしく瑞樹は高校二年だった。
学年違うけど、帰ったら明に確認してみようか……。俺たちと同じ世界の住人とわかれば、帰れることを明かして帰るかどうか瑞樹に聞いてみよう。
「立派な市壁ですね」
フィアがあまりそう思っていなさそうな口調で感想を述べている。
確かにフィアの故郷であるモンスターズワールドの王都を囲む壁と比較すれば、その規模は小さいと言わざるを得ない。
だがこういった街を囲む壁は日本には存在しないものだ。
例えそれが高さ三メートル弱ほどしかないとしても、ぐるっと街全体を囲む壁は壮観の一言に尽きるのだ。日本という国から来た者であれば。
草原からまっすぐ街を目指していたのだが、街道とぶつかったのは街の入口だった。
当然ながら街道には草が生えておらず、土がむき出しの地面には馬車が通るのであろうか轍が刻まれている。
街の方に目を向けると街へと入るための門が開かれており、そこには二名の人間が軽鎧を着て、槍を携えて佇んでいた。
街道が見えてからは門を出入りする人は見えず、門をくぐるのに必要な手続きを窺い知ることもできなかったが。
「とりあえず行くしかないな」
とは言えここで誰かが出入りするのを待つなんて馬鹿な行動はしない。門衛に怪しまれるだけだ。
「言葉が通じなかったらどうしよう……」
俺の言葉に瑞樹が若干不安そうに心配をしているが、そこは問題ないので安心して欲しい。このWEB小説にそういうくだりはなかった。
あ、でもそう言えば文字は日本語じゃなかったな……。スキルに言語系のものはなかったし、小説でもなぜか言葉は通じてたように思う。
そのあたりは深く考えてなかったのかな。作者が。しかしそれはそれでこちらとしてはありがたいことではある。
すでに門までの距離は二十メートルを切っている。
そのまま素通りするように幅五メートルほどの門の中央に向かって歩く俺たちに門衛の一人が近づき、身構える俺たちに話しかけてきた。
「見ない顔だな。この街は初めてか?」
二十歳過ぎほどの筋肉質な青年だ。この中で一番身長の低い瑞樹が見上げるようにして門衛を凝視している。
そして言葉が通じないかもしれないと思っていたのだろうか、言われたことを理解できた瑞樹の表情から力が抜けていくのがわかる。
「あ、はい。街というか、何もかもが初めてですけど……」
「うん?」
いきなり説明が面倒になりそうな話を切り出す瑞樹。
俺としてはこんなところで立ち話はしたくないのでさっさと中に入りたい。というか長時間歩き続けて喉が渇いた。体力的にはステータスのおかげか、問題はないんだが……。
「あの、中に入りたいんですけど、何か手続きありますかね?」
説明しようとしていた瑞樹を遮って割って入る。
「あ、ああ……。と言っても他の街と一緒だがな……。身分証の提示と、初めて街に入るなら入街税を銀貨一枚もらってるが」
「――えっ?」
一瞬何を言われたのかわからないといった表情で瑞樹が固まる。
フィアは俺の後ろでただ控えているだけだ。
「そうなんですか。どっちもないんですけど、それだと入れないですかね……」
困ったように言うとそれで門衛は何かを察したのか、同情の眼差しを向けてくる。
「そうか……。それは災難だったな。だが安心してくれ。ちゃんと入れるさ」
それだけ言うと俺たちについてくるように言って、門の側の小屋に案内する。
中に入るとカウンターがあり、門衛の男がそちらの向こう側へ回り込むところだった。カウンターの上には何やら光沢のある黒い板が目立つように置かれている。
「にしてもよく無事だったな……。まぁその板の上に手を置いてくれ。犯罪歴がなければ街には入れるさ」
「……犯罪歴?」
瑞樹がよくわからないといった表情で門衛に尋ねている。変な質問をされるのも困るが、聞きたいことを聞いてくれるのは楽でいい。
「なんだ、見たことないのか。これに手をかざすと大まかに過去にやらかした犯罪歴が出てくるんだよ。まぁ神様はなんでもお見通しってこったな」
「へぇ……」
門衛の言葉に微妙な表情を浮かべる瑞樹。俺も同じ気分だ。あの胡散臭い神はこの世界では認知されているということなのだろうか。
しかもその神に普段から見られてるとかたまったもんじゃないんだが。いやまあ他にも神がいる可能性もあるんだろうけど。
微妙な表情をしたまま瑞樹が動かないので、しょうがなく俺から板の上に手を置く。と同時に板が淡く輝き出してすぐに収まった。
「おう、もう手をどけていいぞ」
言われて手をどけると板の上に何やら模様が浮かび上がっている。
「兄ちゃんは問題ないようだな。ほれ、次だ」
もしかしてあの模様は文字なのだろうか。門衛が模様を確認して次を促している。
フィアも問題なかったようで、最後に瑞樹の番だ。
「おおっ!?」
同じように手を置いて光ったあとの板を覗き込んだ門衛から驚きの声が上がったのだった。
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