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第一章 神霊の森
第26話 精霊との契約
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そろそろ下位精霊たちとの付き合い方にも慣れてきた。
つまり、わらわらと寄ってくる精霊たちを無視できるようになったのだ。いちいち対応していたらキリがないことを実感したとも言える。それでもいつも見かける精霊はじっくり見てしまうのは、まだ抜けきっていないのかもしれないけど。
「ああ、屋根があるって素晴らしい」
そこには木の精霊魔術を使って作ってもらった屋根があった。四隅に木を配置して、それぞれの木の高所から中心に向かって細い枝をたくさん伸ばしてもらった。さらに葉っぱをたくさん生やしてもらえば屋根の完成だ。多少の雨では雨漏りしたりしない。
「こんなに心地いい魔力をもらえるなら、ボクなんでもするのねん」
肩の上に立って、私の頬へとそっと体を寄せるかえで。
なんでもするとか、危険なので私以外に言ったらダメだぞ。
『私も雨で濡れなくなったのでありがたいことだ』
屋根は結構頑張ったと思う。
「うーん……。普通の魔術だったら、一つ上のレベルの魔術を使えばレベルが上がるって聞くけど、精霊魔術はどうなんだろう」
『精霊魔術以外であれば、レベルはその魔術の消費魔力で決まる。発動の難易度は関係ない』
「えっ? そうなの?」
王宮で当時、私の魔術の講師をしていた人物から、それぞれの属性魔術のレベル表を見せてもらったことがある。単純にレベルいくつの魔術はこれとこれとこれ、と言った簡単な表だ。なぜその魔術はそのレベルなのかといった話は聞いたことがない。
『ああ。まれにスキルレベルよりも一つ上の魔術を放つ人間がいるが、魔力効率が極端にいいとそうなってしまう。逆にスキルレベルが固定されている魔術もある。レベル6以上の魔術に多く見られる傾向だ』
「ええええ、そんな仕組みになってるんだ……」
まったくもって初耳な話ばかりだ。魔力効率がいい人っていうのも聞いたことがない。スキル関連は自身が持つことができなかったせいか、いろいろと本を読み漁って知識だけはある程度持っていると思い込んでいた。
しかし口は悪いが、キースは腐っても古代文明時代の秘宝具ということか。
『それともう一つ言えることだが』
「まだあるんだ」
『魔術スキルについては、レベルは1ずつ上げる必要はない』
「……どういうこと?」
『例えば、火魔術レベル2の人間がいたとして、いきなりレベル4に属するファイアランスを発動させることができれば、その人間の火魔術レベルは4と認定されるということだ』
「へぇ、そうなんだ」
ファイアランスって言えば炎の槍を飛ばす魔術でしょ。でも火の矢を飛ばすレベル3のファイアアローをすっ飛ばして使おうと思う人自体がいないと思うんだよね。基本的にはレベルが上がれば発動難易度も上がるわけだし。
『それがどうしたという知識には違いないが、当時は無駄なことを研究したがる人種も少数だがいたのだよ』
一瞬だけキースが遠い目をしたような気がしたが、当時の知り合いにそういう研究者でもいたんだろうか。
それはともかく、各魔術による消費魔力もある程度わかっている。撃てるだけの魔力を持っていれば試してみたくなるのかもしれない。
そういえば精霊魔術は消費魔力がよくわからないし、ステータス見ながら使ってみようかな。魔術スキルが軒並みレベル2になったからか、魔力が305になっていた。これはなかなかの数字じゃないだろうか。一般兵魔術士並みくらいの魔力はある。
『ちなみに精霊魔術だが、通常の魔術に比べて魔力効率はいいとされている。だが起こしたい現象に対応した精霊が近くにいない環境だとそもそも使えないし、精霊が少ない場合は消費魔力が増える』
「そうなんだ……。ちなみにレベルは?」
『……当時は高レベルの精霊術士がなかなかいなくてな。未だにどうやったら精霊魔術のスキルレベルが上がるのか、はっきりとは解明されていない』
キースが言葉を濁しながらも教えてくれたが、古代文明でもわからないことがあるようだ。
『一説には契約した精霊の数だとか、精霊との親密度だとかという研究者もいたがな』
「けいやく?」
『当時、契約できた精霊術士がいた記録はない。精霊は捕獲すればだいたい誰でも使えたからな』
そりゃそんな非人道的な行為がまかり通る時代だ。契約が具体的にどういうものなのかは知らないけど、なんとなく公にするのはやめておいたほうがよさそうな雰囲気はある。けど、契約か……。ちらりと肩の上のかえでへと視線を向けるとちょうど目が合った。
「どうかしたなのねん? もしかして、ボクと契約して精霊術師になりたいのねん?」
「えっ?」
『はっ?』
思わずキースと声が重なる。
精霊との契約について何か知ってることがあるかなと思って見ただけなんだけど、まさかの核心を突かれてしまった。知ってるどころか契約できそうですよ。
しかし何も知らずに「はい」とは言えないのが契約である。
「えーっと、契約して精霊術師になると……、どうなるの?」
「……どう、なるのねん?」
おっかなびっくりで聞いてみるも、かえでは首を傾げるだけだ。
『契約した人間や精霊に、何か変化は出るのか?』
「そういうことなのねん。ボク以外の精霊からもある程度認められるのねん。あとは精霊魔術が使いやすくなるのねん」
「デメリットはないの? 例えばなにかできなくなることがあるとか……」
「うーんと……、そういえば精霊の姿が常に見えるようになるのねん」
「うっ」
今のところ目に魔力を集めないと精霊を見ることはできないんだけど、常に見えるってことは常に下位精霊まみれになりそうだな……。うーん。
『ふむ。これは未知の探求のためにもぜひ契約を結ぶべきだろう。実に興味深い』
他人事な上に自分の趣味に走ってるぞコイツ……。
「うふふ、契約すればある程度下位精霊は言うことを聞いてくれるようになるのねん」
そうなのか。そうであれば結構契約するメリットはありそうな気がするな。
「そういうことなら……、契約しようか」
「わかったのねん!」
「じゃあ――」
どうやったら契約できるのかを聞こうとしたとき、神の声が聞こえてきた。
<精霊魔術スキルがレベル2からレベル3に上がりました>
<精霊魔術スキルがレベル3からレベル4に上がりました>
つまり、わらわらと寄ってくる精霊たちを無視できるようになったのだ。いちいち対応していたらキリがないことを実感したとも言える。それでもいつも見かける精霊はじっくり見てしまうのは、まだ抜けきっていないのかもしれないけど。
「ああ、屋根があるって素晴らしい」
そこには木の精霊魔術を使って作ってもらった屋根があった。四隅に木を配置して、それぞれの木の高所から中心に向かって細い枝をたくさん伸ばしてもらった。さらに葉っぱをたくさん生やしてもらえば屋根の完成だ。多少の雨では雨漏りしたりしない。
「こんなに心地いい魔力をもらえるなら、ボクなんでもするのねん」
肩の上に立って、私の頬へとそっと体を寄せるかえで。
なんでもするとか、危険なので私以外に言ったらダメだぞ。
『私も雨で濡れなくなったのでありがたいことだ』
屋根は結構頑張ったと思う。
「うーん……。普通の魔術だったら、一つ上のレベルの魔術を使えばレベルが上がるって聞くけど、精霊魔術はどうなんだろう」
『精霊魔術以外であれば、レベルはその魔術の消費魔力で決まる。発動の難易度は関係ない』
「えっ? そうなの?」
王宮で当時、私の魔術の講師をしていた人物から、それぞれの属性魔術のレベル表を見せてもらったことがある。単純にレベルいくつの魔術はこれとこれとこれ、と言った簡単な表だ。なぜその魔術はそのレベルなのかといった話は聞いたことがない。
『ああ。まれにスキルレベルよりも一つ上の魔術を放つ人間がいるが、魔力効率が極端にいいとそうなってしまう。逆にスキルレベルが固定されている魔術もある。レベル6以上の魔術に多く見られる傾向だ』
「ええええ、そんな仕組みになってるんだ……」
まったくもって初耳な話ばかりだ。魔力効率がいい人っていうのも聞いたことがない。スキル関連は自身が持つことができなかったせいか、いろいろと本を読み漁って知識だけはある程度持っていると思い込んでいた。
しかし口は悪いが、キースは腐っても古代文明時代の秘宝具ということか。
『それともう一つ言えることだが』
「まだあるんだ」
『魔術スキルについては、レベルは1ずつ上げる必要はない』
「……どういうこと?」
『例えば、火魔術レベル2の人間がいたとして、いきなりレベル4に属するファイアランスを発動させることができれば、その人間の火魔術レベルは4と認定されるということだ』
「へぇ、そうなんだ」
ファイアランスって言えば炎の槍を飛ばす魔術でしょ。でも火の矢を飛ばすレベル3のファイアアローをすっ飛ばして使おうと思う人自体がいないと思うんだよね。基本的にはレベルが上がれば発動難易度も上がるわけだし。
『それがどうしたという知識には違いないが、当時は無駄なことを研究したがる人種も少数だがいたのだよ』
一瞬だけキースが遠い目をしたような気がしたが、当時の知り合いにそういう研究者でもいたんだろうか。
それはともかく、各魔術による消費魔力もある程度わかっている。撃てるだけの魔力を持っていれば試してみたくなるのかもしれない。
そういえば精霊魔術は消費魔力がよくわからないし、ステータス見ながら使ってみようかな。魔術スキルが軒並みレベル2になったからか、魔力が305になっていた。これはなかなかの数字じゃないだろうか。一般兵魔術士並みくらいの魔力はある。
『ちなみに精霊魔術だが、通常の魔術に比べて魔力効率はいいとされている。だが起こしたい現象に対応した精霊が近くにいない環境だとそもそも使えないし、精霊が少ない場合は消費魔力が増える』
「そうなんだ……。ちなみにレベルは?」
『……当時は高レベルの精霊術士がなかなかいなくてな。未だにどうやったら精霊魔術のスキルレベルが上がるのか、はっきりとは解明されていない』
キースが言葉を濁しながらも教えてくれたが、古代文明でもわからないことがあるようだ。
『一説には契約した精霊の数だとか、精霊との親密度だとかという研究者もいたがな』
「けいやく?」
『当時、契約できた精霊術士がいた記録はない。精霊は捕獲すればだいたい誰でも使えたからな』
そりゃそんな非人道的な行為がまかり通る時代だ。契約が具体的にどういうものなのかは知らないけど、なんとなく公にするのはやめておいたほうがよさそうな雰囲気はある。けど、契約か……。ちらりと肩の上のかえでへと視線を向けるとちょうど目が合った。
「どうかしたなのねん? もしかして、ボクと契約して精霊術師になりたいのねん?」
「えっ?」
『はっ?』
思わずキースと声が重なる。
精霊との契約について何か知ってることがあるかなと思って見ただけなんだけど、まさかの核心を突かれてしまった。知ってるどころか契約できそうですよ。
しかし何も知らずに「はい」とは言えないのが契約である。
「えーっと、契約して精霊術師になると……、どうなるの?」
「……どう、なるのねん?」
おっかなびっくりで聞いてみるも、かえでは首を傾げるだけだ。
『契約した人間や精霊に、何か変化は出るのか?』
「そういうことなのねん。ボク以外の精霊からもある程度認められるのねん。あとは精霊魔術が使いやすくなるのねん」
「デメリットはないの? 例えばなにかできなくなることがあるとか……」
「うーんと……、そういえば精霊の姿が常に見えるようになるのねん」
「うっ」
今のところ目に魔力を集めないと精霊を見ることはできないんだけど、常に見えるってことは常に下位精霊まみれになりそうだな……。うーん。
『ふむ。これは未知の探求のためにもぜひ契約を結ぶべきだろう。実に興味深い』
他人事な上に自分の趣味に走ってるぞコイツ……。
「うふふ、契約すればある程度下位精霊は言うことを聞いてくれるようになるのねん」
そうなのか。そうであれば結構契約するメリットはありそうな気がするな。
「そういうことなら……、契約しようか」
「わかったのねん!」
「じゃあ――」
どうやったら契約できるのかを聞こうとしたとき、神の声が聞こえてきた。
<精霊魔術スキルがレベル2からレベル3に上がりました>
<精霊魔術スキルがレベル3からレベル4に上がりました>
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