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ジャンプするとより揺れるんです
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バスケットボールの授業が終わり、今日の体育からバレーボールになる。
そう、バレーボールだ。
男の時であれば問題なかったんだが、今の俺は女の子になったせいで身長が非常に低い。
それはもう悲しくなるくらいにちんまいことになっている。
だというのにバレーボールなのだ。
……手が届くのかどうかが心配だ。
「圭ちゃんジャンプ力あるし、大丈夫じゃないかなぁ?」
そんな心配をよそに、静は無責任に問題ないと頷いている。
「うん。私も圭ちゃんなら大丈夫だと思うよ?」
どうやら千亜季も同意見らしい。
「アンタなら大丈夫でしょ」
佳織は言わずもがなである。
「そうかなぁ」
三人に太鼓判を押されたとは言え、俺自身としては男の時よりジャンプしたときの到達点が低くなっているので、問題ないと言い切れる自信はない。
まぁ確かに、周囲からはジャンプ力があるとは言われている。
なにしろバスケのシュートブロックが成功するたびに言われていたからだ。確かにこの身長で止められるということはそれなりのジャンプ力なんだろう。
「でもまぁ、ここで考えたところでしょうがない。届かなかったら届かなかったで、やりようはあるだろ。……じゃあまたあとで」
ここで俺は三人と別れて教員用更衣室へと向かうのだが。
「……チッ」
すぐ後ろを歩いていた他の女子生徒から、舌打ちが聞こえたのは聞き逃さなかった。
これでも俺はもともと男だったのだ。それが女子に混ざって体育をやることに抵抗のある生徒が、少数ながらいるのはしょうがないと思う。
体育館へと集合すると、すでにバレーボールのネットが張られていた。やっぱりかなり高そうに見える。
体育教師の湯沢先生によると、その日の最初の授業のクラスがネットを張り、最後のクラスが片付けることになっているという。
今日の俺たちは四時間目の授業で、後には他のクラスの授業があるので、用意も片づけも免除だ。
いつものように準備運動を終え、バレーボールの授業へと入るんだが、まぁいきなりゲームから始まるわけでもなく。
最初は二人一組になって、レシーブやトスの練習だ。
だが、たまたま俺の位置がネットに近い位置だったので、これ幸いとばかりにネットの高さを確認することにしてみる。
「……うわー」
ペアになった静が、非常に気の毒そうな声を上げている。
それもそのはずだ。ネットの側に立って腕をまっすぐ伸ばしてみたんだが……。
ネットの頂は俺の指先からさらに40センチは上にあったのだ。
「うぬぅ……」
男の時でもネットの上部に届いていた記憶はないが、それでも10センチちょっとくらいだったかと思う。
女子の方がネットが低いとはいえ、これはちょっと……。
しかしだ。絶望するのはまだ早い。
俺はその場でバネが力を溜めるかの如く膝を曲げると、勢いよくジャンプする。
視界がみるみる上がってきたかと思うと、ちょうど静止したところで振りかぶっていた腕で勢い良くアタックだ。ボールはないけど。
「マジで……!」
「すごい」
「……ありえないし」
俺の様子を見ていたいつものメンバーから、三者三様の反応があった。
ジャンプしてみた感じだと、手首より上はネットから出ていたように思う。
「よし! じゃあ次はネットを挟んでアタックとブロックの練習だ!」
というところでタイミングよく湯沢先生の声がかかる。
ちらりと体育館に備え付けられている時計をみるが、時間的に今日の授業はこの練習をやったら終わりかな。どうもゲームをやる時間はなさそうだ。
だがしかし、俺はこのアタックとブロックの練習を侮っていた。
そう。バスケットボールでのシュートの比ではなかったのだ。
――おっぱいの揺れが。
うーむ。これはこれで見ていて面白い。ジャンプと同時にゆっくりと上下に揺れるおっぱいを堪能していると、自分のブロックの順番が来たようだ。
相手コートからのアタックに合わせてこちらもジャンプすると、ちょうど相手のボールをはじき返すことができた。
やっぱり問題なくいけそうだな。
「……くそっ!」
と思ったら、相手の女子生徒から睨みつけられた。
明らかに染めたとわかる茶色のショートカットをした女子生徒だ。普段見覚えがないところを考えると、隣の六組の生徒なのだろう。……もしかしたら体育の前に舌打ちをしてくれた生徒か?
しかし……、当たり前だが俺より背が高いな。なんとなくだが、佳織よりも高い気がするな。
ひとしきり睨みつけた後、回れ右をしてアタックの練習をする列の後ろに並びなおしている。
ふむ……。多少は気になるが、まぁ何もやってこないんであれば気にしないのが一番か。
「よし、そろそろ時間だな。ネットは片付けなくていいが、ボールを片付けたら解散だ」
そして今日の体育の授業が終わるのだった。
「おつかれー」
俺は佳織、静、千亜季の三人に声を掛けるが、三人とも何やらドヤ顔になっている気がしないでもない。
「ほら、大丈夫だったでしょ」
代表して静が告げるが、そういうことね。
まぁ確かに何も問題なかったな。
「まぁそうだけど」
「それにしても圭ちゃんのジャンプ力すごかったね」
千亜季が珍しく興奮気味だ。そんなにすごかったんだろうか。自分じゃあんまり実感がないんだが。
「うん。確かにすごかった」
「あれは反則だよね……」
佳織は素直に褒めてはくれないらしい。まぁいつものことだが。
「じゃあ俺はこっちだから」
そう言って三人と別れると、教員用更衣室へと一人で向かう。
もう何回目になるか。いちいち数えてはいないが、いい加減にもう慣れてきた。
女性用更衣室へと入ると、ロッカーを開けて着替える。上下を脱いで下着姿になると、脱いだ体操服を畳んで置いておく。
そのままロッカーに入っている服に着替えようと手を伸ばしたときに、更衣室の扉が開く音がした。
今まで途中で誰かに入ってこられたことなんてなかったが、これから昼休みだし、先生も着替えたくなることもあるかな。
「五十嵐さん」
キャミソールを着たところで、掛けられた声に振り返る。
そこにいたのは、ブロック練習のときに睨みつけてきた茶髪の女子生徒と、もう一人の黒髪ロングの女子生徒が佇んでいた。
そう、バレーボールだ。
男の時であれば問題なかったんだが、今の俺は女の子になったせいで身長が非常に低い。
それはもう悲しくなるくらいにちんまいことになっている。
だというのにバレーボールなのだ。
……手が届くのかどうかが心配だ。
「圭ちゃんジャンプ力あるし、大丈夫じゃないかなぁ?」
そんな心配をよそに、静は無責任に問題ないと頷いている。
「うん。私も圭ちゃんなら大丈夫だと思うよ?」
どうやら千亜季も同意見らしい。
「アンタなら大丈夫でしょ」
佳織は言わずもがなである。
「そうかなぁ」
三人に太鼓判を押されたとは言え、俺自身としては男の時よりジャンプしたときの到達点が低くなっているので、問題ないと言い切れる自信はない。
まぁ確かに、周囲からはジャンプ力があるとは言われている。
なにしろバスケのシュートブロックが成功するたびに言われていたからだ。確かにこの身長で止められるということはそれなりのジャンプ力なんだろう。
「でもまぁ、ここで考えたところでしょうがない。届かなかったら届かなかったで、やりようはあるだろ。……じゃあまたあとで」
ここで俺は三人と別れて教員用更衣室へと向かうのだが。
「……チッ」
すぐ後ろを歩いていた他の女子生徒から、舌打ちが聞こえたのは聞き逃さなかった。
これでも俺はもともと男だったのだ。それが女子に混ざって体育をやることに抵抗のある生徒が、少数ながらいるのはしょうがないと思う。
体育館へと集合すると、すでにバレーボールのネットが張られていた。やっぱりかなり高そうに見える。
体育教師の湯沢先生によると、その日の最初の授業のクラスがネットを張り、最後のクラスが片付けることになっているという。
今日の俺たちは四時間目の授業で、後には他のクラスの授業があるので、用意も片づけも免除だ。
いつものように準備運動を終え、バレーボールの授業へと入るんだが、まぁいきなりゲームから始まるわけでもなく。
最初は二人一組になって、レシーブやトスの練習だ。
だが、たまたま俺の位置がネットに近い位置だったので、これ幸いとばかりにネットの高さを確認することにしてみる。
「……うわー」
ペアになった静が、非常に気の毒そうな声を上げている。
それもそのはずだ。ネットの側に立って腕をまっすぐ伸ばしてみたんだが……。
ネットの頂は俺の指先からさらに40センチは上にあったのだ。
「うぬぅ……」
男の時でもネットの上部に届いていた記憶はないが、それでも10センチちょっとくらいだったかと思う。
女子の方がネットが低いとはいえ、これはちょっと……。
しかしだ。絶望するのはまだ早い。
俺はその場でバネが力を溜めるかの如く膝を曲げると、勢いよくジャンプする。
視界がみるみる上がってきたかと思うと、ちょうど静止したところで振りかぶっていた腕で勢い良くアタックだ。ボールはないけど。
「マジで……!」
「すごい」
「……ありえないし」
俺の様子を見ていたいつものメンバーから、三者三様の反応があった。
ジャンプしてみた感じだと、手首より上はネットから出ていたように思う。
「よし! じゃあ次はネットを挟んでアタックとブロックの練習だ!」
というところでタイミングよく湯沢先生の声がかかる。
ちらりと体育館に備え付けられている時計をみるが、時間的に今日の授業はこの練習をやったら終わりかな。どうもゲームをやる時間はなさそうだ。
だがしかし、俺はこのアタックとブロックの練習を侮っていた。
そう。バスケットボールでのシュートの比ではなかったのだ。
――おっぱいの揺れが。
うーむ。これはこれで見ていて面白い。ジャンプと同時にゆっくりと上下に揺れるおっぱいを堪能していると、自分のブロックの順番が来たようだ。
相手コートからのアタックに合わせてこちらもジャンプすると、ちょうど相手のボールをはじき返すことができた。
やっぱり問題なくいけそうだな。
「……くそっ!」
と思ったら、相手の女子生徒から睨みつけられた。
明らかに染めたとわかる茶色のショートカットをした女子生徒だ。普段見覚えがないところを考えると、隣の六組の生徒なのだろう。……もしかしたら体育の前に舌打ちをしてくれた生徒か?
しかし……、当たり前だが俺より背が高いな。なんとなくだが、佳織よりも高い気がするな。
ひとしきり睨みつけた後、回れ右をしてアタックの練習をする列の後ろに並びなおしている。
ふむ……。多少は気になるが、まぁ何もやってこないんであれば気にしないのが一番か。
「よし、そろそろ時間だな。ネットは片付けなくていいが、ボールを片付けたら解散だ」
そして今日の体育の授業が終わるのだった。
「おつかれー」
俺は佳織、静、千亜季の三人に声を掛けるが、三人とも何やらドヤ顔になっている気がしないでもない。
「ほら、大丈夫だったでしょ」
代表して静が告げるが、そういうことね。
まぁ確かに何も問題なかったな。
「まぁそうだけど」
「それにしても圭ちゃんのジャンプ力すごかったね」
千亜季が珍しく興奮気味だ。そんなにすごかったんだろうか。自分じゃあんまり実感がないんだが。
「うん。確かにすごかった」
「あれは反則だよね……」
佳織は素直に褒めてはくれないらしい。まぁいつものことだが。
「じゃあ俺はこっちだから」
そう言って三人と別れると、教員用更衣室へと一人で向かう。
もう何回目になるか。いちいち数えてはいないが、いい加減にもう慣れてきた。
女性用更衣室へと入ると、ロッカーを開けて着替える。上下を脱いで下着姿になると、脱いだ体操服を畳んで置いておく。
そのままロッカーに入っている服に着替えようと手を伸ばしたときに、更衣室の扉が開く音がした。
今まで途中で誰かに入ってこられたことなんてなかったが、これから昼休みだし、先生も着替えたくなることもあるかな。
「五十嵐さん」
キャミソールを着たところで、掛けられた声に振り返る。
そこにいたのは、ブロック練習のときに睨みつけてきた茶髪の女子生徒と、もう一人の黒髪ロングの女子生徒が佇んでいた。
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作者のtwitterアカウント↓
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※このお話は2019年7月8日にサービスを終了したラノゲツクールに同タイトルで掲載していたものを小説版に書き直したものです。
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