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別腹ってホントにあったんだ
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「はー、疲れたー!」
大きく伸びをしながら学校帰りの道を友達と一緒に歩いている。
俺と一緒にいるのは幼馴染の佳織と、他には静と千亜季の合計四人だ。
体育で疲れた体を癒すべく、スイーツを求めてモールへと向かっているところだ。
この体になってからというもの、なぜか女子生徒の輪の中にいることが多くなっている気がする。
以前付き合いのあった男友達は、俺との接触に抵抗があるのか、遠巻きに見ているだけだ。
佳織のフォローがなければ、女子生徒からも遠巻きに観察されるだけになっていたかもしれない。
うむ、そう思うとここはお礼のひとつくらいはしておいたほうがいいのかもしれない。
「ねぇねぇ、モールに新しいお店が入ったんだって!」
隣に歩いていた静がスマホをこちらに掲げてくる。そこに表示されていたのは、巨大なパフェだ。
「へぇ、そうなんだ。……美味しそうね」
佳織もスマホ覗き込みながら目をキラキラとさせている。さすが性別が女だけあって甘いものには目がないのか。
「うわぁ、美味しそう」
あの大人しい千亜季までもが甘いものには目がないようだ。
「美味そうだな」
そしてそれは、俺も例外ではなかった。
――ふむ。ここまで好みまで変わるもんなのか。
「……珍しいわね」
そんな俺を見て訝しむ佳織だが、それほど甘いものを食べなかった俺を知っているからこそだろう。
「体育の後だし、体が糖分を求めてるのかも」
「……そんなもんかな」
実際に今食べたくなってんだからそれでいいんじゃないか。佳織は何を気にしてんだろうか。
「まあいいじゃない。今日はこの店行こうよ!」
「……そうね」
「行きましょう」
「おう!」
学校からモールまでは電車で一駅の距離だ。だけど皆通学定期券があるので、一駅だろうと電車に乗る。
改札を通り抜けて駅のホームへと並ぶと、当たり前のように皆は女性専用車のところへと並んだ。
うむ、女子トイレに入ることと比べればなんてことはないな。むしろ男の時に間違えて乗ったこともあるぐらいだし。
そうして俺たちはモールへと向かうのだった。
「うっひょーーー!」
静が興奮の声を上げている。
なんとも女だけだと遠慮がなくなるもんだ。
……って俺もその一員に数えられてるんだよな。うん。細かいことは気にしちゃいけない。
「さすがにでかいな……。食べきれるかな……」
俺も目の前に現れた巨大なパフェを見てワクワクが止まらない。……が、やっぱり四人がかりで食いきれるかがわからん。
最初はみんなそれぞれで注文をしようとしていたんだが、やっぱりスマホでみた巨大パフェが気になっていたようだ。
メニューを開いたときに、もちろん巨大パフェはあったんだが、『5~6人前』という表示に一時は諦めていたのだが。
「大丈夫でしょ」
「うん……。余裕」
佳織に続き千亜季までもがなぜか食えると確信している。……おかしい。
なんでさっきは諦めていたのか。よくわからん。覚悟を決めたとでもいうのか。それとも実物が目の前に出てきたら食欲がさらに沸いたとかか。
そういうことであれば俺も覚悟を決めようじゃないか。事実、俺も早く食べたいと思ってるし。
「よし……、気合い入れて食ってやるぜ」
「「「「いただきます!」」」」
俺の掛け声とともにそれぞれが構えたスプーンがパフェへと突き刺さる。そしてそれぞれの口へとスプーンが運ばれると。
「「「美味しい~」」」
俺以外の三人の声がハモった。静と千亜季はスプーンを持っていない方の左手が、頬に添えられている。
よし、その隙に二口目をいただくぜ。
「あっ!」
「圭ちゃんずるい!」
フハハハハっ! それは余計な動きをしているほうが悪いのさ! この巨大パフェを一番多く食うのは俺だ!
テーブルの向かいに座る静と千亜季を牽制しつつ、俺はスプーンをパフェへと突き刺す。
生クリームとアイスとイチゴソースを同時に掬い取り、口へと運んでいく。
「うんま~~~~!」
これやべー。パフェってこんなに美味かったっけ。これはちょっとハマりそうだな。
「……何やってんのよ」
お互いを威嚇しながらパフェに群がる俺たちに冷静にツッコミを入れる佳織。
「いやなんとなくノリで?」
「……普通に食べればいいでしょ」
いやまぁそうだけど。
普通にね。パフェをスプーンですくって自分で食べる。……これが普通だな。
……しかしそれはつまらんぞ。
「わかったよ」
俺は心の中でだけニヤリと笑い、自分のスプーンで生クリームとアイスを掬うと、隣に座る幼馴染の佳織に向かってスプーンを差し出した。
「はい、あーん」
タイミングよく自然と差し出されたスプーンだったからか、こちらを振り向いた佳織は躊躇いもせずに俺のスプーンをパクリと口に入れる。
「――っ!!?」
その瞬間、自分が何をやったのか気づいた佳織が、目を見開いて声を上げようとするが、口に咥えたスプーンがそれをさせない。
「……ちょっ! 何やってんのよ!!」
ようやくアイスを咀嚼し終えた佳織が、いつもの調子で俺にツッコミを入れる。
「あー、佳織だけずるいわよ! 圭ちゃん、わたしにも頂戴!」
「――えぇっ!?」
思ってもない言葉がテーブル向かいから聞こえてきたからか、今度は静の方を向いて動揺する佳織。
しかしまぁ佳織は置いといて、頂戴と言われたらあげないわけにはいかないな。
俺はスプーンでまたパフェを掬い取ると、静へと差し出したのだが。
「……ダメっ!」
佳織からなぜか制止の声が上がった。
「えー、なんでよー」
ぶーぶーと静から抗議の声が上がるが、こうしてスプーンを宙にさまよわせていてもアイスが溶けるだけだ。
とりあえず自分の口に入れておく。
「……あ、……えっと、あー、うん。ごめん。なんでもない」
頬を染めながら口ごもっていた佳織は、俺をちらりと見てから諦めにも似た表情で抗議を取り下げた。
なんだ、何も問題ないのか。じゃあ静を餌付けしますかね。
「ほれ、あーん」
「やったー!」
喜びながらテーブルに身を乗り出す静にスプーンを差し出すのだった。
大きく伸びをしながら学校帰りの道を友達と一緒に歩いている。
俺と一緒にいるのは幼馴染の佳織と、他には静と千亜季の合計四人だ。
体育で疲れた体を癒すべく、スイーツを求めてモールへと向かっているところだ。
この体になってからというもの、なぜか女子生徒の輪の中にいることが多くなっている気がする。
以前付き合いのあった男友達は、俺との接触に抵抗があるのか、遠巻きに見ているだけだ。
佳織のフォローがなければ、女子生徒からも遠巻きに観察されるだけになっていたかもしれない。
うむ、そう思うとここはお礼のひとつくらいはしておいたほうがいいのかもしれない。
「ねぇねぇ、モールに新しいお店が入ったんだって!」
隣に歩いていた静がスマホをこちらに掲げてくる。そこに表示されていたのは、巨大なパフェだ。
「へぇ、そうなんだ。……美味しそうね」
佳織もスマホ覗き込みながら目をキラキラとさせている。さすが性別が女だけあって甘いものには目がないのか。
「うわぁ、美味しそう」
あの大人しい千亜季までもが甘いものには目がないようだ。
「美味そうだな」
そしてそれは、俺も例外ではなかった。
――ふむ。ここまで好みまで変わるもんなのか。
「……珍しいわね」
そんな俺を見て訝しむ佳織だが、それほど甘いものを食べなかった俺を知っているからこそだろう。
「体育の後だし、体が糖分を求めてるのかも」
「……そんなもんかな」
実際に今食べたくなってんだからそれでいいんじゃないか。佳織は何を気にしてんだろうか。
「まあいいじゃない。今日はこの店行こうよ!」
「……そうね」
「行きましょう」
「おう!」
学校からモールまでは電車で一駅の距離だ。だけど皆通学定期券があるので、一駅だろうと電車に乗る。
改札を通り抜けて駅のホームへと並ぶと、当たり前のように皆は女性専用車のところへと並んだ。
うむ、女子トイレに入ることと比べればなんてことはないな。むしろ男の時に間違えて乗ったこともあるぐらいだし。
そうして俺たちはモールへと向かうのだった。
「うっひょーーー!」
静が興奮の声を上げている。
なんとも女だけだと遠慮がなくなるもんだ。
……って俺もその一員に数えられてるんだよな。うん。細かいことは気にしちゃいけない。
「さすがにでかいな……。食べきれるかな……」
俺も目の前に現れた巨大なパフェを見てワクワクが止まらない。……が、やっぱり四人がかりで食いきれるかがわからん。
最初はみんなそれぞれで注文をしようとしていたんだが、やっぱりスマホでみた巨大パフェが気になっていたようだ。
メニューを開いたときに、もちろん巨大パフェはあったんだが、『5~6人前』という表示に一時は諦めていたのだが。
「大丈夫でしょ」
「うん……。余裕」
佳織に続き千亜季までもがなぜか食えると確信している。……おかしい。
なんでさっきは諦めていたのか。よくわからん。覚悟を決めたとでもいうのか。それとも実物が目の前に出てきたら食欲がさらに沸いたとかか。
そういうことであれば俺も覚悟を決めようじゃないか。事実、俺も早く食べたいと思ってるし。
「よし……、気合い入れて食ってやるぜ」
「「「「いただきます!」」」」
俺の掛け声とともにそれぞれが構えたスプーンがパフェへと突き刺さる。そしてそれぞれの口へとスプーンが運ばれると。
「「「美味しい~」」」
俺以外の三人の声がハモった。静と千亜季はスプーンを持っていない方の左手が、頬に添えられている。
よし、その隙に二口目をいただくぜ。
「あっ!」
「圭ちゃんずるい!」
フハハハハっ! それは余計な動きをしているほうが悪いのさ! この巨大パフェを一番多く食うのは俺だ!
テーブルの向かいに座る静と千亜季を牽制しつつ、俺はスプーンをパフェへと突き刺す。
生クリームとアイスとイチゴソースを同時に掬い取り、口へと運んでいく。
「うんま~~~~!」
これやべー。パフェってこんなに美味かったっけ。これはちょっとハマりそうだな。
「……何やってんのよ」
お互いを威嚇しながらパフェに群がる俺たちに冷静にツッコミを入れる佳織。
「いやなんとなくノリで?」
「……普通に食べればいいでしょ」
いやまぁそうだけど。
普通にね。パフェをスプーンですくって自分で食べる。……これが普通だな。
……しかしそれはつまらんぞ。
「わかったよ」
俺は心の中でだけニヤリと笑い、自分のスプーンで生クリームとアイスを掬うと、隣に座る幼馴染の佳織に向かってスプーンを差し出した。
「はい、あーん」
タイミングよく自然と差し出されたスプーンだったからか、こちらを振り向いた佳織は躊躇いもせずに俺のスプーンをパクリと口に入れる。
「――っ!!?」
その瞬間、自分が何をやったのか気づいた佳織が、目を見開いて声を上げようとするが、口に咥えたスプーンがそれをさせない。
「……ちょっ! 何やってんのよ!!」
ようやくアイスを咀嚼し終えた佳織が、いつもの調子で俺にツッコミを入れる。
「あー、佳織だけずるいわよ! 圭ちゃん、わたしにも頂戴!」
「――えぇっ!?」
思ってもない言葉がテーブル向かいから聞こえてきたからか、今度は静の方を向いて動揺する佳織。
しかしまぁ佳織は置いといて、頂戴と言われたらあげないわけにはいかないな。
俺はスプーンでまたパフェを掬い取ると、静へと差し出したのだが。
「……ダメっ!」
佳織からなぜか制止の声が上がった。
「えー、なんでよー」
ぶーぶーと静から抗議の声が上がるが、こうしてスプーンを宙にさまよわせていてもアイスが溶けるだけだ。
とりあえず自分の口に入れておく。
「……あ、……えっと、あー、うん。ごめん。なんでもない」
頬を染めながら口ごもっていた佳織は、俺をちらりと見てから諦めにも似た表情で抗議を取り下げた。
なんだ、何も問題ないのか。じゃあ静を餌付けしますかね。
「ほれ、あーん」
「やったー!」
喜びながらテーブルに身を乗り出す静にスプーンを差し出すのだった。
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