順応力が高すぎる男子高校生がTSした場合

m-kawa

文字の大きさ
上 下
14 / 81

一番を取ってしまうとは解せぬ

しおりを挟む
 体育館に集まったのは、俺たち二年五組の女子生徒と、隣の六組の女子生徒だ。
 男女別の教科だけあって、体育だけは二クラス合同だ。
 だもんで、俺のことを初めてみる女子生徒がいるんだろう。
 なんとなくいつもより視線を感じる。
 二年になってから初めての体育だが、これは非常に居心地が悪いな……。
 ある意味初めてのランジェリーショップ以上の居心地の悪さだ。下手に見知った顔がいる分、その効力は計り知れない。

 しかし……、こうやって改めて女だけの集団を見ると……。異様だな……。
 いやもうその中に自分がいるって思うとね……。
 しかも俺……、この中でもしかして一番背が低くないか?

「よーし、全員揃ったかな? こっちに集合してください」

 授業の開始を告げるチャイムが鳴り終わるのを待って、体育の湯沢先生が声を張り上げる。
 先生と一緒に体育館に来た俺はそのあと、幼馴染である佳織や静とともに固まって行動をしていた。掛け声で俺たちも先生の前へと集合する。

「今日から体育を教える湯沢です。皆さんよろしく」

「「「よろしくお願いしまーす」」」

 先生の挨拶に生徒たちからもポツポツと返事が返る。

「今日はもう一人紹介するわね。……五十嵐さんいらっしゃい」

 おうふ、マジっすか。こんな集団の中でさらに注目されるんですか。
 まぁしょうがないっちゃしょうがないか。クラス替えのないこの学校でいきなり知らない人間が増えたってことだもんな。
 俺は先生に言われるがままに前へと出る。
 「がんばって!」などと静かに激励されるが、何をがんばれと言うのか。

「知ってる人もいると思うけど、彼女・・が五十嵐さんよ。仲良くしてあげてね」

「よろしくお願いします」

 先生の紹介にペコリと頭を下げて挨拶をする。
 同じクラスの五組の生徒はすでに見知っているからか、ほぼ表情に変化はなかったが、六組は当たり前だが違った。
 興味津々な表情が大半だが、うっとりと俺を見つめる生徒や、顔を顰めている生徒もちらほらと。
 ってかうっとり顔の表情は止めてもらえませんかね。

「じゃあ彼女も並んでもらうから整列してちょうだい」

 先生の言葉に集まっていた生徒たちが八列で並びだす。体育の時は背の順で並ぶのが通例になっているんだが……。
 こうして並ばれると益々、俺の身長が一番低いんではないかという疑惑が徐々に確信に変わっていくわけで。

「……五十嵐さんはやっぱり一番前かしらね」

 ほぼ並び終わったところで先生がそう発言する。そっと背中を押されて俺は集団へと近づくが、やっぱり俺が一番小さいのか。
 一番前に並んでいた女子生徒の顔が歓喜の表情だ。なんかガッツポーズまでしてるし。そんなに一番前が嫌だったのか。

「五十嵐さんが一番前みたいね。わたしは六組の日下くさか美智瑠みちる。よろしくね」

「あ、はい。よろしく」

「きゃー! 予想外に可愛いわねー。うふふふ」

 挨拶を返すと日下のテンションがさらに上がる。なんだこの子は。
 しかも初対面で俺の頭をいきなりナデナデしてくるとは。まぁいいけど。

「おめでとう。美智瑠みちるが二番だね」

「ありがと、真心まこちゃん」

 さらに隣にいる、背の順が三番目になった子からも声を掛けられている。真心まこっていう名前らしい。

「そうでしょー。圭ちゃんは可愛いのよー」

 ひとしきり撫でられていると、そんなセリフと共に後ろから誰かに抱き着かれた。ってこの声は静か。

「圭ちゃん?」

「……そう言えば下の名前は? あ、私は若草わかくさ真心まこよ」

 割り込んできた静に日下と若草が順に反応するが、気になるのは俺の名前か。

「えーっと、圭一です」

「おー、そうなんだー。ぜんぜんそうは見えないよー」

 俺の回答に感心した様子の日下。一方若草は――。

「ふーん。……イチ・・モツ取れて圭ちゃんね」

 ぶふぉっ!

「――えっ!」

 若草の爆弾発言に俺は心の中で噴き出したが、後ろで実際に声が上がっている。って佳織かよ。

「あははは! 真心ちゃんうまいこと言うねー」

 日下は大爆笑だが、ちらりと後ろを振り返ると佳織が顔を真っ赤にして俯いている。
 っつか女子だけの会話ってこんな発言が出るんですか。恐ろしいですね。佳織はそうじゃないようでちょっと安心したが。

「ああっ、そんな!」

 発言に驚いていると、そんなセリフと共に俺に抱き着いていた静が離れて行った。
 見ると静はちょうど二列後ろのようだったが、俺が一番前に割り込んだせいでひとりずつずれて、列が繰り上がった他の生徒に隣に押しやられている。
 同じく一列後ろに繰り上がって来たのは……、同じクラスの千亜季だ。

「圭ちゃん、よろしくね」

「よろしく」

 さすがに大人しい千亜季は、この場で抱き着いてきたりはしない。
 ひとしきり挨拶が済んだところで、先生が手を叩く音が聞こえる。

「はいはい、静かにしてくださいね。じゃあ早速授業を始めるわよ。今日はバスケをやりますからね」

 先生に告げられた今日の授業内容は、高身長が有利なバスケであった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。

ながしょー
青春
 ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。  このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一
青春
 最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、  幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。  堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。  猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。  百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。    そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。  男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。  とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。  そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から 「修二は私と恋人になりたい?」  なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。  百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。 「なれたらいいと思ってる」    少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。  食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。  恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。  そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。  夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと  新婚生活も満喫中。  これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、  新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

処理中です...