上 下
2 / 81

着替えるしかないよね

しおりを挟む
「きゃあっ! 何やってるのあなた!」

 幸いにして着ているシャツが大きかったおかげか、大事なところを佳織に見られることはなかった。
 もちろん自分でも見えなかった。残念。

「おっと……」

 慌ててトランクスとズボンをずり上げるが、ちょっとやべーなこれ……。激しくそそられるシチュエーションじゃね?
 ……これが自分じゃなければ。

「まぁそんなわけだよ」

「ちょっ、わかったから……、ちょっと待って……」

 立っているとズボンを押さえておかないといけないので、俺はそのまま自分のベッドへと腰かける。
 佳織とは言うと、項垂れたまま眉間を指で揉んでいた。

「とりあえず服をなんとかしたいんだけど……、どうすりゃいいかな?」

「……服って、もちろん……下着もないわよね……?」

 恐る恐る問いかけてくる佳織に、俺は胸を張って答えてやる。

「そうだな。彼女もいない一人暮らししてる男の家に女物の下着なんぞあれば俺は変態だな」

「……あなた、……ホントに圭一、なの?」

「だからそう言ってんだろ。真鍋佳織、誕生日は五月二十八日、血液型はA型、スリーサイズは上から85、60、90もごもご」

 俺がせっかく圭一だと証明してやろうと情報を口走ってやったのに、その口を佳織が押さえてきやがった。誰にも聞かれる心配はないはずなんだがな。

「ちょっと! 何でアンタがそんなことまで知ってんのよ! 普通あたしが知られてると思ってること言うもんでしょ!」

「そうだっけ?」

「そうよ!」

 肩で息をしている佳織を見やりつつ、なぜ佳織はスリーサイズを俺に知られてないと思っていたのか考察をしてみる。
 ……あ、俺がこっそり書いてあるのを見たんだった。はい、考察終わり。
 どっちにしろこれでちょっとは信じてくれたかな。

「……で、どうしよう?」

 俺の言葉に佳織は頭を抱えている。
 うん。まぁ最終的には俺の服を買いに行くしかないんだろうけど。

「……ああもう! わかったわよ! ……とりあえずあたしの家に行くわよ!」

 半ばやけくそ気味に叫ぶと、俺の腕を取って立ち上がらせると、佳織の家へと連行された。
 いやいや、それにしても佳織の家が近くてよかったわ。
 ブカブカの靴に気をつけながら並んで歩いていて改めて実感したが、俺って佳織よりも背が低くなってるな……。
 こいつに見下ろされるとか……、ぐぬぬぬ。

「お邪魔しまーす」

 三十秒ほど歩いて幼馴染の家へと到着する。我が家の両親は早くに他界したが、佳織の両親は健在だ。
 無言で帰宅する佳織を尻目に俺はいつものように挨拶をして家の敷居をまたぐ。

「あら、佳織、もう帰ってきたの?」

 階段を上る俺たちに、一階のキッチンからおばさんの声が聞こえてくる。

「あ、うん。またすぐ出かけるけどね!」

 階段から身を乗り出して佳織が返事をしているが、そうか、またすぐ出かけるのか。
 などと今後のことを考えていると、そのまま佳織の部屋へと連れていかれた。

「ほー」

 全体的にピンク色で統一された可愛らしい部屋になっていた。ぬいぐるみもいくつか置いてある。
 高校に入って初めて佳織の部屋にお邪魔したが、まさに女子の部屋という感じだ。

「ちょっと待ってなさい」

 幼馴染の部屋をぐるっと観察していると、佳織が奥のクローゼットを漁りだした。
 次々と服がベッドへと放り出されるが、つまりこれは俺が着る服の候補ということだろうか。
 おいおい、まじか、俺スカートとか穿くのかよ。勘弁してくれ。……っておいおい、あれはぱんつか? 幼馴染のぱんつ……、いや封をされているから新品か?
 変な妄想へ飛びそうになったが、寸でのところで踏みとどまる。このぱんつが開封された状態ででてきていればやばかった。

「とりあえず着替えなさい。そんなカッコじゃ外歩けないでしょ」

「普通に歩いてここまで来たけどな」

「うるさいわね! いいからとっとと着替えなさい!」

「……ここで?」

「何言ってるの、当たり前じゃない。リビングとかで着替えたければそれでもいいけど」

「うぬぅ」

 おばさんに裸を晒すとかなんの罰ゲームですかね。小学校低学年まではよくあった気はするが。まあしょうがない。

「何で新品のパンツとかあんだよ」

「……それは緊急用よ」

「ふーん」

 緊急用ってなんだろ。まぁいいか。中古を渡されるよりはいい。
 ……むしろ中古がいいという意見もあるだろうが、それはこの状況に興奮できる場合だろうか。
 自分のおっぱいを揉んだ時もそうだったが、今はまったくもって何も感じない。
 ……解せぬ。

 とりあえずぱんつを袋から取り出して目の前にかざして確認してみる。
 どっちが前だ? あぁ、こっちか。男物なら取り出す穴が開いてるからすぐわかるんだが。
 ふと目の前にいる幼馴染へと視線を戻すと、こちらを穴が開くほど凝視している。

「……着替えを見られて喜ぶ趣味は持ち合わせていないんだが」

「――なっ! ばっかじゃないの! あたしにもそんな趣味はないわよ!」

 俺が遠慮がちに述べると、佳織は頬を染めて慌てて後ろを向いた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

家政婦さんは同級生のメイド女子高生

coche
青春
祖母から習った家事で主婦力抜群の女子高生、彩香(さいか)。高校入学と同時に小説家の家で家政婦のアルバイトを始めた。実はその家は・・・彩香たちの成長を描く青春ラブコメです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ

まみ夜
キャラ文芸
様々な分野の専門家、様々な年齢を集め、それぞれ一芸をもっている学生が講師も務めて教え合う教育特区の学園へ出向した五十歳オッサンが、十七歳現役アイドルと同級生に。 【ご注意ください】 ※物語のキーワードとして、摂食障害が出てきます ※ヒロインの少女には、ストーカー気質があります ※主人公はいい年してるくせに、ぐちぐち悩みます 第二巻(ホラー風味)は現在、更新休止中です。 続きが気になる方は、お気に入り登録をされると再開が通知されて便利かと思います。 表紙イラストはAI作成です。 (セミロング女性アイドルが彼氏の腕を抱く 茶色ブレザー制服 アニメ)

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...