7 / 8
矢上が到着した吉沢の住所
第7話 夜に吉沢と出会う
しおりを挟む
※※※
吉沢は駐車場に住んでいるのだろうか? 少し前、テレビでキャンピングカーで、生活する人の特集を観た。基本、固定資産税が、かからないのがお得らしい。
俺は駐車場内を歩いて、キャンピングカーを探す。二十台は停められる駐車場は、ほぼ満車だ。しかし、キャンピングカーは、なかった。
吉沢はどうしてこの住所を自宅として、教えたのだろう?
「とりあえず、寺倉のバイト先に行ってみよう」
道路に出て左右を見渡す。駐車場の両隣はビルだ。左側に看板があった。“アパレルショップ 花”だ。
アパレルショップ花の窓から漏れる光が、黒いアスファルトを照らす。ウィンドウショッピングのつもりで外から覗くが、お客さんは少ない。
店の自動ドアが開く。中学生くらいの女子と、お母さんらしき人が、一緒に出て来た。中学生女子は俺と目が合う。買い物を終えたのだろう。
オシャレなデザインの手提げ紙袋に視線を落として、俺を避けるよううだ。硬質な靴音で横を通る。
嫌われているのだろうか?
俺も店に入った。出入り口の右側には、数坪の生花コーナーがある。青いバケツにお彼岸用の、花が束になって入っていた。
安い。他には花の苗。また、ラックに飾られているのは、ふりかけの袋みたいに密封されたモノだ。多種多様の花や野菜の種がある。スーパーやドラッグストアでも良く見かける。
店内撮影禁止の表示もあった。
生花専用とプレートが張られた、買い物カゴも積まれていた。
花を見にきたんじゃない。俺は店内を見渡す。ハンガーに吊るされた紳士服。メンズファッションは、マネキンが着ている。
俺はそっちの方へふらり、歩いて行く。
マネキンのコーデは、そのまま一式を買えば、デートに行けそうだ。他のサイズもあります、と書いてある。通路で見ていたら、背中に気配を感じた。振り返る。
保護者と一緒の女子中学生くらいの子が、後退りしてから早足で通り抜けた。
買い物カゴには、ブラジャーもあり、瞬時に視線を逸らす。俺から見て背中側は、レディースファッションコーナーだ。しかも、女性用下着が目立つ位置に飾られていた。
頬に恥ずかしい熱を感じる。慌てて隠れるように、メンズファッションコーナーに逃げ込む。
隅の壁際に立つ。爪先立ちになり、店内の様子を見る。視線の先には、女性用肌着で目のやり場に困る。どうやらこの店は、女性向け肌着が多いようだ。メンズファッションのコーナーは小さい。
***
メンズファッションコーナーに学ランがあった。“標準学生服”と大きくポップが出てる。
中学は、学ランだったので懐かしい。男子の学ランは、校則で標準学生服のラベルが必要だった。
横には、ブレザータイプの制服があった。私立木村中学校指定だそうだ。
女子のセーラー服にも、標準学生服はあるのだろうか?
気になり、スマホを取り出してで検索した。分からないままだ。学生服で有名なメーカーのホームページを見ていた。
「矢上くん?」
背後から吉沢の声がした。
「はい」
振り返りながら、スマホを腰の後ろに隠した。セーラー服の画像がスマホに映っているのだ、誤解を招く。
エプロン姿の吉沢の胸が気になる。名札には“よしざわ”エプロンには、“アパレルショップ花”の刺繍があるのだ。
結構豊かな胸をじーっと見つめてしまった。吉沢は身を硬くしている。
「いらっしゃいませ、買い物に来てくれたの?」
「あ、うん。さっき寺倉とお母さんに偶然会ってさ、寺倉のバイト先がここって聞いたんだ」
「寺倉さんと仲良いんだ……」
下を向いて口元だけが弧を描く。誤解を解く。
「違うよ。さっき、駅前を歩いていたら、車が止まったんだ。知らないおばさんから、『矢上君』と質問されたんだ。それで、後部座席に寺倉が座っていたんだ。寺倉のお母さんと名乗る人が、『危ないから送って行く』と言ってくれたんだ。辞退せず……」
吉沢の表情が明るく戻っていた。笑いを耐えるように、両手で顔を覆い隠す。
「矢上くん、必死に説明してくれて思わず笑ちゃった」
吉沢は駐車場に住んでいるのだろうか? 少し前、テレビでキャンピングカーで、生活する人の特集を観た。基本、固定資産税が、かからないのがお得らしい。
俺は駐車場内を歩いて、キャンピングカーを探す。二十台は停められる駐車場は、ほぼ満車だ。しかし、キャンピングカーは、なかった。
吉沢はどうしてこの住所を自宅として、教えたのだろう?
「とりあえず、寺倉のバイト先に行ってみよう」
道路に出て左右を見渡す。駐車場の両隣はビルだ。左側に看板があった。“アパレルショップ 花”だ。
アパレルショップ花の窓から漏れる光が、黒いアスファルトを照らす。ウィンドウショッピングのつもりで外から覗くが、お客さんは少ない。
店の自動ドアが開く。中学生くらいの女子と、お母さんらしき人が、一緒に出て来た。中学生女子は俺と目が合う。買い物を終えたのだろう。
オシャレなデザインの手提げ紙袋に視線を落として、俺を避けるよううだ。硬質な靴音で横を通る。
嫌われているのだろうか?
俺も店に入った。出入り口の右側には、数坪の生花コーナーがある。青いバケツにお彼岸用の、花が束になって入っていた。
安い。他には花の苗。また、ラックに飾られているのは、ふりかけの袋みたいに密封されたモノだ。多種多様の花や野菜の種がある。スーパーやドラッグストアでも良く見かける。
店内撮影禁止の表示もあった。
生花専用とプレートが張られた、買い物カゴも積まれていた。
花を見にきたんじゃない。俺は店内を見渡す。ハンガーに吊るされた紳士服。メンズファッションは、マネキンが着ている。
俺はそっちの方へふらり、歩いて行く。
マネキンのコーデは、そのまま一式を買えば、デートに行けそうだ。他のサイズもあります、と書いてある。通路で見ていたら、背中に気配を感じた。振り返る。
保護者と一緒の女子中学生くらいの子が、後退りしてから早足で通り抜けた。
買い物カゴには、ブラジャーもあり、瞬時に視線を逸らす。俺から見て背中側は、レディースファッションコーナーだ。しかも、女性用下着が目立つ位置に飾られていた。
頬に恥ずかしい熱を感じる。慌てて隠れるように、メンズファッションコーナーに逃げ込む。
隅の壁際に立つ。爪先立ちになり、店内の様子を見る。視線の先には、女性用肌着で目のやり場に困る。どうやらこの店は、女性向け肌着が多いようだ。メンズファッションのコーナーは小さい。
***
メンズファッションコーナーに学ランがあった。“標準学生服”と大きくポップが出てる。
中学は、学ランだったので懐かしい。男子の学ランは、校則で標準学生服のラベルが必要だった。
横には、ブレザータイプの制服があった。私立木村中学校指定だそうだ。
女子のセーラー服にも、標準学生服はあるのだろうか?
気になり、スマホを取り出してで検索した。分からないままだ。学生服で有名なメーカーのホームページを見ていた。
「矢上くん?」
背後から吉沢の声がした。
「はい」
振り返りながら、スマホを腰の後ろに隠した。セーラー服の画像がスマホに映っているのだ、誤解を招く。
エプロン姿の吉沢の胸が気になる。名札には“よしざわ”エプロンには、“アパレルショップ花”の刺繍があるのだ。
結構豊かな胸をじーっと見つめてしまった。吉沢は身を硬くしている。
「いらっしゃいませ、買い物に来てくれたの?」
「あ、うん。さっき寺倉とお母さんに偶然会ってさ、寺倉のバイト先がここって聞いたんだ」
「寺倉さんと仲良いんだ……」
下を向いて口元だけが弧を描く。誤解を解く。
「違うよ。さっき、駅前を歩いていたら、車が止まったんだ。知らないおばさんから、『矢上君』と質問されたんだ。それで、後部座席に寺倉が座っていたんだ。寺倉のお母さんと名乗る人が、『危ないから送って行く』と言ってくれたんだ。辞退せず……」
吉沢の表情が明るく戻っていた。笑いを耐えるように、両手で顔を覆い隠す。
「矢上くん、必死に説明してくれて思わず笑ちゃった」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
僕とメロス
廃墟文藝部
ライト文芸
「昔、僕の友達に、メロスにそっくりの男がいた。本名は、あえて語らないでおこう。この平成の世に生まれた彼は、時代にそぐわない理想論と正義を語り、その言葉に負けない行動力と志を持ち合わせていた。そこからついたあだ名がメロス。しかしその名は、単なるあだ名ではなく、まさしく彼そのものを表す名前であった」
二年前にこの世を去った僕の親友メロス。
死んだはずの彼から手紙が届いたところから物語は始まる。
手紙の差出人をつきとめるために、僕は、二年前……メロスと共にやっていた映像団体の仲間たちと再会する。料理人の麻子。写真家の悠香。作曲家の樹。そして画家で、当時メロスと交際していた少女、絆。
奇数章で現在、偶数章で過去の話が並行して描かれる全九章の長編小説。
さて、どうしてメロスは死んだのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる