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矢上が到着した吉沢の住所

第7話 夜に吉沢と出会う

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※※※

 吉沢は駐車場に住んでいるのだろうか? 少し前、テレビでキャンピングカーで、生活する人の特集を観た。基本、固定資産税が、かからないのがお得らしい。
 俺は駐車場内を歩いて、キャンピングカーを探す。二十台は停められる駐車場は、ほぼ満車だ。しかし、キャンピングカーは、なかった。
 吉沢はどうしてこの住所を自宅として、教えたのだろう? 
「とりあえず、寺倉のバイト先に行ってみよう」
 道路に出て左右を見渡す。駐車場の両隣はビルだ。左側に看板があった。“アパレルショップ 花”だ。
 アパレルショップ花の窓から漏れる光が、黒いアスファルトを照らす。ウィンドウショッピングのつもりで外から覗くが、お客さんは少ない。
 店の自動ドアが開く。中学生くらいの女子と、お母さんらしき人が、一緒に出て来た。中学生女子は俺と目が合う。買い物を終えたのだろう。
 オシャレなデザインの手提げ紙袋に視線を落として、俺を避けるよううだ。硬質な靴音で横を通る。
 嫌われているのだろうか? 
 俺も店に入った。出入り口の右側には、数坪の生花コーナーがある。青いバケツにお彼岸用の、花が束になって入っていた。
 安い。他には花の苗。また、ラックに飾られているのは、ふりかけの袋みたいに密封されたモノだ。多種多様の花や野菜の種がある。スーパーやドラッグストアでも良く見かける。
 店内撮影禁止の表示もあった。 
 生花専用とプレートが張られた、買い物カゴも積まれていた。
 花を見にきたんじゃない。俺は店内を見渡す。ハンガーに吊るされた紳士服。メンズファッションは、マネキンが着ている。
 俺はそっちの方へふらり、歩いて行く。
 マネキンのコーデは、そのまま一式を買えば、デートに行けそうだ。他のサイズもあります、と書いてある。通路で見ていたら、背中に気配を感じた。振り返る。
 保護者と一緒の女子中学生くらいの子が、後退りしてから早足で通り抜けた。
 買い物カゴには、ブラジャーもあり、瞬時に視線を逸らす。俺から見て背中側は、レディースファッションコーナーだ。しかも、女性用下着が目立つ位置に飾られていた。
 頬に恥ずかしい熱を感じる。慌てて隠れるように、メンズファッションコーナーに逃げ込む。
 隅の壁際に立つ。爪先立ちになり、店内の様子を見る。視線の先には、女性用肌着で目のやり場に困る。どうやらこの店は、女性向け肌着が多いようだ。メンズファッションのコーナーは小さい。

*** 

 メンズファッションコーナーに学ランがあった。“標準学生服”と大きくポップが出てる。
 中学は、学ランだったので懐かしい。男子の学ランは、校則で標準学生服のラベルが必要だった。
 横には、ブレザータイプの制服があった。私立木村中学校指定だそうだ。
 女子のセーラー服にも、標準学生服はあるのだろうか?
 気になり、スマホを取り出してで検索した。分からないままだ。学生服で有名なメーカーのホームページを見ていた。
「矢上くん?」
 背後から吉沢の声がした。
「はい」
 振り返りながら、スマホを腰の後ろに隠した。セーラー服の画像がスマホに映っているのだ、誤解を招く。
 エプロン姿の吉沢の胸が気になる。名札には“よしざわ”エプロンには、“アパレルショップ花”の刺繍があるのだ。
 結構豊かな胸をじーっと見つめてしまった。吉沢は身を硬くしている。
「いらっしゃいませ、買い物に来てくれたの?」
「あ、うん。さっき寺倉とお母さんに偶然会ってさ、寺倉のバイト先がここって聞いたんだ」
「寺倉さんと仲良いんだ……」
 下を向いて口元だけが弧を描く。誤解を解く。
「違うよ。さっき、駅前を歩いていたら、車が止まったんだ。知らないおばさんから、『矢上君』と質問されたんだ。それで、後部座席に寺倉が座っていたんだ。寺倉のお母さんと名乗る人が、『危ないから送って行く』と言ってくれたんだ。辞退せず……」
 吉沢の表情が明るく戻っていた。笑いを耐えるように、両手で顔を覆い隠す。
「矢上くん、必死に説明してくれて思わず笑ちゃった」
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