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第1話(本編) 青リンゴは青くなかった
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私は先祖代々フランス王家にお使えする、伯爵家の一員だ。
貴族の位は分かりづらい。私も何度習っても忘れる。簡単に言えば、私の家は領地を持っている貴族で、伯爵の位を名乗れるのだ。
数年前、当主だった父が亡くなって兄が領主となり財産の大半を相続した。母は私が七歳の時に天国に召されている。
次男である私は兄と一緒に城で暮らしている。しかし、昨年、兄が結婚してから義姉の助言で毎月の小遣いが少なくなってしまった。
この山奥の伯爵領からパリまで、おととしまでは、いつでも遊びに行けたのに、今は年に数回の楽しみになってしまった。パリの劇場で『リア王』や『セビリアの理髪師』を見たり、ベルサイユ宮殿の舞踏会で遊んだりしていたかつての日々が懐かしい。
最近は、たまに近くに領地を持つ貴族が自分たちの城で開くパーティーに遊びに行くのが楽しみになっている。しかし、パリでのパーティーとは違い華やかさにかける。
先週、私は生まれて初めて失恋した。相手はうちの伯爵領に隣接して領土を持つ貴族の娘だ。うちの方が金持ちなのに謎だ。勇気を出して告白してやったのに、なぜか断られた。義姉はいつも軍隊の将校になるように私に言う。
しかし、私は全国を転勤する軍人になるのは嫌だ。また、軍隊は階級が多く、階級章とその上下関係を覚えるのが面倒だ。それに、陸軍士官学校は名前からして厳しそうだ。
パリのほか、転勤のないパリ市の職員ならなっても良い。市役所の職員に、階級章はない。義姉やパリ在住の妹夫妻は、バスティーユ牢獄の事務職を貴族社会のコネで用意してくれた。
最近のパリは治安が悪いので、牢獄勤務なら危なくなったら、職場に篭っていれば良いのだ。
夕食の時、兄と義姉にグチを言った。
「どうして、貴族としては、当家の方が伝統あるのに、プロポーズを断ったのでしょう?」
財力と領地の広さを“伝統”と言い換えたのは、私の頭が良いアピールだ。
聞こえていないのか義姉は何も言わない。それを見て兄が言いづらそう話し始める。
「まあ、生きていればそういうこともあるさ、実はな、うちの城のリンゴ園で取れたリンゴで、珍しい色のがあったんだ」
兄はテーブルの上に飾ってある生のリンゴのいくつかを手に持った。すると、その中のいくつかは青い色を帯びていた。赤や緑ではないリンゴは初めて見た。義理がリンゴを一つ手にして目を細めた。
「パリの貴族専門の女学校で花嫁修業をしていた時に習ったことがあります。これは青リンゴと呼ばれるモノですわ」
知ったかぶりをするのが義姉の短所だ。私は少しムっとしたが平静を装おう。
「私もパリの大学にいた頃、植物学の教授から青リンゴをについて習いました」
パリと大学と教授の三カ所に力を込めて話した。実は、青リンゴなどというモノがあることさえ知らない。だが、この意地っ張りな義姉には負けたくなかった。ちなみに、植物学の講義など受けたことなどない。口から出まかせだ。
大学は出ている。成績が悪かったのは、同窓生が優秀過ぎたからだ。じいはそういって言た。
青リンゴをコックにお菓子にさせて食べたかったが、偶然、メイドも執事も食堂にはいなかった。兄の提案でコックをよび切らせた。三人で生のままナイフとフォークで切り食べ始める。リンゴを生で食べるのは久しぶりだ。
いつもはジャムにしていたからだ。生のモノはさけていた。最近、食糧事情が悪く粗悪な材料もあるからだ。
口に入れると妙な味がしたが、これが青リンゴの味だろう。義姉の提案で甘いクリームと一緒に口に含んだ。
急に腹部に激痛が走りその後、意識が遠ざって行く。
貴族の位は分かりづらい。私も何度習っても忘れる。簡単に言えば、私の家は領地を持っている貴族で、伯爵の位を名乗れるのだ。
数年前、当主だった父が亡くなって兄が領主となり財産の大半を相続した。母は私が七歳の時に天国に召されている。
次男である私は兄と一緒に城で暮らしている。しかし、昨年、兄が結婚してから義姉の助言で毎月の小遣いが少なくなってしまった。
この山奥の伯爵領からパリまで、おととしまでは、いつでも遊びに行けたのに、今は年に数回の楽しみになってしまった。パリの劇場で『リア王』や『セビリアの理髪師』を見たり、ベルサイユ宮殿の舞踏会で遊んだりしていたかつての日々が懐かしい。
最近は、たまに近くに領地を持つ貴族が自分たちの城で開くパーティーに遊びに行くのが楽しみになっている。しかし、パリでのパーティーとは違い華やかさにかける。
先週、私は生まれて初めて失恋した。相手はうちの伯爵領に隣接して領土を持つ貴族の娘だ。うちの方が金持ちなのに謎だ。勇気を出して告白してやったのに、なぜか断られた。義姉はいつも軍隊の将校になるように私に言う。
しかし、私は全国を転勤する軍人になるのは嫌だ。また、軍隊は階級が多く、階級章とその上下関係を覚えるのが面倒だ。それに、陸軍士官学校は名前からして厳しそうだ。
パリのほか、転勤のないパリ市の職員ならなっても良い。市役所の職員に、階級章はない。義姉やパリ在住の妹夫妻は、バスティーユ牢獄の事務職を貴族社会のコネで用意してくれた。
最近のパリは治安が悪いので、牢獄勤務なら危なくなったら、職場に篭っていれば良いのだ。
夕食の時、兄と義姉にグチを言った。
「どうして、貴族としては、当家の方が伝統あるのに、プロポーズを断ったのでしょう?」
財力と領地の広さを“伝統”と言い換えたのは、私の頭が良いアピールだ。
聞こえていないのか義姉は何も言わない。それを見て兄が言いづらそう話し始める。
「まあ、生きていればそういうこともあるさ、実はな、うちの城のリンゴ園で取れたリンゴで、珍しい色のがあったんだ」
兄はテーブルの上に飾ってある生のリンゴのいくつかを手に持った。すると、その中のいくつかは青い色を帯びていた。赤や緑ではないリンゴは初めて見た。義理がリンゴを一つ手にして目を細めた。
「パリの貴族専門の女学校で花嫁修業をしていた時に習ったことがあります。これは青リンゴと呼ばれるモノですわ」
知ったかぶりをするのが義姉の短所だ。私は少しムっとしたが平静を装おう。
「私もパリの大学にいた頃、植物学の教授から青リンゴをについて習いました」
パリと大学と教授の三カ所に力を込めて話した。実は、青リンゴなどというモノがあることさえ知らない。だが、この意地っ張りな義姉には負けたくなかった。ちなみに、植物学の講義など受けたことなどない。口から出まかせだ。
大学は出ている。成績が悪かったのは、同窓生が優秀過ぎたからだ。じいはそういって言た。
青リンゴをコックにお菓子にさせて食べたかったが、偶然、メイドも執事も食堂にはいなかった。兄の提案でコックをよび切らせた。三人で生のままナイフとフォークで切り食べ始める。リンゴを生で食べるのは久しぶりだ。
いつもはジャムにしていたからだ。生のモノはさけていた。最近、食糧事情が悪く粗悪な材料もあるからだ。
口に入れると妙な味がしたが、これが青リンゴの味だろう。義姉の提案で甘いクリームと一緒に口に含んだ。
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