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第1章 入学の春 編

第13話 リリライトの授業見学

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 今年の新入生達がミュリヌス学園に入学してから3ヶ月が経とうとしていた。



 生活する環境が変わり、白薔薇騎士団へ向けて決して楽ではない学業の日々をこなす新入生達も、とりあえずあと数週間頑張れば、長期の夏休みに入る。



 生徒の多くは地方領から出てきており、夏休みには実家に帰省する生徒も多い。



 今年は例年に比べて涼しい気候だったが、それでも7月に入れば太陽の日差しは厳しい。



 1年Ⅰ組は、その時間はトレーニングルームで体育の授業に臨んでいた。



 騎士を目指すという教育方針の特徴から、剣術や魔術などの実践的修練が多いミュリヌス学園だが、基礎体力向上とレクリエーション的な意味合いもあり、一般的な体育の時間も設けている。



「それにしても、安心したよ。リアラが本調子になったみたいで」



 体操服にブルマ姿で、ペアになって柔軟運動をしているアンナとリアラ。リアラの上体を後ろから押しながら、アンナはそう言った。



「あはは。ごめんね。ステラ先輩にもアンナが心配してたって言われたよ。ちょっとあの時期、体調が悪くてね」



 苦笑しながら答えるリアラ。



 アンナが心配していて、ステラが遠征合宿から帰ってきたのが、1か月程前。その翌日に早速リアラが休んだため、アンナは非常に心配した。



 しかし結局リアラが休んだのはその1日だけ。次の日から元気な顔を見せたリアラは、それまでのケアレスミスや悩みを見せていた様子から一変。



 もともと優秀ではあったが、その月の席次テストでも更に席次を上げて、今や第三席。アンナは相変わらず主席の座に君臨しており、リアラは間近まで迫ってきていた。



 そんなリアラの活躍ぶりに、アンナは満足そうにうなずいた。



「ま、まあボクは別に心配なんてしていないけど、でも体調管理もしないと、ライバルのボクの評価が落ちちゃうからね。しっかりしてくれないと、困るよ。何なら、ボクの実家の野菜を分けようか? 新鮮で美味しいよ」



「くすくす。それじゃあ、もらおうかな。ステラ先輩ってば、ああ見えてあまりお野菜食べないから、それで何か美味しいもの作ってみてもいいかも」



 あの時にアンナが話しかけてきたのがきっかけになったのか、その後も何かと二人で雑談したりという機会が増えて、急に二人の仲は近づいて行った。こういった体育の授業などでペアを作る時も、自然とお互いに声を掛けるようになっていた。



「そういえばもうすぐ夏休みだけど、リアラもやっぱり実家に帰るの?」



 今度はアンナが柔軟をする番となり、背中を押す係を交代して、会話は続く。



「うん、そうだね。親も何かと心配しているし……それに、彼も待っているから」



 えへへ~、といつになくだらしない顔で笑うリアラ。よくお互いの話をするようになってから、リアラの恋人――リューイの話もよく聞くようになったが、その話になると決まってリアラは、嬉しそうな表情で語る。



「えっと、龍牙騎士団に入団したんだっけ?」



 第1王子カリオス=ド=アルマイトが率いる騎士団の名を口にするアンナに、リアラはうなずく。



 龍牙騎士団は白薔薇騎士団と同じく、王族直轄の騎士団でありながら、その特徴は大きく異なる。後者は姫リリライトの身を守るといった近衛的な立場だが、前者は有事の際に戦場で活躍することが主な役割だ。



 その特徴もあり、騎士団長や部隊長などの幹部を目指すというのは別として、入団自体はそう難しいことではない。というよりも、むしろ平民出身の割合が多い。貴族の中でも限られた人間で締められる白薔薇騎士団とは、そこが大きく異なる点だった。



「でも、今は戦争もないし、それにまだまだ新人だから、ひたすら訓練と雑用ばっかりみたい。大変みたいだけどね」



 アンナの身体は割と小柄な方だが、その筋肉はしっかりと引き締まっており、しなやかさも併せ持っている。



柔軟を手伝うリアラは、アンナの身体からそんな感触を感じ取り、胸中で感心しながら会話を続ける。



「ふーん、そうなんだ。大変そうだね」



 実のところ、リアラの恋人だとかいうリューイその人には、アンナもさほど興味があるわけではない。



アンナのヴァルガンダル家は男所帯であり、アンナ自身も幼少から騎士としての英才教育を受け続けた環境もあってか、本人はあまり恋愛願望を持っていなかった。



――が、あまりにも幸せそうなリアラの顔を見ていると、正直なところ憧れない気持ちがないわけでもない。という自分の気持ちに、最近気づかされてしまったのだ。



「うーん。そんな男にうつつを抜かしているやつに、やっぱりボクが負けるわけにはいかないな」



「えー、どうして? 恋人がいるかどうかなんて、騎士としての資質に関係ないよー」



 ついついそんな憎まれ口を叩くアンナだが、彼女に悪意が無いことリアラも承知していた。だから笑いながらリアラも反応が出来る。



 実際、リアラの授業態度は真面目だし、成績も優秀だ。アンナも、うかうかしてようものなら、いつ成績を抜かれてもおかしくないという緊張感を抱いている。



 それでいい。簡単に、何の苦労もなく首席になっていても意味が無い。いやそもそも首席というステータスすら、アンナにとってはどうでもよかった。実力伯仲で、自分をここまで緊張させ、高めてくれるリアラがいることが単純に嬉しい。そんな彼女と、毎日学園で競い合い、話が出来るのが本当に楽しかった。



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 柔軟の時間が終わると、教師から集合の声がかかり、Ⅰ組の生徒達が規律正しく整列する。



 するとそのタイミングで、トレーニングルームの入り口からリリライトがひょっこりと姿を現す。いつも通りの純白のドレスは、身体を動かす場であるトレーニングルームとはミスマッチではあったが、その美しさや高貴さは、その場でも輝かんばかりであった。



 いつもと違う点は、教育係であるグスタフを従えていないことくらいだったが、それはⅠ組の生徒達にとっては例外なく安心材料であった。



「ああ、いいんです。授業の邪魔になってはいけませんから、続けて下さい」



 リリライトの姿を認めた教師が早速敬礼に向かい、生徒達にも促すが、リリライトは相変わらずの王族らしからぬ軽さでそれを辞する。



 だからといって全く構わないわけにはいかず、教師はリリライトの用の椅子や、生徒に命じてお茶を準備させようとせわしくなく動き、リリライトは申し訳無さそうな顔で断り続けており。



 そんな押し問答が終わって、ようやくリアラ達生徒は授業内容に入る。



 今日の内容は魔術を球技でもって競い合うスポーツ『ランド・ボール』である。一言でいうならばボールを使用した陣取り合戦である。



 2チームに分かれて、攻撃チームと防御チームに分かれる。攻撃側はボールを魔術で操りながら敵陣地に投げ込む。防御側はそれを防御する。ボールが落ちた場所が防御側の陣地内であれば、そこまで攻撃側の陣地となり、逆に攻撃側に押し戻せば防衛成功となり、攻守交代となる。



 シンプルながらも魔術の技量、戦略などの質が求められるゲーム性で、アルマイト王国では老若男女広く親しまれている。教育機関でも、このように体育の授業内容として取り入れられているのは一般的だ。



「リアラ、そっち行ったよ」



「任せて――シャルティア、そっちお願いっ!」



 これは成績席次を決定する月例テストではないし、あくまで体育の授業でレクリエーション的な意味合いも強い。だから勝敗が直接席次に関わることはないが、どの生徒も、どのチームも懸命に取り組む。



 声を掛け合い、合間のブレイクタイムで作戦を相談しあい、ランド・ボールに取り組む生徒達を、リリライトはニコニコしながら満足そうに見つめていた。



 自分も、輪に加わって同じように汗を流したい(運動神経は壊滅、魔術の腕も並程度のなので、エリートの彼女らに混ざったら足手まとい確実だが)と思わないでもない。



 ただ自分は王族であり、そんな我儘を要求する程に子供でも愚かでもない。それよりも、こうやって一生懸命に授業に取り組み、楽しんでいる生徒達の姿を見るのが、リリライトは純粋に楽しかった。



「珍しいですね。殿下が講義以外の授業に来られるなんて」



 リアラのチームが試合を終えると、汗をタオルで拭きながら、リアラが座っているリリライトに話しかける。リリライトは思わぬ声に、ぎょっとした顔をしてしまった。



「あ、申し訳ありません。やはり、不敬でございました――」



 あの廊下で声を掛けられた時の話から、「友人」としての接し方を求められていると察したリアラ。それならば、そのようにした方が喜ばれるのでは――むしろ、その方がリアラにとっては勇気もいるし、緊張するのだったが、リリライトの反応を見て即座に態度を直し、少し暗い表情をする。



 そんなリアラに、リリライトは「しまった」と思う。



「い、いいえ。つい、驚いただけですよ」



 結局あれからリアラと話す機会は設けられなかったリリライト。



 本人からは「気さくに」と言われても、中々そうやって接することが出来る人間などいない。ましてや、将来近衛として自分が守護するリリライトが相手なのだ。「友人として」など、それは無茶な話である。



 学生にとっては酷な話であろうから、強制やしつこく求めはしない。それでも親しくしたいから、相手に負担にならないように、軽い調子で言ってはみる。いくら言っても無理だろうけどという諦めと、それでももしかしたら――という期待の両方を持ちながら。



 だからリアラの声かけが心底嬉しかった。



 そのため自分のリアクションが失敗したせいで、もうリアラが親友としての態度を引っ込めたことに、恐怖すら感じた。



「な、何なら、前に言ったようにリリちゃん、でいいですよ。ああ、とは言っても呼びにくいですよね。そうしましたら、一緒に言ってみましょう。はい、せーの……」



 リリライトの優雅さしか知らないリアラは、珍しく慌ててそんなことを言ってくる様子に、少しだけぽかんと呆けた後に、くすりと表情を緩ませる。



「くすくす。さすがにリリちゃんは無理ですよ、殿下」



 と、リアラは笑いながらそう言う。そのリアラの笑顔を見て、リリライトは心底安心した。



 まさか、学生にここまで心をドギマギさせられるなんて――当のリアラにはそんなつもりなどないだろうけれども――これではどちらが王族で、どちらが仕える立場なのか。



「良かったです。私も、王女殿下とこんな風にお話出来るなんて、夢みたいです」



 白薔薇騎士団が目標になってから、リアラはその守護対象であるリリライトに憧れのようなものを持っていた。



 美しく、可愛らしく、聡明で、上品で、清楚で――そんなリリライトに憧れを抱くことは、リアラに限らず、王族に忠誠を誓うアルマイト国民であれば当然のことだった。特にリアラのように、年齢が近い同世代の女性ならば。



「うふふ。すみません。本当に、私がお願いした通り友人のように話しかけてくれる人がいるとは思わず、驚いてしまいました」



 自分の思いを、期待をくみ取ってくれたリアラに、リリライトも心を許して本音を吐露すると、二人して笑い合う。



「講義には私も勉強として参加させていただいています。でもたまには、学生の皆さんがどういった顔をして学園で過ごしているか知りたいな、と思いまして。今日、たまたま予定がキャンセルになって時間が出来たということもありますが」



「すごいですね。姫殿下に、そこまで気にかけていただけるなんて、私たちは光栄ですね」



「私の方こそ、そこまで言われると素直に嬉しいです。姫という立場が無ければ私なんかただの小娘ですからね」



 楽しい。



 交わしているのがただの会話だが、姫として意見や考えを述べるのではなく、ただの1人の人間として、少女として雑談を交わすことが出来るのが、こんなに楽しいものなのか。友人とはこんなにもいいものなのか。



 憧れだけで、実際にそういった関係がいなかったリリライトは、リアラとの会話に思わず表情をほころばせる。



「私も、ランド・ボール出来るでしょうか? ルールは理解しているつもりですが」



「そうですね。失礼ですが、姫殿下は、魔術ではどういった分野を得意にされておりますか?」



「うう。カリオス兄様からは、絶望的なまでの『無才能者』という、聞いたことがない言葉をいただきました」



 両手の人差し指を合わせながら、いじけたように答えるリリライトに、リアラはあははと笑いながら



「そうしたら、まずはフロントディフェンダーからですかね。魔術が使えなくても、身体を張って相手の攻撃を止めるポジションですから、姫殿下でも出来ますよ」



「あうう……リアラは姫である私に肉壁になれと言っているんですか? あうあう」



 厳格な公式の場で発せば、その場でひっ捕らえかねないような発言だったが、いじけたリリライトは次の瞬間には笑顔になっていた。



 リアラも、言葉使いなどの礼儀は守りながら、友人としてリリライトと接することで会話を楽しんでいた。



「リアラ、一体どこに――って、ああ? お、王女殿下っ! これは大変失礼いたしましたっ!」



 自分のチームの試合が終わって、リアラを探していたようだったアンナ。リアラの姿を認めて近寄ってくると、リアラと談笑している相手に気づく。するとほぼ反射的に、右手を心臓に当てて上半身を深く下げる、最敬礼を仕えるべき姫君に行う。



「あはは。今はそんなにかしこまらなくても大丈夫だよ。ですよね、リリライト殿下」



 きっとリリライトは学生のみんなから親しく接して欲しいと思っている。そう思っていたリアラが気軽に笑いながらリリライトの方を見る。



 すると、リリライトはリアラがゾっとするような、冷たい無感情の表情で最敬礼をするアンナを見下ろしていた。



「ひ、姫殿下……?」



 たった今自分が談笑していた相手と同一人物とは思えないその表情に、リアラは怯えを隠し切れずに話しかける。そうやったリアラの声を聞いてハッと我に返ったリリライトは慌てて笑顔を取り繕う。



「ご、ごめんなさい。えーっと、確かヴァルガンダル家の……」



「はいっ! ボク……じゃなくて、私はアンナ=ヴァルガンダルと申します。父は龍牙騎士団の団長を務めているダシュルト=ヴァルガンダルです」



 顔を上げたアンナは誇らしげに、鼻息をフンと鳴らす勢いでリリライトに告げる。



 リリライトの兄であるカリオス王子の側近中の側近だ。その娘である自分に、当然リリライトも何かしら愛想の良い反応を返してくれるに違いない。アンナはそんな期待を抱いていると、リリライトは「そうですか」と興味が無さそうな声を答える。



「随分とリアラと仲が良いみたいですね」



 アンナの家柄のことではなく、そちらへ関心を寄せてくるリリライト。肩透かしをくらい、なんだか面白くなかったが、姫君を相手に拗ねた態度をとるわけにもいかない。



「はい。リアラとは首席の座を争うライバルです。負けられません」



 意気揚々と答えるアンナ。そんなアンナに、リリライトは目を細めて「そう」と相づちを打つ。



「実は、私が今日ここに来たのは、貴女にお願いがあったんですよ」



 突然――またもや人が変わったように、笑顔でアンナにそういうリリライト。その変化に、リアラもアンナも、ただただ驚く。



「私に殿下がお願い、ですか?」



 さすがに恐縮をするアンナ。そんなアンナに、リリライトはニコニコとしながらうなずく。



「ええ。今日の放課後――貴女の時間があるときでいいです。学園長室にお越しいただけますか?」



「うええ。学園長室ですかぁ?」



 リリライトの言葉に、彼女の前では礼儀正しい言葉と態度だったアンナが、ゲンナリとした顔を見せる。



 ミュリヌス学園の学園長は、大臣グスタフが兼任しているのだ。学園長室といえば、いわば学園内におけるグスタフの私室のようなもの。あの醜悪な中年の評判は、今や1年生の全てが一致団結している。



『出来ることなら、視界にすら入れたくない』『頼むから、リリライト姫の側から消えていなくなってほしい』など、なかなか苛烈な内容ばかりである。



 首席――つまり学年代表のような立場であり、相応に言動を弁えることも出来るアンナだったが、それでもグスタフに関しては嫌悪感を隠せずにはいられなかった。例え姫のお付きの人間だとしても。



 しかしリリライトは機嫌を害することもなく、少し困ったように苦笑しただけだった。



「心配しないでください。勿論、私も同席しますから……って、当たり前ですね。彼と女生徒を二人きりにするわけにはいきませんから」



 と、イタズラっぽい笑みを浮かべるリリライト。



 そうして三人は視線を交わし合って、まるで友人のように笑い合った。



 ――あの冷たい表情は何だったのだろうか。



 笑っている中で、リアラは気になって仕方なかった。あのアンナを見るリリライトの、感情を失ったような、怒りとも憎しみとも言えない、あの不可解な表情。



こんなに天真爛漫で、学生相手にも気取ることなく感情を露わにする姫が、何故あんな顔をしたのだろうか。



 アンナ……というか、ヴァルガンダル家程の家柄であれば、王族とも何か因縁でもあるのだろうか。しかし、会話から察するにリリライトとアンナは初対面のようだが。



 色々考え始めたリアラは、結局は見間違えたのだと断じる。



 あれだけ学生と距離を近づけたいと思っているリリライトが、あんな表情をするわけがない。或いは、ただ疲れただけだったのだ。



 そうしてアンナも加えて3人で談笑していると、程なくして歓声が上がる。どうやらまた1つの試合が決したらしい。



「――さ。次はボクとリアラのチームの試合だね。体育の授業だけど、負けないから」



「私も、アンナのチームに負けないように頑張らないとね。それでは殿下、失礼いたしますね」



 二人はリリライトに軽く敬礼を行ってから、背を向けてコートに向かっていく。リリライトは「頑張って下さい」と声をかけて、手をひらひらと振っていた。



「ふっふーん。実は、今日リアラに勝つために、とっておきの必殺技を考えてきたんだ」



「ただの体育なのに、どれだけ本気なの? というか、アンナはすごく優秀なのに、格好付けなところが凄く勿体ないって思うよ、正直」



 そんな二人の会話がリリライトにも漏れ出ている。



 学生同士、クラスメート同士、お互いを高め合うライバル同士――二人は本当に楽しそうだった。学生生活を謳歌し、充実して今を生きているようだった。



 王族たるための教育、厳格繊細な公務、政治や外交のための婚姻話――それをこなしながら、裏では歪んだ行為でストレスを解消している自分。どうして、第二王女というだけで、彼女らとこんなに差があるのか。



「――もう、すっかり夏ですね」



 トレーニングルームの天窓から差し込む強い日差し。



 窓を開けて換気はしているものの、トレーニングルーム内は学生達の熱気もあってムワっと蒸している。じっと座っているだけのリリライトも、ジワリと汗をかく程だ。



 そんな中、柔らかな笑顔で学生達の授業を見るリリライトの胸の内には、静かに確実に嫉みの炎が勢いを増していた。
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