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第3章『”剣士”覚醒』編
第139話 ヴァルガンダル家の物語Ⅻ――幸せな時(後編)
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王城の敷地内にある、屋外の鍛錬場。そこでルエールとカリオスが模擬剣を手にして剣戟を打ち合っていた。
「っく! このっ!」
「……」
汗だくになって必死になりながら剣を振るうカリオスに対して、ルエールの方は至って無表情だった。単純作業をこなすように、いとも簡単にカリオスの剣を受け止める。
「ここが隙だらけです。ここも、ほらここも」
防戦一方だったルエールが反撃を始める。とはいってもひたすら連撃を繰り返すカリオスに対して2、3程度の攻撃。しかしその的確な攻撃を受け止めるため、カリオスは態勢を崩してしまう。そうして隙だらけとなった背中に、ルエールの模擬剣が容赦なく叩きおろされる。
「っくは……!」
「っああ!」
背中から腹に突き抜けるような激痛に、カリオスが目を剥いて前のめりに倒れると、その光景を見ていたプリメータが悲鳴のような声を漏らす。思わず駆け寄ろうとする彼女に、ルエールは念押しをするように視線で制する。
「お立ち下さい、カリオス殿下。昨日指摘した癖がまだ直っておりません。今日はそれが直るまで、何度でも」
「う、ぐ……くぅ」
容赦なく模擬剣の切っ先を突き付けてくるルエールを、カリオスは眼の涙を滲ませながら悔しそうに見上げる。
「ルエールのばかー!」
そんな緊迫したムードの中、幼い声がその空気をやんわりと切り裂く。
プリメータと手をつなぎながら2人の鍛錬を見学していたリリライトだった。
「兄様がかっこいいところを見られると思ったのに。兄様をいじめないで下さい! ルエールのばかばかばかー! ルエールなんて、だいきらいです!」
「こ、こらリリ。ダメですよ。そんな言葉使い」
「……」
プリメータにならともかく、無邪気なリリライトに言われてしまえば、ルエールは何も言えなくなってしまう。
頬をポリポリと掻いていると、カリオスが模擬剣を杖にしながらようやく立ち上がっていた。
「……るさい」
ギリギリと歯ぎしりをするようにしながらカリオスがボソリとつぶやく。そのつぶやきが耳に届くと、ルエールはこの少年王子の闘志がまだ枯れていないことを悟り、模擬剣を構えなおす。
「良い意気込みです。では、参ります」
結局この日の訓練は、カリオスは全身痣だらけになって動けなくなるまで続けられたのだった。
□■□■
「ねえねえ、ルエール。少しカリオスに厳しすぎるのだと思うのですけど」
ルエールがカリオスの護衛騎士になってから、いくつか月日が経って、ルエールはプリメータからそんなことを言われた。
「も、勿論アルマイト王家を……あの陛下の後を継ぐ子ですから、強くあらねばいけません。でも、まだ10歳そこそこの子供ですよ。何も焦らなくてもいいのではありませんか。成人するまでに神器を扱えれば、それでいいんですよね?」
あまりにも予想過ぎるプリメータの反応に、ルエールは瞳を閉じて胸の中だけで笑ってしまう。
「あ、笑っていますね? 分かりますよ」
不満がある時にいつもそうするように、プリメータがぷっくりと頬を膨らませると
「プリメータ様には敵いませんね」
今度はルエールも表情にも出して笑みを浮かべる。
「以前、カリオス殿下と共に城下町を歩いていた時――カリオス殿下は奴隷を見て、疑問を呈しておりました。奴隷として飼われている人間は、あれで幸せなのだろうか? 同じ人間なのに、どうしてこんなにも違うのか? そんなことをおっしゃられていました」
「――え?」
唐突な話題を振られて、プリメータはきょとんとしながらルエールを見返していた。
「当然の文化として根付いている奴隷制度に、王族であるカリオス殿下が誰にも言われることなくそのように気付ける事……これは、紛れもなくプリメータ様の優しさと愛情の賜物でしょう。カリオス殿下ならば、おそらくプリメータ様の理想を実現するやもしれません」
奴隷制度の廃止――この頃はまだ聖アルマイト王国でも許されていた制度。プリメータは王妃の立場からそれを廃止したいと常々思っており、ルエールもファヌス大戦時に、ファヌスの行き過ぎた身分制度を目の当たりにしてからはプリメータのその考えを支持する立場だった。
「最近は西方のヘルベルト方面に、連合を組もうという動きがあるという話です。これから世界はどんどん変わっていき、今までのような単純な武力だけでは何も成せないでしょう。理想を叶えるためには、力も、優しさも必要です。未来の王となる方には、それら全てが求められます。だから、未来の王たるカリオス殿下はその全てを有していあにといけない」
そのうちの優しさは、プリメータが与えた。
ならばルエールが担当するのは力だ。
優しさなき力はただの暴力で、力なき優しさはただの無力だ。
そのどちらにもならないよう、ルエールがアルマイト王家を支えるのだ。
「プリメータ様は、今はその愛情をリリライト姫に存分に向けて下さい。カリオス殿下がやがて王位を継ぐとき、側に支える方が必要でしょう。カリオス殿下の心が折れそうになる時もあるかもしれません――その時、リリライト姫がカリオス殿下を支える優しき姫となれるよう、今はありったけの愛情をリリライト様にお向け下さい」
これからの聖アルマイトを作っていくのは、カリオスらだ。リリライトが生まれる前にプリメータが言っていたように、子供達は希望そのものなのだ。
だからルエールは、希望を育てるために、子供世代の育成に全力を注ぐのだった。
□■□■
ミュリアルの死後も、アンナは順調に育っていた。
「うわぁぁぁ~~ん! ミンシィさ~ん!」
アンナも7歳になった。
良家の令嬢とは思えないくらいのお転婆ぶりは日々増していくばかりで、ヴァルガンダル邸には、いつも長女の騒がしさに揺れる毎日が訪れていた。
「ど、どうしたのですかアンナお嬢様」
庭で洗濯物を干していた侍女のミンシィは、泣きながらタックルするように抱き着いてくるアンナを慌てながら受け止める。
号泣しているアンナは、顔だけではなく、服も体も全身が泥だらけになっている。
「お父様に負けたのぉ! 悔しいよぅ! うわああああん!」
今やミンシィは、ミュリアルに代わってアンナの母親役を務める立場におり、若いながらもヴァルガンダル邸の侍女の中でもそれなりに地位にいる。だからアンナが母親としていつも甘える相手は、ミンシィだった。
そんなアンナの泣き声を聞いて、ミンシィは全てを察する。と、それに少し遅れてルエールが困ったような顔をして、庭に姿を現わしてくる。
「ミンシィ、すまない。アンナがここに……っと、やはりいたか」
「旦那様……」
見るとルエールの右手には木剣が握られている。そしてアンナも号泣しながらも、しっかりと右手に子供用の木剣を握っていた。
「旦那様は、馬鹿なのですか!?」
「うおお?」
ヴァルガンダル家に仕えたばかりの頃からは考えられない暴言。仕える家の当主に向けて、あろうことが馬鹿呼ばわりなどと有り得ない。が、ミンシィは唾を飛ばしながらルエールに怒鳴り散らす。
「どこに7歳の娘を相手にして、剣術で泣かせる親がおりますか! ましてや、世界一の剣の使い手である”剣士”の直系の旦那様が!」
「う、むう。しかしだな……アンナが……」
「しかしもお菓子もありませーーーーん! もう、女の子なのにこんなに泥と傷だらけになってしまって……」
そうやって泣きつくアンナの泥を払ってやろうと、ミンシィはしゃがみこむ。
「……あっ、そうだぁ! 思い付いたぁ!」
しかし、あれだけ号泣していたアンナはとっくに泣き止んでいた。そして何かを思いついたように顔を輝かせながら、ミンシィの元を離れてパタパタとルエールへと近づく。
すると子供らしいすばしっこい動作で、ルエールの持っていた木剣をひったくると、自分の持っていた木剣と合わせて、2人の剣を構える。
大人用の長い木剣と子供用の小さな木剣を構えながら、ここぞとばかりにドヤ顔を見せるアンナ。
「ふっふーん! 1本で勝てないなら、2本で戦えばいいんだ! お父様、もう1回! もう1回だけやろう!」
それは幼いアンナの幼い考えであることは間違いない。しかし、その発想は“剣士”の血筋に生まれた資質によるものなのだろうか。
自信満々に2本の剣を構えるアンナを見て、ルエールは驚愕の色を隠せない。
息子ではなく娘が生まれた時、ルエールは自分の子供を剣士として育てることは考えていなかった。剣や戦いよりも、本や料理などを好むような、いわゆる”女の子”らしい子供に育てようと思っていたし、亡きミュリアルもそれを望んでいた。
別の言い方をするならば、ルエールは剣士としての後継の教育を諦めていたとも言い換えられる。
しかしアンナは男顔負けくらいに、自ら嬉々として剣術修行を望み、偉大なる父に果敢に挑んでくる。そしてこの幼い歳から、何とかして父に勝とうと、双剣という発想に至る。奇しくも、その双剣というスタイルは、ルエールが苦手としているものなのに。
そんな娘の成長を見ていて、ルエールが嬉しくないはずがなかった。勿論、ミュリアルが望んだような「女の子らしい」育ち方でも、ルエールは充分に幸せだった。しかし”剣士”の家系に生まれたルエールとしては、やはり子供も”剣士”としてそだてない気持ちも、どうしてもあるのだ。
それは、ミュリアルが育てたいと思っていたのとは違う方向かもしれない。しかし、そんな彼女でも、おそらくルエールとアンナが笑えるのなら、それでも――
「いたたたた! 痛い、痛いよぅ、ミンシィさん!」
「もう、ダメですお嬢様! とにかく手当てです! 女の子のなのに傷が残ったら大変ですよ!」
いつの間にやら、ミュリアルがアンナの耳を引っ張って叱責している。
「やーだー! もう1回! もう1回だけ、いいでしょ? だって、もう少しで1本取れそうだったのにー!」
とにかくアンナを大事に育て上げること。それが、彼女がミュリアルから託されたことで、そのためには主人だろうがその娘だろうが、ミンシィは遠慮している場合ではなかった。
ミュリアルが注げなかった分の愛情のほんの一部でもアンナに注ぐ。それは甘やかしだけではなく、厳しさも併せて。特に厳しさについては、肝心のルエールが出来ないのだから、ミンシィしかやる人間がいない。
「ミ、ミンシィ。ちょっと厳しすぎるのでは……」
と、自らの侍女にも関わらず、恐る恐る声をかけるルエールだったが、ミンシィはギン!と目を鋭く光らせると
「旦那様は黙っていて下さい!」
「――はい」
王族とはいえ他人の息子――カリオス――には厳しく出来ても、自らの娘はどうしても甘やかしてしまう。
それこそまさしく、ヴァルガンダルだとか英雄の家系などは関係のない、ただのごく平凡な父親の姿がそこにあった。
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更に時は経ち、アンナは12歳となっていた。
もしも聖アルマイト王国で騎士を目指すのであれば、この歳から一般教育機関と言われる騎士養成学校へ通うことが普通である。或いは騎士が養成学校以外の教養学校へ通うか、家に残って花嫁修業に入るかなど。
女性として”剣士”の家系ヴァルガンダルに生まれたアンナにとって、将来の分水嶺となる歳であった。
しかしいくらアンナ個人の進路の話とて、そこはルエールとアンナの父娘間だけの問題ではない。
「ルエール卿、本当に後妻を娶るつもりはないのでしょうか?」
最近の『親族会議』では、専らその話題が取沙汰されていた。
男児が生まれないままアンナが成長し、ルエール自身もミュリアル以外と婚姻するつもりがないと明言している以上、利害関係にある『親族』達がヴァルガンダルの後継について懸念しないはずがなかった。
「これはヴァルガンダル家だけの問題ではありませんぞ。代々続くヴァルガンダルの血を、ここで絶やしていいはずがありません。どうか、再考を」
そうやって言ってくる『親族』連中に、本気でヴァルガンダル家のことを案じているものなどいないだろう。どれもこれも、空座となったヴァルガンダル家当主の正妻という立場に、自分の息のかかった者を居座らせたいという魂胆なのは明らかだ。そしてその者がルエールの子を――しかも今度こそ男児を産めば、その子がヴァルガンダル家の後継者となる。
もしもそうなれば先に生まれたアンナなど問題にならず、ガンドロフに代わってこの『親族会議』の権力を握ることも出来る。
「いい加減しつこいぞ。1人の女へ生涯思いを通す――それもまた、聖アルマイトの騎士として尊ばれる誇り高き意志だ。そこに、血筋だなんだといった事情など、関係も無かろう」
そうしてルエールの思いをサポートするのは、相変わらず『親族会議』の場において最大権力を有するガンドロフだった。
アンナが生まれた時に一時は勢いを衰えさせたものの、その卓越なる権謀術数は健在。ミュリアルやアンナ以外の家族は作らないというルエールの意志とも合致していることから、『親族会議』での立場は維持しつつ、王宮内でも大臣職に次ぐ程の影響力を持つに至っていた。
しかし、当然ガンドロフは情によってルエールの味方をしていたわけではない。
□■□■
「義父上」
『親族会議』が終わり解散となった後、ヴァルガンダル邸内でルエールはガンドロフを呼び止めると、ガンドロフは露骨にニタニタとした表情を作る。
「おお、ルエール卿か。会議はご苦労だったな」
そのニタニタとした顔は、決して親愛などではない。相手の機嫌を損ねないよう、そして警戒心を抱かせずに、その隙を狙う狸のような狡猾さがにじみ出ているようだった。
「たまには、アンナにも会ってやっていただけませぬか。アンナは、未だに義父のことを「ガンドロフおじさん」などと言うのです。ほんの少しでも祖父らしいことを……」
「うむうむ、そうだなぁ。確かに孫に爺として玩具の1つも買ってやったこともないからなぁ。あの娘は何が欲しい? 今時、あの頃の年代の子らは何が流行っているのかのぅ?」
ルエールの言葉を食い気味に、上機嫌にガンドロフが言ってくる。それが真に孫のことを想うのではなく、あくまでもルエールのご機嫌取りのため――ルエールもそれは分かっていたが、それでもいいと思っていた。
アンナにはヴァルガンダルの名など関係なく、普通の娘として、自由奔放に幸せに生きてほしい。それがルエールとミュリアルの共通する思いであり、だからガンドロフにもアンナに普通の祖父として愛情を注いで欲しいと願う。
その腹の内は色々と歪んでいるとしても、そのきっかけになるのであれば。
ルエールはそう思いながら、自分が知る限りのアンナの欲しがっている物などをガンドロフへ伝えながら、両者は立ち話を続ける。
「なるほど、なるほど。……それにしても、あの娘もミュリアル似の美人になるだろうなぁ」
「――?」
急に話の風向きが変わったことに、ルエールは僅かに反応する。気づけばガンドロフの顔の笑みは、より深く醜悪に歪んでいるように見えた。
「いや、なに。こういう話は早い方がいいかと思ってのぅ」
「何の話でしょうか?」
いつものように回りくどい話し方をするガンドロフの意図が、ルエールはいまいち見えなかった。そんなルエールの理解の薄さにも、ガンドロフはニヤけ面を微塵にも変えない。
「このままであれば、ヴァルガンダルはあの娘が継ぐことになるだろう? 正確には、その夫となる者だが。こういう話は早い方が良い。オブライト家の遠縁となるのだが、良い男がいる。歳は少し離れているが――」
「――っ!」
そこまでの言葉で、ルエールはようやく察する。
ヴァルガンダル家の後継者に自らの直系をあてがうことは早々に諦めたのだろう。女のアンナではそれが敵わないと判断すると、今度はオブライト家に関わる中で自分の息をかかった人間をアンナの夫として据えようとしているのだ。
そうなれば、結果的には時代のヴァルガンダル家夫妻は、どちらもガンドロフの血縁関係となり、よりガンドロフの権威は強まる。アルマイト王家に次ぐ程に迫るだろう。
「アンナはまだ12です。いくらなんでも、まだ早過ぎます」
「早いも何もないだろう。貴族の娘で早ければ、もう花嫁修業を始めてもいい歳だぞ」
「……アンナはそれを望んでおりません。剣を学びたいと、そう言っています」
そんなルエールの発言に、ガンドロフは大袈裟な所作で天を仰ぎながら目を抑える。
「本気か? 本気で言っているのか、ルエール卿。あの娘に騎士でも目指させるつもりか?」
「本人がそれを望むのであれば」
「有り得ん! ヴァルガンダルの娘でありながら、白薔薇騎士でも目指すとでもいうのかね? アイリーン卿が亡くなったとはいえ、白薔薇騎士団におけるレイオール家の力は健在だ。その中にヴァルガンダル家の娘が入ったところで、ヴァルガンダルの格を下げるだけだ。それだけは断じてならん」
ガンドロフからすればあまりに馬鹿げた話に、ガンドロフは取り繕うことも忘れて感情的になってルエールに喰ってかかる。
「今すぐにでも、ヴァルガンダル家を支える妻としての修行を積んだ方がいい! 間違いない!」
「……ヴァルガンダル家を支える妻としての修行?」
「そうだ! もう12だ! いつまでも子供じみたチャンバラごっこになどかまけている年齢ではない。家を守りながら子を育て、常に一歩下がって夫を立てる貞淑な妻になるための修行だ! そうやってヴァルガンダル家の女として必要なことを身に付けることがナンナの幸せ――!」
そこで、ガンドロフの声が詰まったように途切れる。
何が起こったのかガンドロフ自身にも分からなかった。
気づいた時には、ガンドロフはルエールに襟元を掴まれて壁に押し付けられていた。
「がはっ……な、何を……っ!」
「アンナ、です。義父上」
ルエールらしい静かな口調――しかしそこには言葉だけで心臓を切り裂くような鋭さが確かに込められていた。
そしてガンドロフを突き刺すように見上げる鋭い眼光に、思わずガンドロフはひっと小さな悲鳴を零す。
「死したミュリアルのことを気にもかけず、そのミュリアルが残した忘れ形見であるはずのアンナに祖父としての愛情を与えずに、権力に固執することは構わない」
実際、そうやってガンドロフが王宮における政争関係の一切を担っているからヴァルガンダル家が助かっている部分も少なくない。
だから、ルエールからガンドロフに普通の家族としての情愛までを求めることはない。
しかし――
「あの娘に……アンナにヴァルガンダルの重荷は背負わせない。私やミュリアルと同じ苦労は絶対に味あわせない。それは私の代で終わらせる。だから、アンナはヴァルガンダルの家名とは関係ない世界で生きるのだ。
だからアンナの幸せは、貴様でも私でもない――アンナが決めるのだ。アンナをヴァルガンダルの家名に巻き込み、苦しめることは絶対に許さない。そんなものがあれば、勇者だろうが龍だろうが魔王だろうが、剣士の名にかけて私が全て斬り伏せる。それだけは覚えておけ、狸」
「ひっ、ひええっ……! げ、げふ……!」
”剣士”の血を継ぐルエールの本気の殺気に、ガンドロフはガクガクと全身を震わせる。そして首を絞められながら、口には泡が吹いてきたところで、ルエールはようやくガンドロフから手を放し、そのまま踵を返してスタスタと歩き去ってしまう。
「あひ……くは……お、おのれ……おのれぇぇ!」
腰に力が入らなくなったガンドロフは、そのまま壁に背中を擦らすようにして地面に腰をつきながら、去って行くルエールの背中に向かって言葉を投げつける。
「ち、調子にのるなよ! 誰のおかげで今のヴァルガンダルがあると思っておる! 今のオブライト家の力を持ってすれば、ヴァルガンダルなど王宮から追い出すことなど難しくもなんともないぞ!」
そんな空虚な脅しなど、ルエールは振り向くこともせずに、そのままガンドロフの前から姿を消すのだった。
▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
「聞いたぞ、ルエール」
ある意味ではガンドロフと決別をしたと言ってもいいあの日から数日後、いつものように王宮でカリオスと顔を合わせた時に、カリオスは可笑しそうに笑っていた。
「オブライト家のガンドロフと喧嘩したらしいな」
「その話ですか……」
この時、カリオスは18歳。未だ神器は使えず、リリライトとの仲もギクシャクとしている時だった。
しかしそれ以外の部分では、ルエールやプリメータの努力の甲斐もあって、王族として相応しい青年となっていた。父ヴィジオール、母プリメータと共に政治や戦争にも参加する程に育っていたのだった。
「鬼の護衛騎士も、自分の娘のこととなると変わるもんだなぁ。普段はあれだけオブライト家に頭が上がらんくせに」
相変わらず剣の鍛錬では、カリオスはルエールに及ばないでいいようにやられている。ここぞとばかりに、カリオスが勝ち誇ったように言うとルエールは嘆息する。
「ヴァルガンダルに関わる話ですので……殿下のお手を煩わせることはございません」
「いやいや、そういうことじゃねえぞルエール」
殊勝とも言える態度に、カリオスはすかさず首を振ってくる。
「別に、俺は女がヴァルガンダルの名を継いだって問題ないと思ってる。男が家名を継がないといけない決まりはない――っていうか、レイオール家は、サイドラスが失脚してからはシンパが当主だろ。レイオールだけ良くて、ヴァルガンダルがダメなのは、理屈が通らん」
「それは……」
理屈では確かにカリオスの言う通りだが、それまでの慣習というのは根深い。代々続いてきた文化や慣習を、特権によって強引に変えようとするならば、必ず軋轢が生まれるだろう。そんな簡単な話ならば、ルエールも困っていない。
しかしそんなルエールの困惑をカリオスは笑い飛ばす。
「お前の娘は、確かリリライトと同い歳だろう? あいつなんか、まだお花摘みばっかりしてる子供だぞ。結婚なんてばからしい。ガンドロフの戯言なんて、無視だ無視」
「私も今のアンナに結婚の話などと、馬鹿げた話だと思っております。しかし現状ヴァルガンダルはオブライト家の支えなしには立ちゆかないことも事実。私は早まった真似をしたやもしれません」
本当にそうやって公開しているのか分からないくらいに感情の見えない声で言うルエールに、カリオスは「はぁ~」と大きくため息を吐いた。
「お前、本当に剣は強い癖に、政治はからっきしだな」
「……殿下?」
カリオスはルエールに近づくと、声を潜める。
「腹を割って話そう。最近、オブライト家の存在が目障りになってきた。陛下があまり国内政治に興味がないのをいいことに、王宮で私腹を肥やしている。母上も上手くけん制されていていいようにやられていて……実は最近体調も良くない。ぶっちゃけて言うと、ガンドロフ一派の存在が邪魔だ」
「殿下、それは……」
カリオスの意図を察したルエールが驚きの声を零すと、カリオスはうなずく。
「『御前会議』での態度も目に余るものがある。しかし何とかしようにも既に王宮内ではオブライト家の力は甚大で、アルマイト家の力でも厄介だ。だからといって野放しにも出来ん。
実力で排する手も無くはないが、強引な手段に出て今オブライト家の勢力の反発を招くのは良くない。西方のヘルベルト方面で連合擁立の動きや、ネルグリアとの関係も上手くいってないこの状況で叛乱なんて起こされたら最悪だ」
王族にここまで言わせるとは、ガンドロフの手練手管を甘く見積もっていた。そのカリオスの言を聞けば、先日の自分の行いは先走り過ぎたという後悔の念ばかりが強くなっていく。
しかしそれでも娘のアンナを、そんな政治や権力闘争に巻き込ませることは、どうしても許せなかった。
「だが、お前が……ヴァルガンダル家が本気でオブライト家との関係を断つというのなら、奴を失脚に追い込める」
そう言うカリオスへ、ルエールはハッとした表情を向ける。
「――約束しよう。ヴァルガンダル家とオブライト家が対立した時、アルマイト家は必ずヴァルガンダルの側に付くと。母上は元より、陛下のことも何としても俺が説得する。だから俺を信じて付いてきてくれ、ルエール」
「……」
――本当に、立派な王子になられた。
ついこの間まで、鍛錬で打ちのめされて泣きべそをかいていたと思っていたら、今は真っ直ぐな瞳でこちらを向き、助けの手を差し伸べている。
(これからの聖アルマイトを作っていくのは、カリオス殿下や……アンナのような若い世代なのだろうな)
カリオスは、戦争ばかりで聖アルマイトという国を築いてきたヴィジオールとは違う方法で国を作ろうとしている。カリオスがそうやって、今までの方法や慣習に取らわらず自らが思う方法を選ぶのは、利益や快楽を貪るためではない。この国に住まう全ての人々の幸せのため。
プリメータは言った。自分の子供達は未来を作る希望そのものだと。
そしてプリメータが言った通り、カリオスは聖アルマイトの未来を築く希望となっていた。
「どうして、第1王子の護衛騎士たる私がその手を拒絶出来ましょうか。元々ヴァルガンダル家はアルマイト家の側近を務める家系――あなたに付いて行きます、カリオス殿下」
「……よっしゃ」
膝をつき頭を下げるルエールを見て、カリオスは満足そうにうなずく。
「まあ、家柄を考えたらさすがに完全な自由恋愛ってのは難しいかもしれねぇが……それでも、そんな結婚は無いよなぁ。安心しろ。ヴァルガンダルの家名も、お前の娘も俺が守る。だから、お前はお前のやるべきことを頼むわ」
そうやって悪戯っぽく笑うカリオスは、あえて軽薄な口調で言う。その言葉を聞いて、ルエールは根拠もなく確信した。
オブライト家の失脚うんぬんなどでは建前で、こちらがこの王子の本心なのだろうな、と。
――なんという優しい王子なのだろうか。
その後数年と言う時間はかかったものの、カリオスは宣言通り王宮からガンドロフ一派を失脚させることに成功。
ヴァルガンダル家とオブライト家の癒着とも言える不健全な関係は完全に解消された。
それまでオブライト家が担っていたヴァルガンダル家のサポートはカリオスが協力することで、ヴァルガンダル家は没落する以前の健全さを取り戻すことが出来たのだった。
結果的にではあるが、ルエールがヴァルガンダルの家名をよりもミュリアルやアンナの幸せを優先するという信念を貫き通したことがカリオスの胸を打ち、オブライト家という最大の逆風を取り払うことに繋がったのだった。
「っく! このっ!」
「……」
汗だくになって必死になりながら剣を振るうカリオスに対して、ルエールの方は至って無表情だった。単純作業をこなすように、いとも簡単にカリオスの剣を受け止める。
「ここが隙だらけです。ここも、ほらここも」
防戦一方だったルエールが反撃を始める。とはいってもひたすら連撃を繰り返すカリオスに対して2、3程度の攻撃。しかしその的確な攻撃を受け止めるため、カリオスは態勢を崩してしまう。そうして隙だらけとなった背中に、ルエールの模擬剣が容赦なく叩きおろされる。
「っくは……!」
「っああ!」
背中から腹に突き抜けるような激痛に、カリオスが目を剥いて前のめりに倒れると、その光景を見ていたプリメータが悲鳴のような声を漏らす。思わず駆け寄ろうとする彼女に、ルエールは念押しをするように視線で制する。
「お立ち下さい、カリオス殿下。昨日指摘した癖がまだ直っておりません。今日はそれが直るまで、何度でも」
「う、ぐ……くぅ」
容赦なく模擬剣の切っ先を突き付けてくるルエールを、カリオスは眼の涙を滲ませながら悔しそうに見上げる。
「ルエールのばかー!」
そんな緊迫したムードの中、幼い声がその空気をやんわりと切り裂く。
プリメータと手をつなぎながら2人の鍛錬を見学していたリリライトだった。
「兄様がかっこいいところを見られると思ったのに。兄様をいじめないで下さい! ルエールのばかばかばかー! ルエールなんて、だいきらいです!」
「こ、こらリリ。ダメですよ。そんな言葉使い」
「……」
プリメータにならともかく、無邪気なリリライトに言われてしまえば、ルエールは何も言えなくなってしまう。
頬をポリポリと掻いていると、カリオスが模擬剣を杖にしながらようやく立ち上がっていた。
「……るさい」
ギリギリと歯ぎしりをするようにしながらカリオスがボソリとつぶやく。そのつぶやきが耳に届くと、ルエールはこの少年王子の闘志がまだ枯れていないことを悟り、模擬剣を構えなおす。
「良い意気込みです。では、参ります」
結局この日の訓練は、カリオスは全身痣だらけになって動けなくなるまで続けられたのだった。
□■□■
「ねえねえ、ルエール。少しカリオスに厳しすぎるのだと思うのですけど」
ルエールがカリオスの護衛騎士になってから、いくつか月日が経って、ルエールはプリメータからそんなことを言われた。
「も、勿論アルマイト王家を……あの陛下の後を継ぐ子ですから、強くあらねばいけません。でも、まだ10歳そこそこの子供ですよ。何も焦らなくてもいいのではありませんか。成人するまでに神器を扱えれば、それでいいんですよね?」
あまりにも予想過ぎるプリメータの反応に、ルエールは瞳を閉じて胸の中だけで笑ってしまう。
「あ、笑っていますね? 分かりますよ」
不満がある時にいつもそうするように、プリメータがぷっくりと頬を膨らませると
「プリメータ様には敵いませんね」
今度はルエールも表情にも出して笑みを浮かべる。
「以前、カリオス殿下と共に城下町を歩いていた時――カリオス殿下は奴隷を見て、疑問を呈しておりました。奴隷として飼われている人間は、あれで幸せなのだろうか? 同じ人間なのに、どうしてこんなにも違うのか? そんなことをおっしゃられていました」
「――え?」
唐突な話題を振られて、プリメータはきょとんとしながらルエールを見返していた。
「当然の文化として根付いている奴隷制度に、王族であるカリオス殿下が誰にも言われることなくそのように気付ける事……これは、紛れもなくプリメータ様の優しさと愛情の賜物でしょう。カリオス殿下ならば、おそらくプリメータ様の理想を実現するやもしれません」
奴隷制度の廃止――この頃はまだ聖アルマイト王国でも許されていた制度。プリメータは王妃の立場からそれを廃止したいと常々思っており、ルエールもファヌス大戦時に、ファヌスの行き過ぎた身分制度を目の当たりにしてからはプリメータのその考えを支持する立場だった。
「最近は西方のヘルベルト方面に、連合を組もうという動きがあるという話です。これから世界はどんどん変わっていき、今までのような単純な武力だけでは何も成せないでしょう。理想を叶えるためには、力も、優しさも必要です。未来の王となる方には、それら全てが求められます。だから、未来の王たるカリオス殿下はその全てを有していあにといけない」
そのうちの優しさは、プリメータが与えた。
ならばルエールが担当するのは力だ。
優しさなき力はただの暴力で、力なき優しさはただの無力だ。
そのどちらにもならないよう、ルエールがアルマイト王家を支えるのだ。
「プリメータ様は、今はその愛情をリリライト姫に存分に向けて下さい。カリオス殿下がやがて王位を継ぐとき、側に支える方が必要でしょう。カリオス殿下の心が折れそうになる時もあるかもしれません――その時、リリライト姫がカリオス殿下を支える優しき姫となれるよう、今はありったけの愛情をリリライト様にお向け下さい」
これからの聖アルマイトを作っていくのは、カリオスらだ。リリライトが生まれる前にプリメータが言っていたように、子供達は希望そのものなのだ。
だからルエールは、希望を育てるために、子供世代の育成に全力を注ぐのだった。
□■□■
ミュリアルの死後も、アンナは順調に育っていた。
「うわぁぁぁ~~ん! ミンシィさ~ん!」
アンナも7歳になった。
良家の令嬢とは思えないくらいのお転婆ぶりは日々増していくばかりで、ヴァルガンダル邸には、いつも長女の騒がしさに揺れる毎日が訪れていた。
「ど、どうしたのですかアンナお嬢様」
庭で洗濯物を干していた侍女のミンシィは、泣きながらタックルするように抱き着いてくるアンナを慌てながら受け止める。
号泣しているアンナは、顔だけではなく、服も体も全身が泥だらけになっている。
「お父様に負けたのぉ! 悔しいよぅ! うわああああん!」
今やミンシィは、ミュリアルに代わってアンナの母親役を務める立場におり、若いながらもヴァルガンダル邸の侍女の中でもそれなりに地位にいる。だからアンナが母親としていつも甘える相手は、ミンシィだった。
そんなアンナの泣き声を聞いて、ミンシィは全てを察する。と、それに少し遅れてルエールが困ったような顔をして、庭に姿を現わしてくる。
「ミンシィ、すまない。アンナがここに……っと、やはりいたか」
「旦那様……」
見るとルエールの右手には木剣が握られている。そしてアンナも号泣しながらも、しっかりと右手に子供用の木剣を握っていた。
「旦那様は、馬鹿なのですか!?」
「うおお?」
ヴァルガンダル家に仕えたばかりの頃からは考えられない暴言。仕える家の当主に向けて、あろうことが馬鹿呼ばわりなどと有り得ない。が、ミンシィは唾を飛ばしながらルエールに怒鳴り散らす。
「どこに7歳の娘を相手にして、剣術で泣かせる親がおりますか! ましてや、世界一の剣の使い手である”剣士”の直系の旦那様が!」
「う、むう。しかしだな……アンナが……」
「しかしもお菓子もありませーーーーん! もう、女の子なのにこんなに泥と傷だらけになってしまって……」
そうやって泣きつくアンナの泥を払ってやろうと、ミンシィはしゃがみこむ。
「……あっ、そうだぁ! 思い付いたぁ!」
しかし、あれだけ号泣していたアンナはとっくに泣き止んでいた。そして何かを思いついたように顔を輝かせながら、ミンシィの元を離れてパタパタとルエールへと近づく。
すると子供らしいすばしっこい動作で、ルエールの持っていた木剣をひったくると、自分の持っていた木剣と合わせて、2人の剣を構える。
大人用の長い木剣と子供用の小さな木剣を構えながら、ここぞとばかりにドヤ顔を見せるアンナ。
「ふっふーん! 1本で勝てないなら、2本で戦えばいいんだ! お父様、もう1回! もう1回だけやろう!」
それは幼いアンナの幼い考えであることは間違いない。しかし、その発想は“剣士”の血筋に生まれた資質によるものなのだろうか。
自信満々に2本の剣を構えるアンナを見て、ルエールは驚愕の色を隠せない。
息子ではなく娘が生まれた時、ルエールは自分の子供を剣士として育てることは考えていなかった。剣や戦いよりも、本や料理などを好むような、いわゆる”女の子”らしい子供に育てようと思っていたし、亡きミュリアルもそれを望んでいた。
別の言い方をするならば、ルエールは剣士としての後継の教育を諦めていたとも言い換えられる。
しかしアンナは男顔負けくらいに、自ら嬉々として剣術修行を望み、偉大なる父に果敢に挑んでくる。そしてこの幼い歳から、何とかして父に勝とうと、双剣という発想に至る。奇しくも、その双剣というスタイルは、ルエールが苦手としているものなのに。
そんな娘の成長を見ていて、ルエールが嬉しくないはずがなかった。勿論、ミュリアルが望んだような「女の子らしい」育ち方でも、ルエールは充分に幸せだった。しかし”剣士”の家系に生まれたルエールとしては、やはり子供も”剣士”としてそだてない気持ちも、どうしてもあるのだ。
それは、ミュリアルが育てたいと思っていたのとは違う方向かもしれない。しかし、そんな彼女でも、おそらくルエールとアンナが笑えるのなら、それでも――
「いたたたた! 痛い、痛いよぅ、ミンシィさん!」
「もう、ダメですお嬢様! とにかく手当てです! 女の子のなのに傷が残ったら大変ですよ!」
いつの間にやら、ミュリアルがアンナの耳を引っ張って叱責している。
「やーだー! もう1回! もう1回だけ、いいでしょ? だって、もう少しで1本取れそうだったのにー!」
とにかくアンナを大事に育て上げること。それが、彼女がミュリアルから託されたことで、そのためには主人だろうがその娘だろうが、ミンシィは遠慮している場合ではなかった。
ミュリアルが注げなかった分の愛情のほんの一部でもアンナに注ぐ。それは甘やかしだけではなく、厳しさも併せて。特に厳しさについては、肝心のルエールが出来ないのだから、ミンシィしかやる人間がいない。
「ミ、ミンシィ。ちょっと厳しすぎるのでは……」
と、自らの侍女にも関わらず、恐る恐る声をかけるルエールだったが、ミンシィはギン!と目を鋭く光らせると
「旦那様は黙っていて下さい!」
「――はい」
王族とはいえ他人の息子――カリオス――には厳しく出来ても、自らの娘はどうしても甘やかしてしまう。
それこそまさしく、ヴァルガンダルだとか英雄の家系などは関係のない、ただのごく平凡な父親の姿がそこにあった。
▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
更に時は経ち、アンナは12歳となっていた。
もしも聖アルマイト王国で騎士を目指すのであれば、この歳から一般教育機関と言われる騎士養成学校へ通うことが普通である。或いは騎士が養成学校以外の教養学校へ通うか、家に残って花嫁修業に入るかなど。
女性として”剣士”の家系ヴァルガンダルに生まれたアンナにとって、将来の分水嶺となる歳であった。
しかしいくらアンナ個人の進路の話とて、そこはルエールとアンナの父娘間だけの問題ではない。
「ルエール卿、本当に後妻を娶るつもりはないのでしょうか?」
最近の『親族会議』では、専らその話題が取沙汰されていた。
男児が生まれないままアンナが成長し、ルエール自身もミュリアル以外と婚姻するつもりがないと明言している以上、利害関係にある『親族』達がヴァルガンダルの後継について懸念しないはずがなかった。
「これはヴァルガンダル家だけの問題ではありませんぞ。代々続くヴァルガンダルの血を、ここで絶やしていいはずがありません。どうか、再考を」
そうやって言ってくる『親族』連中に、本気でヴァルガンダル家のことを案じているものなどいないだろう。どれもこれも、空座となったヴァルガンダル家当主の正妻という立場に、自分の息のかかった者を居座らせたいという魂胆なのは明らかだ。そしてその者がルエールの子を――しかも今度こそ男児を産めば、その子がヴァルガンダル家の後継者となる。
もしもそうなれば先に生まれたアンナなど問題にならず、ガンドロフに代わってこの『親族会議』の権力を握ることも出来る。
「いい加減しつこいぞ。1人の女へ生涯思いを通す――それもまた、聖アルマイトの騎士として尊ばれる誇り高き意志だ。そこに、血筋だなんだといった事情など、関係も無かろう」
そうしてルエールの思いをサポートするのは、相変わらず『親族会議』の場において最大権力を有するガンドロフだった。
アンナが生まれた時に一時は勢いを衰えさせたものの、その卓越なる権謀術数は健在。ミュリアルやアンナ以外の家族は作らないというルエールの意志とも合致していることから、『親族会議』での立場は維持しつつ、王宮内でも大臣職に次ぐ程の影響力を持つに至っていた。
しかし、当然ガンドロフは情によってルエールの味方をしていたわけではない。
□■□■
「義父上」
『親族会議』が終わり解散となった後、ヴァルガンダル邸内でルエールはガンドロフを呼び止めると、ガンドロフは露骨にニタニタとした表情を作る。
「おお、ルエール卿か。会議はご苦労だったな」
そのニタニタとした顔は、決して親愛などではない。相手の機嫌を損ねないよう、そして警戒心を抱かせずに、その隙を狙う狸のような狡猾さがにじみ出ているようだった。
「たまには、アンナにも会ってやっていただけませぬか。アンナは、未だに義父のことを「ガンドロフおじさん」などと言うのです。ほんの少しでも祖父らしいことを……」
「うむうむ、そうだなぁ。確かに孫に爺として玩具の1つも買ってやったこともないからなぁ。あの娘は何が欲しい? 今時、あの頃の年代の子らは何が流行っているのかのぅ?」
ルエールの言葉を食い気味に、上機嫌にガンドロフが言ってくる。それが真に孫のことを想うのではなく、あくまでもルエールのご機嫌取りのため――ルエールもそれは分かっていたが、それでもいいと思っていた。
アンナにはヴァルガンダルの名など関係なく、普通の娘として、自由奔放に幸せに生きてほしい。それがルエールとミュリアルの共通する思いであり、だからガンドロフにもアンナに普通の祖父として愛情を注いで欲しいと願う。
その腹の内は色々と歪んでいるとしても、そのきっかけになるのであれば。
ルエールはそう思いながら、自分が知る限りのアンナの欲しがっている物などをガンドロフへ伝えながら、両者は立ち話を続ける。
「なるほど、なるほど。……それにしても、あの娘もミュリアル似の美人になるだろうなぁ」
「――?」
急に話の風向きが変わったことに、ルエールは僅かに反応する。気づけばガンドロフの顔の笑みは、より深く醜悪に歪んでいるように見えた。
「いや、なに。こういう話は早い方がいいかと思ってのぅ」
「何の話でしょうか?」
いつものように回りくどい話し方をするガンドロフの意図が、ルエールはいまいち見えなかった。そんなルエールの理解の薄さにも、ガンドロフはニヤけ面を微塵にも変えない。
「このままであれば、ヴァルガンダルはあの娘が継ぐことになるだろう? 正確には、その夫となる者だが。こういう話は早い方が良い。オブライト家の遠縁となるのだが、良い男がいる。歳は少し離れているが――」
「――っ!」
そこまでの言葉で、ルエールはようやく察する。
ヴァルガンダル家の後継者に自らの直系をあてがうことは早々に諦めたのだろう。女のアンナではそれが敵わないと判断すると、今度はオブライト家に関わる中で自分の息をかかった人間をアンナの夫として据えようとしているのだ。
そうなれば、結果的には時代のヴァルガンダル家夫妻は、どちらもガンドロフの血縁関係となり、よりガンドロフの権威は強まる。アルマイト王家に次ぐ程に迫るだろう。
「アンナはまだ12です。いくらなんでも、まだ早過ぎます」
「早いも何もないだろう。貴族の娘で早ければ、もう花嫁修業を始めてもいい歳だぞ」
「……アンナはそれを望んでおりません。剣を学びたいと、そう言っています」
そんなルエールの発言に、ガンドロフは大袈裟な所作で天を仰ぎながら目を抑える。
「本気か? 本気で言っているのか、ルエール卿。あの娘に騎士でも目指させるつもりか?」
「本人がそれを望むのであれば」
「有り得ん! ヴァルガンダルの娘でありながら、白薔薇騎士でも目指すとでもいうのかね? アイリーン卿が亡くなったとはいえ、白薔薇騎士団におけるレイオール家の力は健在だ。その中にヴァルガンダル家の娘が入ったところで、ヴァルガンダルの格を下げるだけだ。それだけは断じてならん」
ガンドロフからすればあまりに馬鹿げた話に、ガンドロフは取り繕うことも忘れて感情的になってルエールに喰ってかかる。
「今すぐにでも、ヴァルガンダル家を支える妻としての修行を積んだ方がいい! 間違いない!」
「……ヴァルガンダル家を支える妻としての修行?」
「そうだ! もう12だ! いつまでも子供じみたチャンバラごっこになどかまけている年齢ではない。家を守りながら子を育て、常に一歩下がって夫を立てる貞淑な妻になるための修行だ! そうやってヴァルガンダル家の女として必要なことを身に付けることがナンナの幸せ――!」
そこで、ガンドロフの声が詰まったように途切れる。
何が起こったのかガンドロフ自身にも分からなかった。
気づいた時には、ガンドロフはルエールに襟元を掴まれて壁に押し付けられていた。
「がはっ……な、何を……っ!」
「アンナ、です。義父上」
ルエールらしい静かな口調――しかしそこには言葉だけで心臓を切り裂くような鋭さが確かに込められていた。
そしてガンドロフを突き刺すように見上げる鋭い眼光に、思わずガンドロフはひっと小さな悲鳴を零す。
「死したミュリアルのことを気にもかけず、そのミュリアルが残した忘れ形見であるはずのアンナに祖父としての愛情を与えずに、権力に固執することは構わない」
実際、そうやってガンドロフが王宮における政争関係の一切を担っているからヴァルガンダル家が助かっている部分も少なくない。
だから、ルエールからガンドロフに普通の家族としての情愛までを求めることはない。
しかし――
「あの娘に……アンナにヴァルガンダルの重荷は背負わせない。私やミュリアルと同じ苦労は絶対に味あわせない。それは私の代で終わらせる。だから、アンナはヴァルガンダルの家名とは関係ない世界で生きるのだ。
だからアンナの幸せは、貴様でも私でもない――アンナが決めるのだ。アンナをヴァルガンダルの家名に巻き込み、苦しめることは絶対に許さない。そんなものがあれば、勇者だろうが龍だろうが魔王だろうが、剣士の名にかけて私が全て斬り伏せる。それだけは覚えておけ、狸」
「ひっ、ひええっ……! げ、げふ……!」
”剣士”の血を継ぐルエールの本気の殺気に、ガンドロフはガクガクと全身を震わせる。そして首を絞められながら、口には泡が吹いてきたところで、ルエールはようやくガンドロフから手を放し、そのまま踵を返してスタスタと歩き去ってしまう。
「あひ……くは……お、おのれ……おのれぇぇ!」
腰に力が入らなくなったガンドロフは、そのまま壁に背中を擦らすようにして地面に腰をつきながら、去って行くルエールの背中に向かって言葉を投げつける。
「ち、調子にのるなよ! 誰のおかげで今のヴァルガンダルがあると思っておる! 今のオブライト家の力を持ってすれば、ヴァルガンダルなど王宮から追い出すことなど難しくもなんともないぞ!」
そんな空虚な脅しなど、ルエールは振り向くこともせずに、そのままガンドロフの前から姿を消すのだった。
▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
「聞いたぞ、ルエール」
ある意味ではガンドロフと決別をしたと言ってもいいあの日から数日後、いつものように王宮でカリオスと顔を合わせた時に、カリオスは可笑しそうに笑っていた。
「オブライト家のガンドロフと喧嘩したらしいな」
「その話ですか……」
この時、カリオスは18歳。未だ神器は使えず、リリライトとの仲もギクシャクとしている時だった。
しかしそれ以外の部分では、ルエールやプリメータの努力の甲斐もあって、王族として相応しい青年となっていた。父ヴィジオール、母プリメータと共に政治や戦争にも参加する程に育っていたのだった。
「鬼の護衛騎士も、自分の娘のこととなると変わるもんだなぁ。普段はあれだけオブライト家に頭が上がらんくせに」
相変わらず剣の鍛錬では、カリオスはルエールに及ばないでいいようにやられている。ここぞとばかりに、カリオスが勝ち誇ったように言うとルエールは嘆息する。
「ヴァルガンダルに関わる話ですので……殿下のお手を煩わせることはございません」
「いやいや、そういうことじゃねえぞルエール」
殊勝とも言える態度に、カリオスはすかさず首を振ってくる。
「別に、俺は女がヴァルガンダルの名を継いだって問題ないと思ってる。男が家名を継がないといけない決まりはない――っていうか、レイオール家は、サイドラスが失脚してからはシンパが当主だろ。レイオールだけ良くて、ヴァルガンダルがダメなのは、理屈が通らん」
「それは……」
理屈では確かにカリオスの言う通りだが、それまでの慣習というのは根深い。代々続いてきた文化や慣習を、特権によって強引に変えようとするならば、必ず軋轢が生まれるだろう。そんな簡単な話ならば、ルエールも困っていない。
しかしそんなルエールの困惑をカリオスは笑い飛ばす。
「お前の娘は、確かリリライトと同い歳だろう? あいつなんか、まだお花摘みばっかりしてる子供だぞ。結婚なんてばからしい。ガンドロフの戯言なんて、無視だ無視」
「私も今のアンナに結婚の話などと、馬鹿げた話だと思っております。しかし現状ヴァルガンダルはオブライト家の支えなしには立ちゆかないことも事実。私は早まった真似をしたやもしれません」
本当にそうやって公開しているのか分からないくらいに感情の見えない声で言うルエールに、カリオスは「はぁ~」と大きくため息を吐いた。
「お前、本当に剣は強い癖に、政治はからっきしだな」
「……殿下?」
カリオスはルエールに近づくと、声を潜める。
「腹を割って話そう。最近、オブライト家の存在が目障りになってきた。陛下があまり国内政治に興味がないのをいいことに、王宮で私腹を肥やしている。母上も上手くけん制されていていいようにやられていて……実は最近体調も良くない。ぶっちゃけて言うと、ガンドロフ一派の存在が邪魔だ」
「殿下、それは……」
カリオスの意図を察したルエールが驚きの声を零すと、カリオスはうなずく。
「『御前会議』での態度も目に余るものがある。しかし何とかしようにも既に王宮内ではオブライト家の力は甚大で、アルマイト家の力でも厄介だ。だからといって野放しにも出来ん。
実力で排する手も無くはないが、強引な手段に出て今オブライト家の勢力の反発を招くのは良くない。西方のヘルベルト方面で連合擁立の動きや、ネルグリアとの関係も上手くいってないこの状況で叛乱なんて起こされたら最悪だ」
王族にここまで言わせるとは、ガンドロフの手練手管を甘く見積もっていた。そのカリオスの言を聞けば、先日の自分の行いは先走り過ぎたという後悔の念ばかりが強くなっていく。
しかしそれでも娘のアンナを、そんな政治や権力闘争に巻き込ませることは、どうしても許せなかった。
「だが、お前が……ヴァルガンダル家が本気でオブライト家との関係を断つというのなら、奴を失脚に追い込める」
そう言うカリオスへ、ルエールはハッとした表情を向ける。
「――約束しよう。ヴァルガンダル家とオブライト家が対立した時、アルマイト家は必ずヴァルガンダルの側に付くと。母上は元より、陛下のことも何としても俺が説得する。だから俺を信じて付いてきてくれ、ルエール」
「……」
――本当に、立派な王子になられた。
ついこの間まで、鍛錬で打ちのめされて泣きべそをかいていたと思っていたら、今は真っ直ぐな瞳でこちらを向き、助けの手を差し伸べている。
(これからの聖アルマイトを作っていくのは、カリオス殿下や……アンナのような若い世代なのだろうな)
カリオスは、戦争ばかりで聖アルマイトという国を築いてきたヴィジオールとは違う方法で国を作ろうとしている。カリオスがそうやって、今までの方法や慣習に取らわらず自らが思う方法を選ぶのは、利益や快楽を貪るためではない。この国に住まう全ての人々の幸せのため。
プリメータは言った。自分の子供達は未来を作る希望そのものだと。
そしてプリメータが言った通り、カリオスは聖アルマイトの未来を築く希望となっていた。
「どうして、第1王子の護衛騎士たる私がその手を拒絶出来ましょうか。元々ヴァルガンダル家はアルマイト家の側近を務める家系――あなたに付いて行きます、カリオス殿下」
「……よっしゃ」
膝をつき頭を下げるルエールを見て、カリオスは満足そうにうなずく。
「まあ、家柄を考えたらさすがに完全な自由恋愛ってのは難しいかもしれねぇが……それでも、そんな結婚は無いよなぁ。安心しろ。ヴァルガンダルの家名も、お前の娘も俺が守る。だから、お前はお前のやるべきことを頼むわ」
そうやって悪戯っぽく笑うカリオスは、あえて軽薄な口調で言う。その言葉を聞いて、ルエールは根拠もなく確信した。
オブライト家の失脚うんぬんなどでは建前で、こちらがこの王子の本心なのだろうな、と。
――なんという優しい王子なのだろうか。
その後数年と言う時間はかかったものの、カリオスは宣言通り王宮からガンドロフ一派を失脚させることに成功。
ヴァルガンダル家とオブライト家の癒着とも言える不健全な関係は完全に解消された。
それまでオブライト家が担っていたヴァルガンダル家のサポートはカリオスが協力することで、ヴァルガンダル家は没落する以前の健全さを取り戻すことが出来たのだった。
結果的にではあるが、ルエールがヴァルガンダルの家名をよりもミュリアルやアンナの幸せを優先するという信念を貫き通したことがカリオスの胸を打ち、オブライト家という最大の逆風を取り払うことに繋がったのだった。
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