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第3章『”剣士”覚醒』編
第138話 ヴァルガンダル家の物語Ⅺーー吹きすさぶ逆風
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言うまでもなく、ヴァルガンダル家は聖アルマイト王国内でも指折りの名家である。その地位や権威の恩恵に与りたいと考える貴族や王宮高官も少なくない。
その筆頭たるのが、ガンドロフが当主を務めるオブライト家だ。ヴァルガンダル家が落ち目だった頃の当主ウィリアムを全面的に支えて、ヴァルガンダル家との強固なつながりを築いた結果、娘を次代当主のルエールの妻にすることで、血縁関係を結んだのだ。
だから、ガンドロフ家の血を引く子がヴァルガンダル家の後継者となれば、ガンドロフの国内における権力はますます強くなる。ガンドロフが娘ミュリアルに託した希望はそれだった。
しかしガンドロフの意に反して、ミュリアルが産んだのは女のアンナだったのだ。
「それでは、親族会議を始める」
ヴァルガンダル邸の大部屋に集ったのは、ヴァルガンダル家当主ルエール、ガンドロフ当主ガンドロフの他、それら両家と何らかの関りがある諸侯達である。
何らかの関りと言うボヤけた言い方をしないのであれば、利害関係という言葉が最も適切であろう。
その会議を取り仕切るのは、今やルエールの義父となり、両家を含めて最も立場が上であるガンドロフであった。
そのガンドロフの開会の宣言と共に、様々な議題が話される。主には王宮内における権力闘争において、ヴァルガンダル家をどのように盛り立てていくのか。そのためにどの派閥と対立し、どの派閥を取り込めばいいのか。
それは決して聖アルマイト国のための会議ではなく、ヴァルガンダル家という甘い蜜を貪らんとする虫達がどうやってその利益を保護、或いは拡大しようかという、どす黒い欲望を剥き出しにしたような会議だった。
ルエールはこの会議には嫌気が差している。が、それと同時にこれは必要不可欠であるということも理解している。
ルエールの祖父は、あまりにも清廉過ぎた。真っ直ぐな騎士道のみで生きていた祖父は、王宮内の政治争いにおいて敗北を喫し、ヴァルガンダル家は危機に見舞われた。
世の中は綺麗事だけでは通らない。ましてやヴァルガンダル程の名家であれば、尚更だ。ルエールが愛するミュリアルやアンナを守るためには、忠誠心や剣術だけでは到底足りない。ガンドロフのような、狡猾で狡いことを躊躇うことがなく出来る人間が必要なのだ。
いくら認めたくなくても、それが事実なのである。
「――で、ルエール卿。お嬢様のご様子はいかがかな?」
ある程度議題が落ち着いてきたところで、出席者の1人がルエールに話を振ってくる。この『親族会議』内では、ガンドロフと対立することが多い人物である。
「ゲーベン卿。今それは関係のない話だ」
すかさず話題に割り込んできたのはガンドロフである。その声には明らかな不機嫌さが込められていたが、ゲーベンと呼ばれた彼は、そんなガンドロフをまるで嘲笑するようにしながら続ける。
「いえいえ、大事なことですぞガンドロフ卿。事はヴァルガンダル家の後継に関わる話ですからなぁ。とはいえ、アンナお嬢様は女の身――残念ながらヴァルガンダル家を継ぐことは出来ませぬ。となれば、次の子を考えねばなりませぬなぁ」
「ふん、下らん」
そんなニヤ着いたゲーベンの言葉を、ガンドロフは鼻息荒く否定する。
「そんなこと言わずもなが、だ。”我が娘”ミュリアルがすぐにでも第2子を産む」
ミュリアルという名前よりも、自分の娘というところを強調するガンドロフの心は透けて見えるようだ。
そんなガンドロフの言葉を受けて、ゲーベンは視線をルエールへ滑らせる。
「そうですなぁ。栄誉ある”剣士”の家系を継ぐためには男児の出産は必須――そうなのですか、ルエール卿?」
あえてルエールに話を振るゲーベンに、ガンドロフは苦虫を潰したような表情をする。
ガンドロフが言うように、今までの話の流れとは関係のない唐突な話――にも関わらず、そこに口を挟む者はいない。それ程に、今のヴァルガンダル家の後継については注目されているのだった。
話を振られたルエールは、静かに首を振って否定する。
「妻は……ミュリアルはアンナを出産してから、なかなか体調の優れない日が続いています。少なくとも、すぐに次の子を……というのは難しい話です」
ルエールとしても、アンナともう1人、ヴァルガンダルを継ぐ男児が欲しいと思うのは当然の思いだった。
しかしそれよりも優先するのは、当然ミュリアルの身体だ。既に2人の愛の結晶であるアンナは、今もすくすくと元気に育っているのだ。ルエールは男児が欲しいという想いよりも、今のミュリアルとアンナを大事にしたいという気持ちの方が遥かに強い。ミュリアルに無理して第2子を出産させるつもりなど、毛頭なかった。
「確かにミュリアル夫人のお体は心配ですなぁ。とはいえ、後継者問題についても放置出来る状態ではないでしょう、そこで、いかがですかな? 私の娘は、今年18になるのですが、親の私が言うのもアレですが美人で、その上健康な――」
「ゲーベン卿!」
ドンと机を叩き、その言動を制そうとするガンドロフ。
ミュリアルをルエールの妻として嫁がせ、そのミュリアルが子を孕んだ時点では、ガンドロフは『親族会議』内では絶対的な力を持っていた。だからその時であれば、その一言でゲーベンは口をつぐんだだろう。
しかし生まれてきたのがヴァルガンダルを継ぐことが出来ない女児だったということで、ガンドロフの力は失いつつある。『親族会議』内でもオブライト家の台頭を快く思わない当主が、隙あらばミュリアルの代わりに自分の家系の者にルエールの子を孕ませようと画策していた。
「なーに、これはレイオール家のサイドラス卿のような不貞ではありませんぞ。あちらは侍女に手を出したただの放蕩者ですが、こちらはヴァルガンダル家の未来のためのこと。子を、男児を成すためならば、第2夫人を娶ることは、最早義務です。1度真剣に考えてみては」
「いくらなんでも失礼であろう、ゲーベン卿! ルエール卿には既にミュリアル夫人という妻が――」
そうやってゲーベンに食らいつくのは、ガンドロフの子飼いといってもいいような立場の当主である。
そのまま議論の焦点は、いつしかルエールの第2夫人は要か否か。要ならば誰が相応しいのかということへ移っていた。
現在の権威を守りたいガンドロフ派と、それにとって代わらんとする者達で議論を白熱させていく。当の本人であるルエールは蚊帳の外で。
これがヴァルガンダル家を取り巻く現実である。
ルエールは愛する妻と娘のささやかな幸せだけで満たされる。しかしヴァルガンダル家の周囲はそんなことは関係ない。
国のため、ヴァルガンダル家のためという名目の下、自らの利益を貪るのに必死な『親族』達だが、王宮内においてヴァルガンダル家を蹴落とそうとする政敵が多い現状、ヴァルガンダル家には必要な存在なのである。
だから、ルエールが己の絶対の信念――妻と娘を、こんなドロドロとした権力争いに巻き込ませない――の下に、一方的にこれら『親族』達を切り捨てることなどは出来ない。そうして味方を失ったヴァルガンダル家の顛末を、祖父の代の悲惨さをルエールは知っていたからだ。
ルエールは、白熱する議論の中、唐突に机を叩いて大きな音を立てる。その突然の音に、参加者のいずれもが言葉を止め、眼を剥いてルエールの方へ向く。
そこに立っているヴァルガンダル家当主は、いつものように無表情な顔を僅かに俯かせるようにしていた。そのルエールの姿を見て、誰も咄嗟に言葉を発することが出来ない。
「一言、言っておきます」
信念の下に、『親族』達を切り捨てて孤立無援となることは出来ない。
しかし、それは妻と娘を守らないということではない。
それに、もし仮にその2つを天秤に掛けないといけない状況となれば、ルエールは迷いなく家族を取ることが出来る。
だから、言うべきことは言う。
ヴァルガンダル家当主としてではない。愛する妻と娘を守るただの父として、ルエールは内なる敵へ、迷いも躊躇いもない言葉をはっきりと言う。
「私はミュリアル以外に妻を取るつもりはないし、今はアンナをヴァルガンダル家の娘として育てることで頭が一杯です。そこについては、如何なる口出しも無用。これはご承知いただきたい」
それはいつも通りの静かな冷静沈着な声だ。しかし心臓を直接突き刺すような鋭さが込められていた。それは戦場に出ることのない貴族達の背筋をゾッと底冷えさせる。
その言葉は、もしもルエールの意に沿わない意見や態度を続けるのならば、”剣士”の名の下、容赦なく切り捨てられる――各自にそう思わせる程に、強烈に心に刻み込まれた言葉だった。
剣だけではなく、言葉でも全てを切り裂こうとする正に“剣士”の家系の直系である。
「ふっ……はは! そ、そうであろうな。当の本人がそう言っているのだから、もうこの話は終わりにしよう」
ガンドロフでさえ、冷や汗を流しながら狼狽していた。それでもこの空気の中第一声を発したのは、たいしたものだろう。
今のままミュリアルに男児を産ませたいと考えるガンドロフは、自らの利益に合致しているルエールの言葉に追随する。
義父の思惑はともかくとして、ルエールの思いは今自分で言ったことそのままだ。
『親族』連中が何を考えて何を話そうが、ルエールには興味のない話だった。ルエールとしては、妻と娘を大事にすれば、ヴァルガンダル家は健全に受け継がれると確信している。
勿論理想としてはミュリアルが次に男児を生んでくれればいいし、そうでなくても将来アンナが嫁いだ相手に継がせるのだって、ルエールは厭わない。その時、長年続いたヴァルガンダルの名は自分の代で終わるかもしれないが、先祖代々の誇りや想いは、変わらないはずだ。ヴァルガンダルという名は無くなっても、その魂はルエールからアンナへ、そしてまた時代に受け継がれるだろう。
『親族』連中にとっては重大な問題らしいが、ルエールにとってそんなことは些末な問題だ。
それよりもルエールにとっての最大課題は、妻と娘を幸せにすること。そしてその幸せの時を一緒に過ごすことなのだ。
その真っ直ぐな信念を貫き通すルエールの前に、この程度の逆風など意に介する程のものではなかった。
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ルエールが当主として『親族』との関係をこじれることを恐れず、自らの考えを明言したことは、結果的に上手くいった。
既得権益を守ろうとするガンドロフの利害とも一致していたため、ミュリアルを差し置いてヴァルガンダルとの子を成そうと画策する者は現れなかった。
またルエールは、場合によってはミュリアルやアンナが害されるような事態まで危惧していたが、それも徒労に終わった。『親族会議』の場で、脅迫に近い勢いで信念を吐き出したルエールの迫力に、誰もがその報復を本気で恐れたのだった。
だから第1の逆風など、逆風になり得なかった。
しかし次にルエールに襲い掛かった第2の逆風は、信念などでどうにかなる問題ではなかった。
逆風その2――妻・ミュリアルの死。
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ルエールが寝室に入ると、ミュリアルが寝ているベッドの側にいた医師が立ち上がり、ルエールに向かって首を横に振る。
「パパさま……ママさまは、まだおネムなの? もうおひるごはんの時間だよ?」
この時、アンナは2歳になっていた。
言葉を喋るようになり、元気よく駆け回ってよく怪我をするような、男の子顔負けのとても元気な娘に育っていた。しかしそんなアンナもまだまだ甘えたがり。ルエールの腕に抱えられるようにしながら、ベッドに横たわる母の顔を見ると、首をかしげるようにして父の顔を見上げる。
「ルエール様、申し訳ありません……」
医師の言葉にも、娘の言葉にも答えられないまま呆然とするルエールに、ミュリアルはか細い声で言う。
頬はこけ、眼の下にはクマが出ており、顔は青白く、髪も肌もカサカサ。体調が悪そうなどという言葉では到底足りない程の衰弱ぶりだった。
「ママさま、悪いことしたの?」
いまいち状況を理解出来ていないのか、謝る母へ純粋な表情を浮かべて問いかけるアンナ。そんな娘の言葉に、ミュリアルは弱弱しく笑う。
「そうですね。とても悪いことをしてしまいました。いくら謝っても足りませんが、本当に……本当にごめんなさい」
「悪いことが……あるものか!」
母と娘の会話にルエールが突然割って入る。その声はミュリアルと同じく震えていた。
そんないつにない父の激昂したような声に、胸に抱えられていたアンナは、思わず「ひっ」と小さな悲鳴を上げる。
「お前と一緒になれて……お前とアンナが生まれて、どんなに幸せだったか」
そう言うルエールは、目尻に涙を浮かべていた。
それはルエールを、ヴァルガンダル家を知る者であれば信じられない光景だ。”剣士”の直系であるヴァルガンダル家の当主が人前で涙を見せることなど、ここ数百年の間には有り得なかったこと。
「お前とアンナがいてくれたから――」
そのことを明確に感じたのは、ファヌス大戦の時。
プリメータから妻と子のことを諭された時。
敵領地で哀れな兄妹を見た時。
ルエールは理解した。
自分には守るべきものがある。そして敵を倒す剣だけではなく、誰かを守るために振るう剣があるということを。
だから、あのアルバキアとの決闘の時もアルバキアを斬るのではなく仲間を助けることを優先した。その後の戦場でも、ルエールは敵を斬るよりも、味方を助けることを悉く優先するようにした。
そうして守るために振るう剣は、敵を倒すための剣よりも何倍も強いということを。
そして誰かを守るために剣を振るえるということは、とても幸せだったということを。
無意識に己が思うままにやっていたことだったが、ルエールは妻の死に際に立ち会うことで、ようやく言葉として明確に理解した。
全てはミュリアルとアンナがいてくれたからだった、と。
「お前たちがいてくれたから、私は聖アルマイトの民も騎士も、何人も守ってこられたのだ。いてくれなければ、私も私が助けていた命も、失われていた」
そう考えると、ミュリアルがどれだけの人の命を救い、助けてきたのだろうか。それは歴史に名を刻まれても良い程の偉業といっても過言ではない。
そんなルエールの言葉をミュリアルがどう受け取ったのかは分からないが、ミュリアルは辛そうな表情を努めて抑えるようにしながら、笑みを深める。
「私も、ルエール様と一緒になれて幸せでした。アンナさんが生まれてきてくれて、とても……とても、とても幸せな、夢のような日々でした」
弱弱しいがその言葉には強い意思の力が込められている。あれだけ弱気で引っ込み思案なミュリアルが、こうまで断言するということは、それだけで嘘偽りのない本心だと分かる。
そんな母を見て、父親に抱えられていたアンナは、身体をバタバタとよじらせると、そのまま地面に下ろされる。そして母のベッドに近づいて、横たわる母に顔を近づける。
そして、そのままミュリアルの髪を撫でる。
「ママさま、ちゃんとごめんなさい出来てえらいね。いい子いい子」
先ほどは父親の怒鳴った声に驚いていたにも関わらず、こうやってすぐに母のことを気遣うアンナの姿に、ミュリアルは堪え切れなくて涙を溢れさせる。
「私っ……もっと生きたかったです……ルエール様とアンナさんと一緒に……っ! 色々な所へ遊びに生きたかった。たくさん可愛い服を着せてあげたかった。色んなお話を聞かせてあげたかった。たくさん美味しい物を食べさせてあげたかった。たくさん、たくさん……もっとたくさん……!」
溢れだした気持ちは涙と言葉となってあふれ出てくる。そんな母の号泣する姿に、アンナはアワアワと慌て始めると。
「わ。わ。ママさま泣かないで。パパさまがいるよ。パパさまがいるから大丈夫だよ」
状況が分からないなりに、必死に母を慰めようとするアンナ。その言葉からルエールの名前が出ると、ミュリアルは嗚咽を零しながらも、何とか再び笑顔を作る。
「そうね……ルエール様がいるから、大丈夫ね」
「うん。パパさま、怒ってないから大丈夫だよ? ママさま、ちゃんとごめんなさい出来たごほうびに、パパさまと一緒に遊びに行こうね。ねぼすけはダメだよ?」
「うっ……うあああああああっ!」
そんなアンナの純粋な言葉を聞いて、泣き崩れたのは侍女のミンシィだった。ミュリアルが身籠って、出産し、その後アンナを育てるのを最も近い所で支えてきた彼女は、耐え切れなくてその場に崩れ落ちる。
「アンナさん、ありがとう」
そうして髪を撫でてくれるアンナの顔へ手を伸ばし、そっとその頬に触れる。
「わ。くすぐったい」
「そうね。ルエール様がいるものね。きっと大丈夫……うん。きっと大丈夫。もう一緒にいられないのは残念だけど、大丈夫」
「ママさま?」
自分の頬を撫でてくるミュリアルの手を取り、アンナはきょとんとしている。
「ルエール様、プリメータ様にお伝えください。あの御方には、本当にたくさんのものをいただきました。そのお礼と、いただいたものを返しきれないことのお詫びを。そして、もしも差し支えなければ、リリライト様がアンナさんの良い友人となって下さいますよう……どうか、そのお許しを」
「――ああ」
王族の者と自分の娘を『友人』などと、以前のミュリアルからは考えられない言葉だった。それほどまでに、アンナの存在とそしてプリメータがミュリアルに与えた影響は大きかったのだろう。
「アンナさんは良い子だから、約束は守れますよね?」
「うん。ボク、良い子だから約束守れるよ」
「また、そんな言葉使いを……」
相変わらずの男の子っぽい言葉使い。誰の影響か――主にプリメータと、それを許しているルエールが原因なのだろうが――ミュリアルは苦笑する。
「ヴァルガンダル家に相応しい人間になんて、なれなくてもいい――」
ルエールに見捨てられないために、他の誰よりも――それこそ父ガンドロフよりも――必死にヴァルガンダルの名にしがみついていたのはミュリアル自身だったはずである。
そのミュリアルの口から紡がれるのは
「幸せになってね。そして願わくは、あなたの周りの人も幸せに出来るような、そんな素敵な人になってね」
「……? うん。ボク、頑張るよ」
未だに状況がよく飲み込めていない様子のアンナだったが、大好きは母の言葉に鼻息を荒くしてうなずく。
虚弱な母に代わってたくさん面倒を見てくれたルエールにべったりだったけど。母が読んでくれる物語は、アンナには少し退屈だったけど。母が選んでくれる服は、少し動きづらかったけど。
そうだったけど、アンナが大好きなミュリアルを――アンナはそんな”ママさま”も”パパさま”に劣らない程大好きだった。
「頑張ってね、アンナ……」
そうやって、ミュリアルは初めて娘の名を”さん”を付けずに呼ぶ。
ヴァルガンダルの妻ではなく、母として、愛する娘の名を呼ぶ。
「生まれてきてくれてありがとう、アンナ。私を愛してくれてありがとう、あなた」
少しでも気を緩めれば意識が闇に沈みそうになる。僅かに残った自らの命の灯を消さないよう、最後に残された糸にしがみくつように、ミュリアルは気力を振り絞る。
もう、長くはもたないだろう。多くの言葉は語れない。
だから最後の最後に伝えたいことは
「あなた達に会えて私は幸せでした。私がいなくなって少しだけ悲しんでくれた後は、父娘で笑って生きて下さい。それが私の幸せです」
「……ママさま? ママさま、まだおネムなの? ネボスケさんだね。起きたら、パパさまとママさまとボクで遊びに行こうね」
静かに瞳を閉じるミュリアルに、アンナは「しょうがないなぁ」という無邪気な言葉を紡ぎながら、母親の身体に布団を掛けなおす。
アンナはニコニコと嬉しそうだ。次に母親が目を覚まして元気になった時、きっと家族3人でとても楽しい所へ遊びに行けるから。そんな楽しい楽しい未来が訪れることを信じて疑わないから。
そんな幸せそうな娘を見ながら、ミュリアルは満足げに微笑み静かに瞳を閉じる。そしてそれを見ていたルエールとミンシィは、音もなくただひたすらに涙を流し続ける。
――その後、ミュリアルが目覚めることはなく、3日後にその短い生涯を終えたのだった。
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「心配していましたよ、ルエール。少し痩せましたか?」
ミュリアルの死から1ヶ月――静かに妻を弔ってやりたいという思いはないがしろにされ、『親族』間の調整などなど、ゆっくりと悲しむ暇も無かったルエールは、プリメータが待つ庭園を訪れていた。
「さすがに、少し堪えました」
プリメータの言葉通り、ルエールがやつれているのは見て明らかだった。しかし疲労はしているものの、その言葉が吐けるくらいには体調は回復しているようだ。プリメータは頬を緩めて安堵する。
「ミュリアルの件は、本当に残念です。とても仲良くしてもらったのに、立ち会うことも出来ずにごめんなさいね、ルエール」
「とんでもございません。妻はプリメータ様に感謝しておりました。私では支えになれなかった部分を、プリメータ様に頼り切ってしまい……本当にありがとうございました」
ルエールは、びしっと姿勢を正しながら決められた角度で身体を折る。どうやら、元のルエールらしさを取り戻しつつあるらしい。
「確かに私はもっとミュリアルと共に人生を歩んでいきたかった。それだけは残念ですが、彼女は決して不幸では無かったと思います。不慮の事故や病による死などではない……これは、いわば天寿です。いずれ訪れる別れの瞬間が、私達にはたまたま早かっただけのことです」
「私もミュリアルは幸せだったと思いますよ。ふふふ。これからはミュリアルの分もアンナちゃんの面倒を見なくてはならないから大変ですね。ルエールパパさま」
「――ふ。……っくっくっく」
ルエールを気遣いながらも、いつものプリメータの調子で接してくれれば、ルエールも楽だった。常に冷静沈着無表情と言われるルエールも、アンナが生まれてからからは、こうして冗談に笑い合う機会は増えていたのだ。
1つ目の逆風は、ルエールの揺るぎない信念によって払いのけた。
2つ目の逆風は、避けることのできない必然たる運命だった。しかし、もはやルエールにとっては第2の逆風とはなりえなかった。
だから、上手くいかないことや辛いことがあっても、ルエールがこの時不幸だったかと言えば、決してそうではない。
ルエールは、間違いなく幸せだった。
「母様―っ! 母様、母様、母様!」
と、突然パタパタと走ってきてプリメータとルエールの会話に割り込んでくるのは、小さな純白のドレスを身にまとった小さな姫。
「まあ、リリ。そんなに慌ててどうしたんですか? 母様はどこにも逃げませんよ」
プリメータに飛び込んでくるように走ってくるリリライトを、プリメータは受け止めて抱き上げる。
「兄様を……カリオス兄様を見ませんでしたか? 今日は兄様とお散歩する約束をしていたんです」
「まあ、そうだったんですね。母様は見ていないですけど……」
「母様も、私も兄様と一緒に遊びましょう♪」
そんなことを言いながらプリメータに甘えてくるリリライト。そんな娘が愛おしくプリメータも幸せそうな笑みを浮かべるが、ハッと気づいたようにルエールを見ると。
「ご、ごめんなさい」
しかし謝られたルエールの方は、頬を緩ませていた。
「気にされることはありません。母親と娘が愛し合う姿を、こんな光景を守るために私は剣を振るってきたのです。そして、これからも」
□■□■
「ん~……母様……兄様……大好きです……zzz」
「わっ。ついこの間まで赤ちゃんだと思っていたら、すっかり大きくなっちゃって。ずっと抱っこしているのが、大変になってきました」
リリライトは、結局そのままプリメータの胸の中で寝息を立てていた。
「今度、アンナちゃんも連れてきて下さい。リリとは同じ歳だし、きっと仲良くなれると思うんです」
「ええ、是非。近いうちに必ず」
リリライトとアンナが友人となることは、ミュリアルも望んでいたことだ。ルエールとしては是も非もない。
そうやってリリライトの寝顔を見つめるプリメータは、唐突にため息を吐く。
「――実は、ミュリアルに色々と偉そうなことを言っておきながら、私も子育てが上手くいっていないんですよね」
「……そうなのですか?」
それはルエールからすれば意外なことだった。普段は子供が可愛くて仕方ない、子供の面倒を見るのが幸せでたまらないと振舞っているプリメータだっただけに。
「カリオスとリリの仲がね……ちょっと良くないんです。色々な意味で」
そうして困ったように笑うが、あのプリメータがこんな顔をするのだ。おそらく彼女の中では、かなり深刻な悩みなのだろう。
「カリオス殿下は、確か13でしたか……」
妹に母親を取られたくない――そんな独占欲なのだろう。年齢と比するとやや幼い感はあるが、これだけ優しいプリメータの愛情が、いきなり自分から妹へ移ればそう思ってしまうことも無理がない気がする。
ましてや父親が、あのヴィジオールなのである。親としての愛情を惜しみなく注いでくれるプリメータは、カリオスにとっては精神的な支えになっているはずだ。
「カリオスを甘やかしすぎてしまったのかもしれません。私が何を思おうと、あの子はアルマイト家直系の王子です。その立場を考えたら、心を鬼にしてでも、厳しくしつけるべきだったかも」
寝息を立てるリリライトの額を優しく撫でながら、プリメータにしては珍しく弱弱しい口調で言葉を零す。
「いいえ。間違ってなどおりません」
しかしルエールは穏やかな口調で断じると、プリメータが意外そうな顔でルエールの方を見返してきた。
「母親が息子に愛情を寄せることに、間違いなどあろうはずもありません。不遜な発言ではありますが、貴女にはそのままでいていただきたい」
アルマイトに仕える騎士であるルエールが、王族へ要望をすることなど、今までには有り得なかったことだ。本当にルエールは変わった。
「3人も子供がいるのです。貴女で足りない部分は、私が補いましょう」
(ミュリアル。お前がプリメータ様からいただいたものは、私が少しでもお返しする。見ていてくれ)
ルエール=ヴァルガンダルは、ファヌス大戦終了からずっと留保していた龍騎士の叙勲を、正式に辞退する。
そして代わりにルエールが要望したのは、第1王子の護衛騎という立場だった。
その筆頭たるのが、ガンドロフが当主を務めるオブライト家だ。ヴァルガンダル家が落ち目だった頃の当主ウィリアムを全面的に支えて、ヴァルガンダル家との強固なつながりを築いた結果、娘を次代当主のルエールの妻にすることで、血縁関係を結んだのだ。
だから、ガンドロフ家の血を引く子がヴァルガンダル家の後継者となれば、ガンドロフの国内における権力はますます強くなる。ガンドロフが娘ミュリアルに託した希望はそれだった。
しかしガンドロフの意に反して、ミュリアルが産んだのは女のアンナだったのだ。
「それでは、親族会議を始める」
ヴァルガンダル邸の大部屋に集ったのは、ヴァルガンダル家当主ルエール、ガンドロフ当主ガンドロフの他、それら両家と何らかの関りがある諸侯達である。
何らかの関りと言うボヤけた言い方をしないのであれば、利害関係という言葉が最も適切であろう。
その会議を取り仕切るのは、今やルエールの義父となり、両家を含めて最も立場が上であるガンドロフであった。
そのガンドロフの開会の宣言と共に、様々な議題が話される。主には王宮内における権力闘争において、ヴァルガンダル家をどのように盛り立てていくのか。そのためにどの派閥と対立し、どの派閥を取り込めばいいのか。
それは決して聖アルマイト国のための会議ではなく、ヴァルガンダル家という甘い蜜を貪らんとする虫達がどうやってその利益を保護、或いは拡大しようかという、どす黒い欲望を剥き出しにしたような会議だった。
ルエールはこの会議には嫌気が差している。が、それと同時にこれは必要不可欠であるということも理解している。
ルエールの祖父は、あまりにも清廉過ぎた。真っ直ぐな騎士道のみで生きていた祖父は、王宮内の政治争いにおいて敗北を喫し、ヴァルガンダル家は危機に見舞われた。
世の中は綺麗事だけでは通らない。ましてやヴァルガンダル程の名家であれば、尚更だ。ルエールが愛するミュリアルやアンナを守るためには、忠誠心や剣術だけでは到底足りない。ガンドロフのような、狡猾で狡いことを躊躇うことがなく出来る人間が必要なのだ。
いくら認めたくなくても、それが事実なのである。
「――で、ルエール卿。お嬢様のご様子はいかがかな?」
ある程度議題が落ち着いてきたところで、出席者の1人がルエールに話を振ってくる。この『親族会議』内では、ガンドロフと対立することが多い人物である。
「ゲーベン卿。今それは関係のない話だ」
すかさず話題に割り込んできたのはガンドロフである。その声には明らかな不機嫌さが込められていたが、ゲーベンと呼ばれた彼は、そんなガンドロフをまるで嘲笑するようにしながら続ける。
「いえいえ、大事なことですぞガンドロフ卿。事はヴァルガンダル家の後継に関わる話ですからなぁ。とはいえ、アンナお嬢様は女の身――残念ながらヴァルガンダル家を継ぐことは出来ませぬ。となれば、次の子を考えねばなりませぬなぁ」
「ふん、下らん」
そんなニヤ着いたゲーベンの言葉を、ガンドロフは鼻息荒く否定する。
「そんなこと言わずもなが、だ。”我が娘”ミュリアルがすぐにでも第2子を産む」
ミュリアルという名前よりも、自分の娘というところを強調するガンドロフの心は透けて見えるようだ。
そんなガンドロフの言葉を受けて、ゲーベンは視線をルエールへ滑らせる。
「そうですなぁ。栄誉ある”剣士”の家系を継ぐためには男児の出産は必須――そうなのですか、ルエール卿?」
あえてルエールに話を振るゲーベンに、ガンドロフは苦虫を潰したような表情をする。
ガンドロフが言うように、今までの話の流れとは関係のない唐突な話――にも関わらず、そこに口を挟む者はいない。それ程に、今のヴァルガンダル家の後継については注目されているのだった。
話を振られたルエールは、静かに首を振って否定する。
「妻は……ミュリアルはアンナを出産してから、なかなか体調の優れない日が続いています。少なくとも、すぐに次の子を……というのは難しい話です」
ルエールとしても、アンナともう1人、ヴァルガンダルを継ぐ男児が欲しいと思うのは当然の思いだった。
しかしそれよりも優先するのは、当然ミュリアルの身体だ。既に2人の愛の結晶であるアンナは、今もすくすくと元気に育っているのだ。ルエールは男児が欲しいという想いよりも、今のミュリアルとアンナを大事にしたいという気持ちの方が遥かに強い。ミュリアルに無理して第2子を出産させるつもりなど、毛頭なかった。
「確かにミュリアル夫人のお体は心配ですなぁ。とはいえ、後継者問題についても放置出来る状態ではないでしょう、そこで、いかがですかな? 私の娘は、今年18になるのですが、親の私が言うのもアレですが美人で、その上健康な――」
「ゲーベン卿!」
ドンと机を叩き、その言動を制そうとするガンドロフ。
ミュリアルをルエールの妻として嫁がせ、そのミュリアルが子を孕んだ時点では、ガンドロフは『親族会議』内では絶対的な力を持っていた。だからその時であれば、その一言でゲーベンは口をつぐんだだろう。
しかし生まれてきたのがヴァルガンダルを継ぐことが出来ない女児だったということで、ガンドロフの力は失いつつある。『親族会議』内でもオブライト家の台頭を快く思わない当主が、隙あらばミュリアルの代わりに自分の家系の者にルエールの子を孕ませようと画策していた。
「なーに、これはレイオール家のサイドラス卿のような不貞ではありませんぞ。あちらは侍女に手を出したただの放蕩者ですが、こちらはヴァルガンダル家の未来のためのこと。子を、男児を成すためならば、第2夫人を娶ることは、最早義務です。1度真剣に考えてみては」
「いくらなんでも失礼であろう、ゲーベン卿! ルエール卿には既にミュリアル夫人という妻が――」
そうやってゲーベンに食らいつくのは、ガンドロフの子飼いといってもいいような立場の当主である。
そのまま議論の焦点は、いつしかルエールの第2夫人は要か否か。要ならば誰が相応しいのかということへ移っていた。
現在の権威を守りたいガンドロフ派と、それにとって代わらんとする者達で議論を白熱させていく。当の本人であるルエールは蚊帳の外で。
これがヴァルガンダル家を取り巻く現実である。
ルエールは愛する妻と娘のささやかな幸せだけで満たされる。しかしヴァルガンダル家の周囲はそんなことは関係ない。
国のため、ヴァルガンダル家のためという名目の下、自らの利益を貪るのに必死な『親族』達だが、王宮内においてヴァルガンダル家を蹴落とそうとする政敵が多い現状、ヴァルガンダル家には必要な存在なのである。
だから、ルエールが己の絶対の信念――妻と娘を、こんなドロドロとした権力争いに巻き込ませない――の下に、一方的にこれら『親族』達を切り捨てることなどは出来ない。そうして味方を失ったヴァルガンダル家の顛末を、祖父の代の悲惨さをルエールは知っていたからだ。
ルエールは、白熱する議論の中、唐突に机を叩いて大きな音を立てる。その突然の音に、参加者のいずれもが言葉を止め、眼を剥いてルエールの方へ向く。
そこに立っているヴァルガンダル家当主は、いつものように無表情な顔を僅かに俯かせるようにしていた。そのルエールの姿を見て、誰も咄嗟に言葉を発することが出来ない。
「一言、言っておきます」
信念の下に、『親族』達を切り捨てて孤立無援となることは出来ない。
しかし、それは妻と娘を守らないということではない。
それに、もし仮にその2つを天秤に掛けないといけない状況となれば、ルエールは迷いなく家族を取ることが出来る。
だから、言うべきことは言う。
ヴァルガンダル家当主としてではない。愛する妻と娘を守るただの父として、ルエールは内なる敵へ、迷いも躊躇いもない言葉をはっきりと言う。
「私はミュリアル以外に妻を取るつもりはないし、今はアンナをヴァルガンダル家の娘として育てることで頭が一杯です。そこについては、如何なる口出しも無用。これはご承知いただきたい」
それはいつも通りの静かな冷静沈着な声だ。しかし心臓を直接突き刺すような鋭さが込められていた。それは戦場に出ることのない貴族達の背筋をゾッと底冷えさせる。
その言葉は、もしもルエールの意に沿わない意見や態度を続けるのならば、”剣士”の名の下、容赦なく切り捨てられる――各自にそう思わせる程に、強烈に心に刻み込まれた言葉だった。
剣だけではなく、言葉でも全てを切り裂こうとする正に“剣士”の家系の直系である。
「ふっ……はは! そ、そうであろうな。当の本人がそう言っているのだから、もうこの話は終わりにしよう」
ガンドロフでさえ、冷や汗を流しながら狼狽していた。それでもこの空気の中第一声を発したのは、たいしたものだろう。
今のままミュリアルに男児を産ませたいと考えるガンドロフは、自らの利益に合致しているルエールの言葉に追随する。
義父の思惑はともかくとして、ルエールの思いは今自分で言ったことそのままだ。
『親族』連中が何を考えて何を話そうが、ルエールには興味のない話だった。ルエールとしては、妻と娘を大事にすれば、ヴァルガンダル家は健全に受け継がれると確信している。
勿論理想としてはミュリアルが次に男児を生んでくれればいいし、そうでなくても将来アンナが嫁いだ相手に継がせるのだって、ルエールは厭わない。その時、長年続いたヴァルガンダルの名は自分の代で終わるかもしれないが、先祖代々の誇りや想いは、変わらないはずだ。ヴァルガンダルという名は無くなっても、その魂はルエールからアンナへ、そしてまた時代に受け継がれるだろう。
『親族』連中にとっては重大な問題らしいが、ルエールにとってそんなことは些末な問題だ。
それよりもルエールにとっての最大課題は、妻と娘を幸せにすること。そしてその幸せの時を一緒に過ごすことなのだ。
その真っ直ぐな信念を貫き通すルエールの前に、この程度の逆風など意に介する程のものではなかった。
▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
ルエールが当主として『親族』との関係をこじれることを恐れず、自らの考えを明言したことは、結果的に上手くいった。
既得権益を守ろうとするガンドロフの利害とも一致していたため、ミュリアルを差し置いてヴァルガンダルとの子を成そうと画策する者は現れなかった。
またルエールは、場合によってはミュリアルやアンナが害されるような事態まで危惧していたが、それも徒労に終わった。『親族会議』の場で、脅迫に近い勢いで信念を吐き出したルエールの迫力に、誰もがその報復を本気で恐れたのだった。
だから第1の逆風など、逆風になり得なかった。
しかし次にルエールに襲い掛かった第2の逆風は、信念などでどうにかなる問題ではなかった。
逆風その2――妻・ミュリアルの死。
▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
ルエールが寝室に入ると、ミュリアルが寝ているベッドの側にいた医師が立ち上がり、ルエールに向かって首を横に振る。
「パパさま……ママさまは、まだおネムなの? もうおひるごはんの時間だよ?」
この時、アンナは2歳になっていた。
言葉を喋るようになり、元気よく駆け回ってよく怪我をするような、男の子顔負けのとても元気な娘に育っていた。しかしそんなアンナもまだまだ甘えたがり。ルエールの腕に抱えられるようにしながら、ベッドに横たわる母の顔を見ると、首をかしげるようにして父の顔を見上げる。
「ルエール様、申し訳ありません……」
医師の言葉にも、娘の言葉にも答えられないまま呆然とするルエールに、ミュリアルはか細い声で言う。
頬はこけ、眼の下にはクマが出ており、顔は青白く、髪も肌もカサカサ。体調が悪そうなどという言葉では到底足りない程の衰弱ぶりだった。
「ママさま、悪いことしたの?」
いまいち状況を理解出来ていないのか、謝る母へ純粋な表情を浮かべて問いかけるアンナ。そんな娘の言葉に、ミュリアルは弱弱しく笑う。
「そうですね。とても悪いことをしてしまいました。いくら謝っても足りませんが、本当に……本当にごめんなさい」
「悪いことが……あるものか!」
母と娘の会話にルエールが突然割って入る。その声はミュリアルと同じく震えていた。
そんないつにない父の激昂したような声に、胸に抱えられていたアンナは、思わず「ひっ」と小さな悲鳴を上げる。
「お前と一緒になれて……お前とアンナが生まれて、どんなに幸せだったか」
そう言うルエールは、目尻に涙を浮かべていた。
それはルエールを、ヴァルガンダル家を知る者であれば信じられない光景だ。”剣士”の直系であるヴァルガンダル家の当主が人前で涙を見せることなど、ここ数百年の間には有り得なかったこと。
「お前とアンナがいてくれたから――」
そのことを明確に感じたのは、ファヌス大戦の時。
プリメータから妻と子のことを諭された時。
敵領地で哀れな兄妹を見た時。
ルエールは理解した。
自分には守るべきものがある。そして敵を倒す剣だけではなく、誰かを守るために振るう剣があるということを。
だから、あのアルバキアとの決闘の時もアルバキアを斬るのではなく仲間を助けることを優先した。その後の戦場でも、ルエールは敵を斬るよりも、味方を助けることを悉く優先するようにした。
そうして守るために振るう剣は、敵を倒すための剣よりも何倍も強いということを。
そして誰かを守るために剣を振るえるということは、とても幸せだったということを。
無意識に己が思うままにやっていたことだったが、ルエールは妻の死に際に立ち会うことで、ようやく言葉として明確に理解した。
全てはミュリアルとアンナがいてくれたからだった、と。
「お前たちがいてくれたから、私は聖アルマイトの民も騎士も、何人も守ってこられたのだ。いてくれなければ、私も私が助けていた命も、失われていた」
そう考えると、ミュリアルがどれだけの人の命を救い、助けてきたのだろうか。それは歴史に名を刻まれても良い程の偉業といっても過言ではない。
そんなルエールの言葉をミュリアルがどう受け取ったのかは分からないが、ミュリアルは辛そうな表情を努めて抑えるようにしながら、笑みを深める。
「私も、ルエール様と一緒になれて幸せでした。アンナさんが生まれてきてくれて、とても……とても、とても幸せな、夢のような日々でした」
弱弱しいがその言葉には強い意思の力が込められている。あれだけ弱気で引っ込み思案なミュリアルが、こうまで断言するということは、それだけで嘘偽りのない本心だと分かる。
そんな母を見て、父親に抱えられていたアンナは、身体をバタバタとよじらせると、そのまま地面に下ろされる。そして母のベッドに近づいて、横たわる母に顔を近づける。
そして、そのままミュリアルの髪を撫でる。
「ママさま、ちゃんとごめんなさい出来てえらいね。いい子いい子」
先ほどは父親の怒鳴った声に驚いていたにも関わらず、こうやってすぐに母のことを気遣うアンナの姿に、ミュリアルは堪え切れなくて涙を溢れさせる。
「私っ……もっと生きたかったです……ルエール様とアンナさんと一緒に……っ! 色々な所へ遊びに生きたかった。たくさん可愛い服を着せてあげたかった。色んなお話を聞かせてあげたかった。たくさん美味しい物を食べさせてあげたかった。たくさん、たくさん……もっとたくさん……!」
溢れだした気持ちは涙と言葉となってあふれ出てくる。そんな母の号泣する姿に、アンナはアワアワと慌て始めると。
「わ。わ。ママさま泣かないで。パパさまがいるよ。パパさまがいるから大丈夫だよ」
状況が分からないなりに、必死に母を慰めようとするアンナ。その言葉からルエールの名前が出ると、ミュリアルは嗚咽を零しながらも、何とか再び笑顔を作る。
「そうね……ルエール様がいるから、大丈夫ね」
「うん。パパさま、怒ってないから大丈夫だよ? ママさま、ちゃんとごめんなさい出来たごほうびに、パパさまと一緒に遊びに行こうね。ねぼすけはダメだよ?」
「うっ……うあああああああっ!」
そんなアンナの純粋な言葉を聞いて、泣き崩れたのは侍女のミンシィだった。ミュリアルが身籠って、出産し、その後アンナを育てるのを最も近い所で支えてきた彼女は、耐え切れなくてその場に崩れ落ちる。
「アンナさん、ありがとう」
そうして髪を撫でてくれるアンナの顔へ手を伸ばし、そっとその頬に触れる。
「わ。くすぐったい」
「そうね。ルエール様がいるものね。きっと大丈夫……うん。きっと大丈夫。もう一緒にいられないのは残念だけど、大丈夫」
「ママさま?」
自分の頬を撫でてくるミュリアルの手を取り、アンナはきょとんとしている。
「ルエール様、プリメータ様にお伝えください。あの御方には、本当にたくさんのものをいただきました。そのお礼と、いただいたものを返しきれないことのお詫びを。そして、もしも差し支えなければ、リリライト様がアンナさんの良い友人となって下さいますよう……どうか、そのお許しを」
「――ああ」
王族の者と自分の娘を『友人』などと、以前のミュリアルからは考えられない言葉だった。それほどまでに、アンナの存在とそしてプリメータがミュリアルに与えた影響は大きかったのだろう。
「アンナさんは良い子だから、約束は守れますよね?」
「うん。ボク、良い子だから約束守れるよ」
「また、そんな言葉使いを……」
相変わらずの男の子っぽい言葉使い。誰の影響か――主にプリメータと、それを許しているルエールが原因なのだろうが――ミュリアルは苦笑する。
「ヴァルガンダル家に相応しい人間になんて、なれなくてもいい――」
ルエールに見捨てられないために、他の誰よりも――それこそ父ガンドロフよりも――必死にヴァルガンダルの名にしがみついていたのはミュリアル自身だったはずである。
そのミュリアルの口から紡がれるのは
「幸せになってね。そして願わくは、あなたの周りの人も幸せに出来るような、そんな素敵な人になってね」
「……? うん。ボク、頑張るよ」
未だに状況がよく飲み込めていない様子のアンナだったが、大好きは母の言葉に鼻息を荒くしてうなずく。
虚弱な母に代わってたくさん面倒を見てくれたルエールにべったりだったけど。母が読んでくれる物語は、アンナには少し退屈だったけど。母が選んでくれる服は、少し動きづらかったけど。
そうだったけど、アンナが大好きなミュリアルを――アンナはそんな”ママさま”も”パパさま”に劣らない程大好きだった。
「頑張ってね、アンナ……」
そうやって、ミュリアルは初めて娘の名を”さん”を付けずに呼ぶ。
ヴァルガンダルの妻ではなく、母として、愛する娘の名を呼ぶ。
「生まれてきてくれてありがとう、アンナ。私を愛してくれてありがとう、あなた」
少しでも気を緩めれば意識が闇に沈みそうになる。僅かに残った自らの命の灯を消さないよう、最後に残された糸にしがみくつように、ミュリアルは気力を振り絞る。
もう、長くはもたないだろう。多くの言葉は語れない。
だから最後の最後に伝えたいことは
「あなた達に会えて私は幸せでした。私がいなくなって少しだけ悲しんでくれた後は、父娘で笑って生きて下さい。それが私の幸せです」
「……ママさま? ママさま、まだおネムなの? ネボスケさんだね。起きたら、パパさまとママさまとボクで遊びに行こうね」
静かに瞳を閉じるミュリアルに、アンナは「しょうがないなぁ」という無邪気な言葉を紡ぎながら、母親の身体に布団を掛けなおす。
アンナはニコニコと嬉しそうだ。次に母親が目を覚まして元気になった時、きっと家族3人でとても楽しい所へ遊びに行けるから。そんな楽しい楽しい未来が訪れることを信じて疑わないから。
そんな幸せそうな娘を見ながら、ミュリアルは満足げに微笑み静かに瞳を閉じる。そしてそれを見ていたルエールとミンシィは、音もなくただひたすらに涙を流し続ける。
――その後、ミュリアルが目覚めることはなく、3日後にその短い生涯を終えたのだった。
▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
「心配していましたよ、ルエール。少し痩せましたか?」
ミュリアルの死から1ヶ月――静かに妻を弔ってやりたいという思いはないがしろにされ、『親族』間の調整などなど、ゆっくりと悲しむ暇も無かったルエールは、プリメータが待つ庭園を訪れていた。
「さすがに、少し堪えました」
プリメータの言葉通り、ルエールがやつれているのは見て明らかだった。しかし疲労はしているものの、その言葉が吐けるくらいには体調は回復しているようだ。プリメータは頬を緩めて安堵する。
「ミュリアルの件は、本当に残念です。とても仲良くしてもらったのに、立ち会うことも出来ずにごめんなさいね、ルエール」
「とんでもございません。妻はプリメータ様に感謝しておりました。私では支えになれなかった部分を、プリメータ様に頼り切ってしまい……本当にありがとうございました」
ルエールは、びしっと姿勢を正しながら決められた角度で身体を折る。どうやら、元のルエールらしさを取り戻しつつあるらしい。
「確かに私はもっとミュリアルと共に人生を歩んでいきたかった。それだけは残念ですが、彼女は決して不幸では無かったと思います。不慮の事故や病による死などではない……これは、いわば天寿です。いずれ訪れる別れの瞬間が、私達にはたまたま早かっただけのことです」
「私もミュリアルは幸せだったと思いますよ。ふふふ。これからはミュリアルの分もアンナちゃんの面倒を見なくてはならないから大変ですね。ルエールパパさま」
「――ふ。……っくっくっく」
ルエールを気遣いながらも、いつものプリメータの調子で接してくれれば、ルエールも楽だった。常に冷静沈着無表情と言われるルエールも、アンナが生まれてからからは、こうして冗談に笑い合う機会は増えていたのだ。
1つ目の逆風は、ルエールの揺るぎない信念によって払いのけた。
2つ目の逆風は、避けることのできない必然たる運命だった。しかし、もはやルエールにとっては第2の逆風とはなりえなかった。
だから、上手くいかないことや辛いことがあっても、ルエールがこの時不幸だったかと言えば、決してそうではない。
ルエールは、間違いなく幸せだった。
「母様―っ! 母様、母様、母様!」
と、突然パタパタと走ってきてプリメータとルエールの会話に割り込んでくるのは、小さな純白のドレスを身にまとった小さな姫。
「まあ、リリ。そんなに慌ててどうしたんですか? 母様はどこにも逃げませんよ」
プリメータに飛び込んでくるように走ってくるリリライトを、プリメータは受け止めて抱き上げる。
「兄様を……カリオス兄様を見ませんでしたか? 今日は兄様とお散歩する約束をしていたんです」
「まあ、そうだったんですね。母様は見ていないですけど……」
「母様も、私も兄様と一緒に遊びましょう♪」
そんなことを言いながらプリメータに甘えてくるリリライト。そんな娘が愛おしくプリメータも幸せそうな笑みを浮かべるが、ハッと気づいたようにルエールを見ると。
「ご、ごめんなさい」
しかし謝られたルエールの方は、頬を緩ませていた。
「気にされることはありません。母親と娘が愛し合う姿を、こんな光景を守るために私は剣を振るってきたのです。そして、これからも」
□■□■
「ん~……母様……兄様……大好きです……zzz」
「わっ。ついこの間まで赤ちゃんだと思っていたら、すっかり大きくなっちゃって。ずっと抱っこしているのが、大変になってきました」
リリライトは、結局そのままプリメータの胸の中で寝息を立てていた。
「今度、アンナちゃんも連れてきて下さい。リリとは同じ歳だし、きっと仲良くなれると思うんです」
「ええ、是非。近いうちに必ず」
リリライトとアンナが友人となることは、ミュリアルも望んでいたことだ。ルエールとしては是も非もない。
そうやってリリライトの寝顔を見つめるプリメータは、唐突にため息を吐く。
「――実は、ミュリアルに色々と偉そうなことを言っておきながら、私も子育てが上手くいっていないんですよね」
「……そうなのですか?」
それはルエールからすれば意外なことだった。普段は子供が可愛くて仕方ない、子供の面倒を見るのが幸せでたまらないと振舞っているプリメータだっただけに。
「カリオスとリリの仲がね……ちょっと良くないんです。色々な意味で」
そうして困ったように笑うが、あのプリメータがこんな顔をするのだ。おそらく彼女の中では、かなり深刻な悩みなのだろう。
「カリオス殿下は、確か13でしたか……」
妹に母親を取られたくない――そんな独占欲なのだろう。年齢と比するとやや幼い感はあるが、これだけ優しいプリメータの愛情が、いきなり自分から妹へ移ればそう思ってしまうことも無理がない気がする。
ましてや父親が、あのヴィジオールなのである。親としての愛情を惜しみなく注いでくれるプリメータは、カリオスにとっては精神的な支えになっているはずだ。
「カリオスを甘やかしすぎてしまったのかもしれません。私が何を思おうと、あの子はアルマイト家直系の王子です。その立場を考えたら、心を鬼にしてでも、厳しくしつけるべきだったかも」
寝息を立てるリリライトの額を優しく撫でながら、プリメータにしては珍しく弱弱しい口調で言葉を零す。
「いいえ。間違ってなどおりません」
しかしルエールは穏やかな口調で断じると、プリメータが意外そうな顔でルエールの方を見返してきた。
「母親が息子に愛情を寄せることに、間違いなどあろうはずもありません。不遜な発言ではありますが、貴女にはそのままでいていただきたい」
アルマイトに仕える騎士であるルエールが、王族へ要望をすることなど、今までには有り得なかったことだ。本当にルエールは変わった。
「3人も子供がいるのです。貴女で足りない部分は、私が補いましょう」
(ミュリアル。お前がプリメータ様からいただいたものは、私が少しでもお返しする。見ていてくれ)
ルエール=ヴァルガンダルは、ファヌス大戦終了からずっと留保していた龍騎士の叙勲を、正式に辞退する。
そして代わりにルエールが要望したのは、第1王子の護衛騎という立場だった。
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