【R-18】龍の騎士と龍を統べる王

白金犬

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第3章『”剣士”覚醒』編

第135話 ヴァルガンダル家の物語Ⅷ――ママ友

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 プリメータとカリオスのやり取りが終わり、プリメータは「母様はこの人とお話があるから」と渋るカリオスに言い聞かせると、アイリーンを呼び出してカリオスを連れて行かせた。

「バタバタとごめんなさいね、ミュリアル。あ、どうぞ飲んで下さいね。採れたてのカシアミの茶葉ですよ」

「は、はいっ……!」

 そうして園庭に残ったのはプリメータとミュリアルの2人――ではなく、アイリーンが連れてきた1人の少女騎士が、そのままプリメータの側に残っていた。

「えっと……」

「ああ、彼女はシンパ=レイオール。アイリーンの娘です。将来は、このお腹の娘の騎士になってくれるんですって。ふふ、可愛いでしょう?」

 「ね~」と笑いかけるプリメータに、シンパは真顔で黙ったままうなずく。

 外見から察するにまだ10代半ばくらいではないだろうか。騎士養成学校に通っているくらいの年齢だろうに、白薔薇騎士の礼服をきっちりと着こなしているその姿は、さすがは名門レイオール家の人間と思わされずにはいられなかった。

 席を外しているアイリーンの代わりにプリメータの護衛をしているといったところか。お茶会の席でも護衛が側にいるというのは、やはり王妃なのだと改めて認識させられる。

(そう……この方は王妃様なのに)

 それなのに、さっきのカリオスとの光景は、ごく普通の母親にしか見えなかった。それを見て、ミュリアルも親近感を抱いてしまったくらいだ。

 自らの身分を考えれば、親近感を持つことにすら罪悪感を覚えてしまうのだが、そんなことは構わずプリメータは身を乗り出して、ニコニコ顔で聞いてくる。

「それで? ミュリアルのお腹の子は、男の子ですか? 女の子なんですか?」

「え? えっと……それは……」

 出産前に生まれてくる子供の性別を知る術など分かるはずもないのに、とミュリアルは返事に戸惑っている内にプリメータの意図に気づく。

知りたいのは、ミュリアルの希望だということだ。

「その……元気な男の子であって欲しいと、思っています」

「そっかー! そうですよね! 男の子♪ 可愛いですもんね。も~、カリオスもね、すっっっっっっごく可愛いんですよ。もう可愛すぎて食べちゃいたいくらい♪ あ~ん、カリオスぅ♡」

 くねくねと身をよじりながら猫撫で声を出すその姿は、はっきり言って不審人物だ。つい先ほどキツイ表情で息子の頬を叩いていた同一人物とは、やはり思えない。何度も言うが、これではただの親馬鹿である。

「子供って本当に可愛いですよね♪ 私も次の子が楽しみで楽しみで仕方ありません。――まぁ、陛下とアイリーンとルエールには、それはもう想像を絶する程に怒られました。うぅ、あれは地獄のようでした」

 その時のことを思い出してか、顔を青くするプリメータ。

 プリメータの妊娠時期はミュリアルとほぼ同時期――つまり、ファヌス大戦開戦時の頃は既に身ごもっていたこととなる。

つまり、いくら自覚が無かったとはいえ、プリメータはお腹に子供を宿したまま、戦場で剣を振るっていたこととなる。とんでもない話だ。

 ルエールにさんざん子供と妻のために生きて戻れと諭していたプリメータ本人がそんなことをしていれば、普段は冷静沈着なルエールが激昂するのも無理はないだろう。実際にルエールがプリメータをどのように叱咤したのかは、ミュリアルは知らないが。

 とはいえ、現在プリメータの容態は母子共に健康で、むしろ身体が弱いミュリアルよりも経過順調なくらいだ。なので「結果良ければ全て良し」ということになったのだが、さすがにもう次はないだろう。

「それで、ミュリアルはどうして男の子が欲しいんですか? 可愛い以外に、何か理由があったりするんですか? ミュリアル的に女の子はダメなんですか?」

「い、いえっ! ダメということは無いのですが……」

 カシアミの紅茶が入ったティーカップを口に付けながら、プリメータが凄い勢いで聞いてくる。おそらくは、こういった会話を本当に楽しみにしていたのだろう。

「わ、私は……その、ヴァルガンダル家の跡取りを生まなければなりませんので。ルエール様のためにも、オブライト家のためにも」

「……」

 天真爛漫なプリメータとは対照的に、おどおどしながら、どこか切羽詰まったものを感じるミュリアルの言葉。プリメータは紅茶を啜りながら、真顔でじっとミュリアルの顔を観察していた。

「そう、ですか。あ、どうぞミュリアルも飲んで下さいね♪ せっかく淹れたのに、遠慮していては冷めてしまいます」

「あ、は……はい」

 プリメータに勧められて、ミュリアルもようやくティーカップに口をつける。そんなミュリアルの様子をまじまじと見つめながら、プリメータは次に発する言葉を考えているようだった。

 無表情のまま、ミュリアルがカップを置くのを待つプリメータ。すると、再び表情を緩ませて、優しく微笑む。

「でも女の子も可愛いですよ。ラミアもね、とっても柔らかくて、良い匂いがして、すっごくすっごく可愛らしいんですよ。ただ、ラミアは私よりも陛下の方がお気に入りのようで……ううぅ」

 後半の方は本気で落ち込んでいるような声を出すプリメータの言葉に、ミュリアルはただ黙って聞き入っていた。

「私は3番目の子は、男の子がいいなと思いつつも、女の子もいいなぁって思っちゃうんですよね。可愛いドレスを着せたり、絵本を読み聞かせたり、一緒にお料理やピアノ、ダンスを踊ったり……。ふふ、カリオスもラミアもものすごーく元気だから、そういうおしとやかな女の子に憧れたりもするんですよ」

「えぇと……その……」

「実は男の子が良いと言いつつも、女の子だった時の名前しかまだ思いつかないんです。もしも女の子が生まれた時の名前は”リリライト”。リリ、リリって呼んであげるんです。可愛すぎません? きっと白薔薇が似合う、可愛いお姫様になること間違いなしですよ。にへら~」

 ミュリアルが戸惑っているにもお構いなしに、ペラペラと舌を回しながら、決して王宮関係者には見せられない、だらしない笑いを浮かべる。

 また次の子供が生まれた時、訪れるのは幸せな未来以外にあり得ないと、そう確信しているような明るく喜びに満ちた声で。

――そしてそのプリメータの言葉は、実際に聞いているだけのミュリアルの脳裏にも、その未来が見えるくらい希望に満ち溢れていた。

「ね? 女の子も良いなぁって気になりません?」

「私は、その……」

 プリメータに聞かれて、ミュリアルは顔をうつむかせる。

 生まれてくる子が男か女かなど、考えてみたことも無かった。

 男児を生まなければならない。

 ミュリアルにあるのはそれだけだった。

 生んだ後はヴァルガンダル家の当主であるルエールとその後継ぎを、妻として母として陰で支えていく。

 そうでならなければならない、という使命感や責任感しかなかった。

『元気な男の子を生んでくれ』

 ルエールからだってそう言われているのだ。

 だからこうやってプリメータのように、あらゆる可能性に溢れた未来を、色々な幸せな形の夢を描いて楽しむことなど、ミュリアルには出来なかった。

「どうして……」

 ミュリアルにとっては不思議でたまらない。

 後継者問題はヴァルガンダル家に嫁いだミュリアル以上に、むしろ王家であるアルマイト家に嫁いだプリメータの方が重い問題のはずなのに。

プリメータの方こそ、生まれてくる子供の性別についてはもっと神経質にならないとおかしいのに。

 それなのに、どうしてプリメータはこうやって普通の母親として、未来の話に花を咲かせることが出来るのだろうか。

「だって、生まれてくる子供達は希望じゃないですか」

 ミュリアルが全てを言わなくても、その問いが分かったのだろう。プリメータは膨らんだ自らのお腹を愛おしく撫でながら続ける。

「男の子であろうと、女の子であろうと、これから生まれてくる子供達は私達の希望そのものなんです。そんな希望の話をしているんですもの。それが楽しくないわけがありません」

 トクトクと、お腹の中で胎動する命の鼓動を感じるプリメータは、本当に幸せそうに微笑みながら続ける。

「どんな子だって望まれて生まれてくるんです。望まれずに生まれてくる命なんて、生まれてはいけない命なんて、この世界にはありません。どんな子も幸せになるために生まれてきます。だから、私達母親が果たさないといけない使命があるとしたら、生まれてくる子を幸せにすること、くらいなんですよ」

 そしてプリメータは自分のお腹から、今度はミュリアルへその優しい表情を向ける。

「ですから、ミュリアル――もっと喜びましょう。どんな子が生まれてくるか分からないからこそ、無限にある幸せな未来を描きながら、生まれてくる希望を語り合いましょうよ」

 そんなことが許されるのだろうか。

 偉大なるヴァルガンダル家には不相応で、何の取り柄も無い、ジメジメと暗くて後ろ向きで、貧相で不健康な女でも。

一人前に普通の母としての希望を夢見てもいいものなのだろうか。

 こんな素敵な人と、希望を語り合う権利があるのだろうか。

 もしもそれが許されるのならば――

「プリメータ様……」

 ミュリアルがうつむかせた顔を上げてプリメータを見る。するとプリメータがその優しい笑顔のままうなずく。

 王妃ともあろう人間の許しを得れば、ミュリアルは夢想せずにはいられない。

 男の子だとしたら、庭を無邪気に駆け回って、転んでしまって怪我をして、泣きわめいて母親に泣きついてくる元気いっぱいの男の子。

 女の子だとしたら――そんなこと、考えること自体が罪だと思っていた――可愛い洋服を着せておめかしして、父親の誕生日には内緒で一緒に料理を作って驚かせて、ミュリアルが好きな恋物語を読み聞かせる。

 それは、ヴァルガンダル家の跡取りに相応しい、凛々しくて頼もしいけど、いつも厳格でいつも難しい空気の家族ではなく。

 楽しいことがある時は勿論、辛いことがあっても、親子3人がいつも幸せそうに笑う――あのルエールでさえ、満面の笑顔を浮かべている――そんな、平凡で幸せいっぱいな家族。

 生まれてくる子が男の子であれ女の子であれ、待っているのは幸せな未来。

 一度それを思い描けば、どんどんどんどん幸せな未来が溢れ出てくる。

「私……私……」

 涙がポロポロとあふれ出てくる。

 ヴァルガンダル家の跡取りを生むこと以外を考えることは許されない。そう思っても、もう希望に満ちた未来図を描くことは止まらない。

 あらゆる可能性を、未来を、希望を、ミュリアルは夢見る。

 ミュリアルは泣き続ける。しかしその涙の意味は自分にもよく分からない。

 ただその顔を見ていて分かるのは、ミュリアルもまたプリメータと同じように、未来への希望を幸せそうに語る母親の顔になっているということだ。

「女の子も、凄く可愛いですね……!」

 涙だけではなく、鼻水も垂らしながらミュリアルが言うと、プリメータは「でしょう?」と、何故か自慢げに答える。

 ミュリアルの今の顔は、もうヴァルガンダル家の妻としては、あまりにも情けなくてはしたない泣き顔だった。しかし涙で濡らしたその顔は、あまりにも嬉しそうだ。

「早く元気に生まれて来て欲しいですね。あなた達が生まれてくる世界はとても優しくて、希望に溢れていて、幸せに満ちていますよ。早く、早く生まれて母様達にその可愛いお顔を見せて下さいな♪」

 プリメータが言うのは、自分の子だけではない。

 生まれてくる生命――希望に向けて、自分とミュリアルの子供に向けて、優しさと願いを込めて言う。

「そして願わくは、あなた達が周りの人達を、世界を幸せに出来るような人に育ってくれますように――」

「はい……はいっ……!」

そんなプリメータの優しい願いに、ミュリアルはグスグスと泣きながら、何度もうなずくのだった。

□■□■

 こんな僅かな邂逅で、それまでのミュリアルの人生で凝り固まっていた身分差の意識や劣等感が完全に消し去られる訳がない。プリメータとの茶会を終えてヴァルガンダル邸へ戻れば、ミュリアルは再びヴァルガンダル家の跡継ぎを生まねばならない圧力に苦しむこととなる。

 しかし王妃プリメータとの茶会で、ミュリアルは明るくなった。

 ここから出産までの僅かな間であるが、2人は何度か茶会の場を設け、そこで様々な雑談を交わすこととなる。それはどの会話も、薬にも毒にもならない他愛のないものばかり。

 しかしその時間だけは、2人とも王妃と一般市民ではなく、出産を控えた妊婦同士――そう、正にプリメータの言う通りの「ママ友」であったのだ。

 そうして遂に――

 ミュリアルはプリメータよりも一足先に、出産の日を迎えることとなる。

    ▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼

「旦那様っ! 速くっ! 急いでください!」

 この時ばかりはミンシィも、主人たるルエールを急かさずにはいられなかった。

 出産日はまだ先だと聞いていたルエールは、王宮で仕事をしている最中に突然ミンシィによってミュリアルが産気づいたことを知らされた。

 それからは怒涛の如く全てが動いていき

「はぁ、はぁっ……!」

 馬車がヴァルガンダル邸に到着するや否や、ルエールは馬車を飛び出して、一目散にミュリアルの下へ向かう。狼狽は明らかであり、あのアルバキア戦ですら息を切らしていなかったルエールが、今にもどうにかなりそうな表情で邸内を駆け抜けていく。

 勿論それは出産の方を受けた父親としては自然な反応だ。しかし普段のルエールとのあまりのギャップに、後になって使用人達が振り返れば、出産のことよりもルエールのこの慌てぶりの方が強烈に印象に残っている……という者も少なくはない。

 そしてルエールが、ミュリアルがいるという部屋の前までたどり着くと、その前には既にガンドロフが立っていた。

 孫が生まれたというのに、そのガンドロフの表情は、地獄の底にいるような暗さであった。

「ち、義父上っ! ミュリアルはっ……! まさか……っ!」

 出産のお祝いとは対極の顔をしているガンドロフに、ルエールは嫌な予感を禁じ得ずにはいられない。

 元々ミュリアルは身体が弱く、出産のリスクも相当に高いということは承知していた。だからルエールがあれだけミュリアルの体調を気遣っていたのも、実は大袈裟などではないのだ。

 そんなルエールの嫌な予感を煽るように、ガンドロフは無言で首を縦に振る。

「馬鹿なっ! そんなことが……!」

 ようやく待望の子供を授かったというのに、どうしてミュリアルが命を落とさねばならないのか。そしてその宿った命はどうなったというのか。

 怒り、悔しさ、無力感――様々な絶望の感情がルエールを支配し、顔が青ざめていく。

 ――と

「おぎゃあ! おぎゃあ!」

 部屋の中から聞こえてくる産声に、ルエールはハッと顔を上げる。そして居ても立ってもいられず、反射的に部屋のドアを開けると。

「ルエール様……」

 ベッドの上では辛そうな表情を向けてくるミュリアルの姿があった。

 愛する妻が生きている――そのことにルエールは心底安堵する。

 しかしすぐに次の不安が……子供は?

「旦那様、母子共に無事ですよ。元気な赤ちゃんです」

「おぎゃあ! おぎゃあっ!」

 そう言うのは、ミュリアルの出産に立ち会い手伝ってくれていた老齢のメイドだった。その言葉通り、うるさいくらいに元気に泣きわめく赤子をその胸に抱いており、ルエールに見えるようにする。

「おめでとうございます、旦那様」

 そう言って心の底からの笑顔で祝福してくれるメイドを見て、ようやくルエールも安堵する。

 はて。母子共に無事に出産を終えたというのならば、あのガンドロフの表情は何を意味していたのだろうか。

 ルエールは、まだ現実に思考が追い付いていないまま、妻が横になっているベッドへフラフラと近づいていく。

 大変だったはずの出産を終えたミュリアルは、申し訳無さそうな顔で泣き崩れていた。

「申し訳ありません、ルエール様……申し訳ありませんっ……! 私が、私が悪いのです」

「?」

 グスグスと泣き崩れて謝罪を繰り返す妻に、ルエールは疑問符を浮かべる。

「ルエール様、抱いてあげて下さいな」

 そうやって戸惑っているルエールの横から、老メイドが自分が抱いている赤子をルエールに渡そうとする。ルエールが、その小さな生命を受け取ろうとしたとき、ルエールはようやくミュリアルの涙の意味を知った。

「元気な女の子ですよ」

□■□■

「ぎゃああっ! おぎゃああっ!」

 女の子というには、少し元気すぎるくらい元気な娘。

 無事に生まれてくれてよかった。本当に良かった。とても嬉しい。

 だけれども、生まれてきた子はヴァルガンダル家を継ぐことが出来ない女だった。

「ルエール様……ルエール様っ……ううっ、ぐすっ……申し訳ございません。私を捨てないで下さいっ……!」

 その声が届いているかどうかはわからないが、ミュリアルは泣きながら何度も謝罪を繰り返すだけだった。

 ――女が生まれてしまったのは、他の誰でもない自分のせいだ。

 ミュリアルは本気でそう信じ込んでいた。

 あのプリメータとの楽しい時間――現実を忘れ、甘い幻想に溺れて、嫌なことから逃げていた。その時間の中、ミュリアルは現実と幻想の区別がつかなくなり、思わず願ってしまったのだ。

 ――生まれてくる子は、可愛い女の子がいいな。

「うええっ……私っ……私がそんなこと、一瞬でも考えてしまいましたからぁ……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。私はヴァルガンダル家の妻、失格です。ごめんなさい」

 父には激しく罵倒された。ルエールよりも一足先に駆けつけた親戚中からも心底呆れられた。これでルエールにまで見捨てられれば、ミュリアルはこの先もう生きていくことなど出来ない。

 だから必死に謝り、許しを乞う。

 愛するルエールとの幸せを失いたくないから。決して許されない罪を、何とか許してもらおうと必死に謝り続ける。

「わははははははは!」

 しかし、そんなミュリアルの不安を吹き飛ばすように、ルエールは大笑いをした。

「……へ?」

 その笑いは、ルエール自身今まで生きてきた中でも初めての、心の底からの笑いだったのだろう。

 ヴァルガンダル家当主でも、龍牙騎士団団長としての顔ではない。

 初めての娘を授かって喜んでいる、ただの父親の顔で、ルエールは大笑いする。

「おぎゃあ! ぎゃああ!」

 ルエールは赤子が泣き叫ぶのも構わず、生まれたばかりの娘を高く掲げるようにして下から見上げる。

「よくやった……よくやったぞ、ミュリアル! 元気な女の子だ! 私達の子だ! わはははははは! わはははははは!」

「ル、ルエール様……」

 無邪気の喜ぶ夫の姿に、ミュリアルの思考は追いつていなかった。しかしその夫の目尻に涙が浮かんでいるのを見ると、自分も涙が溢れ出てくるのを止められなかった。


 こうしてこの日、ヴァルガンダル家長女アンナ=ヴァルガンダルがこの世に生を受けた。

 ここから、ルエールとミュリアルの人生で最高の幸せの時が訪れるのだった。
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