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第3章『”剣士”覚醒』編
第126話 彼女を救うために必要なこと
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「いやいや、びっくりしたねぇ。これは良い言い方をすれば予想外の儲けものだけど、悪い言い方をすれば爆弾を持たされているようで、気が気じゃないねぇ」
カリオス側の申し出に、イルギルスはそんなことなど全く思っていないような口調で言ってくる。が、彼の従者であるフィードラーは、相変わらずイルギルスの手汗が凄いことになっていることには気づいていた。
ファヌス国内の詳しい状況は不明だが(スタインの身柄を渡すのは、それを探る目的もあるのだが)、第1王子派と第2王女派のどちらにつくが揺れる所に、第1王子派の元帥の補佐官などという人物を連れて帰れば、イルギルスがの”爆弾”発言は決して大袈裟な表現ではないように思える。
「ええと、分かっているのかな? うちの国に来たら、身の安全は保障出来ないよ? 君、コウメイ君の秘蔵っ子なんでしょう?」
これまではカリオスとばかり話していたイルギルスが、当事者であるスタインに確認するように言うと、スタインは年齢にそぐわぬ落ち着いた態度のままうなずく。
「まだ秘蔵っ子と言われる程、あの方に仕えてから日は経っていませんが」
そのスタインの言葉に、イルギルスは「ひゃ~」と言いながら、再びカリオスへ視線を戻す。
「いいの? はっきり言って、次の戦いで君らが負けたら、多分この子殺されるよ?」
「俺達が負けると思ってるのか?」
ここに来てからなんだか静かだったカリオスの様子が少し変わっていて、強気に不敵な笑みを浮かべていた。そんなカリオスの強気な態度に、イルギルスは困ったように腕を組む。
正直、ここで元帥の側近的な人間を連れ帰ることは、メリットが大きいように思う。
カリオスがそんな重職の人間をファヌスに寄越すという誠意を示すことで、反第1王子派への説得材料に使えるだろう。カリオス達が敗北した場合でも、フェスティアにスタインの身柄を引き渡すことで、第2王女派との交渉材料にも使える。後者ははいささか非人道的ではあるが。
デメリットで思い付くのは、極秘裏にカリオスと接触したことが、反第1王子派やフェスティアらの逆鱗に触れることだが、それはこのカリオスとの”秘密会談”を公表するタイミングを慎重に選べば大丈夫のはずだ。
いずれにせよ、イルギルスがスタインの身柄を手元に置いておくことは、イルギルスにとっては協力な切り札になり、やはりデメリットよりもメリットの方がはるかに大きいだろう。
最も、カリオスの本当の意図は、スタインの利用価値とか、ファヌス国内のスパイとか、そういう話ではないのだろう。
「勿論、そういう狡い意図もゼロではないんだろうけど……いやはや参ったね。こんな真っすぐに誠意を見せられるとは、正直思ってなかったよ」
イルギルスがカリオスを支持するならば、カリオスは必ずそれに応えるという覚悟ーーそれが、スタインの身柄を渡すということなのだろう。
「やれやれ。もしかして、君はカリオス王子に無理強いされているのかい?」
「カリオス殿下がそのような人であれば、イルギルス王子はカリオス殿下につこうとは思わなかったでしょう?」
相手が王族と言えど、スタインは一歩も引かずに言い返してくる。
外見はまだまだ若くて頼りなくすら見えるが、なるほどコウメイが見込んだ人材である。イルギルスはスタインの返しに「確かに」と笑う。
「それじゃあ、ありがたくもらって帰ろうかな。宜しく頼むよ、スタイン君ーーだったね」
「イルギルス殿下!」
それまで黙って話を聞いていたフィードラーが我慢しきれずに立ち上がるが、イルギルスは「まあまあ」とのんびりした口調で制す。
「ここで、この子を受け取って帰らないと、今日の僕の言葉が全て空虚になるだろう?。スタイン君のことは、カリオス王子が僕の信じるという言葉を信じてくれたということだ。
それなら、僕もカリオス王子の信頼を受け取らないといけない。それが、この場で見せたかった僕の誠意だよ。違うかい?」
「……俺は、どうなっても知りませんぜ!」
へらへらとしているイルギルスを見て、フィードラーは投げやりに言うと、再び椅子に腰を下ろした。
「やっぱり、この場を設けて正解だったよ。お互いにとても意義があったと思わないかい?」
イルギルスのその満足そうな言葉は、その場にいる全員に対して発せられているようだった。
□■□■
「それじゃ。次に顔を合わせるのは、公式の場で、味方として再会出来ることを願っているよ」
そのイルギルスの言葉をもって、この”秘密会談”は締めくくられようとしていた。
「やれやれ。また、あの山道を今度は降りていくんですかな……」
「さすがに今夜は泊まらせてもらって、戻るのは明日だな。悪いが、もうひと踏ん張りしてくれ、リューゲル」
カリオスとの同行のため、身の安全という意味では心配していないが、とにかく単純に険しい山道が、老齢のリューゲルには辛い。うんざりとした表情で零すリューゲルに、カリオスは苦笑しながら言っていた。
「あー、ここに来るのは大変だったみたいだね。帰りはこの集落の人間に、比較的楽な道を案内させるよ」
「……ここは、ファヌスの領地じゃなくて、中立地帯のはずだよな?」
まるで自国の領地のように振舞うイルギルスに、カリオスが疑わしげに言うと、イルギルスは後頭部に手を当てて誤魔化すように笑う。
「いやー。ちっちゃい頃は、ここら辺を妹と一緒に駆け回っていてねー。この集落の人達は、子供の頃からの顔なじみでね。ボクのことは、王子様どころか、せいぜい近所の悪ガキくらいにしか思われてないよ。……ま、多少の我儘は聞いてくれるけどね」
「ファヌス魔法大国の姫……『呪い姫』リリィジュか。こんな魔物が棲息している山を駆け回るなんて、とんでもねえ兄妹だな」
「いやいや、カリオス王子ー。可愛い妹を、そんな不穏な二つ名で呼ばれたら、兄としては複雑な心境だよー」
「安心しろ。俺の妹にも『鮮血の姫』っつー、極めて物騒な異名がついているのがいる。本人は喜んでいる節があるが」
どうやら、政治的立場は置いといて、とりあえずそんな下らないことを言えるくらいに、両者の仲は温まったようである。
「カリオス殿下。申し訳ありませんが、そろそろ、よろしいですかな」
そうしてカリオスがイルギルスと言葉を交わしていると、リューゲルは静かに割って入ってくる。元々疲労困憊だった高齢の執政官は、そろそろ体力の限界が来たようである。さすがに休ませなければならないだろう。
「お前は、今日中に山を下りるんだったな」
カリオスの方はクラベールの戦いが決着しひと段落したため、少し余裕があるのだが、イルギルスの方はすぐにでもファヌスへ帰らないといけない状況らしい。だとすると、必然的にスタインもイルギルスやフィードラーと一緒に、すぐに出発することとなる。
「俺達はそろそろ休憩させてもらう。スタインのこと、くれぐれも宜しく頼むぞ」
「勿論だよ~。この子はカリオス王子やコウメイ君からの大切な預かりものさ。無事に返せるように、出来る範囲内で僕も力を尽くすよ。スタイン君も宜しく」
「はい。こちらこそ、宜しくお願い致します。イルギルス王子」
生真面目に礼を言うスタインに、イルギルスは柔和な笑顔でうなずいて応える。
「それじゃ、リューゲル卿もお疲れのようだし、そろそろ休んだ方がいいね。フィードラー、僕らも少ししたら出発するから、準備を始めておいてくれ」
そんなイルギルスの指示にフィードラーは無言で立ち上がると、スタインが彼に続いて「何か手伝います」と、そのまま2人で部屋を出ていく。
「リューゲル、お前は先に休んでいていいぞ。一応、俺はイルギルスを見送る」
「一応って、カリオス王子らしいなぁ」
いちいち笑いながら柔らかく突っ込んでくるイルギルス。
リューゲルも本当に限界が近づいてきたのか「それでは失礼して」と一言残してから部屋を出ていった。
そして、部屋に残されたのはカリオスとイルギルスの2人きり。
何気に、ここにきて、聖アルマイトとファヌスの第1王子同士が、たった2人だけで対面する初めての時間だった。
「--時に、カリオス王子」
ほんの数秒の沈黙の後、イルギルスが切り出す。
その口調は、これまでのおちゃらけた軽いものではない。どこか真剣さというか、深刻さを感じさせられるような、真面目な口調だった。
「あの娘の様子は、その後どんなだろうか? 薬は役に立っているかな?」
「……アンナのこと、か」
イルギルスは、アンナが王都に運び込まれた際の、初期治療の対応をしてくれている。コウメイの案で大陸最高峰の治癒魔術師であるイルギルスに打診したところ、わざわざ聖アルマイトへ単身やってきてくれたのだ。
カリオスがイルギルスへと無意識に寄せる信頼は、そこに起因しているのかもしれない。
「別に、彼女が聖アルマイトの英雄ヴァルガンダル家のお嬢様で、僕がファヌスの王子だから探っているわけじゃないよ? ただ1人の治癒魔術師として、謎の不可解な呪いにかかった患者のことが気になっているだけなんだけど」
「分かってるさ」
この場において、そんな政治的駆け引きを仕掛けてこなどこないだろう程度には、カリオスはイルギルスのことを分かったつもりだ。
「そういや呪いっていえば、もしかしたらお前よりも、お前の妹に診てもらうのが一番……ってことはないのか?」
イルギルスが大陸最高峰の治癒術師として有名であるのと同様に、彼の妹のリリィジュは大陸最高峰の呪術師として名が知れているのだ。だから、呪いのことに関しては、むしろイルギルスよりもリリィジュの方が詳しいのではないだろうか。
グスタフのあの「異能」が呪いの類になるかどうかもよく分からずにカリオスは聞いたが、案の定イルギルスは首を横に振る。
「妹は呪いを仕掛けるのが得意ってだけで、解呪についてはからっきしだからね。呪術と解呪は、まるで違う技術だから、役に立てないと思うよ。そもそも、今僕もつい呪いって言葉を使っちゃったけど、アレは呪いなんかじゃない。呪いとは明らかに違う、別の何かだよ」
「そうか……」
こんな所で簡単に解決するならば、イルギルスをアンナに診せた時点で終わっていたはずだ。良い答えが返ってくるなど思わず聞いたが、ここまできっぱり否定されると、顔を曇らせずにはいられなかった。
「容体は、正直あまり良くないな」
そうして、カリオスはイルギルスの質問に答える。
イルギルスは今自分で言った通り、治療に関わった人間として、純粋にアンナの身を案じてくれているのだ。その後のアンナのことは知る権利があるし、カリオスとしてもそれを伝えるべきだろう。
「コウメイ君に送った薬は使っているのかい?」
「ああ。あの性欲を抑えるってやつか。……今は、それも効かなくなっている」
王都を出てくる前の騒動を思い出し、カリオスは表情を暗くする。
ルエールの死までは、イルギルスが送ってくれた淫欲を抑える薬を使いながら快方に向かっていたはずなのに、父親の死のショックは相当にアンナの心を激しく揺さぶった。
カリオスは、また以前のように睡眠香で強制的に眠らせて対応するように指示してきたのだ。
そんなカリオスの報告に、ここまでずっと軽い態度だったイルギルスも、ヴェールの下で表情を重くしているのが分かる。
「そうかい。いや、今言った通り、最初の治療に当たった治癒術師としては患者の治癒を願ってやまない。一応大陸最高峰と言われているプライドもあるしね。でも、やっぱり僕じゃあ難しいみたいだね。
カリオス王子やヴァルガンダルのお嬢さんにとっては辛いこと言うようだけど、たぶんアレは魔法でも呪いでもない、人知を超えた何かだ。ちなみにコウメイ君に同じこと言ったら、彼は『この世界のものじゃない』なんて言ってたけど、まさしくその通りだよ。だから、多分『この世界』の治癒魔術しか使えない僕には、『この世界』のものじゃないあの”何か”を治療することは出来ない」
そのイルギルスの言葉を、カリオスは黙って聞き入る。
改めて思うのだが、一体あのグスタフという男は何者なのだろうか?
気づけば父王ヴィジオールの直轄下にあり、いつの間にか大臣という、今でいうならコウメイの元帥に当たる要職に就き、リリライトの教育係として彼女に近寄り、そしてその理不尽極まりない「異能」で世界を混乱に陥れた諸悪の根源。
イルギルスをもってしてこうまで言わしめる、奴の「異能」とは一体なんなのか。コウメイは多少知っていそうな雰囲気はあるが、明言することはない。
「病は気からって言葉を知っているかい、カリオス王子?」
ふと、そんなことを言ってくるイルギルスに、カリオスは目を向いてイルギルスの方を見返した。
「まあ、彼女のアレが病気なのかなんなのかはよく分からないけど……悪いものを治す方法は、魔術だけじゃないって話さ。『この世界』の常識や理論が通じないなら、あとは精神論で何とかするしかないんじゃないかなって思ってさ。現に、父親の死で容体が悪化したんだろう? 無責任で申し訳ないが、精神的なものがかなり影響するものなんかじゃないか?」
「とはいっても、どうすれば……」
イルギルスの言うことは、最もだ。それはカリオスも分かっている。
しかし具体的に何をどうすればいいというのか。今のアンナを励ます方法など、カリオスは皆目見当もつかなかった。
「僕達治癒術師は、治療にあたる時、いつも原因の切り分けから始めるんだ」
こうやって、いきなり話題転換をするのもイルギルスの話術の一つなのだろうか。カリオスは訝し気な視線をイルギルスに送りながら、言葉を待つ。
「一体、今は何が悪くて、何が問題なんだろうね?」
「何が言いたい?」
「その言葉通りの意味だよ。本当に悪いのは、何だろうか? もしかして、カリオス王子は、あまりの目の前の悲惨さに、そうやって考えることを放棄してしまっていないかい?」
そんな物怖じしないイルギルスの言葉に、カリオスは怒りの感情を静かに帯び始める。すると、そんなつもりは無かったのか、イルギルスは珍しく慌てた様子で
「いやいや。勿論悪いのは、あのグスタフ卿ーーあ、名前出しちゃった。ま、いっか--で間違いないよ。彼女は勿論、話を聞く限りではカリオス王子達に非があるわけじゃない。
でも、それは今僕が言いたのとは別の問題だ。僕が言いたのは、現状起こってしまった事の問題点だよ。……そうだね、もっと端的に言うならば」
これ以上、カリオスの機嫌を損ねるのは御免なのだろう。イルギルスは少し虚空を見上げて言葉を選んでいるようだった。しかし、すぐに考えるのを止めて、彼の考えそのものを言葉にする。
「そんなに辛いのに、心が折れることは悪いことかな? 頑張らないといけないのかな? 元の状態に戻るために頑張らないと……元気にならないといけないのかな?」
「--」
それは、何とかアンナを元の姿に戻そうと、そればかりを考えていたカリオスにとっては、意表を突かれるような言葉だった。
「いや、僕にはわからないけどさ」
何も言い返せないカリオスをそのままに、イルギルスは首を横に振って続ける。
「所詮、僕は部外者だ。何が悪くて、何をしてあげたらいいかなんて、何も分からない。でもね、僕が思うのは、皆必死にグスタフ卿の毒牙にかかった彼女を治そうとしているんだけど……そもそも、彼女の何が悪いのかが、何を治そうと考えているのか、甚だ疑問なんだよ。
勿論、悪い状態であることは間違いない。でも、繰り返すようだけど、何が悪いのかが、僕にはまだはっきりと分からないんだ。だって、彼女は病気でもなければ怪我をしているわけでもないんだ。そして、悪者に洗脳されて悪事を働き、父親を失ったことで、今心が弱ってしまっていることは、僕は悪いことだと思わないんだけどね」
つらつらと語るイルギルスが、そこまで言うと、ふうと大きくため息をつく。
「ごめん。僕から振っといてなんだけど、やめとこうか。何が言いたいのか、僕も分からなくなっちゃったし、あなたを不快にさせるだけだ」
「--いや」
少なくとも、嫌がらせや皮肉の類ではない。
お互いの大国の王子同士という立場を超えて、イルギルスが純粋に治療を手掛けたアンナの身を案じているという気持ちだけは伝わってくる。
イルギルスの言う通り、思考停止していたのかもしれない。
グスタフという理不尽極まりない凶悪で醜悪な力を前にして、カリオスは無意識に、それから目を逸らしていたのではないか。
とにかく諸悪の根源であるグスタフを排除してしまえば全ては解決するのだ、と。何もかもそれでうまくいく。それで全てハッピーエンドになると、思考停止していたのではないか。
全てをグスタフのせいして--それ自体は、イルギルスが言う通りその通りで間違いないとカリオスも思うが--肝心のアンナ本人に向き合っていない。
それはつまり、カリオスはこの世界で最も救いたいと思っているはずの最愛の妹リリライトに対しても同じことなのだ。
(こんなことで、リリが救えるものか……!)
他の誰にでもない、自分に対しての怒りで、頭がどうにかなりそうだった。
こんな大事なことを、まさか他国の王子に気づかされるとは。
絶対だと思っていた妹への愛は、恩師の娘を救いたいという自分の気持ちは、こんなにも薄っぺらだったというのか。
ーーしかし、カリオスがカリオスたる所以は、ここで感情に呑まれることも、心を折ることもないことだ。
「俺は、どうすればいいと思う?」
間違いを認め、それを受け入れ、そして膝を折ることなく、再び歩き出す。次へ向けて、自分の足りないところを補う。足りないなら周囲の人の力を惜しげもなく借りる。
そうして、聖アルマイト第1王子カリオスは、ここまで王族としての人生を歩んできたのだ。
返しきれない恩を一つも返すことが出来ないまま恩師の娘を救うために、そしてこの世界で誰よりも愛おしい妹を助けるために、カリオスは他国の王子だろうがなんだろうが、なりふり構わずに教えを乞うのだ。
そんなカリオスに態度を、イルギルスは、いまいち感情の読めない軽薄な表情で受け止めていた。
今さっき、部外者であるイルギルスには、どうすればいいかなど分かりようがないと言ったばかりなのに。
しかし、こうして真っすぐな感情を向けられて、イルギルスは悪い気持ちはしていないようだった。
「まずは、本人のことを知ってみたらどうかな?
だから、イルギルスは出来る限りでカリオスの立場になったら自分ならどうするかを想像して、助言する。
「アンナ=ヴァルガンダルのことを、君はどれだけ知っているんだい?」
この”秘密会談”での最も大きな収穫。
それは、ファヌスの動向を多少なりとも知れたこと、イルギルスとの関係構築、スタインのファヌスへの派遣ーーこれらの多大な外交的意義よりも何よりも、そのイルギルスの言葉だったかもしれない。
翌日。カリオスは王都ユールディアへ帰還す。
そして、これからカリオスはグスタフの強大なる「異能」との戦いに挑む。
この戦いは、カリオスの最終目標でもある、リリライトの救出可能性にもつながる重大な戦いだ。
その結果が、これからカリオスが歩もうとしている道を絶望で染めることとなるのか。それとも僅かでも希望の灯を灯すこととなるのか。
その結果は、まだ誰にも話からない。
カリオス側の申し出に、イルギルスはそんなことなど全く思っていないような口調で言ってくる。が、彼の従者であるフィードラーは、相変わらずイルギルスの手汗が凄いことになっていることには気づいていた。
ファヌス国内の詳しい状況は不明だが(スタインの身柄を渡すのは、それを探る目的もあるのだが)、第1王子派と第2王女派のどちらにつくが揺れる所に、第1王子派の元帥の補佐官などという人物を連れて帰れば、イルギルスがの”爆弾”発言は決して大袈裟な表現ではないように思える。
「ええと、分かっているのかな? うちの国に来たら、身の安全は保障出来ないよ? 君、コウメイ君の秘蔵っ子なんでしょう?」
これまではカリオスとばかり話していたイルギルスが、当事者であるスタインに確認するように言うと、スタインは年齢にそぐわぬ落ち着いた態度のままうなずく。
「まだ秘蔵っ子と言われる程、あの方に仕えてから日は経っていませんが」
そのスタインの言葉に、イルギルスは「ひゃ~」と言いながら、再びカリオスへ視線を戻す。
「いいの? はっきり言って、次の戦いで君らが負けたら、多分この子殺されるよ?」
「俺達が負けると思ってるのか?」
ここに来てからなんだか静かだったカリオスの様子が少し変わっていて、強気に不敵な笑みを浮かべていた。そんなカリオスの強気な態度に、イルギルスは困ったように腕を組む。
正直、ここで元帥の側近的な人間を連れ帰ることは、メリットが大きいように思う。
カリオスがそんな重職の人間をファヌスに寄越すという誠意を示すことで、反第1王子派への説得材料に使えるだろう。カリオス達が敗北した場合でも、フェスティアにスタインの身柄を引き渡すことで、第2王女派との交渉材料にも使える。後者ははいささか非人道的ではあるが。
デメリットで思い付くのは、極秘裏にカリオスと接触したことが、反第1王子派やフェスティアらの逆鱗に触れることだが、それはこのカリオスとの”秘密会談”を公表するタイミングを慎重に選べば大丈夫のはずだ。
いずれにせよ、イルギルスがスタインの身柄を手元に置いておくことは、イルギルスにとっては協力な切り札になり、やはりデメリットよりもメリットの方がはるかに大きいだろう。
最も、カリオスの本当の意図は、スタインの利用価値とか、ファヌス国内のスパイとか、そういう話ではないのだろう。
「勿論、そういう狡い意図もゼロではないんだろうけど……いやはや参ったね。こんな真っすぐに誠意を見せられるとは、正直思ってなかったよ」
イルギルスがカリオスを支持するならば、カリオスは必ずそれに応えるという覚悟ーーそれが、スタインの身柄を渡すということなのだろう。
「やれやれ。もしかして、君はカリオス王子に無理強いされているのかい?」
「カリオス殿下がそのような人であれば、イルギルス王子はカリオス殿下につこうとは思わなかったでしょう?」
相手が王族と言えど、スタインは一歩も引かずに言い返してくる。
外見はまだまだ若くて頼りなくすら見えるが、なるほどコウメイが見込んだ人材である。イルギルスはスタインの返しに「確かに」と笑う。
「それじゃあ、ありがたくもらって帰ろうかな。宜しく頼むよ、スタイン君ーーだったね」
「イルギルス殿下!」
それまで黙って話を聞いていたフィードラーが我慢しきれずに立ち上がるが、イルギルスは「まあまあ」とのんびりした口調で制す。
「ここで、この子を受け取って帰らないと、今日の僕の言葉が全て空虚になるだろう?。スタイン君のことは、カリオス王子が僕の信じるという言葉を信じてくれたということだ。
それなら、僕もカリオス王子の信頼を受け取らないといけない。それが、この場で見せたかった僕の誠意だよ。違うかい?」
「……俺は、どうなっても知りませんぜ!」
へらへらとしているイルギルスを見て、フィードラーは投げやりに言うと、再び椅子に腰を下ろした。
「やっぱり、この場を設けて正解だったよ。お互いにとても意義があったと思わないかい?」
イルギルスのその満足そうな言葉は、その場にいる全員に対して発せられているようだった。
□■□■
「それじゃ。次に顔を合わせるのは、公式の場で、味方として再会出来ることを願っているよ」
そのイルギルスの言葉をもって、この”秘密会談”は締めくくられようとしていた。
「やれやれ。また、あの山道を今度は降りていくんですかな……」
「さすがに今夜は泊まらせてもらって、戻るのは明日だな。悪いが、もうひと踏ん張りしてくれ、リューゲル」
カリオスとの同行のため、身の安全という意味では心配していないが、とにかく単純に険しい山道が、老齢のリューゲルには辛い。うんざりとした表情で零すリューゲルに、カリオスは苦笑しながら言っていた。
「あー、ここに来るのは大変だったみたいだね。帰りはこの集落の人間に、比較的楽な道を案内させるよ」
「……ここは、ファヌスの領地じゃなくて、中立地帯のはずだよな?」
まるで自国の領地のように振舞うイルギルスに、カリオスが疑わしげに言うと、イルギルスは後頭部に手を当てて誤魔化すように笑う。
「いやー。ちっちゃい頃は、ここら辺を妹と一緒に駆け回っていてねー。この集落の人達は、子供の頃からの顔なじみでね。ボクのことは、王子様どころか、せいぜい近所の悪ガキくらいにしか思われてないよ。……ま、多少の我儘は聞いてくれるけどね」
「ファヌス魔法大国の姫……『呪い姫』リリィジュか。こんな魔物が棲息している山を駆け回るなんて、とんでもねえ兄妹だな」
「いやいや、カリオス王子ー。可愛い妹を、そんな不穏な二つ名で呼ばれたら、兄としては複雑な心境だよー」
「安心しろ。俺の妹にも『鮮血の姫』っつー、極めて物騒な異名がついているのがいる。本人は喜んでいる節があるが」
どうやら、政治的立場は置いといて、とりあえずそんな下らないことを言えるくらいに、両者の仲は温まったようである。
「カリオス殿下。申し訳ありませんが、そろそろ、よろしいですかな」
そうしてカリオスがイルギルスと言葉を交わしていると、リューゲルは静かに割って入ってくる。元々疲労困憊だった高齢の執政官は、そろそろ体力の限界が来たようである。さすがに休ませなければならないだろう。
「お前は、今日中に山を下りるんだったな」
カリオスの方はクラベールの戦いが決着しひと段落したため、少し余裕があるのだが、イルギルスの方はすぐにでもファヌスへ帰らないといけない状況らしい。だとすると、必然的にスタインもイルギルスやフィードラーと一緒に、すぐに出発することとなる。
「俺達はそろそろ休憩させてもらう。スタインのこと、くれぐれも宜しく頼むぞ」
「勿論だよ~。この子はカリオス王子やコウメイ君からの大切な預かりものさ。無事に返せるように、出来る範囲内で僕も力を尽くすよ。スタイン君も宜しく」
「はい。こちらこそ、宜しくお願い致します。イルギルス王子」
生真面目に礼を言うスタインに、イルギルスは柔和な笑顔でうなずいて応える。
「それじゃ、リューゲル卿もお疲れのようだし、そろそろ休んだ方がいいね。フィードラー、僕らも少ししたら出発するから、準備を始めておいてくれ」
そんなイルギルスの指示にフィードラーは無言で立ち上がると、スタインが彼に続いて「何か手伝います」と、そのまま2人で部屋を出ていく。
「リューゲル、お前は先に休んでいていいぞ。一応、俺はイルギルスを見送る」
「一応って、カリオス王子らしいなぁ」
いちいち笑いながら柔らかく突っ込んでくるイルギルス。
リューゲルも本当に限界が近づいてきたのか「それでは失礼して」と一言残してから部屋を出ていった。
そして、部屋に残されたのはカリオスとイルギルスの2人きり。
何気に、ここにきて、聖アルマイトとファヌスの第1王子同士が、たった2人だけで対面する初めての時間だった。
「--時に、カリオス王子」
ほんの数秒の沈黙の後、イルギルスが切り出す。
その口調は、これまでのおちゃらけた軽いものではない。どこか真剣さというか、深刻さを感じさせられるような、真面目な口調だった。
「あの娘の様子は、その後どんなだろうか? 薬は役に立っているかな?」
「……アンナのこと、か」
イルギルスは、アンナが王都に運び込まれた際の、初期治療の対応をしてくれている。コウメイの案で大陸最高峰の治癒魔術師であるイルギルスに打診したところ、わざわざ聖アルマイトへ単身やってきてくれたのだ。
カリオスがイルギルスへと無意識に寄せる信頼は、そこに起因しているのかもしれない。
「別に、彼女が聖アルマイトの英雄ヴァルガンダル家のお嬢様で、僕がファヌスの王子だから探っているわけじゃないよ? ただ1人の治癒魔術師として、謎の不可解な呪いにかかった患者のことが気になっているだけなんだけど」
「分かってるさ」
この場において、そんな政治的駆け引きを仕掛けてこなどこないだろう程度には、カリオスはイルギルスのことを分かったつもりだ。
「そういや呪いっていえば、もしかしたらお前よりも、お前の妹に診てもらうのが一番……ってことはないのか?」
イルギルスが大陸最高峰の治癒術師として有名であるのと同様に、彼の妹のリリィジュは大陸最高峰の呪術師として名が知れているのだ。だから、呪いのことに関しては、むしろイルギルスよりもリリィジュの方が詳しいのではないだろうか。
グスタフのあの「異能」が呪いの類になるかどうかもよく分からずにカリオスは聞いたが、案の定イルギルスは首を横に振る。
「妹は呪いを仕掛けるのが得意ってだけで、解呪についてはからっきしだからね。呪術と解呪は、まるで違う技術だから、役に立てないと思うよ。そもそも、今僕もつい呪いって言葉を使っちゃったけど、アレは呪いなんかじゃない。呪いとは明らかに違う、別の何かだよ」
「そうか……」
こんな所で簡単に解決するならば、イルギルスをアンナに診せた時点で終わっていたはずだ。良い答えが返ってくるなど思わず聞いたが、ここまできっぱり否定されると、顔を曇らせずにはいられなかった。
「容体は、正直あまり良くないな」
そうして、カリオスはイルギルスの質問に答える。
イルギルスは今自分で言った通り、治療に関わった人間として、純粋にアンナの身を案じてくれているのだ。その後のアンナのことは知る権利があるし、カリオスとしてもそれを伝えるべきだろう。
「コウメイ君に送った薬は使っているのかい?」
「ああ。あの性欲を抑えるってやつか。……今は、それも効かなくなっている」
王都を出てくる前の騒動を思い出し、カリオスは表情を暗くする。
ルエールの死までは、イルギルスが送ってくれた淫欲を抑える薬を使いながら快方に向かっていたはずなのに、父親の死のショックは相当にアンナの心を激しく揺さぶった。
カリオスは、また以前のように睡眠香で強制的に眠らせて対応するように指示してきたのだ。
そんなカリオスの報告に、ここまでずっと軽い態度だったイルギルスも、ヴェールの下で表情を重くしているのが分かる。
「そうかい。いや、今言った通り、最初の治療に当たった治癒術師としては患者の治癒を願ってやまない。一応大陸最高峰と言われているプライドもあるしね。でも、やっぱり僕じゃあ難しいみたいだね。
カリオス王子やヴァルガンダルのお嬢さんにとっては辛いこと言うようだけど、たぶんアレは魔法でも呪いでもない、人知を超えた何かだ。ちなみにコウメイ君に同じこと言ったら、彼は『この世界のものじゃない』なんて言ってたけど、まさしくその通りだよ。だから、多分『この世界』の治癒魔術しか使えない僕には、『この世界』のものじゃないあの”何か”を治療することは出来ない」
そのイルギルスの言葉を、カリオスは黙って聞き入る。
改めて思うのだが、一体あのグスタフという男は何者なのだろうか?
気づけば父王ヴィジオールの直轄下にあり、いつの間にか大臣という、今でいうならコウメイの元帥に当たる要職に就き、リリライトの教育係として彼女に近寄り、そしてその理不尽極まりない「異能」で世界を混乱に陥れた諸悪の根源。
イルギルスをもってしてこうまで言わしめる、奴の「異能」とは一体なんなのか。コウメイは多少知っていそうな雰囲気はあるが、明言することはない。
「病は気からって言葉を知っているかい、カリオス王子?」
ふと、そんなことを言ってくるイルギルスに、カリオスは目を向いてイルギルスの方を見返した。
「まあ、彼女のアレが病気なのかなんなのかはよく分からないけど……悪いものを治す方法は、魔術だけじゃないって話さ。『この世界』の常識や理論が通じないなら、あとは精神論で何とかするしかないんじゃないかなって思ってさ。現に、父親の死で容体が悪化したんだろう? 無責任で申し訳ないが、精神的なものがかなり影響するものなんかじゃないか?」
「とはいっても、どうすれば……」
イルギルスの言うことは、最もだ。それはカリオスも分かっている。
しかし具体的に何をどうすればいいというのか。今のアンナを励ます方法など、カリオスは皆目見当もつかなかった。
「僕達治癒術師は、治療にあたる時、いつも原因の切り分けから始めるんだ」
こうやって、いきなり話題転換をするのもイルギルスの話術の一つなのだろうか。カリオスは訝し気な視線をイルギルスに送りながら、言葉を待つ。
「一体、今は何が悪くて、何が問題なんだろうね?」
「何が言いたい?」
「その言葉通りの意味だよ。本当に悪いのは、何だろうか? もしかして、カリオス王子は、あまりの目の前の悲惨さに、そうやって考えることを放棄してしまっていないかい?」
そんな物怖じしないイルギルスの言葉に、カリオスは怒りの感情を静かに帯び始める。すると、そんなつもりは無かったのか、イルギルスは珍しく慌てた様子で
「いやいや。勿論悪いのは、あのグスタフ卿ーーあ、名前出しちゃった。ま、いっか--で間違いないよ。彼女は勿論、話を聞く限りではカリオス王子達に非があるわけじゃない。
でも、それは今僕が言いたのとは別の問題だ。僕が言いたのは、現状起こってしまった事の問題点だよ。……そうだね、もっと端的に言うならば」
これ以上、カリオスの機嫌を損ねるのは御免なのだろう。イルギルスは少し虚空を見上げて言葉を選んでいるようだった。しかし、すぐに考えるのを止めて、彼の考えそのものを言葉にする。
「そんなに辛いのに、心が折れることは悪いことかな? 頑張らないといけないのかな? 元の状態に戻るために頑張らないと……元気にならないといけないのかな?」
「--」
それは、何とかアンナを元の姿に戻そうと、そればかりを考えていたカリオスにとっては、意表を突かれるような言葉だった。
「いや、僕にはわからないけどさ」
何も言い返せないカリオスをそのままに、イルギルスは首を横に振って続ける。
「所詮、僕は部外者だ。何が悪くて、何をしてあげたらいいかなんて、何も分からない。でもね、僕が思うのは、皆必死にグスタフ卿の毒牙にかかった彼女を治そうとしているんだけど……そもそも、彼女の何が悪いのかが、何を治そうと考えているのか、甚だ疑問なんだよ。
勿論、悪い状態であることは間違いない。でも、繰り返すようだけど、何が悪いのかが、僕にはまだはっきりと分からないんだ。だって、彼女は病気でもなければ怪我をしているわけでもないんだ。そして、悪者に洗脳されて悪事を働き、父親を失ったことで、今心が弱ってしまっていることは、僕は悪いことだと思わないんだけどね」
つらつらと語るイルギルスが、そこまで言うと、ふうと大きくため息をつく。
「ごめん。僕から振っといてなんだけど、やめとこうか。何が言いたいのか、僕も分からなくなっちゃったし、あなたを不快にさせるだけだ」
「--いや」
少なくとも、嫌がらせや皮肉の類ではない。
お互いの大国の王子同士という立場を超えて、イルギルスが純粋に治療を手掛けたアンナの身を案じているという気持ちだけは伝わってくる。
イルギルスの言う通り、思考停止していたのかもしれない。
グスタフという理不尽極まりない凶悪で醜悪な力を前にして、カリオスは無意識に、それから目を逸らしていたのではないか。
とにかく諸悪の根源であるグスタフを排除してしまえば全ては解決するのだ、と。何もかもそれでうまくいく。それで全てハッピーエンドになると、思考停止していたのではないか。
全てをグスタフのせいして--それ自体は、イルギルスが言う通りその通りで間違いないとカリオスも思うが--肝心のアンナ本人に向き合っていない。
それはつまり、カリオスはこの世界で最も救いたいと思っているはずの最愛の妹リリライトに対しても同じことなのだ。
(こんなことで、リリが救えるものか……!)
他の誰にでもない、自分に対しての怒りで、頭がどうにかなりそうだった。
こんな大事なことを、まさか他国の王子に気づかされるとは。
絶対だと思っていた妹への愛は、恩師の娘を救いたいという自分の気持ちは、こんなにも薄っぺらだったというのか。
ーーしかし、カリオスがカリオスたる所以は、ここで感情に呑まれることも、心を折ることもないことだ。
「俺は、どうすればいいと思う?」
間違いを認め、それを受け入れ、そして膝を折ることなく、再び歩き出す。次へ向けて、自分の足りないところを補う。足りないなら周囲の人の力を惜しげもなく借りる。
そうして、聖アルマイト第1王子カリオスは、ここまで王族としての人生を歩んできたのだ。
返しきれない恩を一つも返すことが出来ないまま恩師の娘を救うために、そしてこの世界で誰よりも愛おしい妹を助けるために、カリオスは他国の王子だろうがなんだろうが、なりふり構わずに教えを乞うのだ。
そんなカリオスに態度を、イルギルスは、いまいち感情の読めない軽薄な表情で受け止めていた。
今さっき、部外者であるイルギルスには、どうすればいいかなど分かりようがないと言ったばかりなのに。
しかし、こうして真っすぐな感情を向けられて、イルギルスは悪い気持ちはしていないようだった。
「まずは、本人のことを知ってみたらどうかな?
だから、イルギルスは出来る限りでカリオスの立場になったら自分ならどうするかを想像して、助言する。
「アンナ=ヴァルガンダルのことを、君はどれだけ知っているんだい?」
この”秘密会談”での最も大きな収穫。
それは、ファヌスの動向を多少なりとも知れたこと、イルギルスとの関係構築、スタインのファヌスへの派遣ーーこれらの多大な外交的意義よりも何よりも、そのイルギルスの言葉だったかもしれない。
翌日。カリオスは王都ユールディアへ帰還す。
そして、これからカリオスはグスタフの強大なる「異能」との戦いに挑む。
この戦いは、カリオスの最終目標でもある、リリライトの救出可能性にもつながる重大な戦いだ。
その結果が、これからカリオスが歩もうとしている道を絶望で染めることとなるのか。それとも僅かでも希望の灯を灯すこととなるのか。
その結果は、まだ誰にも話からない。
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