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第2章『クラベール城塞都市決戦』編

第115話 もっと、もっと強く(歪)

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 フェスティアがバーグランド邸から出てきたのは、彼女が1人屋敷の中に入ってから優に4時間は経過していた。その4時間、愚直にひたすら待ち続けていたゾーディアスの精神力は相当のものだろう。

 日付はとっくに変わり、もう間もなくすれば朝日が顔を出そうかというくらいの時間に、ようやくフェスティアはゾーディアスの前に姿を現したのだった。

「代表っ!」

 フェスティアの服や髪は乱れており、目立つ外傷こそ無いものの、中で何かがあったことは明白だった。何しろ“あの”フェスティアが、明らかにやつれた顔をしているのだ。

「大丈夫でしたか」

 フェスティアは、ゾーディアスの姿を認めても、一瞥しただけでそのままスタスタと歩いていく。ここまで生真面目に待ち続けていた割には素っ気なさすぎるフェスティアの態度だったが、ゾーディアスは不快な表情1つせず、その背中を追うようにしてついていく。

「大丈夫よ」

 そのゾーディアスの気配を背後に感じたフェスティアは、ただ一言だけそう返す。

 しかし、そのフェスティアのフラフラとした様子を見れば、いくら従順なゾーディアスも黙ってはいられなかった。

「あの、『純白の姫』に何かされたのではないですか? 一体何を……」

「黙りなさい」

 そのたった一言が、フェスティアにとっては苛立たしかったのか、足を止めてゾーディアスへと振り返る。

「大丈夫と言っている。貴方が心配することは何も無いわ。――それよりも、次は決戦よ。戦力の小出しは止めて、ヘルベルト連合国からも、降伏してきた元第1王子派の領主の戦力も、全て結集してクラベールを陥とすわ。戦力は分散させず、一極集中で奴を討つ……コウメイさえ仕留めれば、後はどうとでもなるわ」

「……」

 ゾーディアスは、そのフェスティアの苛烈な発言に、表情にこそ出さなかったが驚きで息を飲んだ。

 それでは、最早ヘルベルト連合と聖アルマイトの全面戦争ではないか。内乱に乗じて第2王女派へ協力するまでは、百歩譲ってまだ分かるとしでも、ヘルベルト連合が表に立ってカリオス王子らと決戦など、そこまでして何の益があるというのか。

 目の前に立つのが、いつも冷静で完璧な政治判断をする『天才』とはとても思えなかった。

 しかし、ゾーディアスはフェスティアの護衛。戦場で剣を振るう以外のことは、彼には何も許されない。フェスティアの判断に従うだけ――それは、フェスティアに護衛として選ばれた時から今日まで、そしてこれから死ぬまでずっと貫き通すことだ。

「では、急ぎ準備を整えなければいけませんね」

「――相手になるべく時間を与えたくはないわ。なるべく早急に軍備を進めるのと並行して、小国家群や旧ネルグリア勢力にも外交戦略を仕掛けて、もう1度ユールディアへ圧力をかけるわよ。それに、ファヌスとの調整も必要だわ」

 フェスティアは再びくるりと向きを変えると、相変わらずフラフラとした足取りで歩き始め、ゾーディアスがそれに続く。

 聖アルマイトと全面戦闘に突入するという判断自体は意味不明だが、そのための軍略に関しては、相変わらず、てきぱきとしている。判断が早くて的確で合理的だ。

 同じフェスティアという人間のはずなのに、そんな矛盾したものが同時に垣間見えると、ゾーディアスは言い知れぬ不気味さを感じるのだった。

「アストリア嬢がいれば、かかる時間も大分短縮出来たのでしょうが……」

 アストリア=リオノーラ。

 ゾーディアスが軍事面でのフェスティアの側近だとすれば、彼女は事務的な面でフェスティアをサポートしていた。能力的には平凡だったが、フェスティアのために役に立とうとひたむきに努力していたおかげか、フェスティアも妹のように彼女を可愛がっていた。

 そのアストリアは、少し前から行方不明となっていた。ゾーディアスがミュリヌス領に呼ばれる前、ちょうどミュリヌス領に偵察に入ってきたカリオスらを追い返した時期のことらしい。

 アストリアは、ヘルベルト連合に加盟している国の中で最大の軍事力を持つガルガンド国大臣の娘だった。そんな彼女がいれば、連合国からの追加の援軍の手配も大分スムーズだったろう。いるのといないとは、ガルガンド国を説得すること1つとっても大違いだ。

 ただ、ゾーディアスが怪訝に感じるのは、そのようなアストリアの立場を抜きにしても、あれだけ妹の可愛がっていた彼女の行方を、フェスティアはそこまで懸命に探そうとはしていない。むしろ、面倒臭がっているようにすらゾーディアスには感じる。それも、違和感だらけだった。

「アストリア……?」

 ゾーディアスから出てきた名前を、フェスティアは不可解そうに反芻する。まるで初めて聞いた名前のように言うその口調は、とても演技とは思えなかった。

「――ああ、タマのことね。すっかり忘れていたわ」

「タマ……?」

 そんなフェスティアの言葉に、今度はゾーディアスが首を傾げる。

「何でもないわ。それよりも、どうにもならないことの愚痴を言っているより、とにかく動きなさい。1分1秒でも、相手の時間を削るつもりでいなさい。ここからは時間が勝負よ」

 ゾーディアスはそう言うフェスティアの背中を見ながら、その後に付いて歩き続ける。

 以前の主人とは別人としか思えない。それくらいに変わってしまった。一体、何があったのだというのだろうか――

 しかし、あくまでも護衛に過ぎないゾーディアスには、それすらも関係ない。

 仰ぐべき主人であるフェスティアに対してゾーディアスがやるべきことは、何も変わらないのだった。

    ▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼

 淫魔達がフェスティアの精気を貪り尽くして、ステラも含めてその姿を消した後、グスタフとリアラは場所を寝室へ移していた。

 そして夜が白み始めた今も、まだ行為に没頭していた。

「あぁんっ! あんっ……! あんっ! 好きっ、グスタフ好きぃっ!」

 部屋の壁に手をついて、後ろからグスタフがリアラを突き上げている。リアラは嬉しそうな媚びた声を出しながら、グスタフの腰つきに合わせて腰をくねらせていた。

 ちなみに、リアラの身に植え付けられた禍々しい男性器は、今はその姿形を消していた。

「あはっ、すごいねグスタフ。都合よくチンポ消せるなんて♪」

「ぐひひひ。ワシとの2人きりのセックスの時は、もうお前にチンポは必要ないからのぅ」

「でもでも、チンポセックスの良さも覚えちゃったからなぁ。また女の子ハメまくりたいよぉ」

「心配せんでいいじゃて。雌を犯したい時には、また好きに生えてくる。ワシの「異能」も日々進化しておるからのぅ」

「何それ~。都合よすぎ♪ チョーヤバくて素敵ぃ♡ グスタフ、キスぅ……♡」

 リアラが甘えた声を出して顔を振り向かせると、グスタフは唇を反り返すようにして、その肉厚の唇を近づけていく。

「ふむっ……んっ……んんんん~~~~っ♡」

 舌を絡ませ合うと、グスタフの腰つきが激しくなっていく。パンパンと肉をぶつけ合う音に加えて、リアラの愛液が掻き混ぜられるような淫猥な水音をが響いていく。

(っん♡ だめ……だめっ♡ もっと、好きになっちゃう。これ以上好きなんて無かったはずなのに、もっと好きになるっ! グスタフ、好き♡ 好き、好きっ 大好きっ♡)

「だ、だしてっ! このままグスタフの……中に注ぎ込んでっ……!」

「勿論じゃ……んほおおおおおおおっ~~~!」

 グスタフは獣欲に満ちた声を出しながら、両手でリアラの腰を固定して、その最奥へと精を注ぎ込む。リアラも自ら腰を突き出して、グスタフの欲望の塊を、少しでも深い場所で受け取ろうとする。

「あ、が……ぐぁぁ……ひあああああ~……♡」

(な、中に入ってくる……♡ グスタフが……私の中にグスタフの愛がっ♡ だめぇ……こんなの……好きになるっ♡ もっともっとグスタフが……チンポが……もう好きぃ♡ 大好きぃぃぃぃ♡)

 目にハートマークを浮かべて、精を注ぎ込まれながら至福の表情を浮かべるリアラ。

 グスタフとの性交は、普通の人間のそれとは違う。

 精と一緒に、何かがリアラの身体に中に入ってきて、リアラという人格が書き換わっていくような感覚になる。別の人格に入れ替わるというわけではなく、あくまでリアラ=リンデブルグという人格をそのままに、グスタフの都合の良い存在へと変貌させていくのだ。

 グスタフには従順で絶対服従。グスタフのためならば、どんな淫猥なことでも残忍なことで平気でこなし、積極的に媚びを売りたくなる。内では常に飢えた獣のように欲望にギラつくようになりながらも、表向きは美麗で落ち着いた美少女然とした雰囲気を保っている。

 更にそれに加えて、地上では誰もが歯が立たない人類最強の力を持った勇者なのである。

 いわば、グスタフにとって最高に都合の良い「ぼくがかんがえた、さいきょうのびしょうじょゆうしゃ」だった。

「はぁ……好き♡ グスタフっ……」

 リアラの中で射精が終わると、肉棒が引き抜かれる。糸を引いた肉棒はまだ萎えを知らず、硬いままのそれへ手を伸ばすと、指を絡めるようにしながら扱き始める。

 そしてリアラは身体の向きをくるりと回すと、もう片方の腕をグスタフの首へ回し、その唇に貪りつく。

「ちゅ……はむ……好きっ♡ 大好きっ♡ 何回出しても、全然萎えないっ♡ すごい♡ 最高チンポ♡ こんなの惚れちゃうよぉ。グ、グスタフ……好きぃぃぃ♡ ちゅうう♡」

 未だかつて、こんなにも誰かを好きになったことがあっただろうか。

 ――あったような気がする。

 その相手は、一目見たら一生涯忘れないようなグスタフとは違って、どこにでもいるようなごく平凡な青年だった。それこそ、一目見たところで、群衆に埋もれて忘れてしまうような、何の特徴もない一般男性。

 でも、好きだった。

 その真面目で真っ直ぐで、一途で優しくで、裏表無い性格が好きだった。

 誰にでも優しい人だったけど、自分に寄せる優しさは他の人と違うものがあった。そんな彼の純粋な想いを独り占め出来ているのが嬉しかった。

 こんなに幸せな気持ちをくれる人だったから、自分もその幸せを何倍にもして返してあげたいと思った。

 これからも、ずっとずっと幸せに続く人生を、一緒に歩んでいきたいと本気で思っていた。

「ああ……グスタフが好き過ぎて、脳が溶けちゃう……グスタフ、好きぃぃ♡」

 舌を絡め合わせる内に、更に硬さと大きさを増していくグスタフの肉棒。その雄の象徴にリアラの秘部も熱く火照っていくと、リアラはグスタフの腰へと足を絡めようとする。そんなリアラの意図を察したグスタフが、彼女の尻を両手で持ち上げるようにして抱え上げると、その恰好で勃起した肉棒をリアラの秘部へと挿入していく。

「っはううう……すごい……この格好だと奥までズンって届いて……幸せぇぇぇ♡」

 好きな人と身体を重ね合わせることは、とても幸せなことだ。

 だから、彼のことが好きだったから、彼とのセックスはとても幸せになれて好きだった。

 自分の身体と心を気遣いながら、とても優しく愛してくれた。特段気の利いたわけでもない不器用な愛の言葉が、とても嬉しくて愛おしかった。

「ふほおおおっ♪ ワシもこのドスケベマンコを愛しておるぞぉぉ♡ ワシの愛のチンポを感じるか? ほれ、ほれっ! ワシのマジカルチンポで、お前のエロ脳をもっともっと開発してやるからのぅ」

 好きな人との行為だったから、決して社交辞令ではなく、気持ちよかった。

 彼もきっと気持ちよくなってくれていたと思う。それは女としてとても嬉しかった。

 でも彼はシャイだったから、あまり言葉にはしてくれない。だから代わりに、すごく恥ずかしかったけど、自分が必ず言うようにしていた。

 大好きだよ。気持ちよかったよ、と。

「あふぉぉぉぉ~っ♡ んほっっ……おほおおおおおお~~~っ♡ こ、この格好奥までずんずん届くにょおおおっ♡ チューしながらセックス出来るし、チョー好きぃぃ♡ んんんん~~~、れろれろれろぉ♡ 大好きぃぃぃ♡ 気持ちいいいいい~♡」

 彼との想い出は、どれも綺麗で幸せで嬉しいものばかりだ。今思い出しても、頬が綻んで胸がときめく。

 いつも頑張っていて、どんな辛いことがあっても決して挫けない。頑張り屋で努力家で、私に追いつこうと必死になってくれていた。そんな凄い彼に、自分こそが追い付きたかった。自信を持って彼の恋人でいたいと思ったから、そんな彼を見ていたから、彼と一緒だったから、自分も頑張っていた。一緒に頑張ること自体が、とても幸せだった。

 本当に大好きだった。

 そして、戦場で再開した時に確信した。

 多分、今も大好きだ。好きで好きでたまらない。

 一途で優しくて強い心を持つリューイ=イルスガンドのことを、今も愛している。

「んほっ、ほおおおおっ♡ イグイグっ♡ イッちゃううううう♡ 駅弁ファックでイクううううう♡ だいしゅきホールドしちゃって、イキュウウウウウウっっっ♡」

 ――しかし目の前の悪魔は、そんな青臭い綺麗事を、全て塗り替えて、真実を教えてくれた。

 優しさも、努力も、愛も、そんなものは全て下らない。

 全てはセックスなのだ。セックスの気持ちよさが全て。セックスで快楽を得ることが女として最高の幸せで、雌のあるべき姿なのだ。そのために、全力で雄に媚びることが雌としての最上の喜びだ。

 そんなものに比べれば、彼がくれた幸せなど、簡単に霞んでしまうほどに儚いものだ。

「つ、次はベッドでぇぇ……正常位がいいよぉ♡ ラブラブ体位で、チンポハメハメしてぇ♡ ジュボジュボ種付けプレスで、妊娠確実の特濃赤ちゃん汁、受精させてぇ♡」

 欲望剥き出しの、頭の悪い下品な言葉を連呼しながらのセックスが気持ちいい。整った顔をぐちゃぐちゃに崩して、快楽を貪る雌の本性を剥き出しにして、動物みたいな声を出すセックスが気持ちいい。雄に媚びるのが、媚びると雄が興奮して悦ぶのが、最高に気持ちよくて幸せだ。

「どうじゃ、どうじゃ? ワシのチンポで子宮をキスされるのは? んちゅううっ……ぢゅるっ……ぢゅううう♡ リアラのエロマンコが、ワシのチンポに絡みついて、ザーメン吸い取ろうとしておるわい。ふっ、ふひっ……ちゅ……ぢゅるうう」

「んほおおおっ♡ おっほおおおおう♡ サイコ……マジ、サイコーぉぉ♡ あああ、グスタフ好き過ぎるっ♡ 好き過ぎて、エロマンコで好きチンポをきゅんきゅん吸い取っちゃうのぉぉぉ♡ リューイよりも気持ちいいセックスしてくれるグスタフ大好きっ! ずっとチューしていたいよぉ♡ ちゅうううう♡ ぢゅるるううううっ♡」

 結合部から飛沫が飛ぶほどの激しい腰使いだが、リアラは心底気持ちよさそうな表情で受け止めて、グスタフの首に腕を、腰に両足を絡みつける。

 リューイなどでは到底出来ない激しく、下品で、どろどろに理性を蕩かせた、欲望剥き出しの性行為。

「イけっ! リアラっ! ワシを愛しながらイクんじゃ! 情けないアヘ顔を晒しながら、みっともなくイけっ! おおおおおおお~~~っ!」

「い……イク、イク♡ イクウウウウウウウ♡ チンポハメられて、ガチアクメくるうううう♡ グスタフ好き好き好き好きぃ♡ 好き好き大好き♡ 愛してる愛してる愛してるっ♡ チンポ好きぃぃぃぃ♡ あっへえええええ~~~♡」

 リアラはその可憐な表情を涙と鼻水だらけにしながら痙攣し、挿入されたグスタフの肉棒を締めあげると、そのままグスタフの欲望を受け止める。

「かは……はぁ……くはぁぁ……はふっ……ひーっ……ひーっ……♡」

 最高の快感と多幸感。

 女の身で、これを知ってしまえば、もう取り返しがつかない。

 1度知ってしまえば、無条件でこの醜悪な肥満中年を愛してしまうだろう。どれだけ高貴で清楚な聖女だろうが、何度も何度も欲しくなってしまうだろう。この悪魔の行為は、雌の本能を目覚めさせて、生物としての本来の姿を女性に強いるのだ。

 それが、この悪魔の「異能」。

 この世界にある魔術というものには類さず、その他のいかなる超常現象にも当てはまらない、この世界にあらざる最凶最悪の能力。

 それは雌を狂わせて虜にするだけではなく

「あはっ……あははははっ♡ ま、また私強くなったよ……中出しされると、強くなるの分かるよっ♡」

 目を剥いて、喜びに打ち震えるリアラ。

 元々リアラは人類最強である“勇者”直系の人間であるが、そこにこの「異能」が加わることで、更に超人的な力が体内に宿るのを感じる。

 身体能力が、魔力が、そしてあらゆる感情を周囲に伝播させる“勇者特性”の絶対的力が、グスタフの精が注ぎ込まれることで、無尽蔵に膨れあがっていく。

 これまでに何度もグスタフとの行為を重ねるたびに感じてきたその感覚は、何回繰り返しても留まるところを知らない。悪魔の精を子宮で受け止める度に、リアラは無限に力を得ていくのを感じる。

 本来は強さとは、勤勉に、禁欲的に、己に厳しくして努力と鍛錬を重ね続けて、そして膨大な時間を掛けることで、ようやく得ることが出来るものだ。

 しかし――

「気持ちいいことだけ……セックスだけして強くなれるなんて、チョー楽ちんでサイコー。修行とか努力なんて時代遅れでばかばかしくなっちゃう♪ やっぱり今時はセックスして強くなる時代だよね♪ ねえ、もっと中出ししてっ♡ こんな修行なら、私もっといーっぱいしたいなぁ」

 リアラはそう言ってグスタフを仰向けに横たわらせると、今度は自分がその上に跨りながら腰を振り始める。

 両手は恋人同士のように固く握り合いながら

「私っ、グスタフのためなら何でもするよ♡ 親友だって、恋人だって、みんなみんな楽勝で殺してみせるよ♡ そのためにもっと、もっと強くなるから♡」

 もっと、もっと強くーー

 そのために、ひたすら鍛錬を続ける人間を嘲笑い、安易に快楽へ傾倒するリアラ。

  卑猥に腰を振りながらそう言う彼女は、姿形こそ依然と何ら変わりはない。しかしその歪んだ笑みと妖しい光を宿した瞳は、最早別人としか思えなかった。



 新白薔薇騎士団長。人類最強。勇者。

 リアラ=リンデブルグは、第1王子派にとって紛うことなき最強最悪の存在である。

    ▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼

 グスタフとリアラが快楽の限りを尽くして満足した頃には、既に朝日が昇った後、一般的な生活リズムの人間なら既に活動を開始している時間だった。

「んふ~……グスタフ好きぃ♡ 大好きぃ♡」

 お互い裸のまま、リアラは恋人に甘えるようにグスタフに抱き着いて足を絡めて幸せそうな表情を浮かべている。まどろみに包まれながらも、時々唇を触れ合わせてくる。

 それは仲睦まじい恋人同士の、行為後の甘いピロートークのようにも見える。

 しかし、可憐で整った顔立ちである美少女のリアラの相手が、見るだけでも吐き気を催す程の醜悪な肥満中年であることは、はっきり言って異様な風景だった。

「グスタフ様。そろそろお時間です」

 そんなリアラとの時間を楽しんでいたグスタフの邪魔をするのは、ドアの外からの声。グスタフが囲う女性の1人だった。

 グスタフはあからさまに機嫌を損ねた顔をして、その不快さをあらわにした声で答える。

「やかましいわ! 今ワシは、リアラとイチャイチャラブラブ中なんじゃ。面倒くさい仕事などは、全部フェスティアにやらせておけ。ワシは今日、1日中リアラとセックス三昧じゃ!」

「――かしこまりました」

 あまりにも傍若無人過ぎる言動だったが、そのグスタフを呼びに来た女性は、反発の色など微塵にも出さずに素直に引き下がった。

 彼女がいなくなる気配を感じて、グスタフは隣で眠るリアラの顔を見つめる。

「――あぁん♡ グスタフ素敵ぃ……見つめられただけで、オマンコグチュグチュになっちゃうよぉ」

 起きているのか眠っているのか分からない、蕩けた瞳でグスタフを見つめてくるリアラは、そのままグスタフの肉棒へ手を伸ばしてくると、擦り始める。そうすれば、満足したはずのグスタフの肉棒は、みるみるうちに硬度を取り戻していく。

 その精力は、最早人外である。

(それにしても、これは最高の拾いものじゃったのう♪)

 当初のグスタフの計画にはリアラはいなかった。

 リアラが勇者であることは世間的には伏せられていたので、それも当然だ。グスタフがリアラに手を出したのは、ステラが執心している相手に興味があったという理由以外にはなく、それがたまたま勇者の血筋の人間だったというだけだ。

 グスタフが計画立てて、「異能」によって手中に収めようと考えていたのはリリライトの他、大陸で名高い有能な女性達――具体的にはヘルベルト連合を統べるフェスティア、リリライトの姉である『鮮血の姫』ラミア、大陸最高峰の魔術師イルギルス王子の妹姫レイティくらいのものだった。

 だから、リアラをこうして「異能」の虜にしたうえで、第2王女派最強の戦力として利用できることは、グスタフにとっては望外の幸運であった。

 元々「異能」さえあれば、グスタフ側の敗北は有り得ないと思っていたのだが、その上誰もが太刀打ちできない無敵の勇者特性を有するリアラの存在により、グスタフの勝利はより盤石なものとなったのだ。

 おまけにリアラの勇者特性は戦いにおいて反則級なだけではなく、性行為も勇者特性の感覚共有により、他者との行為とは比べ物にならない快楽と興奮を得ることが出来る。戦いも、ベッドでの相手も、どちらもグスタフにとっては最高の相手だった。

 リリライトを散々凌辱し、犯し尽くした後は早々に飽きて捨ててしまったグスタフでも、リアラはいくら抱いても一向に飽きない。もっともっと犯して、自分好みの女に変えてしまいたくなる。

 最初に執心していたリリライト以上に、グスタフはリアラに執着していた。

「ぐふふ。ワシも愛しておるぞぅ、リアラ♪」

「~~~~っ♡ っふあ……すご……もう、言葉だけでイッちゃえるようになったよぉ♡ あはっ、嬉しい。グスタフ、グスタフぅぅぅ♡」

 「異能」にかかる前、自分との行為を嫌がって泣き叫んでいたリアラがここまで変貌したことに、グスタフは改めて興奮する。

(ぐふ……ぐふふふふ。見ておれよぉ、三田村ぁ……)

 肉棒を擦られる快楽に身を委ね、グスタフからもリアラの身体を弄りながら、グスタフはふと憎き相手への優越感に浸る。

(たった1度勝ったくらいで、せいぜい喜んでおけよ。今回はなぁ、フェスティアにはわざと負けの経験を積ませたんじゃ。あのプライドの高さが、あの女の唯一決定的な弱点じゃったからのぅ。じゃが、次からはプライドも捨てて、全力でお前を殺しにかかるぞぅ。果たして、お前程度があの天才に勝てるかのぅ?)

 第1王子派にとって最悪だったのは、グスタフは無能ではあっても、決して愚か者ではないところだった。

 自分の無能さを自覚しているが故に、グスタフは人の使い方に優れていた。他人の才能や資質を見抜き、それを最大限に自分のために生かす手腕に長けていたのだ。

 「異能」それ自体も驚異的だったが、グスタフのその資質も相乗効果となって、第1王子派を容赦無く追い詰めようとしていた。

(貴様は知らんが、わしはチート能力使い放題じゃ。この世界のルールなどぶっ壊しながら、微塵にも手加減などせず、徹底的に圧倒的にお前を潰してやるからのぅ。これは報いじゃ、三田村。前の世界で己がワシにした仕打ちを悔いるがいい。せいぜい苦しませて惨たらしく人生終了させてやるからのぅ)

「っあん♡ グスタフっ……私、この世界をグスタフのものにするためなら何でもするからっ♡ この世界の女は全員グスタフのチンポに屈服して、男は死んじゃえばいいのよ♪」

 グスタフの上で髪を振り乱しながら、淫らに腰をくねらせるリアラを見上げるグスタフは、満足そうな笑みを浮かべる。


 あくまでも「この世界」のルールに則ろうとするコウメイの考えは、人として支持されるべきかもしれない。しかし「異能」のような圧倒的な能力もないコウメイからしてみれば、この戦いはあまりにも不利で、絶望的なものである。
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