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第1章『3領地同時攻防戦』編

第17話 愛人宣言

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 グスタフ城の廊下を、新白薔薇騎士団長の騎士服を鮮やかに着こなしたリアラが、つまらなそうで顔、両手を頭の後ろで組みながら歩いている。こうして見ている分には、気楽な学生そのものに見える。

「ちぇー、グスタフってば。3Pでフェスティア代表をぐっちょんぐっちょんに犯したかったのに、出ていけなんてひどいなー」

 内乱勃発前、まだリアラがミュリヌス学園の学生だった頃から今日まで約半年間。グスタフの手に堕ちてからは毎日のようにグスタフと卑猥な行為に耽っているリアラは、嗜好も言葉使いもグスタフの生き写しのようになっていた。

「そういえば、最近はグスタフにチンポハメてもらってないなぁ。私もチンポばっか使って、オマンコ使ってないやぁ。ん~、でもグスタフ以外の租チンなんかじゃ全然物足りないし……あー、もう! 欲求不満だよー」

 まるで勉強尽くしの毎日に愚痴をもらす真面目な学生である。見た目にはそう見えるだけに、その発する言葉をまともな人間が聞けば、不快を通り越して、もはや恐怖に捕らわれるだろう。

 しかし今そこを歩いているのはリアラのみ。それを聞く者もいないし、そもそもこのグスタフ城にいる人間は、既にグスタフの異能で狂っているのがほとんどだ。すなわち、ここではリアラのこの思考、倫理観こそが正常である狂気の世界なのだった。

「--ん、そうだ。イライラしているときは、エロ豚ちゃんと遊ぼうかな。ふふふ、グスタフに飽きられて可哀そうだから、私がたっぷり可愛がってあげよ~っと」

 表情を一転させて、満面の笑顔を浮かべるリアラ。そのまま彼女のその気分を表すように、スキップなどしながら廊下を進んでいく。

「待っててね、リリライト様~♪」

 勇者の家系リアラ=リンデブルグ。

 かつて魔王を打ち滅ぼした英雄の中でも中心人物だった偉大なる勇者の血を引くはずの彼女は、今やこの世界で最も欲望にまみれた下品な悪魔そのもので、女性版グスタフというくらいに、その人格を書き換えられていたのだった。

□■□■

 つい先ほどまでリアラを交えてグスタフとフェスティアだったが、今は2人だけでベッドの上で絡み合っていた。

 2人とも後ろ手で身体を支えながら、性器同士を結合させている態勢ーーグスタフがその肥満体を揺らしながら、緩急をつけてフェスティアを下から突き上げていた。

「ぁあんっ! あんっ! 気持ちいいっ……グスタフ様、もっと! もっと突き上げて下さい」

 グスタフの腰の動きにあわせるように、フェスティアも自らの腰を動かしながら、挿入された肉棒を女の部分で扱き、吸い付き、擦り上げていく。

「おほっ、おほほほっ♪ 相変わらずテクニックはワシの女の中でも最高じゃのう。チンポがマンコに吸われておるわ。そういえば、お前との交尾も久しぶりじゃのう。いつぶりじゃ?」

 フェスティアには軍事全権の他、第2王女派内の秩序維持や各種調整など、様々な統括を任せている。毎日ひたすら女性と快楽を貪り合っているグスタフとは違って多忙を極みにいるのだ。

 単純に戦争や戦闘に特化させている役目のリアラとも、その密度は段違いだ。それが、リアラよりもフェスティアの立場を上にしている理由の1つでもある。

 そのためフェスティアがグスタフと行為に耽る時間は圧倒的に少ない。逆にリアラはグスタフの身辺警護も役割の1つのため、比較的自由にグスタフとの時間を持てるような状況だ。

 実際、フェスティアが最後にグスタフと行為に及んだのは、あのグラシャス領を落とした後の大乱交以来であったが、リアラはその後も日常的にグスタフと快楽の貪り合いをしてしている。

 グスタフの全てが絶対ーーそう刷り込まれているフェスティアは不満など持ちようもない。むしろこれだけグスタフのことを想っているのに、ないがしろにされて、リアラとの仲を見せつけられるようにすることに、興奮すらしてしまうような状態。はっきり言って、もうどうしようもない状態まで堕ちきってしまっていた。

 グスタフの凶悪極まりない異能は、大陸一の『女傑』すらも、そこまで変貌させてしまった。

「っあああ! 私の中でグスタフ様のオチンポが膨らんで……だ、出してっ! 出して下さいっ! グスタフ様の子種を……」

 この時間が終わってしまえば、フェスティアは再び前線に赴き、グスタフは根拠地のグスタフ城からはそうそう離れないだろう。次の行為まで、またどのくらいの時間がかかるか分からない。

 だからこそ、フェスティアはこの限られたグスタフとの行為の中で、最高の興奮と快感を求める。一瞬で終わる打ち上げ花火のように、この一瞬に全てをグスタフにささげる。グスタフがフェスティアを忘れられないように、最高の快楽を目の前の雄に与える。

「お、ほおおおおっ! おほっ、ほおおおお~」

 フェスティアは円を描くように巧みに腰をくねらせながら、膣内でグスタフの肉棒をきつく締め上げる。ただ刺激を強くするだけではなく、グスタフの腰つきに合わせて緩急をつけたその手管に、グスタフは情けない声を出しながらフェスティアの中に射精する。

「おあっ……ああっ……ああぁ~っ!」

 中で精を出されている感触に、フェスティアも心底嬉しそうな表情をしながら絶頂に達し、未だ精を吐き出し続けているグスタフの肉棒を締め上げ続ける。

「ああ……グスタフ様……気持ちいいですか? わ、私は幸せ者です……こ、こんな最高に気持ちいいセックスをしてもらえるなんて……ああ、このためなら、どんな敵でも皆殺しにしてみせますわ。私の全力を持って、この世界をグスタフ様の望むように……」

「ぐひひひ、まだじゃ。まだ足りんのぅ」

 フェスティアの愛の言葉を遮ると、グスタフは肉棒を引き抜いて、フェスティアの体を押し倒すと、その上にのしかかるようにする。

「っああ……う、嬉しい。満足するまで、私の身体を使って下さい……グスタフ様。久々のセックス……いつまででもお付き合いします」

 その知的な表情で、まるで恋する乙女のような情熱的な瞳でグスタフを見つめるフェスティア。そして上に乗ったグスタフは、相変わらずの濁った醜悪な瞳でフェスティアを見下ろすと

「んんんん、違うのぉ、フェスティア。全く興奮せんし、気持ちよくない」

「--え?」

 その冷酷な色を込めた言葉に、熱っぽい表情をしていたフェスティアはあっという間に絶望色に染まる。

 雄を悦ばせるのが雌の最上の悦び--そう刷り込まれたフェスティアにとって、グスタフのその言葉は死刑宣告と同じ程の意味を帯びていた。

「そ、そんなっ……! わ、私はグスタフ様がリアラを最も愛していることを知っていますし、それについて不満を漏らしたこともないし……それでもこうやってわずかな時間でも私との時間を持ってくれることが嬉しくて、その時に私は全身全霊でグスタフ様を悦ばせようと奉仕をしているのに……どうしてっ!」

 戦場では狡猾な策士の表情をしているフェスティアは、そこから想像も出来ない必死な顔で訴える。

 その後も必死に、いかに自分がグスタフに尽くしているか、雌として優秀か、懸命に奉仕しているなどの熱弁を振るうが、グスタフが興味の無さそうな顔になっていくのを見ると、彼女は絶望の色を強めていく。

(そ、そんな……この方に捨てられたら、私は--)

 フェスティアは、その結末を既に知っている。

 リリライト=リ=アルマイト。

 元聖アルマイト王国第2王女であり『純白の姫』との評判だった彼女は、おそらくグスタフが最初に手を出した姫である。最初はさんざんグスタフの欲望の捌け口として使われていた彼女だったが、その権力を自分のものにしたところで、グスタフは飽きてしまったのか、リリライトはグスタフに捨てられた。

 グスタフによってさんざん歪んだ快楽を性癖を植え付けられた挙句、今ではグスタフと触れることさえしていないようだった。望む快楽も多幸感も得られない彼女は、今や誰彼構わずひたすらに肉欲を求めるだけの雌、理性を失った獣と成り下がっている。

 グスタフとの関係を切られて、あんな無惨な状態になると思うと、フェスティアの背中が恐怖で凍える。

「す、捨てないで! お願い! 何でもします! 何でもしますからっ! お願いです、グスタフ様っ!」

 遂に最後は理論も何もなくなって、縋りつくようにグスタフの腕を掴みながら懇願する。

 --自分は、あんな無様で、滑稽で、無能で、愚かな姫のようにはなりたくない。
 
「ぐひひひ、ひひひ。そうじゃなあ。お前は優秀な雌じゃから、本当に何でも出来るんじゃろうなぁ」

「そ、それじゃあ……っ!」

 絶望に染まり切っていたフェスティアが、そのグスタフの言葉にぱあっと顔を輝かせる。

「だからじゃろうなぁ……お前にはところどころ驕りが見えるんじゃ。雄を気持ちよく”してやろう”。交尾中のお前の表情を見ていると分かるぞぉ? どこかワシを下に見ているのが。それが分かるかるから、どんなに気持ちよくても萎えるんじゃ」

「そ、そんなつもりは……私は、グスタフ様に悦んで欲しいだけで……」

「ぐふふ。分かっておる、分かっておる」

 突き離したり、ほめたり、いまいちグスタフの意図がつかめない。しかしそれでもグスタフの一言一言にフェスティアの感情が激しく揺さぶられてしまう。

 そんなフェスティアの背中に腕を回し、グスタフは抱きかかえるようにする。座ったグスタフの上にフェスティアが乗るような格好だ。

「どうして、ワシがリアラを追い出したか分かるか?」

「……え?」

 急に話題を変えてくるグスタフにフェスティアはきょとんとする。

 すると、グスタフはまるで恋人同士がそうするように、フェスティアの手をとって握り合う。グスタフが美男子であれば、美女のフェスティアと合わせて、画になるような恋人同士の甘いワンシーンに見える。しかし、いかんせん相手が容姿も中身も醜悪なグスタフでは、正に美女と野獣。異様な風景にしか見えない。

 しかし、それだけでフェスティアの胸は多幸感で満たされて、胸がキュンと締め付けられる。

「今夜は、日ごろ頑張っておるお前を、ワシの愛人にしてやろうと思うてな」

「愛、人……?」

 てっきりグスタフに捨てられるとばかり思っていたフェスティア。その発言の意味は分からないが、グスタフから伝えられる言葉に胸が自然と高鳴っていく。

「恋人は既にリアラがいるからのぅ。真摯で一途なワシは恋人は1人しか作らんタイプなんじゃ。でものぅ、愛人なら話は別じゃ。

 いつでもどこでも好きなようにヤレるのが恋人で、ここ一番本気でヤリたいときにヤル相手が愛人じゃあ。ヤル回数は違っても、くれてやるワシの愛は同等じゃ。たっぷり、ねっとり、ドスケベにイチャイチャしながら、ドロドロ生ハメセックスをしてやるぞぅ。

 ぐふふふ、そうすると愛人も恋人と同じじゃのう。お前は本当にワシのために尽くしているからのぅ、あのリアラと同等の立場にしてやるわい。どうじゃ、嬉しいじゃろう?」

「--っ! っあああああ? い、イク! イクイクイクゥ! いくううううううう!」

 そのグスタフの言葉だけで、フェスティアは絶頂に達してしまい、グスタフの肥満体にしがみつくようにして身体を痙攣させる。

「っはぁ、はぁ……そ、そんな嬉しすぎることを……で、でもだとしたら……」

 その前に言っていた、フェスティアを突き放すような言葉はなんだったのだろうか。多幸感に包まれながらも、どこか不安そうに笑みを浮かべるグスタフの顔を伺う。

「ぐひひひひ。今の切羽詰まった声はなかなか良かったぞぅ。それじゃ、お前のその顔が見たかったんじゃ。ほれ、ワシのチンポが……」

「っひゃあああ!」

 そのフェスティアの痴態を見て硬度を取り戻したグスタフの肉棒。グスタフはそれを手で持つと、フェスティアの秘裂をなぞり上げる。

「ワシの愛人になりたいなら、雄の上に立とうとするんじゃない。雌は雄から快感を与えられるだけの存在じゃ。ただひたすらよがり狂え。

 雌らしく、媚びて媚びて媚びまくって、雄によがり狂わされて、その本性をあわらせい。知性もテクニックも何もいらん。本能を剥きだしにして、快感を貪るだけの獣になるんじゃ」

「ふあ、あ……ぁ……」

 グスタフに手を握られながら、耳元で直接脳に刷り込まれるように、グスタフの言葉がフェスティアの理性を揺るがす。

「お前、まだワシの前ではオホ声も豚声も出しとらんじゃろう。言葉使いもまだまだ上品すぎる。もっと下品まみれになって、人間を止めてみい。最高の興奮と快楽が待っておるぞぅ? あのリアラを見ていれば分かるじゃろう?」

「うああ……あぁ、でも……」

 片っ端からグスタフの異能に堕とされる女性がそうなる様を見てきたフェスティア。性癖が、淫欲が増大させられてフェスティアにそんな願望が生まれないはずが無かった。

 それでもグスタフが、フェスティアをそこまで追い詰めなかったのは理由がある。

 グスタフの異能は強力、故にやり過ぎてしまえば、人格そのものが崩壊してしまう。その最たる例がリリライトだ。

 その姿形さえ保っていれば用が足りるようなお飾りに過ぎないリリライトとは違って、フェスティアに求められいるのは、容姿とその傑出した能力だ。欲望の為にフェスティアのその能力を壊してしまえば、第2王女派にとっては大損害だ。

 だからこそグスタフはフェスティアに対して異能の効果をセーブしていた節があったし、フェスティアもまたその自覚があるために、ある程度ブレーキをかけていた。

「ぐふふふ。お前の考えていることくらい分かるぞぅ……だから『愛人』なんじゃ。お前がただの雌になるのは、ワシと2人きりの時だけじゃ。愛するワシにだけ、お前の無様な姿を見せればいいんじゃ。それならどうじゃ?」

 ニィィと笑いながら、握っている手の力に緩急をつけるグスタフ。それは本当に甘い恋人の愛撫のようで、フェスティアの胸の高鳴りは増していくばかりだった。

 全く訳の分からないグスタフの論理。もしもその場でコウメイが聞いていれば、眩暈がして、何なら吐き戻しそうなくらいの意味不明なその言葉に。

 大陸最高峰の策謀家であるフェスティアは、既にうっとりと雌の表情になっていた。
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