黒頭巾は異世界で…

6話

不意に、神ユグドは真面目なおもむきで話し始めた。

「今まで、色んなゲームの中のプレイヤーを見てきました。
莉緒さんはノンプレイヤー、NPCのAI達をただのAIと思わず、人と同じように接していた事に興味を惹かれたのがきっかけでした。」

それは、私だけじゃないと…

「はい。莉緒さんだけでなく、一部のプレイヤー方も人のように接する姿は確認しています。
ですが、一部のプレイヤー方よりも親身になって接していたのが莉緒さんだった。
好感度も高い、特に莉緒さんと契約されている、四大精霊王や従魔達にも、好感度が非常に高い。
彼等の思いを覗かせて頂きました。
彼等はAIにも掛からず、人間の様に考え、主人と一緒に居たい寄り添いたいと想っていた。
………今も想っているようですよ。」

みんな…そんな事を、想ってくれてたんだ。

また、涙が溢れる。

「ははは…。う、ゔぅ…う」

胸が一杯で嬉しくて、涙が止まらない。


「ここからは、莉緒さんの人生に関わります。
莉緒さん達だからこその提案です。
これから、彼等と過ごしたい一緒に冒険がしたいと、そう想っているのであれば日本からアルドヘルムへ転移する事が出来ます。
但し、一方通行なため、アルドヘルムに転移した後は、日本に戻る事が出来ません。」

ハラハラと涙を流しながら話を聞いていた莉緒は、アルドヘルムに行けば日本には戻れないと聞いて、涙が止まり言葉に詰まる。

「日本に居る莉緒さんの身体、魂ごとアルドヘルムの世界へ転移、分かりやすく言い換えれば引っ越しをすると思って頂ければ。
今までの莉緒さんの人生を無かった事にし、地球からアルドヘルムへ移す。
これは日本の神に日本で生まれたことさえ無かった事にする、という書き換えをお願いし了承をいただいております。
転移する場合、アルドヘルムと地球の体の造りが違うため、ゲームで使用していたアバターを使用し新しく構築させて頂きます。
その際、莉緒さんとアバターのレベル移行の影響により少し若くなりそうですが。
……アルドヘルムと日本、どちらを、選択されますか？」

本当にアルドヘルムに行けるとしたら、今までの生活を捨てることになる。

みんなと会えなくなる。

親とも…

親友とも…




でも、彼等とも別れたくない。
……………
………
…


色んな感情がせめぎ合い、結論を出す。

「神様のお名前、なんとお呼びすれば？」

「創造神ユグド、特別にユグドと。」

えー、神様じゃあダメ？向こうでも神様がいっぱい居るのかな～？創造神様と呼んだ方が…

「ユグド、と。」

えーー。笑顔がめっちゃ怖い…、仕方ない。

「ユグド様とお呼びしますね。」

「仕方ない。それでいいですよ。」

なんとか納得してくれた。

「ユグド様。そのアルドヘルムの転移、ですか？お願いしても宜しいでしょうか？」

「硬い。…もう少し砕けた話し方で、思考と同じように。」

え～、でもでも神様だし！年上だろうし！
ちょっ！？目ウルウルさせないで。
神さ…ユグド様、それは卑怯です、ダメですよー！
イケメンのウルウル目、クッ、胸が…。

「もう、わかりました！なるべく気をつけます。あーまたウルウルと、その、社会人生活が長いと咄嗟に丁寧語が出ちゃうんです！なるべく砕けられるようにしますので！」

創造神ユグドを見ると、何度も頷いていた。