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王女様のお相手以外は通常運転です

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結局その戦争は、休憩時間が終わり出発するまで続いた。
私が副隊長に休戦させるようにお願いしても、副隊長は我関せず。

「あの二人にとって、あれは時間潰しのリクレーションです。
エリーが気に病む必要は有りませんよ。」

なるほど、あれは仲良しさんのじゃれ合いでしたか。
それならお邪魔したら悪いですね。
私は副隊長の横に座り込み、頬杖をついてそれを見ていた。


再び私は馬車の中、
ねぇエリーちゃんの好きなお菓子は?好きな色は?
では今度、その色のドレスを作りましょう。
って一体何を仰っているのやら。
私の事ばかり話が振られるから、あまり話す事が無くなってきた。
私の事より、ユーフェミア様の話を聞きたいですとも言えない。
だってそれは機密事項だ。
下手な事を聞き出せば、エルマ大先輩が黙っていないでしょう。
お仕置きされてしまいます。

さて、トボトボと流れていた時間も、
やっと今日の宿泊地に着く時間となりました。

今日のお泊りは、グランシアにあるベルトムート侯爵のお屋敷です。
さっそく隊長達のお世話をしなくては。
今回は野営と違いお屋敷に泊まるから、食事の支度は免除されますが、
反って気を遣わなければならない事が有ります。
だって他人様のお家です。
隊員の部屋割りの確認や、担当する人の安全確保の確認。
そうそう、湯あみのお湯の支度もしなくてはなりませんね。

私は着せられていたドレスを脱ぎ、いつものお仕着せに着替えます。

「そんな服より、そのドレスのが可愛いのに。
あなたはこの旅の間、そちらのドレスを着てらっしゃいな。」

そうもいきません、これは私達にとっては必需品。

「王女様、これは私達の戦闘服なんです。
このお仕着せにはいろいろな機能が有りまして………。」

「ン、ンンッ……!」

おっと、エルマ大先輩が私を睨んでいます。
これは私達に取っての機密事項。
例え王女様でも漏らす訳には行きませんでした。
エルマ大先輩殿、申し訳ありませんでした‼

着替え終わった私はお姉さま達の下に向かうべく、
馬車を真っ先に下ります。
これは新米が、目上の方が敵に襲われないよう、守る為の行為でもあります。

「えっ、エリーちゃんどこに行くの?」

「どこって、隊長達のお世話に戻ります。」

王女様には、先輩を始めとした何人ものお付きや、
ガード役の騎士様が付いていますよね。
それに私は、隊長と副隊長付きです。
つまりあの二人には私しか世話をする人間がいないのです。

「そんなの放っておきなさい。
食事もお部屋も一緒に取りましょう。
何だったら私の事をお姉様って呼んでもいいのよ。」

滅相もございませんし、いい加減に私を愛玩動物から解放して下さい。
ただでさえ手の掛かる男が二人もいるのに、その上お姉様はいりません。
私が仕事に慣れて、もっとお世話が上手になった頃、
また声を掛けてもらえると嬉しいです。
そして私は縋るように、エルマ大先輩を見つめた。

「さあさユーフェミア様、早くお部屋にお入りください。
さて、この後のご予定ですが、
多分お茶の用意が整っていると思いますので、まずは軽くご休憩を。
その後は湯あみをしていただきます。
お夕食は19時よりと伺っております。
ですので19時ピッタリに会場に入られますように。
早すぎても、遅すぎてもいけません。
ですから…………。」

王女様業も大変なようです。

さて、お姉さま達とお屋敷の見取り図を見て、
隊長達の部屋の場所を確認しました。
解散後、すぐに隊長達の部屋へ向かいます。
とにかく隊長達が来る前にあらゆる事を済ませておく必要が有りますから。

まず、部屋のドアに耳を寄せ、中の音を確認します。
それから胸のペンに見立てたナイフを手にし、そっとドアのノブに手を掛けます。
はたから見れば、完全に不審者でしょうが、そんな事を言ってはいられません。
音がしていない事を確認した私は、
勢い良くドアを開け、いきなりしゃがみ込みました。
もし中に暗殺者がいた場合を想定しての行動です。

「第一段階クリア。」

人がいない事を確認してから立ち上がり、
それでも気を抜かず、部屋の中のチェックに移ります。
魔道具探査システムを起動させ、室内に魔道具が仕掛けられていないか。
怪しい物が無いか、チェックしながら壁沿いを見て回ります。
隠し扉が無いかの確認です。
もちろん寝室もトイレも風呂もです。

「オールクリア。
大丈夫なようですね。」

これを城に帰るまで毎日行います。
大変なように見えますが、
殆んどいつもの事ですから、苦では有りません。 

それから私はお風呂にお湯を張り、部屋に設置されていたセットを使い、
隊長達のお茶の用意をします。


「ア~疲れた。
エリー、大丈夫か?
疲れなかったか?
王女に嫌な目に遭わされなかったか?」

「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。
でもありがとうございます。
さ、お茶が入りました。
一服なさって下さい。」

私はにっこりと笑いながら、いつも通り給仕をします。
ナイスタイミングでしたね。
お茶の支度が間に合ってよかったです。



そこのあなた。
それって男尊女卑じゃ無いのってお思いかもしれませんが、
これはお仕事です。
私達はお給金をいただいて、好んでこの仕事をしているのです。
お間違い無きよう。

(*注:この部分は騎士様は読まない様に*
だって、隊長達は無理でしょうが、
いずれ違う騎士様の担当になれたら、
うまくすれば玉の輿に乗れるかもしれないし、
再就職の時もすごくいい職に就けるって、
お姉さまが教えてくれましたもの。)
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