上 下
1 / 15

私は特殊部隊所属、ジュエリー・アーカントです

しおりを挟む
私、ジュエリー・アーカントはリンジス王国の王室の特殊部隊に所属しています。
ここは王室の直属の隊だから、かなりのエリート集団なんですよ。
頭もそれなりに切れなくてはいけませんし、外見も重視されます。
そして何より強くなくてはいけません。

でもその特殊部隊の中で、私は味噌っかすなんです。
先輩たちは皆、ブロンドとか鮮やかなレッドなどの艶やかな髪なんですが、
私の髪は冴えない黒髪なんです。
他の方は皆スラっと背が高く、とてもスタイルがいいのに、
その中で私は一番背が低く、ちまっとしているとよく言われます。
皆さんとっても麗しい容姿をなさっておりますが、
私は目ばかりがギョロギョロと目立ち、全然パッとしない顔をしています。
未だに、なぜ私が王室の特殊部隊に入れたのか分かりません。
それでも皆さんは、私を気にかけ、庇ってくれます。
私はとても幸せ者です。

皆さんは私の事を親しみを込めて、エリーと呼んでくれます。

そうそう、言い忘れていましたが、
私達の特殊部隊は、別名家政婦部隊とも言います。
王家の皆様や、近衛騎士団、兵士上官の方のお世話をするのが本来の仕事です。
残念ながら、兵士の方以下の人には付きません。
皆さんが通って来た道です。
私達がお世話できるよう、頑張って下さい。
さて、お世話と言っても色々な物が有ります。
平常は洗濯、料理、掃除それぞれ係がいますが、
私達は騎士の方の身の回りの世話が主な仕事です。


私の担当は、第一部隊の隊長さんと、副隊長さんです。
なぜ新米の私が隊長さん達の担当になったのか、物凄く謎です。
でも、担当になったからには、誠心誠意お世話をさせていただきます。

隊長も副隊長も、とてもイケメンで、頭良し、スタイル良し、高身長、
つまり言う事の無い好男子です。
ただ、隊長はブロンドで、副隊長がシルバーブロンドです。
あとは隊長の方が、ほんのちょっと背が高いかな?


「隊長ー、お洗濯物は、これで全部ですか?」

今日も私は朝一番のお仕事を済ませた後、昨日の洗濯物を洗濯係に運びます。
隊長は朝シャン派なので、洗濯物は朝回収です。

「あぁ、すまない。
重くないか?」

「重くなんて有りませんよ。」

たかだか1日着ていた下着やアンダーシャツやタオル程度、
たまに隊長達の制服も洗濯しますが、よっぽどの事が無い限り、
それは隊員さん達がお休みの日の作業です。
ですから平日の洗濯物は大した量では有りません。
でも、それ以上に洗濯物がちょっと少ないんです。

「隊長、どうせ没収されるんですから、諦めて出して下さい。」

すると隊長が、顔を染め、諦めた様子で1枚の丸めた布を差し出してきた。

パンツです。

「もう、いい加減に諦めて、パンツも他の物と一緒に出して下さいね。」

なぜか隊長は、洗濯するパンツをなかなか出してくれません。
だから私はいつも実力行使でパンツを探しまくります。
結構大変なんです。

「エ、エリー、女の子がそんな言葉を人前で言ってはいけません。」

パンツって言ったらダメですか?
それなら何て言ったらいいんでしょう。
パンティーですか?ブリーフですか?さるまたですか?

「隊長、朝食はお部屋で取られますか?食堂に行かれますか?
副隊長はどうなさいますか?」

いつも食堂に行くと分かっているけど、取り合えず聞くのが決まりです。

「食堂に行くよ。」

私達の話を聞いていた副隊長が、くっくっと笑いながら答えた。
いつも思うけど、副隊長さんは笑い上戸の気があるようです。

騎士団の方達は、訓練兵、下っ端、兵士、騎士、といる中で、
騎士だから偉いんだぞ~、などと胡坐をかいている訳では無く、
任務の無い日は、厳しい訓練が有ります。
何と言っても兵士の頂点に立つ方です。
努力した結果騎士になられたのです。
それは今も変わりません。
その上隊長達は、その合間を縫って、会議や定時連絡も有ります。
つまり他の騎士様以上にとても忙しいのです。

私達と言えば、その間は暇かと言えば違います。

城の中の仕事には、色々な専門職が有りますが、
特殊部隊はそれらを全てこなさなければならない能力が必要とされます。

「ルビーお姉さま~~。」

「まあ、エリーちゃん、あなたにはそれはまだ早いわ。
火力魔法ではなく、風属性を使いなさい。」

そうか、だから焦げてしまったんだ。

今、私は洗濯物を乾かす訓練をしています。
お姉さま達は手早くこなしていますが、新米の私はそうもいきません。
全て1から習うので、覚えなければならない事が満載です。

するとエミリーお姉さまはから、違う気配がします。
あれはきっと風ではなく、温度を調節する魔法ですね。
あっという間に洗濯したてのタオルがパリッと凍り付き、ピンっと立っています。
エミリーお姉さまは、一体何をしているのでしょう。
私がじっと見ていると、お姉さまはそのタオルをパンパンと思い切り振りました。
するとタオルから、キラキラ光る粒が落ちて行きます。

「ルビーお姉さま、エミリーお姉さまは一体何をなさっていらっしゃるの?」

「あぁ、あれは時短ね。
水分を凍らせて叩き落とし、ある程度水分を飛ばしてから乾かすのよ。」

成程時短ですか。凄いです。
さっそく私も挑戦してみましょう。
タオルを凍らせればいいんですね。
私はタオルの両端を持って、氷、氷とイメージしてみました。
タオルはぱりぱりと音を立てながら、凍っていきます。
よし、成功だ。
そう思っていたんだけど、タオルは留まる事無く、凍っていきます。

「ひっ………。」

「エリーちゃん!」

ルビーお姉さまが、慌てて私から凍ったタオルを取り上げ、投げ捨てる。

「フーッ、助かった。」

「じゃないでしょ!
ほら、エリーの可愛いお手々がこんなに赤くなってしまって。」

しもやけですね。

「何をのんきにしているの。」

そう怒って、ルビーお姉さまが、私の指に治療魔法をかけてくれました。

「ありがとうございます。
良かった、証拠隠滅。
隊長さんにバレずに済んだわ。」

隊長さんは、凄く心配性なんです。

「あなたの主人には報告をしておきますからね。」

…逃げられなかった。

「とにかく新しい魔法を使う時は、誰かの見ている前でする事。
いつも言っているわよね?覚えていなかったのかしら?」

「すいませんでした………。」



さて、何故お姉さまたちが、洗濯から治療、
色々な事に、こうもパーフェクトなのか疑問でしょう?
それは騎士団の特殊部隊だからです。
あ~~~~、ちゃんと説明しますから、そんな目をしないで下さい。

つまり、私達特殊部隊の主なお仕事は騎士様が遠征や出張などに行く時に、
一緒に付いて行き、お世話をするのが仕事なのです。
それが私達特殊部隊です。
当然お世話する方達の身の回りから、共同で行う食事の支度。
(どこかのお屋敷に招かれた時などは免除されます)
それから武器のメンテや、繕い物、治療まで、
ありとあらゆるお世話が仕事なんです。
それから特別訓練も有ります。
担当する騎士様は、戦いや仕事で忙しいですよね。
忙しい騎士様に、私達の事まで気に掛けてもらう訳には行きません。
だから私達は自分で自分の身を守らなければいけません。
その為、あらゆる訓練のその中には、戦闘訓練も入っています。
その訓練に関しては、私は優秀株です。
もしかしたら、私が特殊部隊に合格したのは、
そのせいかもしれません。

話が逸れました。
これが特殊部隊です。
ですので私達は、騎士様の訓練中は、専門職の様に仕事をするのではなく、
時間が許す限り、私達も有りとあらゆる事を訓練しなければいけないのです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

夫から国外追放を言い渡されました

杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。 どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。 抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。 そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

処理中です...