上 下
107 / 109

問題解決

しおりを挟む
「ご、めーーん!」

急ぎリンデンさん達のもとに戻った私は、平謝りに謝った。

「まあ待つ事が数時間伸びたところで、今更大した変わりはない」

そうだねー、本当にごめん。

父様が言うに、どうやら私は3年ほど眠っていたらしい。
鏡など見ている暇は無かったけれど、髪がかなり長くなった事でその時間の経過を納得した。

「私が寝てる間、何か有った?」
『有った有った、私達すごーく頑張ったんだよ』

ハルちゃんが言うには、とにかく壊れてしまった自然、つまり私のやり残したことを、全員総出で整えたとのこと。
それ以降は、この山の麓で私の見張りをしながら眠っていたらしい。(見張りじゃなくて護衛じゃないんですか?)

『だからー、残念ながら寝ている間の事はあまり良く分からないけどね』

そっかー、眠り込むほど皆も疲れちゃったんだね。
でも大まかな事でいいから情報が欲しい。
何も知らないままだと、みすみす虎の尾を踏む可能性もあるから。

『ハルや、分からぬのはお前ぐらいだ』

と、リンデンさん。

『えっ、えっ、そう何ですか!?』
『お、俺達は分かっていたぞ………(汗)』

そうかそうか、さすがはピーポちゃん。
眠っていても、その間の状況が分かっていたんだね。
ならば洗いざらい説明してもらおうか。

結局リンデンさんの報告では、どうやらこの山には名前が付いたらしい。
その名は”エレオノーラ”。

「それは絶対に変更してもらう!」

私は拳を握り、心に誓う。
この山には、大地の神や緑の御方に由来がある名前が相応しいと思うんだ。
第一そんな名前を付けられたら私が恥ずかしいよ。

それからここまでの道…と言うか、リンデンさん達が直してくれた土地の後始末は、国が中心となった事で、人間の手によりこの3年ほどで大方整ったみたいだ。

『港や町は最小限の規模にしたようだ。とはいえ交易のため外国からの船も来るからな。小さな港町とは言えない規模だ。それでも神が怒っている様子は無いからな、きっとそのままでも良いのだろう』
『この山までの道も途中に宿場が2か所あるだけです。後は50人ほど集える程度の更地が2か所ほど』

やっほー、サラさんお久しぶり。

『あんたが考えていた麦畑だってちゃんと作っておいたんだからね。その近くに適当な広場を作っておいたら、小さな集落が出来て、今ではその村が麦畑を管理しているわ』
『姉さんの好きなチューリップとやらも、あちこちに植えておいたぜ。今頃花の時期じゃないか?』

時は春。(多分)
きっとピーポちゃん達の植えてくれたチューリップは、綺麗に咲き誇っている事だろう。

「みんなありがとう。後でみんなで色々な所を見に行こうね」

とは言っても、皆は神獣に精霊に怪物。
一緒にあちこち回るにしても…いやいや、ハルちゃんが怪物なんてとんでもない!
ハルちゃんはとても可愛い妖精です!
なんて思ったとたん、ハルちゃんの鳥のような足が、すらりとした見慣れたものに変化した。
羽根はそのままだけど、どちらかと言えばサラさんに似ている。

『ご主人様!なに魔力の無駄遣いしてるんですか!でも……ありがと』

照れくさそうに笑うハルちゃんは、変化しても抜群の可愛さだ。

『ほおっ、ハルの格が上がったようじゃな』

格が上がると、足が変化するのか…。
でもなぁ……。
すると私の気持ちを察したリンデンさんが、すかさず口を開いた。

『何か心配事でも有るのか』
「いえ、皆で一緒に町を歩きたいと思ったんだけれど、やっぱりリンデンさんやピーポちゃん達だとサイズが…ね」

今のハルちゃんは、人間の子供ぐらいの大きさだけど(胸は私より有るから、子ども扱いにされないと思うけど)、リンデンさんやピーポちゃんはどう見てもドラゴンだし、どう見ても触るな危険の異形。
あれほど人間の犯した事に対し、必死になって手助けしてくれたのに、町の人達に奇異な目で見られる事はあまりにも不憫だ。

『何だ、そんな心配をしておったのか。ほれ』

すると瞬く間にリンデンさんの周りの空間がぶれ始め、見る間に体の形が変わっていく。
と言うか、しぼんだ?

『失礼な奴じゃな』

そう言われ、私は額にデコピンを一発食らった。
だってその人…リンデンさんは、背格好はイカルス兄さんに似ていて、長いペールブルーのサラサラの髪で、イケメン度はアレクシス様とどっこいどっこいの30代近い人間の男性に変わっているんだもの。

『これならお主と一緒に歩いても、何ら問題は無かろう』

無い無い、問題どころか、文句も無いです。

『ずりーな兄貴。自分ばかりそんな姿になって……』
『そうよ、あんた達だけご主人様に付いて行って、私達は置き去りにするつもりなんでしょう!?』

うん~このままだと、確かにピーポちゃん達にはお留守番してもらうしかないかなぁ。

『何じゃ、お前達はまだ形を変える事も出来ぬのか。ほれ』

そう言い、ピーポちゃんに腕を伸ばし、その指先からキラキラ光る小さな粒を飛ばした。
すると先ほどリンデンさんのような事が再び起きた。

私の目の前にいる二人は、年の頃なら15・6歳。
ちょうど私と同じくらいの年齢の、ちょっとヤンキーぽい男女……違った。
3年間眠り続けた私は、当然それだけ年を食っていたんだった。
つまり私は19歳か?何か損をした気分だな。

『やあ、君は人型になってもとても美人だよハニー』
『あらやだ、あなたこそとても素敵よダーリン』

そう言いながら、いちゃいちゃと仲睦まじいご様子。
そう言えばお二人はカップルでしたね、さすがファイアードラゴン、お熱い事で。
でもここは一応R18禁止地帯ですぜ。
できればその辺で止めておいて下さい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい

矢口愛留
恋愛
【全11話】 学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。 しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。 クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。 スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。 ※一話あたり短めです。 ※ベリーズカフェにも投稿しております。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

【完結】あなただけが特別ではない

仲村 嘉高
恋愛
お飾りの王妃が自室の窓から飛び降りた。 目覚めたら、死を選んだ原因の王子と初めて会ったお茶会の日だった。 王子との婚約を回避しようと頑張るが、なぜか周りの様子が前回と違い……?

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

【完結】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか?

曽根原ツタ
恋愛
「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」 エルヴィアナと婚約者クラウスの仲はうまくいっていない。 最近、王女が一緒にいるのをよく見かけるようになったと思えば、とあるパーティーで王女から婚約者の本音を告げ口され、別れを決意する。更に、彼女とクラウスは想い合っているとか。 (王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは身を引くとしましょう。クラウス様) しかし。破局寸前で想定外の事件が起き、エルヴィアナのことが嫌いなはずの彼の態度が豹変して……? 小説家になろう様でも更新中

幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?

ルイス
恋愛
「アーチェ、君は明るいのは良いんだけれど、お淑やかさが足りないと思うんだ。貴族令嬢であれば、もっと気品を持ってだね。例えば、ニーナのような……」 「はあ……なるほどね」 伯爵令嬢のアーチェと伯爵令息のウォーレスは幼馴染であり婚約関係でもあった。 彼らにはもう一人、ニーナという幼馴染が居た。 アーチェはウォーレスが性格面でニーナと比べ過ぎることに辟易し、婚約解消を申し出る。 ウォーレスも納得し、婚約解消は無事に成立したはずだったが……。 ウォーレスはニーナのことを大切にしながらも、アーチェのことも忘れられないと言って来る始末だった……。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

処理中です...