60 / 90
魔の手_6
しおりを挟む
静かに成瀬くんの指が緩んだブラウスの境からもぐりこんで素肌をなぞる。
かすかに自分の息に熱がこもるのがわかった。
「杏、眠い?」
そうささやきながら、成瀬くんは息継ぎをするように自然な流れで私の耳たぶを軽く噛んだ。
どきりとして小さく身を縮めながら、「……眠い、けど今は、抱いてほしい」と呟き返した。
嫌だなんて言いたくなかった。
もやもやする気持ちを、どこかで成瀬くんに解消してほしかった。
体から力をぬくと、成瀬くんがブラウスをはだけさせた私の首筋を優しく舌先でなぞって、ふいに唇で強く吸った。
どくん、と大きく鼓動が跳ねた。
その時、ヴーヴーという振動音が近くで響いた。
成瀬くんの動きが止まって、小さなため息が聞こえた。
目を開けると成瀬くんは少しまゆをひそめながら「ちょっと」と言って私から離れた。
体を起こして見ていると、スマホの電話に出た成瀬くんは、途中から真剣な表情になって、私に「ごめん」と口だけ動かした。
そしてリビングから出て廊下の方で話し始めた。
低い声のせいか、ほとんど内容は聞き取れない。
思わずため息をついて、座っていたソファに横に倒れた。
ほとんどボタンを外されかけていたブラウスの隙間が寒くて、かきあわせた。
中途半端に眠ったせいなのか。聞かされた話のせいなのか。
どうしても拭いきれない不安のせいなのか、ひどく疲れを感じて目を閉じた。
すでに明け方の4時近い。
でも土曜日の今日は、生徒が文化祭の準備で登校してくる。
その担当は、内藤先生とのローテーションで、今日は私だった。
いつもよりは少し遅めでいいとしても、もう眠っている時間はあんまりない。
ほんの少しだけでも、成瀬くんを近くに感じたかった。
でも成瀬くんは、廊下からまだ戻ってこない。
こんな時間に電話してくる相手なんて、よっぽど親しい相手なんだろうと思うと、じくじくと完全に塞ぎ切れていない傷口が痛みはじめた。
米川さんだったら嫌だなと思うのに、それを口にするには、今成瀬くんがしようとしてくれることが大きくて。
私のためだってわかってるのに。
「ごめん、杏。用できた。オレ、ちょっと行かないとなんない」
驚いて目を開けると、成瀬くんは私のそばに膝をついて顔をのぞきこんでいた。
「……こんな時間に?」
「うん、後でちゃんと話すから」
今は言えないんだね。
そんな言葉を飲み込みながら体を起こして頷いた。
「ごめん、帰ってきたら続きしよ」
「い、いいよ。私も今日、学校だし」
「じゃあ学校終わったら連絡して」
頷くと、成瀬くんは未練がましい顔で私の唇に軽く唇を触れあわせた。
「絶対、橘と2人きりにはなんないでね」
離れながらそう言うと、成瀬くんは立ち上がった。
かすかに自分の息に熱がこもるのがわかった。
「杏、眠い?」
そうささやきながら、成瀬くんは息継ぎをするように自然な流れで私の耳たぶを軽く噛んだ。
どきりとして小さく身を縮めながら、「……眠い、けど今は、抱いてほしい」と呟き返した。
嫌だなんて言いたくなかった。
もやもやする気持ちを、どこかで成瀬くんに解消してほしかった。
体から力をぬくと、成瀬くんがブラウスをはだけさせた私の首筋を優しく舌先でなぞって、ふいに唇で強く吸った。
どくん、と大きく鼓動が跳ねた。
その時、ヴーヴーという振動音が近くで響いた。
成瀬くんの動きが止まって、小さなため息が聞こえた。
目を開けると成瀬くんは少しまゆをひそめながら「ちょっと」と言って私から離れた。
体を起こして見ていると、スマホの電話に出た成瀬くんは、途中から真剣な表情になって、私に「ごめん」と口だけ動かした。
そしてリビングから出て廊下の方で話し始めた。
低い声のせいか、ほとんど内容は聞き取れない。
思わずため息をついて、座っていたソファに横に倒れた。
ほとんどボタンを外されかけていたブラウスの隙間が寒くて、かきあわせた。
中途半端に眠ったせいなのか。聞かされた話のせいなのか。
どうしても拭いきれない不安のせいなのか、ひどく疲れを感じて目を閉じた。
すでに明け方の4時近い。
でも土曜日の今日は、生徒が文化祭の準備で登校してくる。
その担当は、内藤先生とのローテーションで、今日は私だった。
いつもよりは少し遅めでいいとしても、もう眠っている時間はあんまりない。
ほんの少しだけでも、成瀬くんを近くに感じたかった。
でも成瀬くんは、廊下からまだ戻ってこない。
こんな時間に電話してくる相手なんて、よっぽど親しい相手なんだろうと思うと、じくじくと完全に塞ぎ切れていない傷口が痛みはじめた。
米川さんだったら嫌だなと思うのに、それを口にするには、今成瀬くんがしようとしてくれることが大きくて。
私のためだってわかってるのに。
「ごめん、杏。用できた。オレ、ちょっと行かないとなんない」
驚いて目を開けると、成瀬くんは私のそばに膝をついて顔をのぞきこんでいた。
「……こんな時間に?」
「うん、後でちゃんと話すから」
今は言えないんだね。
そんな言葉を飲み込みながら体を起こして頷いた。
「ごめん、帰ってきたら続きしよ」
「い、いいよ。私も今日、学校だし」
「じゃあ学校終わったら連絡して」
頷くと、成瀬くんは未練がましい顔で私の唇に軽く唇を触れあわせた。
「絶対、橘と2人きりにはなんないでね」
離れながらそう言うと、成瀬くんは立ち上がった。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
続・上司に恋していいですか?
茜色
恋愛
営業課長、成瀬省吾(なるせ しょうご)が部下の椎名澪(しいな みお)と恋人同士になって早や半年。
会社ではコンビを組んで仕事に励み、休日はふたりきりで甘いひとときを過ごす。そんな充実した日々を送っているのだが、近ごろ澪の様子が少しおかしい。何も話そうとしない恋人の様子が気にかかる省吾だったが、そんな彼にも仕事上で大きな転機が訪れようとしていて・・・。
☆『上司に恋していいですか?』の続編です。全6話です。前作ラストから半年後を描いた後日談となります。今回は男性側、省吾の視点となっています。
「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しています。

Honey Ginger
なかな悠桃
恋愛
斉藤花菜は平凡な営業事務。唯一の楽しみは乙ゲーアプリをすること。ある日、仕事を押し付けられ残業中ある行動を隣の席の後輩、上坂耀太に見られてしまい・・・・・・。
※誤字・脱字など見つけ次第修正します。読み難い点などあると思いますが、ご了承ください。

4人の王子に囲まれて
*YUA*
恋愛
シングルマザーで育った貧乏で平凡な女子高生の結衣は、母の再婚がきっかけとなり4人の義兄ができる。
4人の兄たちは結衣が気に食わず意地悪ばかりし、追い出そうとするが、段々と結衣の魅力に惹かれていって……
4人のイケメン義兄と1人の妹の共同生活を描いたストーリー!
鈴木結衣(Yui Suzuki)
高1 156cm 39kg
シングルマザーで育った貧乏で平凡な女子高生。
母の再婚によって4人の義兄ができる。
矢神 琉生(Ryusei yagami)
26歳 178cm
結衣の義兄の長男。
面倒見がよく優しい。
近くのクリニックの先生をしている。
矢神 秀(Shu yagami)
24歳 172cm
結衣の義兄の次男。
優しくて結衣の1番の頼れるお義兄さん。
結衣と大雅が通うS高の数学教師。
矢神 瑛斗(Eito yagami)
22歳 177cm
結衣の義兄の三男。
優しいけどちょっぴりSな一面も!?
今大人気若手俳優のエイトの顔を持つ。
矢神 大雅(Taiga yagami)
高3 182cm
結衣の義兄の四男。
学校からも目をつけられているヤンキー。
結衣と同じ高校に通うモテモテの先輩でもある。
*注 医療の知識等はございません。
ご了承くださいませ。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる