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不埓な悪戯にはめられて
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誰かに揺すられている。
それを払いのけた瞬間、「片桐先生!」と強く呼ばれた。
「は、はいっ」と思わず返事をしながら目を開けた。
「片桐先生」
呆れた声に慌てて周りを見回した。
かけられていたジャケットがずり落ちて、慌てて拾い上げた。
2Cの教室じゃない。
国語科教員室だ。
そして、目の前に、呆れた顔をした橘先生と警備員の初老の男性が立っていた。
夢、を見ていたのだろうか。
混乱した。
「もう9時すぎてますよ? 職場で爆睡するくらいならさっさと家に帰ってください」
橘先生の冷たい声に、水を浴びせかけられたように一気に現実に引き戻された。
「佐伯さんの手まで煩わせてしまってすみませんね。とりあえずもう大丈夫そうですから」
心配そうな顔をした佐伯という警備員が頷いて、「それじゃあ」と頭を下げて教員室から出て行った。
「も、申し訳ありません……」
どうやら国語科教員室のソファに寝ていた私を警備員の佐伯さんが見つけて、残業していた橘先生を呼びにいったらしい。
「本当に放課後の時といい、今といい、少し緩みすぎじゃないですか? いくら新米で慣れないことが続くとはいえ、生徒からしたられっきとした先生なんですからね。きちんとしてくださいよ」
くどくどと説教が続き、それならさっさと解放してくれればいいのにと内心文句を言いながら正座している気分で頭を下げ続けた。
とてもじゃないけど、眼鏡の奥の鋭く冷血そうな目を正面から見る勇気はない。
「まあ……とりあえず、今日はもうさっさとあがってください。それから先生として、そんなふうにだらしない格好もどうかと思いますよ」
だらしない格好?
なんとなく含みのある言い方をして橘先生は教員室を出ていった。
思わずため息をつきながら、立ち上がった。
あまりに疲れていて夢でも見ていたのだろうか。
頭をひねりながら姿見に自分を写した。
「やだ……!」
明らかに爆睡していたとでもいいたげに寝乱れている。
白いブラウスはしわくちゃで、スカートもしわになっている。
でも、と違和感に気づいた。
パンストを履いていない。
仕事で履いていないはずはないけど、と思いながら、一気に顔が真っ赤になった。
やっぱり夢なんかじゃない。
成瀬くんと暗い教室であんなことをしたこと。
最後まではしてなくても職場である教室で。
そう意識した瞬間、下腹部がうずいた気がして、恥ずかしさのあまりその場にしゃがみこんだ。
たぶん気を失った私をこの教員室に運んで、それから……。
ブラジャーやパンティはもちろん、ブラウスもボタンはきっちり上までしめられている。
そしてソファに寝かせて、ジャケットをかけて。
でも破いたパンストだけはどうにもできなくて脱がしたに違いない。
「信じらんない……」
こんなことできる自分だったのだろうか。
いちおう聖職といわれている分野なのに、私をずっと支えてくれた直己がいるのに、そんなことすべて頭から飛んでいて。
ふらつくように立ち上がり、バッグをとりだした。
中でちかちかとスマホが光っている。
通知がいくつか来ていた。
慌てて確認すると、直己から数件のメッセージ。
それから、見慣れない番号からも。
それを開いた瞬間、息を飲んだ。
「センセ、返してほしかったら、またね」
破れたパンストの写真。
それに触れて広げている写真の指は見覚えがあって、ふいに卑猥な記憶が呼びおこされた。
またね。
それは、次があることを意味する言葉。
気づいたとたん、心臓よりももっと深い、別の部分がぞくりと震えた気がした。
それを払いのけた瞬間、「片桐先生!」と強く呼ばれた。
「は、はいっ」と思わず返事をしながら目を開けた。
「片桐先生」
呆れた声に慌てて周りを見回した。
かけられていたジャケットがずり落ちて、慌てて拾い上げた。
2Cの教室じゃない。
国語科教員室だ。
そして、目の前に、呆れた顔をした橘先生と警備員の初老の男性が立っていた。
夢、を見ていたのだろうか。
混乱した。
「もう9時すぎてますよ? 職場で爆睡するくらいならさっさと家に帰ってください」
橘先生の冷たい声に、水を浴びせかけられたように一気に現実に引き戻された。
「佐伯さんの手まで煩わせてしまってすみませんね。とりあえずもう大丈夫そうですから」
心配そうな顔をした佐伯という警備員が頷いて、「それじゃあ」と頭を下げて教員室から出て行った。
「も、申し訳ありません……」
どうやら国語科教員室のソファに寝ていた私を警備員の佐伯さんが見つけて、残業していた橘先生を呼びにいったらしい。
「本当に放課後の時といい、今といい、少し緩みすぎじゃないですか? いくら新米で慣れないことが続くとはいえ、生徒からしたられっきとした先生なんですからね。きちんとしてくださいよ」
くどくどと説教が続き、それならさっさと解放してくれればいいのにと内心文句を言いながら正座している気分で頭を下げ続けた。
とてもじゃないけど、眼鏡の奥の鋭く冷血そうな目を正面から見る勇気はない。
「まあ……とりあえず、今日はもうさっさとあがってください。それから先生として、そんなふうにだらしない格好もどうかと思いますよ」
だらしない格好?
なんとなく含みのある言い方をして橘先生は教員室を出ていった。
思わずため息をつきながら、立ち上がった。
あまりに疲れていて夢でも見ていたのだろうか。
頭をひねりながら姿見に自分を写した。
「やだ……!」
明らかに爆睡していたとでもいいたげに寝乱れている。
白いブラウスはしわくちゃで、スカートもしわになっている。
でも、と違和感に気づいた。
パンストを履いていない。
仕事で履いていないはずはないけど、と思いながら、一気に顔が真っ赤になった。
やっぱり夢なんかじゃない。
成瀬くんと暗い教室であんなことをしたこと。
最後まではしてなくても職場である教室で。
そう意識した瞬間、下腹部がうずいた気がして、恥ずかしさのあまりその場にしゃがみこんだ。
たぶん気を失った私をこの教員室に運んで、それから……。
ブラジャーやパンティはもちろん、ブラウスもボタンはきっちり上までしめられている。
そしてソファに寝かせて、ジャケットをかけて。
でも破いたパンストだけはどうにもできなくて脱がしたに違いない。
「信じらんない……」
こんなことできる自分だったのだろうか。
いちおう聖職といわれている分野なのに、私をずっと支えてくれた直己がいるのに、そんなことすべて頭から飛んでいて。
ふらつくように立ち上がり、バッグをとりだした。
中でちかちかとスマホが光っている。
通知がいくつか来ていた。
慌てて確認すると、直己から数件のメッセージ。
それから、見慣れない番号からも。
それを開いた瞬間、息を飲んだ。
「センセ、返してほしかったら、またね」
破れたパンストの写真。
それに触れて広げている写真の指は見覚えがあって、ふいに卑猥な記憶が呼びおこされた。
またね。
それは、次があることを意味する言葉。
気づいたとたん、心臓よりももっと深い、別の部分がぞくりと震えた気がした。
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