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優しくない強引なキス_4
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ため息をついて、赤ペンを置いた。
目の前に広げた小テストの採点は、遅々として進まないまま、もう19時を回ろうとしている。
今日も残業だなと思っても全然手が進まない。
「今日は私もあがりますんで、片桐先生、戸締まりよろしくお願いします」
いつもならもう少し残業しているのに、今日はみんな早いらしい。ベテランの国語科主任の有田先生が温和な顔をにっこりさせて頭を下げて出ていく。
その背中に「おつかれさまでした」と声をかけながら、1人取り残された国語科教員室から外を見つめた。
日が長くなってきていて、3階にある国語科教員室の窓からはぼんやりと夕陽の残滓に沈む校庭が見えた。
野球部の片付け忘れか、グラウンドを整備する道具が放りだされて隅の方に倒れたままになっている。
18時には下校しなくてはならない生徒たちも、文化祭の準備を翌日に持ち越して帰宅している。
なんとなく集中できなくて、副担任をしている教室2Cへと向かった。
もう生徒のいない廊下は、ところどころ消灯されていて、廊下の窓から薄い影が降りている。
集中できない理由なんて、分かりきっていた。
成瀬くんは、私に気づかなかった?
それとも気づいていて、気づかないふりをした?
その疑問がずっと頭の隅にこびりついて、離れない。
気づいていないなら、私も知らないふりをして3週間を過ごせばいい。
でもそんな3週間を何食わぬ顔して乗り切れる?
じゃあどうして? 気づかないふりする理由は?
もう私はどうでもいいってこと?
そう思った瞬間、胸の奥にガラスのかけらが刺さったみたいに痛んだ。
いくらなんでももう4年経っている。
どうでもいいに決まってる。
本当に?
泡のように後から後から浮かび上がる疑問は尽きなくて、1人繰り返し答えを探しても見つかるはずはない。
気づいてほしいのかほしくないのか、自分でも悶々としながら2Cクラスのドアを開けた。
その瞬間、その場に凍りついた。
窓際の席に座って、窓の外を見つめる誰か。――が、ゆっくり振り向いた。
「……センセ」
少し甘い、あの、響き。
どくん、と大きく心臓が跳ねた。
回れ右をして今すぐ立ち去って。
そう私の中で警告する私がいるのに、すくんだように足は動かない。
ガタン、と音を立てて、彼が生徒のイスから立ち上がった。
「センセ、久しぶり」
暗く沈んでいく教室の中で、成瀬くんはかすかに首を傾げて、そう言った。
目の前に広げた小テストの採点は、遅々として進まないまま、もう19時を回ろうとしている。
今日も残業だなと思っても全然手が進まない。
「今日は私もあがりますんで、片桐先生、戸締まりよろしくお願いします」
いつもならもう少し残業しているのに、今日はみんな早いらしい。ベテランの国語科主任の有田先生が温和な顔をにっこりさせて頭を下げて出ていく。
その背中に「おつかれさまでした」と声をかけながら、1人取り残された国語科教員室から外を見つめた。
日が長くなってきていて、3階にある国語科教員室の窓からはぼんやりと夕陽の残滓に沈む校庭が見えた。
野球部の片付け忘れか、グラウンドを整備する道具が放りだされて隅の方に倒れたままになっている。
18時には下校しなくてはならない生徒たちも、文化祭の準備を翌日に持ち越して帰宅している。
なんとなく集中できなくて、副担任をしている教室2Cへと向かった。
もう生徒のいない廊下は、ところどころ消灯されていて、廊下の窓から薄い影が降りている。
集中できない理由なんて、分かりきっていた。
成瀬くんは、私に気づかなかった?
それとも気づいていて、気づかないふりをした?
その疑問がずっと頭の隅にこびりついて、離れない。
気づいていないなら、私も知らないふりをして3週間を過ごせばいい。
でもそんな3週間を何食わぬ顔して乗り切れる?
じゃあどうして? 気づかないふりする理由は?
もう私はどうでもいいってこと?
そう思った瞬間、胸の奥にガラスのかけらが刺さったみたいに痛んだ。
いくらなんでももう4年経っている。
どうでもいいに決まってる。
本当に?
泡のように後から後から浮かび上がる疑問は尽きなくて、1人繰り返し答えを探しても見つかるはずはない。
気づいてほしいのかほしくないのか、自分でも悶々としながら2Cクラスのドアを開けた。
その瞬間、その場に凍りついた。
窓際の席に座って、窓の外を見つめる誰か。――が、ゆっくり振り向いた。
「……センセ」
少し甘い、あの、響き。
どくん、と大きく心臓が跳ねた。
回れ右をして今すぐ立ち去って。
そう私の中で警告する私がいるのに、すくんだように足は動かない。
ガタン、と音を立てて、彼が生徒のイスから立ち上がった。
「センセ、久しぶり」
暗く沈んでいく教室の中で、成瀬くんはかすかに首を傾げて、そう言った。
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