上 下
39 / 79
第二章 村のために、いろいろ頑張る!

39. 子供向けの施設も充実させよう!

しおりを挟む
「カズキ、何か良い知恵はないか?」

「カズキさん、これはトーアル村を王都の学校へ売り込む絶好の機会なのです! 是非とも、力を貸してください!!」

 朝から俺の家にやって来たのは、二人の男性。
 ジェイコブさんとドレファスさんだ。
 
「う~ん、子供向けの施設ですよね……」

 二人は、トーアル村に子供向けの施設を作るアイデアを俺に尋ねにきた。
 村で医師だけでなく先生もしているジェイコブさんは、王都の学校関係者の知り合いも多い。
 その同業の仲間から、「学校行事の一環として日帰りで村を訪問したいが、受け入れは可能か?」と問い合わせを受けたのだとか。
 おそらく、あっちの世界で言うところの遠足みたいなものなんだろうな。
 都会に住んでいる子供たちが、近場の自然豊かな田舎を訪れる。
 気に入ってもらえれば、子供の話から親たちへも伝わり、今後の集客へと繋がる。
 ドレファスさんの眼鏡が光り鼻息が荒くなるのも、仕方ないよね。
 子供たちの受け入れは可能で、王都でも評判になっている温泉を体験してもらうことは決まっているが、それだけではダメだとジェイコブさんは言う。

「なにかこう、子供心をくすぐる遊び要素のあるものが一つでもあると良いのだが……」

 たしかに、この村にある子供向けのものといえば、温泉サイダーしかない。
 俺が王都で思い付いた『生け簀計画』は一つ問題があり、まだ稼働には時間がかかる。

「子供たちが来るのは、来週の温泉休業日ですよね? ということは、すぐにできるもの……」

 三十人近い子供がやって来るため、一般のお客さんがいない休業日に受け入れることを決めたそうで、時間はあまりない。
 生け簀用の池を確認しに行ったときに見つけたアレを使えば、子供だけでなく大人も楽しめそうなものが作れそうだが……
 俺がチラリとテーブル下の足元へ目を向けると、丸くなって寝ている猫型トーラの横で、絨毯から顔だけ覗かせているアンディと目が合った。
 コクコクと力強く頷いているから、この間の話をちゃんと覚えていたのだろう。

⦅それにしても、こやつは大胆不敵じゃのう。客がおるのに、堂々と顔を出しておるわい⦆

 子供だから、好奇心が旺盛なんだよね。
 こっちは相手に気付かれるんじゃないかと、ハラハラするけどな。

「俺がまずは試しに作ってみます。完成したらお見せしますので、意見をいただけますか?」

「カズキさんは、何を作られるおつもりですか?」

「フフフ、それはできてからのお楽しみということで」

 もったいぶってしまったが、実際どんなものができるのか俺にもわからない。
 ドレファスさんからは、「期待していますね!」と大プレッシャーをかけられてしまった。


 ◇


 その日の午後、俺はトーラとアンディ(の入った壺)と共にある場所へ向かった。

「結構、広いなあ……」

 ある場所とは、村の近くにあった洞窟。
 もしかして、ダンジョン!?と興奮し探索してみたが、残念ながらただの洞窟で魔物などは住み着いておらず、探知魔法で確認してもこれといった鉱石も採掘できない。
 中は薄気味悪くて、これじゃあお化け屋敷にくらいしかならないぞ…とため息をついたところでひらめいた。
 ここを、本当にお化け屋敷にしてしまえばいいのだと。
 異世界だから和風ではなく、ダンジョン風にすれば面白いよな。
 ゴール地点や途中に宝箱を置いて、ちょっとしたお宝を入れておけば冒険者っぽいし。
 温泉みたいに通年営業ではなく、気候の良い時期だけの期間限定営業にすれば希少価値も上がるかも。
 だって、怪談といえば暑い季節が定番だもんな。

 そんなことを考えていたときにアンディの封印が解け、ジェイコブさんたちから相談を受ける。
 それで、より具体的にお化け屋敷計画が加速化したのだった。
 
「アンディ、もう出てきていいぞ」

 洞窟の中はジメジメしているから、トーラを抱っこする。
 片手で壺の蓋を開けると、アンディが「待ってました!」と言わんばかりに飛び出てきた。
 アンディはアンデッドなのに強力な個体だからなのか、お日様の下でも活動ができる。
 では、なぜ壺に入れていたのかというと、ただただ人目に付きやすいから。
 貴族の恰好をした美少年アンデッドは、たとえ人族に見えるとしても非常に目立つ。
 特に、このトーアル村ではね。

≪これが、父上の言っていた洞窟か。ここならば、私の眷属たちも働きがいがあるというものだ≫

「どうだ、できそうか?」

≪父上の期待に、必ずや応えてみせよう≫

 何とも頼もしい台詞を吐いたアンディは、さっそく眷属の召喚を始めた。
 いつものようにカタカタと骨を鳴らして、スケルトンが集まってくる。
 死霊騎士や、死霊王らしきやつもいるが……

「おい、あんまりたくさんいると、洞窟内が死霊で埋め尽くされるぞ」

≪問題あるまい。だが、少し中を変更してもよいか? もう少し、部屋を作りたいのだ≫ 
 
「いいけど、あんまり複雑にして迷子を出さないように。ここは、あくまでも子供向けダンジョンなんだからな」

≪もちろん、心得ている≫

⦅こやつ、本当に大丈夫かのう……⦆

 まあ、完成したら俺が厳しくチェックするから、今は好きなようにやらせてみよう。
 アンディは楽しそうに、あれこれ眷属たちへ指示を出している。
 時々笑い声も聞こえてくるが、不敵な笑みを浮かべた顔は悪だくみを考えているようにしか見えない。
 本当に、大丈夫だよな……
 多少の不安を覚えたが、気のせいだと思っておく。
 夜通し作業をするつもりのようで、明日迎えに来てくれと言われた。
 念のため、洞窟付近を土壁で囲って『工事中のため立ち入り禁止』と書いておく。
 これで、外からアンディたちの姿を見られることはないだろう。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

婚約破棄されて異世界トリップしたけど猫に囲まれてスローライフ満喫しています

葉柚
ファンタジー
婚約者の二股により婚約破棄をされた33才の真由は、突如異世界に飛ばされた。 そこはど田舎だった。 住む家と土地と可愛い3匹の猫をもらった真由は、猫たちに囲まれてストレスフリーなスローライフ生活を送る日常を送ることになった。 レコンティーニ王国は猫に優しい国です。 小説家になろう様にも掲載してます。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

邪神ちゃんはもふもふ天使

未羊
ファンタジー
人間と魔族との戦いが終わって暇を持て余す邪神フェリス。 気ままな彼女が中心となって巻き起こすハートフルコメディ。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界で神様に農園を任されました! 野菜に果物を育てて動物飼って気ままにスローライフで世界を救います。

彩世幻夜
恋愛
 エルフの様な超絶美形の神様アグリが管理する異世界、その神界に迷い人として異世界転移してしまった、OLユリ。  壊れかけの世界で、何も無い神界で農園を作って欲しいとお願いされ、野菜に果物を育てて料理に励む。  もふもふ達を飼い、ノアの箱舟の様に神様に保護されたアグリの世界の住人たちと恋愛したり友情を育みながら、スローライフを楽しむ。  これはそんな平穏(……?)な日常の物語。  2021/02/27 完結

好き勝手スローライフしていただけなのに伝説の英雄になってしまった件~異世界転移させられた先は世界最凶の魔境だった~

狐火いりす@商業作家
ファンタジー
 事故でショボ死した主人公──星宮なぎさは神によって異世界に転移させられる。  そこは、Sランク以上の魔物が当たり前のように闊歩する世界最凶の魔境だった。 「せっかく手に入れた第二の人生、楽しみつくさねぇともったいねぇだろ!」  神様の力によって【創造】スキルと最強フィジカルを手に入れたなぎさは、自由気ままなスローライフを始める。  露天風呂付きの家を建てたり、倒した魔物でおいしい料理を作ったり、美人な悪霊を仲間にしたり、ペットを飼ってみたり。  やりたいことをやって好き勝手に生きていく。  なぜか人類未踏破ダンジョンを攻略しちゃったり、ペットが神獣と幻獣だったり、邪竜から目をつけられたりするけど、細かいことは気にしない。  人類最強の主人公がただひたすら好き放題生きていたら伝説になってしまった、そんなほのぼのギャグコメディ。

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

処理中です...