結婚ー彼女と再会するまでの男の長い話ー

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第二章 王立騎士団

1 王宮レストラン

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「今日のおすすめは何~?」
注文をとりにきたウエイトレスに笑ながら尋ねてみる。
「魚」
彼女は意外と扱いが冷たい。でも、そこがイイ。
「じゃ、それお願い~」
「飲み物は」
「紅茶をお願い~」
そこへマック・レディがやってきた。
「また、来てる。」
最近はずいぶん慣れたもので、タメ口である。それでいいのか?
「あ、マック、今度の休みいつ?娘紹介して?孫もいるって言ってたよな、孫も紹介してよ。」
「娘はもう結婚してるよ。それにあぶなくて孫には会わせられないよ。君は誰でも声をかけるからね。絶対会わせないよ。」
「そんな~たらしみたいにいわないでよ。」
「実際、たらしだろう」
ウエイトレスがクスクス笑ながら横を通りすぎる。
「人のこと言えないですよ~若い頃の話聞いてますよ~」
「なになに?」
俺が聞き返すと、ウエイトレスは笑って。
「男も女も泣かせてたって」
と、つぶやいた。
「えー、まさかーこのレディが両刀?」
「レディって呼ばないでくれよ。まあ、若い頃の話さ。」
あっ、否定しないのか。
「そんな奴だったのか」
ちょっとショックだ。
「ふふふ、聞きたいかい?」
「来るもの拒まずってか?生々しい話は遠慮したいが、ちょっと聞いてみたいな。」
「今度ね。」
彼はふらりと戻って行った。
マック・レディは俺の何が気に入ったのか、気が合うのか、ちょくちょく俺にかまってくれる。まさか狙われてる…訳はないか。いやいや、俺、ぴちぴちの二十歳だし。マックは百四十歳……まだまだ元気なのか?ああ、だんだん怖い考えになってきた。そんな訳はないと信じたい。

  ふと、視線を感じて、顔を上げた。すぐ斜めのテーブルに二人の男が食事中の手を止めこちらを見ていた。俺が帰国してから、奇跡の生還!などと派手に報道されて顔が知られる事になってしまった。時折見ず知らずの人達にじろじろ見られたり、話し掛けられたりするのは慣れないな。
「あの、奇跡の…?」
「いえ、人違いです。」
逃げよう。素早く立ち上がって、テーブルを離れた。会計を済まして店を後にする。何か引っかかる。歩きながら考える。金のかかった服装。貴族か?役人?どこで見た?王宮に自由に入れる者、騎士団員ではない、もちろん出入りの業者でもない。どこで会った?
「ソニーさん……ソニーさんですよね。」
「………」
捕まっちゃったよ。


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