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第一章 帰ってきた男
1 出会い
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「はじめまして、マック・レディ・タージニアです。」
「ソニー・ファライエ・シライです。よろしくお願いします。」
俺は彼の名前にドキリとした。マック?レディ?なんて偶然。身体の中に熱いものが込み上げてくるが、それと気づかれることが無いよう装った。
「マックさんはここに長く勤められているのですか?」
「ええ。もう、八十年勤めております。」
ここは王宮のレストラン。王宮に訪れる全ての者は、役人、騎士、出入りの業者でも誰でも利用できる。ここの厨房で王をはじめ、王族の食事も作られているのだとか。聞くところによると、評判は上々なんだとか。
「失礼ですが、ソニーさんは百四十年前の事件の関係者ですよね?当時のことを伺ってもよろしいですか?」
俺がこちらに戻ってから、事件に関する事を、色々質問されることがあったが、なんというか、気を使われ遠回しに聞かれてイライラすることが多かった。こいつは直球でくる奴だ、面白い、気に入った。最初会った時になんか親近感があったし、知り合い少ないから、仲良くなっとこう。うん。
百四十年前の第二王子が亡くなった事件の現場に俺は居合わせた。俺は意識不明の重体で、隣国のコノセルギアで治療を受けていた、と、当時は報道されていた。しかし、実際は治療のしようがなく、冬眠治療の装置に入れられ、先送りされていたらしい。
その頃、次世代の治療法として、高度移植技術の研究が進められていた。
再生医療で本人の細胞から、欠損部分つまり体の一部を作り、いや、育てると言った方が良いか。とにかく、成長と同じだけの年月が必要な気の長い技術らしい。ただ、本人の細胞から、成長…問題なく成長すれば…拒否反応なく移植ができ、元の体と全く同じになるという。ただ、培養の成功率が低く、成功例は当時はまだなかった。
意識の戻らない身体の欠損の多い俺の場合は両親の同意をうけて、少しでも望みがあるのならと、試験体として、コノセルギア国に残されたのだ。当時の治療法では植物状態のまま、歳を重ねることとなっただろう。わずかの望みにすがった両親の思いは百四十年という、長い時間ののちに、叶ったわけだが、それが俺にとって、願いであったかは彼らは知らない。今の俺は事故当時の姿であるが……顔もかなりの怪我だったので、実はソニーの顔写真をもとに整形再現されたのだ。俺は意識が戻って、国に帰れば、長い年月が過ぎていたのだから、その混乱は想像してほしい。
「何が聞きたいのかな?」
「ソニーさんは第二王子に同行されていたと聞きました。」
「ええ。マークス王子の護衛として常に同行していました。爆発時も車に同乗していました。」
「何人も亡くなったと聞きました。私が産まれる前の事で、当時の記録を読みました。もう、思い出したくないですか?」
「ずっと意識不明だったので、つい昨日のことのようです。長い年月が経っていることも、実はまだ、実感がないのです。爆発は突然で、当時の記憶はないのです」
「そうですか。大変な経験でしたね。今はもう身体は良いのですか?」
「はい。以前と変わりなく。」
それは良かったですねという風に、マック・レディは目を伏せた。一呼吸おいて、顔を上げ俺を見つめ、口を開く。
「…亡くなった第二王子はどんな方だったのですか?」
「ハンサムで、とても人気のある方でしたね。私と同じ色…ちょうど貴方と同じ…白髪ストレートの髪でした。そう…あ…」
動きを止めて、彼をじっと見つめてしまった。
「ソニー・ファライエ・シライです。よろしくお願いします。」
俺は彼の名前にドキリとした。マック?レディ?なんて偶然。身体の中に熱いものが込み上げてくるが、それと気づかれることが無いよう装った。
「マックさんはここに長く勤められているのですか?」
「ええ。もう、八十年勤めております。」
ここは王宮のレストラン。王宮に訪れる全ての者は、役人、騎士、出入りの業者でも誰でも利用できる。ここの厨房で王をはじめ、王族の食事も作られているのだとか。聞くところによると、評判は上々なんだとか。
「失礼ですが、ソニーさんは百四十年前の事件の関係者ですよね?当時のことを伺ってもよろしいですか?」
俺がこちらに戻ってから、事件に関する事を、色々質問されることがあったが、なんというか、気を使われ遠回しに聞かれてイライラすることが多かった。こいつは直球でくる奴だ、面白い、気に入った。最初会った時になんか親近感があったし、知り合い少ないから、仲良くなっとこう。うん。
百四十年前の第二王子が亡くなった事件の現場に俺は居合わせた。俺は意識不明の重体で、隣国のコノセルギアで治療を受けていた、と、当時は報道されていた。しかし、実際は治療のしようがなく、冬眠治療の装置に入れられ、先送りされていたらしい。
その頃、次世代の治療法として、高度移植技術の研究が進められていた。
再生医療で本人の細胞から、欠損部分つまり体の一部を作り、いや、育てると言った方が良いか。とにかく、成長と同じだけの年月が必要な気の長い技術らしい。ただ、本人の細胞から、成長…問題なく成長すれば…拒否反応なく移植ができ、元の体と全く同じになるという。ただ、培養の成功率が低く、成功例は当時はまだなかった。
意識の戻らない身体の欠損の多い俺の場合は両親の同意をうけて、少しでも望みがあるのならと、試験体として、コノセルギア国に残されたのだ。当時の治療法では植物状態のまま、歳を重ねることとなっただろう。わずかの望みにすがった両親の思いは百四十年という、長い時間ののちに、叶ったわけだが、それが俺にとって、願いであったかは彼らは知らない。今の俺は事故当時の姿であるが……顔もかなりの怪我だったので、実はソニーの顔写真をもとに整形再現されたのだ。俺は意識が戻って、国に帰れば、長い年月が過ぎていたのだから、その混乱は想像してほしい。
「何が聞きたいのかな?」
「ソニーさんは第二王子に同行されていたと聞きました。」
「ええ。マークス王子の護衛として常に同行していました。爆発時も車に同乗していました。」
「何人も亡くなったと聞きました。私が産まれる前の事で、当時の記録を読みました。もう、思い出したくないですか?」
「ずっと意識不明だったので、つい昨日のことのようです。長い年月が経っていることも、実はまだ、実感がないのです。爆発は突然で、当時の記憶はないのです」
「そうですか。大変な経験でしたね。今はもう身体は良いのですか?」
「はい。以前と変わりなく。」
それは良かったですねという風に、マック・レディは目を伏せた。一呼吸おいて、顔を上げ俺を見つめ、口を開く。
「…亡くなった第二王子はどんな方だったのですか?」
「ハンサムで、とても人気のある方でしたね。私と同じ色…ちょうど貴方と同じ…白髪ストレートの髪でした。そう…あ…」
動きを止めて、彼をじっと見つめてしまった。
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