結婚ー彼女と再会するまでの男の長い話ー

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第九章 大学院

12 鍵開けました

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「はやく!はやく来て!」
警備員が二人、連絡を受けて、走ってきた。扉の前で、待ち構えていた事務員が、待ちきれずに叫んでいた。
「何があったのですか?」
「中から、悲鳴が聞こえて、修理の業者の人が、中に……」
「悲鳴?中に誰か?」
「あの、私には聞こえなかったけど、彼が……」
「わかりました。すでに、応援を呼んでますから、あなたはここで待ってて下さい。私たちが行きます。」
扉はその業者によって鍵が壊されていたので開いたままになっている。建物の中は明かりがない。二人は手にライトを持って入って行く。
「先に入った修理の人って、誰ですかね?」
「さあ?」
「ライトを。」
「真っ暗ですね。」
二人はゆっくり進む。
「あそこに!」
「階段が……」
「誰か、いますかね。」
「誰かいますか~」
「大丈夫ですか~」
床に空いた四角い穴。そこから階段を降りていく。
「ずっと、奥まで続いているな。」
どんどん進んで行くと、行き止まりになる。しかし、扉があった。
「ここも開いているな。」
鍵はかかっていない。扉を開けた。
「明るい?ここは?」
「明かりが…進みましょう。」
二人は手に持ったライトをしまって、辺りを見回した。
しばらく行くと、いくつもの扉がある。
「鍵は?」
「ここは開いている。」
「誰かいますか?」
客室のようだが、誰もいない。
次々と扉を開けるが、誰もいない。
「ここもか?」
「助けて……」
か細く声が聞こえた。中に入ると女性が鎖に繋がれていた。
「ここにはあなた一人ですか?」
「……他の…部屋に子どもが…」
鎖を外そうとしたが、鍵がなく、鎖を切る工具もないので、すぐには解放できそうもなかった。
「大丈夫ですよ。すぐに助けが来ますから。落ちついて。」
「おい、こっちにもいるぞ。」
「なんだ、ここは?」
「先に入った修理の人はどこへいった?」
「もっと……先……誰か捕まった……」
その時、応援が到着したようで、大勢の気配がした。
「助けに来たぞ、これで鎖を切って、彼らを外へ。我々はこの先へ進む。」
「はい。お願いします。」
警備の二人は、受け取った工具を使って、鎖を切り、女性と子どもを連れて、来た道を戻った。

「大変!人が、閉じ込められてて!今、救助の人が…」
事務局は大騒ぎ。授業は休講になり……もともと、休講が多かったが……学生は寮に戻るよう連絡がまわり、教授たちも出来る限り自宅待機となった。何が起こっているのかを把握するために、事務局にやって来た事務局長は対応に追われる事務局の面々に問いただしたが、全てを知るものはいなかった。
「アル君が、怪我して、病院に……学生が数人連行されたとか……事情聴取に……学長は?事務局長……どうしましょう~」
どうやら、例の立ち入り禁止の建物に、配達に来ていたアルが監禁されていたらしい。何故?誰が?おまけに、秘密の地下通路まで発見されて、警察が調べているという。なんとしても、我々との繋がりを知られてはならない。背中に冷たい汗が流れる。至急、学長に連絡を……
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