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第八章 王妃
8 見舞いの品
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レーデン侯爵は軽傷だったが、しばらく治療院で治療という名目で留め置かれた。事件を起こしたのが王妃だったこともあり、身の安全と、事情を聞くために、外部と隔離されていたのだ。事件の後処理がおわり、彼は自分の屋敷に戻された。
「フレアはどうした?病院か?」
「ひどい怪我でしたので、辞職して、故郷へ帰りました。そこで治療をするそうです。」
「なぜ、ここで面倒をみなかった……」
「申し訳ありません。」
「なぜ、一言……」
「本人の希望で。」
「充分な治療費を持たせたのだろうな、今まで尽くしてくれたのに…追い出すような真似を……しなかっただろうな……」
侯爵の手は硬く握られ、震えていた。
「それは……もう……充分な額を…」
「どこだ?その故郷は?」
「教えてくれませんでした。見舞いも不要と。この屋敷にも戻りませんでした。」
「彼の……私物があるだろう。送ってやらねば……そうだ、宰相殿なら、ご存知だろう。連絡を……」
「既に、勝手ながら…私がお願いしましたが、本人の希望で、教えられないと……」
「本人の希望で?」
「また、彼は自室のものはすべて破棄してくれと……」
「お前は会ったのか?フレアに会ったのか?どんな様子だった?」
「………酷い……状態でした。起き上がることも出来ず、会話もやっとで…」
「あああ…」
彼の姿が、あの血塗れで、自分を守るように盾となって……王妃の振り上げた刃物をその身に受けて……
「…私はもうお側にいられませんが、旦那様にとてもよくしていただいて、感謝しています。……と……」
「そう、言ったのか?」
「はい。あとは、事務的な事を話しました。」
「事務的なこと…彼らしいな……」
「宰相様から、お見舞いの品が届いております。」
「なんだ?」
「見舞金に、フルーツ、焼き菓子………これは………?」
「なんだ?開けてみろ。」
「…………これは……令嬢の姿絵……ですね。」
「どこかの貴族と、結婚しろと………ふん……知らん、送り返せ。」
「よろしいのですか?」
「?」
「一緒にお手紙と…中に…」
「読め。」
「………し、失礼します。文面をそのまま…よろしいですか。」
「いいから。」
「…断らないほうがいいぞ。」
「な!」
「一緒に入っていたものが……」
執事が二枚目を目で追う。
「あ、もう一枚……断れば、かわりにこの主をさしあげよう。……?何ですかねこのハサミ。」
執事の手には綺麗な細工の花切りハサミがあった。
レーデン侯爵の悲鳴が響いた。
「フレアはどうした?病院か?」
「ひどい怪我でしたので、辞職して、故郷へ帰りました。そこで治療をするそうです。」
「なぜ、ここで面倒をみなかった……」
「申し訳ありません。」
「なぜ、一言……」
「本人の希望で。」
「充分な治療費を持たせたのだろうな、今まで尽くしてくれたのに…追い出すような真似を……しなかっただろうな……」
侯爵の手は硬く握られ、震えていた。
「それは……もう……充分な額を…」
「どこだ?その故郷は?」
「教えてくれませんでした。見舞いも不要と。この屋敷にも戻りませんでした。」
「彼の……私物があるだろう。送ってやらねば……そうだ、宰相殿なら、ご存知だろう。連絡を……」
「既に、勝手ながら…私がお願いしましたが、本人の希望で、教えられないと……」
「本人の希望で?」
「また、彼は自室のものはすべて破棄してくれと……」
「お前は会ったのか?フレアに会ったのか?どんな様子だった?」
「………酷い……状態でした。起き上がることも出来ず、会話もやっとで…」
「あああ…」
彼の姿が、あの血塗れで、自分を守るように盾となって……王妃の振り上げた刃物をその身に受けて……
「…私はもうお側にいられませんが、旦那様にとてもよくしていただいて、感謝しています。……と……」
「そう、言ったのか?」
「はい。あとは、事務的な事を話しました。」
「事務的なこと…彼らしいな……」
「宰相様から、お見舞いの品が届いております。」
「なんだ?」
「見舞金に、フルーツ、焼き菓子………これは………?」
「なんだ?開けてみろ。」
「…………これは……令嬢の姿絵……ですね。」
「どこかの貴族と、結婚しろと………ふん……知らん、送り返せ。」
「よろしいのですか?」
「?」
「一緒にお手紙と…中に…」
「読め。」
「………し、失礼します。文面をそのまま…よろしいですか。」
「いいから。」
「…断らないほうがいいぞ。」
「な!」
「一緒に入っていたものが……」
執事が二枚目を目で追う。
「あ、もう一枚……断れば、かわりにこの主をさしあげよう。……?何ですかねこのハサミ。」
執事の手には綺麗な細工の花切りハサミがあった。
レーデン侯爵の悲鳴が響いた。
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